17 吸血鬼の城
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何もせぬうちから……随分と嫌われたものだ。
[血のにおいが己の魔力よりも勝ったのかどうか。 力の増した城主の手を跳ね除けた娘に、薄い笑みをむける]
そのロザリオの持ち主を、探しに来たのなら
[指差した先、イアンやベネットの向こうに暖炉がある。 蠢く影が片付けた屍骸はそこから続く深い穴の中へ。 錆た懐中時計はどうなっただろう、城主は其処まで気には留めず]
あそこだ。
[居場所を告げると、其のまま彼女の横を通り過ぎ やがて霧と変じて消えた**]
(178) 2010/06/22(Tue) 04時頃
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可愛いことを言う。
この狭い城のなか、離れている距離が寂しいか。
[柔かな声音で囁く]
――…私を求めるなら、名を呼ぶが良い。
何時でも傍に向かおう**
――…お兄様の姿が見えないと寂しいわ。
気配を感じてはいても触れられないのが寂しい。
[女が求めるのは確かな存在。
夢や幻で満たされる事は無く。
続く囁きに灯るのは喜び]
お兄様……。
[感謝の気持ちをのせ小さく囁いた]
[決して自分はいい人間ではない。
それでも、薬師を選んだ理由を考えた。
そう、それは、今は眩しくてみれない。
純粋な心。
だけど、それは、魔の血によって塗り潰されていく。
いや、とっくになかったのかもしれない。
毒を処方する薬師になった瞬間に。]
――…嗚呼、聞こえている
愛しい 私のローズ
[小さな囁きも、全て
霧の包む城の中ならば城主の耳に届く。
娘の慟哭を後ろに
霧が留まるのは白薔薇の香に包まれた広間]
あの蒼天は、確かに
手にして留めておきたいものだが
元は人であるからか
執着の強いことだ
[呟く二人へ向けた声音は、微かな嘲笑を含む。
姿は今だ表さぬまま、気配を暫く残していた*]
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[城主は広間の片隅に佇んでいる。 気配を薄く、霧に混ぜて]
難儀な。
[思いはすれど、想いは無い 彼等と同じ言葉を口にしたところで 心は常に冷えたまま]
(222) 2010/06/22(Tue) 14時半頃
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愛しいお兄様……。
[城主の聲に返すのは何時もと同じ言葉。
蒼空と紡がれれば思考は其方に向かう]
留めておきたい。けれど彼は逃げなかった。
[これからも逃げずにいてくれるだろうかという期待と
離れていってしまうかもしれないという不安が交錯する]
………これが、執着?
[全ては執着ゆえのことだろうか。
兄が言うならそうなのかもしれない。
女から反論の聲はあがらなかった]
[新たな眷属の立てた音が鼓膜を震わす。
す、と細まる眸は僅かに愉しげな色を湛え]
――…サイラス。
お兄様の命をしかと成し遂げて
お兄様が喜んで下さるように――…
[囀る聲には常と同じ甘い響き]
[迷いを許さないといったローズマリーの声が
嬉しげに響く。]
そう、其れは執着。
[想いの無い吸血鬼には
彼女の心情は真に理解出来るものでなく]
愛しいだろう
傍に置きたいのだろう
お前達の望むままに――愉しむといい
――さあ
本性を隠す必要は無い
曝け出し、欲望のままに踊れ。
嗚呼
けれど、サイラス
お前は暫くひとを喰らうな。
あれの血を、蒼天を一時でも味わったのだからな
[新たに迎え入れた眷属の小さな返事]
――…そう。
いいこね、サイラス。
[愉悦の滲む聲には
くすくすと愉しげな音が混じった]
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私のローズ
[呼びかけに、薄く笑みを浮かべて名を紡ぐ。 食事の後の、乱れた衣服は其のままに 姿を現し深紅の瞳で同胞を、従者を見遣り]
……逸脱したと感じれば、私が直接手を下すだけ。
[>>218一礼した黒薔薇に向けた言葉をまた 彼等にも向ける]
望むままに生きるが良い、私の薔薇達。 どの道、誰も私の元からは逃れられぬ。
(229) 2010/06/22(Tue) 15時半頃
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[心酔する城主の言葉に異論を唱えることはない。
生ずる感情の名さえ女には思い出せていないのだから]
愛しい……
[兄の言葉を繰り返せばまたツキンと痛みがはしる]
――…嗚呼。
[切ない吐息を聲にのせ女は心を揺らす]
[渇きに、また苦しそうな息遣いになった。]
――……ッ
[しかし、城主の、食らうな、の命に唇は震える。
そして、震えてなお、小さく小さく、やはり、はい、と返事をした。]
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……私のローズ、それでもお前は――
[逃れる気は無いと言うその口が ひとであった頃城主に何を言ったのか 思い出す事を止め、緩く首を振った]
湯浴みを 着替えてくる。 流石に……食事の後の姿では 客人に失礼だろうからな。
白薔薇、黒には客人の監視を任せている。 お前には其れと合わせてローズの護衛を。 万が一があれば、解っていような……?
