―後日談>>@2―
[下される処罰に異論は無いと、沈黙に一度翠を伏せる。
尤も、返答の一つも出来れば良かったが、噛まされた状態では其れも難しい。
…喩え此れが無くとも口を開く心算は無かったけれども。
自分の行った行為の意味と、その罪は理解に及んでいるし
唯一物申したかった己の家に対しては、ある意味この処罰こそ最大の屈辱だろう。
精々気掛かりと言えば、己の仕出かした事に寄る第三師団の者達への扱いだが。
まぁ、他の者への処罰等も鑑みるに、酷いとばっちりを受ける事はあるまい。
後は執行を待つのみと僅かに視線を上げ――鞘から抜き放たれた剣に翠を細める。
己が凶刃を向けた師団長自ら、手を下すもなかなかの風情…とでも言うべきか。
拘束された腕が、ぎしりと僅かに撓りを上げる。僅かに腕から伝う痺れにぱちりと瞬いた。
覚悟もしていた事だ、冷静でいた心算なのだが、
…目前に見える死に、己は思いの外身構えているらしい。
情けなく声を上げる事は少なくとも無いだろうと、噛まされた猿轡に、少しだけ感謝して。
たった一言。拘束された背の後ろ手で、掌を握り締める。
振り降ろされる一瞬を待ち構えようと、 して。]
(185) kairi 2011/04/04(Mon) 23時半頃