[それから数週間後。僕は、生まれ故郷のあの町から遠く離れたところにいた。
黒さんが紹介状を書いてくれた議事高の理事長室で、こうして理事長と対面で座っている]
『君がクリストファー君かね。特別奨学生枠での入学を希望しているという』
あ、はい、そうです。えっと、その、本日はお日柄もよく――
『挨拶はいらんよ。で、特技はギターということでしたか。
我が議事高が、あのズリエル・マグナスの出身校だということは当然知っているでしょう?
毎年、多くの前途有望な若者がここに押しかけてくるから、すべてを受け入れるわけにもいかない。
で、君は誰の紹介でここに来たんだったかね?』
[明らかに冷たい応対。く、黒さーん……と胸の内で呻いて。でも、とりあえずやってみるだけはやってみようと]
えっと、その……これを渡せばいいって聞いてて……
[そっと、黒さんから預かった手紙を差し出した]
(206) tamamh2 2010/08/15(Sun) 17時頃