17 吸血鬼の城
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寂しい、か……
[最早感じるこころなど
凍てついて久しいと、思うのに]
私には、解らぬ。
[己の胸の内が、解らない。
ただ、墓が一つ増えるたび
帳面に名前が一つ増えるたび
胸の何処かを風が吹き抜けていくだけ**]
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――中庭――
[自分の何気ない言葉に向けられた、和らいだ青と混じり気のない微笑みに、少女は当惑する]
どうして、そんな顔するの。 ……わかんないよ。
[此方に深々と頭を下げ、どこか嬉しげに去る姿は、まるで――]
何が、友達じゃないかも、だよ。……嘘つき。
(95) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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……海の泡になどなるくらいなら、
刺してしまえばよろしいのに――
[かすめた囁きに、ぽつり呟いた]
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[謡うように紡がれるグロリアの言葉に耳を傾ける]
私の、したいこと――。 [今まで選択肢など与えられず。強いものに捻じ伏せられるまま、地を這うように生きてきたけれど]
[ヘクターを失い嘆くだけで、城主と黒薔薇に睥睨され、絶望と無力感に流されるままに、ただ殺されるのを待つ。 そんな無力でちっぽけな自分でも、グロリアの言う通り何かを選び取れるのだろうか]
[当惑しながらグロリアの表情を覗えば、浮かぶ相はきっと穏やかなもの。それは優しく背中を押してくれるように思えたけれど] ……今は、まだ分からないです。 [当惑の表情でぽつりと呟いた。 リンダはグロリアの言葉をどう受け止めただろうか。
じっと考え込みながら、二人と共に中庭を後にした**]
(99) 2010/06/24(Thu) 04時頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/06/24(Thu) 04時頃
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/06/24(Thu) 04時半頃
――…灰に、なる?
[城主の聲に首を傾げてしまうのは
死して灰になった者を知らぬから]
お兄様と同じなら、
それも良いかも知れない。
[想いが知らず聲となり――
けれど紡がれた聲の、その響きに女は微笑む。
嗚呼、まだ居て良いのだと、そんな事を感じながら]
お兄様が行くなと言って呉れるのなら
私は何処にも行かない。
若し、身体が灰になってしまっても、魂はお兄様の傍に。
[白薔薇の呟きにゆるく瞬く]
セシル、貴方は……
私が刺される事を望んでいるの?
それとも……
貴方が私を、刺したいと、そう言っているの?
[――海の泡。
この名の語源を語ってみせたのは誰だっただろう。
ツキ、と女のこめかみには小さな痛み**]
可愛らしいことを言う。
[ローズマリーの囁きに篭る想い
純粋な魔たる城主には存在しない思慕というもの
向けられるのはこそばゆくもあり、柔かに笑みを返す]
其の美しい髪が
愛らしい貌が
見れぬようになるのは……厭だな。
お前は此処に居れば良い
行く先など、他には無いだろう?
[行くな、と言う言い方をしない。
惑わし、逃げ道を塞いでおく
そんな方法しか、知らぬ故に**]
[ 呟きは無意識のもの
聞かれていたことに、それは目を眇める]
まさか、そのようなこと。
……ただ、童話を一つ思い出しただけです。
[儚い人魚の――人ならざる者の御伽噺]
お嬢様を刺して、
私が「戻る」ようなこと、あっても困りますでしょう?
[童話の道理は現実にはない、
からかうように囁いた]
[城主の言葉に女の貌が綻ぶ]
愛しいお兄様――…
私は此処に居ります。
お兄様のいらっしゃるこの城が私の在るべき処。
――…若し、他に行く先が在ろうとも
私はお兄様の傍に……
[逃げ道を塞がずとももう逃げる気などないのに。
傍に居たい、それは本心であるのに。
伝わらぬもどかしさを感じながらも
女はそれを伝えようと言葉を重ねた]
[白薔薇の言う童話の一つを女は知っている。
此処で童話を読んだ記憶もないのに
話の内容はおぼろに残っていた]
――…戻れるか如何か試してみる?
けれどそれなら……
お姫様が貴方で、私が王子様かしら。
[困るとも困らないとも言わず小さく笑う。
胸を深く刺されれば簡単に死ねるだろうか。
それでも今は――置いて逝く心算はないのだけれど]
[白薔薇が声、それに感情は伺えない]
試しても、よろしいのですか?
