17 吸血鬼の城
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― 廊下 ―
[ベネットの声が聞こえれば>>3:397 不思議そうに、首を傾げた。]
どうしてそんな顔をするのですか――? わたくしは、お勤めを果たすために 様々な事をしていただきました。
それはとても、良い事なのだと思っていますよ…?
(4) 2010/06/22(Tue) 23時頃
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― 廊下 ―
――…っ…!
[部屋の中から、血に染まったサイラスが現れる。 その、凄惨な有様に息を呑み 思わず目を逸らし。
おずおずと視線を戻して、その背を見送る。
部屋の中から嘆きの声は聞こえてはいたが なぜだか、安堵が胸をよぎり。 自分のそんな心の動きに罪深さを覚えて、俯いた。]
(18) 2010/06/22(Tue) 23時半頃
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― 廊下 ―
あ……、…いえ――
[傍らの女性に声をかけられ、ゆるく頭を振る。]
このようなときに、わたくしは――
…いえ。
[ぼんやりと、宙を見ていた目が、女性の方へと降りてくる。]
あの――お名前をお聞きしても…?
(27) 2010/06/23(Wed) 00時頃
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長老の孫 マーゴは、サイラスの行く先を、視線の端で追いかけながら。
2010/06/23(Wed) 00時頃
お兄様……
気が晴れぬなら……
白く美しい薔薇でも愛でて
お心をお慰めになっては如何でしょう。
[感情の読めぬ聲が城主へと囁かれる]
白薔薇を?
[黒薔薇へ手を伸ばす城主へ
かかる声音
廊下へ出て行った彼はこの場に居らず]
追うのは、億劫だが。
[折角の提案ならば。
向かうべきかと気乗りのしない聲を洩らす]
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― 廊下 ―
リンダ、ハーシェル様――
[告げられた名を繰り返し、深く頭を下げる。]
ハーシェル様、どうか、この宴が終わるまで、 あなた様がご無事でありますよう――
[十字を切り、小さく祈る。]
(37) 2010/06/23(Wed) 00時頃
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億劫と仰られるなら無理にとは申しません。
お兄様のお心のままに……
[兄が黒薔薇と戯れるならそれ以上何も言わず。
気乗りせぬ彼の聲に静かに頭を垂れる]
あれが気になるなら
……お前が後を追えば良いだろう?
[聲は幾らかからかう風を持って響く]
長老の孫 マーゴは、廊下の先から流れてくるやりとりに、そっと耳を傾ける。
2010/06/23(Wed) 00時頃
――……死ねたのに、
[呟きはけれど、耳の良い者には響いた]
私が………?
[からかうような声音に僅かに首を傾げる]
――…私が行って良いのかしら。
[ぽつと呟く聲は感情を殺したように、薄い]
――……っ
[白薔薇の呟きに女の表情が強張る。
嗚呼、彼も私を置いていくのだろうか。
そんなことを思い翡翠は伏せられた]
[死にたかったのか。
彼のつぶやきには少し、驚いている。
だけど、自分も同じようなことを考えている。]
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― 廊下 ―
―― … ……、ありがとう。
[ほんのりと笑って。 それから、詩人に告げたのと同じ言葉を繰り返す。]
どうか、私がお勤めを無事に果せるようお祈りください。 私の望みは、それだけなのです。
[そっと、ロザリオを握る手に、指を添える。]
(58) 2010/06/23(Wed) 00時半頃
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私のローズ
お前の思うままに、生きるが良い。
[行って良いのかどうか。
その聲を後押しするように、囁きを向ける]
何度も口にするほどあれが気になるのだろう?
お前のしたい事をすれば良い。
それだけの力がお前にはあるのだから。
[従者の呟きは聞こえていても、城主の其の囁きはまだ
ひとの身である彼には届かぬもの]
お兄様……
[城主の聲に伏せた亜麻色の睫毛が震える]
気になるから留めたいと思うのかしら。
嗚呼、私はあのひとを留めておきたいの。
[望むことを口にする。
けれど女にはそれが良いのか悪いのか
そんなことさえ分からない。]
この力はお兄様に与えられたもの。
この力はお兄様の為だけにふるわれるもの。
[自らに言い聞かせるように小さく繰り返す]
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― 廊下 ―
ありがとうございます――
[リンダに深く頭を下げて、一歩、後ろへと下がる。]
わたくしは、これで失礼させて頂きますね。 いま、ここでは――出来る事はなにもありませんから…。
[物憂い視線を破壊された扉へと投げかけ。 戻ってきた白薔薇をちらりと見遣ってから もう一度、頭を下げて。
リンダに背を向けた。]
(72) 2010/06/23(Wed) 00時半頃
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どうした、私のローズ
[傍に居ながら、聲を使うのは
彼女の内なる聲を聞かせたくないと
可笑しな心持ちから。
どの道同族には聞こえていると言うのに]
気に留まれば、喰らいたいと思う事もある
留めて置きたいと思う事もある
そう、お前が其の力を得て、此処に居るように。
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― 廊下 ―
[影に道案内を請いながら、城の廊下をゆっくりと歩む。
浴室まで来て、そこに目的の人がいないと知ると、 もう一度、城の中を探し始めた。
やがて、最初に来た白薔薇の間の扉を開く。]
――サイラス、様…?
