17 吸血鬼の城
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――…望まずとも貴方に死は訪れるかもしれない。 死は、人に等しく与えられるものだから。
[顔を埋めてしまったドナルドの表情は読み取れない。 けれどその仕草が少しだけ可愛らしいと思った。 手を伸ばし、両の手で優しく男の頭を抱く]
困ったひとね。
[理由らしからぬ理由を紡がれ小さく笑った。 ぬくもりを与えることが出来ないその手で女は男の髪を撫でる 優しく慈しむような、何処か懐かしい仕草]
死にたい、だなんて…… 言わないで……
(1) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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本当にこまったひと。 生きたかったから此処に逃げ込んできたんじゃなかったの?
[ドナルドが追われていた事を知っていた。 逃げ込む先は正解だったとは言えないけれど。 彼が身じろげば絡めていた腕を緩めて 悲しげな苦笑浮かべる男の唇に自らの唇を軽く一度触れさせる]
そんなに飢えているように見えた……? 私はおなかを空かせた可哀想なこども?
[尋ねる声に甘さが混じる。 触れる男の吐息が女の心を擽った]
(15) 2010/06/23(Wed) 23時半頃
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――ああ、眷属の死には、
墓を用意せねばならないのですね。
[思い出したようにぽつり、呟き]
あれは、短い間とはいえ
我が同族として……逝ったのだからな。
墓くらいは用意してやろうと思っているが。
[呟きに応える
城主の意思は既に影へと伝わっている筈]
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――…この宴も、ゲームの一つと思えば良いのに。 そうしたら、勝ちたい、と思えるでしょう?
[人ではないのだと知らしめるような言葉を紡ぐのは ある種の自衛のようなもの。 自分に言い聞かせ相手に言い聞かせ そうすれば違いに諦めもつく。 細まる隻眼の男の笑み>>20に嬉しそうな笑みが浮かんだ]
今は――…貴方を殺したくない。 貴方が触れてくれたから…… あたためてくれようとしたから……
[抱きしめる腕の強さに緩く瞬いた。 触れる箇所からぬくもりが伝う。 弾力のある二つの果実が男の眼下で形を変えて 互いの鼓動が重なってゆく]
(42) 2010/06/24(Thu) 00時半頃
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[頬を撫でるドナルドの手に翡翠の眸は軽く伏せられて 亜麻色の睫毛が甘い期待に微かに震える]
これは……、 私がそうしたいから…… 後悔なんて、しない……
[啄むような口接けがくすぐったくもあたたかい]
ん……、今だけで良いから…… 貴方のぬくもりを私にわけて……
[甘く囀り女はその先を男にねだる。 首筋に腕を絡め深く口接けてその身を委ねた**]
(43) 2010/06/24(Thu) 00時半頃
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[苦笑にも似た吐息を洩らす。
情事の名残は其のままに]
[思わず襟でも正そうとしたものの、
両手の塞がるに気づいて、主と同じく吐息を零した]
[甘く繰り返された城主の言葉
それは心の奥深くまで沁み込んで――。
いつのまにか其れは真実として心に根付く。
傍に居て良いと言いながら
城主の心は何処か遠く感じられて
女は幾度となく傍にある為の許しを請うた。
無くした記憶の中で一度は抗った女は
仮令記憶を取り戻したとしてももう抗うことはない。
十二年の歳月のうち別の感情が芽生えていたから――]
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[魔性として新たな生を受け目覚めた時には 想いも記憶も全て失っていた。 うまれたばかりの雛が親鳥に懐くように 力を分け与えてくれた者を慕った。
私のローズ。 そう囁く魔性の聲が女を甘く縛る。
何時しかその魔性を心酔し ただ傍にあることだけを望むようになっていた]
(79) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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[だから――。 メアリーの見つけた日記は熱に浮かされ 人であった頃の記憶を夢に見た時にでも記したのか、 それを記したことさえ記憶はないのだけれど。
