17 吸血鬼の城
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ふふ……
私はお前の拗ねた貌が見たかっただけかもしれぬ。
[白薔薇の声音に、くすくすと笑み混じる囁きが返る]
そう、私のローズが言う通り
獲物はまだ幾人も残っている。
宴はまだ続いているだろう?
|
[サイラスの言葉に、ふるりと首を横に振って。>>274 階段の方からも、一歩、あとじさる。]
わたくしは……お勤めを果たすために―― ………果たさずに、還る事など…、… [白薔薇の言葉にも、幾度か頭を振って>>276 ドレスの裾に手を伸ばし、ナイフを引き抜く。]
(278) 2010/06/23(Wed) 22時頃
|
――……ここは、下がってもらおう。
[白薔薇が拗ねた声を出すのとは対照的に、
暗い声を出して……。
そう、彼らにとっては、なんでもない、余興の一つ、きっと自分のことも滑稽にみえているのだと、わかっていても。]
―――お嬢様、
この狩りのこの“獲物”はそれのみ、ではありませんか。
[宥める声に答えるは、まるで道理を諭すように]
ああ、旦那様まで、
意地の悪いことを仰られて……
ですが、我らが同属は“獲物”に逃げろなどと。
[声音には冷笑の混じる]
喰らわぬのですか?
―――毒花を。
いらぬのならば、もらいますよ?
[恐らくその毒は、己が身にも効くだろう。
予感していながら、囁きは流れて]
まさに
度を越えた執着、だな。
[なるほど。
薬師の様子が
丁度部屋で話すイアンの喩えに当てはまる気がして
呟きを洩らす]
白薔薇
今宵の狩りは、薬師が勝ったのだから
あれの好きにさせて遣れば良い
……しかし、其の娘がひとり逃げるかどうか
いや、
彼女を、
いや、獲物を、
捕らえれば、いいの だろう?
[白薔薇の言葉にそう返しながら…。]
――…お兄様もそう仰っているのだから、
別の“獲物”になさい、セシル。
……逃げろ?
この宴から本当に逃げられるとでも思っているの?
逃げられなどしないわ。
そうでしょう……? お兄様。
嗚呼、けれど……
お兄様への捧げものに逃げろ、だなんて……
いけないこ、ね。
|
[ナイフを両手で握りしめながら。 近づいてくる、サイラスを見つめる。>>285]
――…、… はい。 私の、お勤めは ……
[震える瞳で、小さく頷く。]
(287) 2010/06/23(Wed) 22時頃
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長老の孫 マーゴは、びくり、として、さらに一歩、後ずさった。
2010/06/23(Wed) 22時頃
[絶望など消えたはずなのに――]
あれが良かったのです。
あの、毒が。
っふふ……宴から逃れる方法は幾つかあるぞ?
[ローズマリーに]
ひとつは、魂だけで逃げる方法
ひとつは、身代わりを置いて逃げる方法
[前者は死を意味し
後者は犠牲を意味する。
魔物狩人と名乗った男が選んだ道を思い出し、
薄く笑いながら告げた]
後は……我が眷族となる道もひとつの逃げではある、か?
二度とひとには戻れなくなるがな。
[隻眼の男のぬくもりが
失ったぬくもりを思い起こさせた。
同じようでいて違う。
違うようなのに似ている。
白薔薇の呟きにふ、と息を吐く]
それでも……
あの娘はサイラスの獲物なのよ。
|
こ……来ないで…ください――
[掠れて震える小さな声で、 近づいてくるサイラスに、言葉を投げ >>289 ナイフの切っ先を、自分の喉に向ける。]
わ、わたくしが、殺めるのは…… ――あの、おかた…だけ――…
[吸血鬼だと。殺めねばならない相手だと、分かっていた。
わかっていたからこそ。自分をだまそうと。 城主だけだと、目的をすり替えて…
目の前で紅に変わっていく瞳に、 微かに、恐怖と、哀しみの色を浮かべる。]
(292) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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――…そう、なの…?
[兄の囁きに不思議そうな聲。
けれどそうだとしたらサイモンの魂は逃げられただろうか。
それともまだ城の何処かに囚われたままなのだろうか。
あの優しい男のこと。
魂だけの存在となっても妹の事が心配で逃げずにいそう。
そんなことを思いながらも緩く首を傾げ]
如何してそんな話をするの、お兄様。
私は、逃げる為にお兄様と同じになったのでは、
ない……、でしょう……?
……そうだな
お前は望んで、私の妹となったのだから。
[無理矢理与えた真実を隠し
城主は彼女の聲に同意を向ける]
中には、そのような者もいた、と言うだけの事。
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[ナイフを持った手を掴まれて、思わず目をつぶる。>>296 しかし、それに続く言葉に、おずおずと瞼を開いた。]
…これ、は――?
[差し出された瓶と、サイラスの貌を、 不思議そうな表情で、交互に見比べる。]
(300) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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[薬の瓶を受け取って。 不意に、抱きしめられる。>>302
その力は強く、胸が潰れそうなほどに苦しく。 それが酷く―― 切なくて。]
…、――イラ、ス…さ、 ま ――
[切れ切れの息から声を絞り出し、 片手で、サイラスの頭を、そっと抱く。
からり、とナイフが床に落ちた。]
(310) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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[囁かれた言葉に、目を見開いて。>>303 自分には、そんな―― と首を僅かに横に振る。
首筋に触れる唇は冷たく、痺れるようで
胸元で潰された薔薇が、 目の眩むような香気を立てる。 ]
(311) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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私が望んだから……
お兄様が与えてくれた。
[疑う事なく記憶のない女は兄の言葉を受け入れる]
……そう。
愛しいお兄様……
如何か私を遠ざけないで……
[切なる聲が微かに紡がれる]
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[柔らかな肌に、サイラスの牙が差し込まれる。 それは、微かな痛みと――歓びを、もたらすもので…]
――…ぁ ……いけ、ま…せん ――… わたし、は…
[弱々しい否定の声は、サイラスの身を案じてのもの。 サイラスの頭と腰とに、緩く手を回しながら くらり、と膝から力が抜けて。
頽れた、サイラスの横に、膝をつく。]
(317) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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――………あ
[最後は、本当に呆気ない、呻きが一つ……。]
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……サイラス、さ…ま――
[サイラスの手からこぼれ落ちた薬瓶に手を伸ばし。 目に涙を溢れさせて、その名を呟いて。
もう一度、ナイフに手を伸ばす。]
(321) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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――……、
[眷属たる男の呻きに女の翡翠が微かに揺れた]
|
――お勤めも果たせず
あの方も、殺められず。
――あなたが、いない世界で
わたくしが、わらうなど……
[ゆらり、たちあがって。 ふたたび短剣の切っ先を喉元に当てて。]
(322) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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わたくしも、ともに―――
[サイラスへと覆い被さるように前へと倒れれば、 短剣の鋭い刃は、あっさりと喉をつらぬいて。
あかい血が、高く、吹き上がった。]
(326) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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―――……、
[無言の気配はミセリコルディアを握る]
|
[薔薇の香気が満ちる中
折り重なって倒れる二人の身体は
あかく、あかく――そまっ て い く …]
(330) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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白薔薇に求めたのは、何だったのか。
白薔薇をそれでも、護ったのはきっと…
そう、お前の望みのままに。
[甘く幾度も同じ言葉を繰り返す。
其れが真実なのだと、惑わせるために]
遠ざけることなど、あるはずもない。
……私は何時でも、お前の傍に――…
[紡ぎ終える前に混じる眷族の呻き。
城主は暫し沈黙し]
――――解せぬ、薬師
[一言、零した]
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