17 吸血鬼の城
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ええ……、ころさない。 貴方は私と同じになるの。
[サイラスに再度囁かれる言葉は同じ響き。 鼓膜を震わす男の囀りが心地好くうっとりと目を細め]
私の力を貴方にあげる。 だから貴方の血を少しだけ私に分けて頂戴。
ねぇ……、私を愉しませて……?
[男の首筋に触れる女の唇。 その舌先がちろりと肌を擽り―― やがて女の牙が男の血の筋につぷりと埋まる。 その行為が齎すは苦痛ではなく快楽。 血を得るその牙から魔性の血を薬屋に与えてゆく]
(1) 2010/06/21(Mon) 23時頃
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[血を与えるのは女にとって初めてのこと。
兄と同じように、と。
兄の行為を思い出しながら牙を突きたてた。
サイラスの身に纏わる薬の気配を感じながら
女は血の甘さに酔う]
く……ッ
[それは、めくるめく一瞬だった。
淫らに表情を人前で緩めるなど、以前のその男には考えられぬことで……。
襲い掛かるのは、羞恥と人でなくなったという絶望。だけど、それよりも、痺れた脳髄は、]
渇いた……。
[そう、すぐに求め始めるのは、赤い、血液……。]
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[サイラスの啼き声が酷く心地好く とろりと蕩けた翡翠が僅かに潤む]
――…本当に好い声。 もっと啼かせてしまいたくなるわね。
[崩れ落ちた男の前にそっと膝を折り 紅い眸に翡翠を絡めて]
気分は如何かしら。
[甘く囁く声には敵意の欠片もなかった]
(14) 2010/06/21(Mon) 23時半頃
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――…ふ。
[目の前の男の聲に思わず笑みが漏れる]
うまくいったのは良いのだけれど
ちょっと効き過ぎてしまっているかしら。
[白薔薇へと紅い双眸が向かうのを認め
困ったように首を傾いだ]
[何年ぶりだろう、
聲が増えた]
目覚めた……か
[離れた場所の同胞に、
満足そうな声音を向ける]
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――…目の前にいる私よりも セシルを欲するなんて……悪い子ね。
[矜持が傷付けられたとでも言いたげに 力を与えた男・サイラスに向けて呟き]
無事に「済んだ」と思って良いのよね。 初めてだから如何も加減が分からないわ。
[女に疲れた素振りはない。 白薔薇に邪気なく囀り微かに微笑む]
(25) 2010/06/21(Mon) 23時半頃
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ぐぅ……
[頭に声が響くことにも慣れておらず、
また頭を振る。
そして、それが城主の声だとわかると、肩で息をしながらも、思案をし…やがて…]
――……渇く……
[搾り出すはやはり本能の呟き。]
く……くく
[加減もせずに力を注いだのだろう。
吸血の本能に襲われているらしい薬屋の聲
城主は事も無げに言ってみせる]
渇くなら、満たせばいい。
血が
欲しいのだろう?
[一時ならワインで誤魔化す事も出来るだろうが
其れを教える心算は、己には無い]
この城に招いた人間はまだ幾らも居る。
其処の従者は、お前の従者でもあるのだ
好きに使うが良い。
――………。
[ツキン、と。
また胸が痛む。
柳眉を寄せてふるりと小さく首を振るった]
――……従者、
ああ、従者ならば、
良い?
[吸血本能に理性を失っている今、
制止がなければ、手は白薔薇を摘み取ろうと動き始める。]
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[純白を纏う女はすっと立ち上がる。 血に飢えた魔性となった男からセシルへと視線を移し]
――…セシル
[いたわる声にただ胸が詰まり言葉が出ない。 一度だけ名を呼んで、次の瞬間その姿は闇に溶ける。 女の貌は靡く亜麻色に隠れその表情ははかれない]
(42) 2010/06/22(Tue) 00時頃
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――お兄様が良いと仰られるなら
私はただ、其れを受け入れるのみ。
[女は俯き小さく聲を響かせた]
サイラス。
[人であるときの名を呼び、男を止める]
……血の吸い方は、知っているか?
間違えるな
あれは、未だ殺してはならん。
[かかる城主の声には、微かに反応する。]
殺しては……いけ ない
[ぼんやりと虚ろにそれは理解しただろう。]
そう、殺すな。
……アレの血を吸っても構わぬが
殺してはならぬ。
[幾度となく我等に血を捧げてきた
白薔薇ならば構わないと城主は告げ
けれど、殺すまでは吸うなと念を押した]
――…私のローズ
お前が嫌だと言うならば
私は其れを止める事もする。
お前の望みは、何処にある?