それはとても短い日記。 想いだけが記された頼りない手記。
人ではなくなってしまった。 もう戻ることができない。
さいご、どうか、もう一度だけ、 大切な人たちに逢いたい、と。
夢の記憶をおぼろげに綴った儚いもの――**]
(80) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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[幾度も幾度も囁く言葉。
其の意味を真に理解していなくとも
似た色が惑わせて行くのだろう]
――…
[傍にあれと言う癖に
城主の傍には見えぬ壁が立ち塞がっている。
其処を越えようとするものは
数百年の歳月のなか、現れた事が無く
何時しか己自身ですら、忘れ果てていた]
[悦楽に身を委ね
人を恐怖と憎悪で歪め壊し
満ち足りた其の後に襲う虚無
孤独に苛まれ
消滅の恐怖に怯え
取り憑かれたかのようにまた人を襲う
負の連鎖は
たとえ周囲に薔薇を散りばめようと
埋まる事は無いのか]
[宴の最中であると言うのに
何時に無く胸の内が酷くざわめいている]
[――愛しいお兄様。
そう口にする事はあれど
私のお兄様。
私だけのお兄様。
そんな台詞を聲に出す事を憚られた。
所有を示して良いのは兄だけだと思っていた。
それを口にして嫌われてしまうのが怖かった。
だから女はただ想うだけ――]
[婦人に向けられた言葉]
[ざわめきのようなものを感じて呟く]
旦那様――…
[立ち並ぶ墓標、その慰めは誰のためのものか]
水商売 ローズマリーは、ランタン職人 ヴェスパタインに話の続きを促した。
2010/06/24(Thu) 02時半頃
嗚呼、聞こえている。
[白薔薇の囁きに、溜息混じる聲を零す]
己の――人間の尺度ではかろうとするのは愚かな事だな。
此処を何処だかも知らぬらしい。
たかが食事と、同族の死を同じとするはずが無いだろう。
ひとと我等は違うのだから。
其れとも人は食事のたびに墓を立てるのか?
慰めかどうかなど、愚かなことを問う。
眷族なれば墓に入れる
食事を終えた後のゴミは捨てる
それだけの事だと言うのに。
伝えておけ。
……此処は私の城。
お前たちの世界とは、違うのだと。
[魔の城で人の常識など通用するものかと。
嘲りを含む聲を投げた]
[目覚めたときの昂揚は遠く。白薔薇は憂う]
――…はい、それは。
然りと、お伝えいたします。
[言いよどむような間の後]
……ただ、わたしはふと……
あれほどの同胞の死を、旦那様が見つめておられたこと。
今までそれに気づかずにいたことを、知りました。
――…嗚呼
[何の事かと、ふと思い出す]
もう、数えることも止めてしまった。
あれは……宴に招き眷族としたもの
街で浚い、血をわけたもの……
眷族を幾人か傍においた事はあったが
皆先に逝ってしまうのでな。
[眷属とした者の死に心は痛んだけれど
死は人であった頃の記憶と近くて
触れることを出来るだけ避けていた]
――…私も死んだら其処に眠るの?
[城主と白薔薇の聲にことりと首を傾げる]
出来ることなら……
私は海の泡になりたいわ。
[見たことない青を思いながらそんなことを呟いた**]
――……ただそれが、
とても寂しいことだと思ったのです。
[並ぶ墓標をみやれば、
主が声に応えるように呟いた]
……お前は……どうだろうな
此処に眠るは、眷族ばかり
幾度も私と交わったお前は、若しかしたら
純血の我等と同じく
灰となり消えるのかもしれぬ。
[幾度か見た、同じ純血の一族の死
最後に立ち会ったのはもう思い出せぬほど昔]
嗚呼、だが私のローズ
死ぬなどと……お前まで私を置いて何処へ行くのだ**
寂しい、か……
[最早感じるこころなど
凍てついて久しいと、思うのに]
私には、解らぬ。
[己の胸の内が、解らない。
ただ、墓が一つ増えるたび
帳面に名前が一つ増えるたび
胸の何処かを風が吹き抜けていくだけ**]
……海の泡になどなるくらいなら、
刺してしまえばよろしいのに――
[かすめた囁きに、ぽつり呟いた]
――…灰に、なる?
[城主の聲に首を傾げてしまうのは
死して灰になった者を知らぬから]
お兄様と同じなら、
それも良いかも知れない。
[想いが知らず聲となり――
けれど紡がれた聲の、その響きに女は微笑む。
嗚呼、まだ居て良いのだと、そんな事を感じながら]
お兄様が行くなと言って呉れるのなら
私は何処にも行かない。
若し、身体が灰になってしまっても、魂はお兄様の傍に。
[白薔薇の呟きにゆるく瞬く]
セシル、貴方は……
私が刺される事を望んでいるの?
それとも……
貴方が私を、刺したいと、そう言っているの?
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