[呼びかける声は小さくとも、 そこに、怯える色はもうなかった。]
(91) 2010/06/23(Wed) 01時頃
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如何もしないわ、お兄様。
[返事をするまで暫しの間があった。
それは自らに暗示を掛けるための時間]
――…私はお兄様に望まれたから
今、此処に居るのね。
[今はその事実だけで良い。
それ以前の事を兄に問うことはしなかった。]
そう、私がお前を望んだから
お前は永遠に美しいまま、私の傍で咲く事が出来る。
[間をおいた返事に、柔かに笑みを混ぜる。
其れは、崩れていた調子が戻った様子を伝えた]
それなら良いの。
私は――…お兄様を少しでもお慰めできる華でありたい。
[親鳥を慕う雛のように女は兄を心酔する。
兄の笑みを認めれば安堵したようにふ、と微笑を過らせた]
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― 白薔薇の間 ―
… 、…… 。
お怪我は、ございませんか…?
[ゆっくりと近寄って。 あと2歩、というところに立ち止まり、 首を傾げて、問う。]
(97) 2010/06/23(Wed) 01時半頃
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嗚呼
[浮かべた微笑を振り返り、城主は吐息を洩らす]
お前が何時も満ち足りて
美しく咲いている事が
私を慰めてくれるのだ。
其の微笑みを曇らせる事のないように
お前はお前が望むままに、生きると良い。
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… そ、れは――
――よかった…です …。
[ほのりと、微笑んで。 一歩、近づく。]
たとえ、あなたが人でなくなっていても――
…いて、くださることが嬉しいと。
―― そう、思ってしまうのです。
(109) 2010/06/23(Wed) 01時半頃
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[殺すところは、見ていないけれども。 ――誰かを殺したのだろう、とは、分かっていて。]
……それでも。
あなたと、こうしてお話しできることが、嬉しい。 あなたが、傷ついていらっしゃると思うと、哀しい。
――そう、思っては…いけませんか?
[ことり、と首を傾げる。]
(117) 2010/06/23(Wed) 02時頃
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恨む、など。
[もう一歩、近づく。]
わたくしは、そうある事を望まれて、生まれてきました。 父が、あなたに出会わずとも。 もっと、前から――毒とともに生きてきたのです。
あなたのおかげで、わたくしは初めて 心も、身体も、解き放つ事ができたのです。
[ ――たとえそれが、たったひとときのことであったとしても。 最初から、そうと、分かっていても。]
だから、あなたは……私にとって、大切な人…なのです。
[ほんの少し手を伸ばせば触れられる距離で。 もう一度、仄かに笑む。]
(128) 2010/06/23(Wed) 02時頃
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[これは女が失った過去の記憶の欠片。
女は良家の娘として人として生を受けた。
元来身体が弱く外に出る事も稀だった。
唯一知る外の世界は白薔薇の咲く庭園。
遊びに来てくれた二人の兄妹だけが心の慰め。
医師から二十歳まで生きられぬと宣告されていた。
長く生きられぬと知りながらそれを嘆くことはなかった。
もう少しだけ丈夫であれば、と思ったことはあるけれど
限りある生をひたむきに生きていた。
残る時間があと二年に迫った時――
この城の城主と出会う。
出会いは白薔薇咲く庭園だった。
――美しくも哀しげなひとだと女は思った。]
[無知な女は彼を魔性だと気付かない。
気づいた頃にはすでに手遅れ。
城主は女の命が短い事を知り憐れに思ったのか
時を止める術がある事を明かす。
このままで良いのだと、女は抗った。
神から与えられた命をまっとう出来るだけで良い。
家族や親しいあの兄妹と離れるのは辛いと
――そう、一度は拒絶したのだ。
けれど次に目覚めた時には
抗った記憶も人だった記憶も失っていた。
否、本当は何か大事なものをなくしたのだと
それだけはわかっていたのだけれど
此方を見詰める城主の眸が何処か寂しそうに感じられて
その日から、城主の傍にあることが自分の存在する理由となった]
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