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―― 天文台・研究室 ――
[一服の後、研究室から電話をかける。コールする相手は従兄、電話をするのも久しぶりのような気がした。]
……スー、俺だ。
悪いな、忙しいときに。
[医者であるスティーブンは、電話してもなかなか掴まらないときがある。だからこそ手短に用件を伝えようと]
ガキがよくホールで転んでさ、親が手当てしろってうるせえの。血も出てねえのに。
軽い打ち身なら手当ての必要ねえよな?
医者に聞いたつったら、手当てしなくて済みそうだからよ。
[スティーブンの返事を待ちながら、前回会ったのはいつだったかと考える。彼は男を律儀に「ルーカス君」と呼ぶ。年上で、真面目な従兄。]
……ん、了解。助かったわ。
[返事を聞き終えればすぐに通話を切ろうとして、しかし思い直る。]
近々暇だったら飯でも行かねえか。
勿論スーの奢りで。
[は、と軽く笑った声も、きっと向こうに届いている。]
―― 天文台・研究室:午後 ――
[午後一番に営業が来ると、朝から上司から伝えられていた。本来は研究員が相手をするようなことではないけれど、必然的に職員の中で一番若年である男は相手をすることになっている。]
………めんど………。
[まるでこの世の終わりのような声音を落とす。その瞬間に関係者の鳴らすインターフォンの音が響き、緩慢な動きで立ち上がって出迎えた。]
どうも、わざわざ来ていただいて。
……研究員のルーカスと云う。
[律儀に礼をする営業は、初めて見る顔だった。
衝立で区切られた応接用のソファに通し挨拶を交わすが、男はやはり丁寧な接客態度ではなく。相手の自己紹介もぼんやりと聞き流していた。]
[事務機器の資料を並べられ説明を聞けば、確かに必要なものが多いと気が付く。
他の研究員にもヒアリングしてみるべきなのだろうが、接客を任せたのが悪いと、勝手に注文をすることにした。]
……ああ、それもお願いしたい。
納期は、いつでも。暇なときでいい。
[こんないい加減な取引先もなかなか無いだろう。
けれど契約が結べるのだから、きっと営業の彼も嬉しいに違いないと、勝手に思い込んでいた。]
―― 天文台・売店:午後 ――
[軽食を買おうとやってきた売店の前で、一人の女性に声をかけられる。
長い髪の、美しい女性。年齢は男よりも少し下だろうか、随分と綺麗な顔立ちに、珍しい人形を見るような視線を送っていた。]
セレスト?
ああ、多分まだいるが……
[彼女はセレストの姉と名乗った。妹に会いに来たとう。そういえば目鼻立ちがどことなく似ているような気がした。]
セレスト、いるか。
姉貴が来てんぞ。
[彼女は売店のどこにいたか、手招いて呼び寄せた。もう一人ホリーが居るのだから、少しは外しても問題ないだろう。]
お前、姉貴居たんだな。
ま、ゆっくりしてってもらえよ。
……あと売り上げにも貢献してもらえ。
[最後は姉の方に聞こえぬよう、小さな声で。
送り出すようにセレストの肩に軽く触れ、反対に売店の中へと男は入っていく。]
ホリー、メロンパンはまだある?
[一人売店の中に居るホリーの声をかけ、頼んだ品があればそれを貰い、なければまた別の何かを持ってきてもらう。]
そういえばお前さ、先週の水曜シフト入ってた?