[手放す気は無いのだ。 館に漸く咲いた薔薇]
(234) 2010/06/22(Tue) 16時頃
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[肌蹴た衣、流れる朱 まるで情事の後のような、気だるい仕草 人の目にはどう映るのか]
勿論――…お前は私の傍に。 何時でも 名を呼べば良い。
[直ぐに行くからと安堵させるように笑み 亜麻色の髪が揺れるのを見ながら その場から掻き消えた]
(243) 2010/06/22(Tue) 16時半頃
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―最上階/浴室― [私室から繋がる浴室で、バスタブの湯に浸かり 影に身を委ねている。 蠢く影は、新たな眷属の様子を伝えてくる。 彼女たちの反応、葛藤 其れでも己に従う彼の揺らぎを感じ、城主は愉しげに哂った]
そう、誰も私には逆らえぬ。 ……恐怖に怯え、平伏し 外聞も無く乞うが良い
醜い欲に塗れた人間の姿は……何より私の愉しみ
[バスルームには暫し水音と、低く甘い溜息が*響く*]
(251) 2010/06/22(Tue) 17時頃
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[一人、部屋に残り、息をつく。]
[渇きを癒したくて、水差しから水を注いで飲み干すけれど]
[もちろん、そんな渇きではないのだから、効果はない。]
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―私室― [新しい夜着に袖を通す。 闇色の生地は柔らかく血の気の無い肌を包む]
……さて、何時まで我慢が続くだろうな。 血の渇きは私ですら そう長い間抑えきれるものではない 暴走した時がまた、見物だ。
[サイラスの様子を思い、嬉しそうに微笑みを浮かべる]
私のローズを軽んじた罰、としては軽過ぎたか
[身なりを整え食事の痕跡を消すと、城内を其の足で見てまわる事にした]
(292) 2010/06/22(Tue) 20時半頃
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[扉が壊れる音。 其の城の持ち主には聞こえ]
……馬鹿なことを。 宴を利用して 私を殺めに来たのでは、無かったのか
[低く呻く声で呟くと、先の扉へと向かう事にした。 夜着の黒が霧に紛れ 次に現れるは、件の部屋――壊れた戸口の前へ]
(304) 2010/06/22(Tue) 21時半頃
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―サイラスの部屋、扉前―
[扉の前へ、出口を塞ぐ形で現れる。 部屋の中を窺うには、城主を超えねばならぬ]
……
[倒れこむセシルと、庇うサイラス 襲い掛かる槍の先を、血の色をした瞳が睨みつける。 切先をずらす為に]
(308) 2010/06/22(Tue) 21時半頃
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白薔薇……此方へ お前の身で、其処に居ては危険だ。
[背後に人が近づく気配。 面倒な、と舌打ちをひとつ。 庇われた従者へ白い手を伸ばす]
早すぎる……嗚呼、確かに私がお前と向き合うには早いが ヘクター、気が違ったか 其の薬売りはお前と共に招いた客人だろうに。
(315) 2010/06/22(Tue) 21時半頃
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私が狂わせた……そうか。
[ヘクターの返答を聞くと、城主は満足そうな笑みを浮かべる]
……宴を利用…… 我が僕となれば力など分けてやろうものを あくまで抗うなら、好きにすれば良い。 其れもまた、一つの見世物。
[招きよせたセシルを黒の夜着で包み、 ふわりと、塞いだ扉の前から黒檀の窓辺へと身を移した]
精々、試してみるといい。 人間が我等にかなうかどうか――
(324) 2010/06/22(Tue) 22時頃
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どうした、サイラス……?
[城主は薄く哂う]
力が足りぬと言うのなら
我が身に流れる純血を――ひとたび分けてやらなくも無いが。
[お前は暫くひとを喰らうな。
その禁忌が、頭の中で繰り返されている。]
――…お兄様はお優しい。
[遠く囀る聲に他意はなく
ただ女の思った儘が紡がれている]
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