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[此方へと伸ばされた手。 心地好い呼び声が聞こえたけれど留まる事は出来なかった。
あの場に留まってはいけないと本能が囁く]
――…嗚呼。
[これが本当に幸せ。 何処かで問う声が聞こえた。 遠い所ヘ――、そう願った女が辿りついたのは中庭。 女にとってこれが限界なのだ。 城の外を知らず出る事も叶わない。]
(55) 2010/06/22(Tue) 00時半頃
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――…お兄様。
[城主の聲に頼りない聲が返される]
私、は………
[望みを問われ心の軋む音。
聲無く頭を振りうずくまる]
私のローズ……お前は何も我慢する必要は無い。
お前の望むままに
あれはお前が作った眷族だろう?
[彼女の心の内を知ってか知らずか。
心もとない聲へ、城主は優しく語り掛ける。
まるでひとの兄妹を錯覚させるような]
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― 中庭 ―
[女は力なくその場にうずくまる。 今日の為にと選んだ純白のドレスが地につくのも厭わず 微かに肩を震わすその様は何処か頼りない]
――…私は何をしているの? 私は何を望んだの……?
[自問する女の声は苦しげで]
…………。
[声なく呼ぶ名が何であったか 誰の記憶にもとまらず霧に溶けた]
(66) 2010/06/22(Tue) 00時半頃
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[血を飲み込めば、渇きは満たされるだろう。
代わりに戻ってくるのは、
人としての理性。
眸の色は、青色に戻って……]
我慢、なんて………
[滲む聲は兄の言葉を否定出来なかった。
けれど如何して良いのか分からずに
ただ途方にくれてしまう]
お兄様……
私は此処に居ても良いのでしょうか。
[優しい兄の聲に縋るように甘く頼りない囁き。
女は居場所を無くしてしまうのが怖かった]
私のローズ
お前が此処以外に何処へ行くのだ?
[可笑しな事を言う
そんな風に笑い]
……お前は、わたしのもの。
そうだろう?
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[不意に掛けられたのは女の声>>72 近付くグロリアの気配に緩慢に顔を上げた。 翡翠の眸は潤むのみで涙は流れていない。]
――…グロリア。 貴女こそこんな所に……如何したの?
私は――…ええ、少し気分が優れなくて。
[ゆるゆると立ち上がった女は 痛む胸を庇うように両の手を其処に重ねた]
(80) 2010/06/22(Tue) 01時頃
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――…嗚呼。
そうね……、私は此処以外の場所を知らない。
お兄様の傍以外では生きられない。
[ゆるく目を伏せる。
言い聞かせるように繰り返される言葉]
私はお兄様のもの。
そうよね……、お兄様。
[聲には未だ覇気がなく頼りなさばかりが目立つ]
そうだ、
お前は私のもの。
そして
新たに生み出した眷属は、おまえのもの。
[力関係を改めて教え込むような淀みない聲
熱を帯びているのは、食事の後ならば致し方ないもの]
憂いを帯びた貌も美しいが
……お前にそのような揺らぎを与えるものは
相応の罰が必要だ。
どうしたい、私のローズ
お前の望みを言ってみろ。
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[グロリアの反応に微かに首を傾げた]
貴女こそ如何かしたの……?
[問い掛ける声は何処か心配そうな響き。 背を擦る女の手のあたたかさに思わず大粒の涙が零れた]
――…ありがとう。 貴女の御蔭で少し楽になったみたい。
[少なくともこうして案じてくれる者がいる。 そのことが嬉しくて眦の涙を指の背で拭う]
(91) 2010/06/22(Tue) 01時頃
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私はお兄様のもの。
[僅かに頷く気配が伝う]
新たな眷属は――…私の………。
[その言葉は最後まで続かずにふるふると首を振るう]
いいえ、全てはお兄様のもの。
私はお兄様が喜んで下さればそれで……
[殊勝な言葉を口にして儚い笑みを湛えた]
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……ええ。 如何してかしら、胸が苦しくて……
[この痛みの理由を女は説明できない。 宿る感情さえ女は理解など出来ていない。 柳眉を寄せるグロリアに儚く微笑み]
大丈夫、歩けるわ。 けれど……良ければ、一緒に戻って呉れる? 今は……独りになりたくないの。
[誘いにこくと頷きグロリアに手を差し伸べる]
(101) 2010/06/22(Tue) 01時半頃
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