……あ、いなかったか。
なんかよ、屋上で演劇?みたいなのやってんの。コウコウセイが。
お嬢様かお姫様だかが何歩か歩けばすぐぶっ倒れる貧弱設定らしくてよ、撮影中ってわかっちゃいたんだが笑い死ぬかと思ったわ。
[ドームに隣接する、野外観測用の屋上スペース。そこで繰り広げられるドラマは色々な意味で見ごたえがあった。ホリーもセレストもその日はバイトに入っておらず、もし入っていたならば呼びに行っただろう。
まさかその貧血のお嬢様が、彼女達にとって従妹と友人という関係者であることは知らず。]
職員皆珍しいもんだから見に行ってさ。
惜しいことしたな、お前。
[支払いをしながら、ふと思い出し笑いを浮かべ、口元を手で覆った。]
―― 天文台・ドーム:閉館間際 ――
[腕時計を見れば、もう閉館の時間が迫っていた。やれやれと一つ溜息を落としながら、螺旋階段を登っていく。
今日も恐らく、ドームの中には――]
……今日も居たか。
[扉を開けば、望遠鏡を覗く女性の姿がすぐに飛び込んでくる。閉館間際にやってきては、こうして閉じることを知らせに行くまで望遠鏡を覗き続ける彼女。]
おい、閉館だ。
早く出ろ、閉め出すぞ。
[片手に鍵束を翳して、早く出るようにと促す。
こうして呼ぶまで熱心に宇宙を見ているのだから余程好きなのだろうと呆れつつも、どこか同士を見ているような錯覚も覚えて]
なあ、そんなに見てて飽きないわけ?
[螺旋階段を下りながら、彼女に一つ質問をする。
それは研究対象を宇宙にしている男にしても言えることなのだろうが、敢えてそこは気付かぬ振りをして。
彼女からの返事はどんなものだったか、どちらにせよ男は咽喉の奥で笑い]
……なんにしたってよ。
閉館の音楽が流れたら、外に出る準備くらいしててほしいもんだ。
[チャリ、と小さく鍵束が音を立てる。
螺旋階段を降り切り、ホールを抜ければ出口はすぐそこに。]
気をつけて帰れ。
またな。
[恐らく彼女はまたこうしてやってくる。
微かに浮かべたのは苦い笑み、腕時計の指し示す時間は閉館時間を少し過ぎていた。]
[館内の戸締りを確認し、灯りを全て消し。
鉄塔の傍を通り過ぎる頃には、昼間の賑やかさはなく辺りは静寂に包まれている。]
………さて。
[明日もまた、同じような一日だろう。
研究にも、接客にも、あっという間に時間は流れて。
こうして、男の一日は終わる。
季節が巡り、天の映し出す星々の瞬きが変化していったとしても。
変わるはずが無いと思っていた、日々が**]
メモを貼った。
【人】 手伝い クラリッサ[ぼろっと、涙がこぼれた。] (104) 2012/07/21(Sat) 20時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサ[歩く。辺りを見回す。どこにいるかなんて解るはずがない。 (111) 2012/07/21(Sat) 20時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサせ (113) 2012/07/21(Sat) 21時頃 |
【人】 手伝い クラリッサん、 (116) 2012/07/21(Sat) 21時頃 |
【人】 手伝い クラリッサ[姿が見えると駆け寄ってくる友人の姿。カメラは回り続けているけど、彼女には向いていないから。 収まるのは自分の視界の中にのみ。] (118) 2012/07/21(Sat) 21時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサ[支えてくれる様子に一度、ゆるりと首を振ったけれど。] (126) 2012/07/21(Sat) 21時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサこの星が、…かあ…… (129) 2012/07/21(Sat) 22時頃 |
【人】 手伝い クラリッサ[一ヶ月前だったら。それを想像して、笑った。] (135) 2012/07/21(Sat) 22時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサまったくだぁ (139) 2012/07/21(Sat) 22時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサ[「美少女」が半分自虐ネタである事は、誰にも言ってないけれど気付いている人はいるだろうか。 (146) 2012/07/21(Sat) 23時頃 |
【人】 手伝い クラリッサ… (148) 2012/07/21(Sat) 23時頃 |
【人】 手伝い クラリッサふふっ たしかにー。でもいいじゃない、友情もの (153) 2012/07/21(Sat) 23時頃 |
【人】 手伝い クラリッサえっそうなの? (157) 2012/07/21(Sat) 23時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサ
(158) 2012/07/21(Sat) 23時半頃 |
【人】 手伝い クラリッサ別に、いいけどぉ (166) 2012/07/22(Sun) 00時頃 |
【人】 手伝い クラリッサ
(167) 2012/07/22(Sun) 00時頃 |
【人】 手伝い クラリッサ… (169) 2012/07/22(Sun) 00時頃 |
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