17 吸血鬼の城
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牧人 リンダは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 23時頃
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―中庭―
[グロリアの言葉に、ありがとうございます、と礼を言い、トーニャに向き直る。]
大丈夫……?
[胸に手を当てて瞼を閉じるトーニャにそっと問い掛けた。]
(6) 2010/06/23(Wed) 23時半頃
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――ああ、眷属の死には、
墓を用意せねばならないのですね。
[思い出したようにぽつり、呟き]
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―中庭―
[ことさらに暢気な声を出すグロリアに、一瞬きょとんとしたが、続く言葉に頷き、]
そう、ですよね……。 見失いかけていました。ありがとうございます。
[一礼しているところに、トーニャの声が聞こえて、振り向く。]
どういたしまして。 私にも、同じようにしてくれた人がいたんです……。
[と、悲しげな声で言った。 重い空気になったのを感じたのか、]
ところで、あちらには何があったのですか?
[と、先程までトーニャたちが居た方を指差した。]
(19) 2010/06/24(Thu) 00時頃
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あれは、短い間とはいえ
我が同族として……逝ったのだからな。
墓くらいは用意してやろうと思っているが。
[呟きに応える
城主の意思は既に影へと伝わっている筈]
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―中庭―
[グロリアの婉曲な言い回しに首をかしげたが、その後のトーニャの言葉で悟り、バツの悪そうな表情を浮かべる。]
……そうでしたか。 私も、その、ヘクターさんがゆっくりと休めるようにお祈りしますね。
[と、グロリアに撫でられ目を閉じるトーニャに優しく言った。]
(30) 2010/06/24(Thu) 00時頃
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―中庭―
トーニャさん……?
[急に何かに怯えたような様子になったトーニャに、心配そうに声をかける。]
どうしたんですか……?
(38) 2010/06/24(Thu) 00時半頃
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―中庭―
――……っ!
[トーニャの声に、咄嗟に辺りを見回すが、霧に阻まれ、その影すら確認できない。]
あ、待ってください!
[先程指差した方向――墓地の方向――へと歩いて行こうとするトーニャを引きとめようと手を伸ばす。]
(48) 2010/06/24(Thu) 00時半頃
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[苦笑にも似た吐息を洩らす。
情事の名残は其のままに]
[思わず襟でも正そうとしたものの、
両手の塞がるに気づいて、主と同じく吐息を零した]
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―中庭―
――……っ。
[伸ばした手は、虚しく空を切る。 勢いあまり、二、三歩蹈鞴を踏んだ女は、慌ててトーニャの後を追う。]
―→墓地―
(56) 2010/06/24(Thu) 01時頃
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[トーニャに追いつくと、そこにいたのは、この城に初めて訪れたときに、自分を出迎えた従者だった。]
どう……して……?