[人たる身であれば、
冗談でも言わぬだろうことを紡ぐ。
ぬくもりを失った心に残る感情は、負たるものばかり]
――ああ、でもそうでした、
それでは役割が逆でございますね。
正しき役割であらば――私は既に刺された身、でしょうか?
[やわりと微笑う音は途切れる]
――…………。
[良いとも悪いとも言わなかった。
ただ長い沈黙だけが落ちる]
嗚呼……
[柔かな女の甘い囁き
其れが偽りだと、己が人としての生を奪った結果だと
知っているのに、空虚な胸がひととき塞がる心地]
愛しいローズ
お前はお前の望むとおりに、あれば良い
[けれど其の口で泡と消えると言う
彼女にかける言葉は
傍に居て欲しいと願うものではなくなっていた]
[書庫に置かれた幾つかの手記
城主が知らぬものなど、無い
あれを燃やし、灰としなかったのは
何故か
何時か記憶が戻り
この手をすり抜けて逝く事を
諦めていたのか
其れとも、其の上でまだ此処へ残ると
可憐な口元から紡ぎだされるのを、望んだのか
今になっては動機も遠く霞む**]
正しき道筋ならば――…
王子様は刺されはしないわ。
別の娘と幸せに暮らしました、でしょう?
[やがて白薔薇の眷属に
御伽噺の結末を語る聲には少しだけ懐かしむ音]
私の望みはお兄様と共にある事――…
[城主の言葉に返す聲には揺らがぬ音色**]
そう、では其の望みを叶えよう。
……永久に私の傍らに……
愛しい、私のローズ
[意思の篭った風に響く聲
城主は満足気に囁き返す**]
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/06/24(Thu) 21時頃
お兄様――…
あのこが、呼ぶの。
あのこの呼び声が、聞こえたの……
[今はもう其れも届かなくなり
感じるのは血の気配と死の匂い。
気が焦るばかりで上手く情報を集められない。
こめかみが酷く痛みを訴えていた]
――…私のローズ
[揺らぐ気配
僅かに眉根を寄せる]
其の娘は
取るに足らぬただの人の子だ。
お前とは別の存在だろう?
[言い聞かせるように囁きを送る]
白薔薇が食事を終えただけのこと。
片付けは影が間も無く。
……何が呼ぶと言うのだ。
別の、存在……
私とは違う世界の、こ……
分かってる
分かってるのに……
[行かなくてはいけないのだと
無くしたはずの記憶の欠片が告げている]
――……っ!
食事を、終えた……?
白薔薇が…、あのこを……?
[兄の囁く事実に目の前が白むような感覚]
わかっているのに――…
なお、行こうと言うのか
[重い呟き]
………………――――好きにするが良い。
[やがて間を置いて
突き放すような一言が返った]
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/06/24(Thu) 22時頃
ひとつ
先に言っておこう
……其れの墓を作ることは、まかりならん。
わかっていような?
[書庫の様子に、城主は何時に無く厳しい聲を向ける。
彼女の揺らぎのもとを
特別に扱う事は絶対に、避けねばならなかった]
――…ぅ、……くっ
[酷い頭痛が女を苛む。
城主の聲が、何処か遠く聞こえた]
私のローズ
お前が誰のものか……言えるだろう?
[僅かな嗚咽。
城主はうって変わって、穏やかな聲を響かせる]
――…お兄様、の……
[穏やかな城主の聲に返す聲は何処か虚ろで]
愛しい私のローズ……
そう、お前は私のもの。
[閨で情人にかけるような囁き。
彼女のひととしての嘆きを拭い
魔へと――己へと繋ぎとめる為の]
其処にあるのは、遠い夢。
……早く此方へ、戻ってくるのだ。
今其れを影に片付けさせよう。
[白薔薇の嫣然とした吐息、
満たされた今、揺らぎはなく、それは目覚めの時のように]
御伽噺の正しき道筋……
嗚呼、そんな終焉は訪れはしないのですから、
ではどちらにしても
我々は間違ってしまったのでしょうね?お嬢様――…
[彼女が「為した」者の手で、
彼女の「大事なもの」が奪われる、その因果]
|
――食堂――
そう言えば、ずっと何にも食べてなかったな。
[水に濡れれば紋様は失われるから、グロリアに湯浴みに誘われても謝絶して。涙の痕だけ拭くが汚れたままの姿で、少女も食事の間に向かった]
……こんにち、は。
[ドナルドとイアンに会えば、小さく会釈をして 影にパンとミルクを頼んだ]
(196) 2010/06/24(Thu) 22時半頃
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