[女は疑問の声を紡ぐ。彼から、城主に似た違和感を感じたことに。 最初に会った時、彼は間違いなく人間だったはずだ。 だが、今は、城主程とまではいかないが、対峙するだけてある程度の違和感を感じる。]
(62) 2010/06/24(Thu) 01時頃
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[甘く繰り返された城主の言葉
それは心の奥深くまで沁み込んで――。
いつのまにか其れは真実として心に根付く。
傍に居て良いと言いながら
城主の心は何処か遠く感じられて
女は幾度となく傍にある為の許しを請うた。
無くした記憶の中で一度は抗った女は
仮令記憶を取り戻したとしてももう抗うことはない。
十二年の歳月のうち別の感情が芽生えていたから――]
[幾度も幾度も囁く言葉。
其の意味を真に理解していなくとも
似た色が惑わせて行くのだろう]
――…
[傍にあれと言う癖に
城主の傍には見えぬ壁が立ち塞がっている。
其処を越えようとするものは
数百年の歳月のなか、現れた事が無く
何時しか己自身ですら、忘れ果てていた]
[悦楽に身を委ね
人を恐怖と憎悪で歪め壊し
満ち足りた其の後に襲う虚無
孤独に苛まれ
消滅の恐怖に怯え
取り憑かれたかのようにまた人を襲う
負の連鎖は
たとえ周囲に薔薇を散りばめようと
埋まる事は無いのか]
[宴の最中であると言うのに
何時に無く胸の内が酷くざわめいている]
[――愛しいお兄様。
そう口にする事はあれど
私のお兄様。
私だけのお兄様。
そんな台詞を聲に出す事を憚られた。
所有を示して良いのは兄だけだと思っていた。
それを口にして嫌われてしまうのが怖かった。
だから女はただ想うだけ――]
[婦人に向けられた言葉]
[ざわめきのようなものを感じて呟く]
旦那様――…
[立ち並ぶ墓標、その慰めは誰のためのものか]
嗚呼、聞こえている。
[白薔薇の囁きに、溜息混じる聲を零す]
己の――人間の尺度ではかろうとするのは愚かな事だな。
此処を何処だかも知らぬらしい。
たかが食事と、同族の死を同じとするはずが無いだろう。
ひとと我等は違うのだから。
其れとも人は食事のたびに墓を立てるのか?
慰めかどうかなど、愚かなことを問う。
眷族なれば墓に入れる
食事を終えた後のゴミは捨てる
それだけの事だと言うのに。
伝えておけ。
……此処は私の城。
お前たちの世界とは、違うのだと。
[魔の城で人の常識など通用するものかと。
嘲りを含む聲を投げた]
[目覚めたときの昂揚は遠く。白薔薇は憂う]
――…はい、それは。
然りと、お伝えいたします。
[言いよどむような間の後]
……ただ、わたしはふと……
あれほどの同胞の死を、旦那様が見つめておられたこと。
今までそれに気づかずにいたことを、知りました。
――…嗚呼
[何の事かと、ふと思い出す]
もう、数えることも止めてしまった。
あれは……宴に招き眷族としたもの
街で浚い、血をわけたもの……
眷族を幾人か傍においた事はあったが
皆先に逝ってしまうのでな。
[眷属とした者の死に心は痛んだけれど
死は人であった頃の記憶と近くて
触れることを出来るだけ避けていた]
――…私も死んだら其処に眠るの?
[城主と白薔薇の聲にことりと首を傾げる]
出来ることなら……
私は海の泡になりたいわ。
[見たことない青を思いながらそんなことを呟いた**]
――……ただそれが、
とても寂しいことだと思ったのです。
[並ぶ墓標をみやれば、
主が声に応えるように呟いた]
……お前は……どうだろうな
此処に眠るは、眷族ばかり
幾度も私と交わったお前は、若しかしたら
純血の我等と同じく
灰となり消えるのかもしれぬ。
[幾度か見た、同じ純血の一族の死
最後に立ち会ったのはもう思い出せぬほど昔]
嗚呼、だが私のローズ
死ぬなどと……お前まで私を置いて何処へ行くのだ**
寂しい、か……
[最早感じるこころなど
凍てついて久しいと、思うのに]
私には、解らぬ。
[己の胸の内が、解らない。
ただ、墓が一つ増えるたび
帳面に名前が一つ増えるたび
胸の何処かを風が吹き抜けていくだけ**]
……海の泡になどなるくらいなら、
刺してしまえばよろしいのに――
[かすめた囁きに、ぽつり呟いた]
――…灰に、なる?
[城主の聲に首を傾げてしまうのは
死して灰になった者を知らぬから]
お兄様と同じなら、
それも良いかも知れない。
[想いが知らず聲となり――
けれど紡がれた聲の、その響きに女は微笑む。
嗚呼、まだ居て良いのだと、そんな事を感じながら]
お兄様が行くなと言って呉れるのなら
私は何処にも行かない。
若し、身体が灰になってしまっても、魂はお兄様の傍に。
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