可哀相な、可哀相なアイリス。
　でも、大丈夫よ。
　もうすぐ、全部一緒になるから。

　あなたばっかじゃなくなるけど。

[哀れむような口調で。
笑みを浮かべたまま。]

じゃあ俺がいなくなった後にまんじゅうは出来るのか。
そしたら誰が買うのだろう。
あの店と、店員たちはどんな物語の最期を紡ぐのだろう。

あの若者はギターを弾く。

あの女と知り合いで………ああ、物語が多過ぎる。

[書き切れないほど物語は溢れているのに]

何もかも足りないなぁ。

　……手。
　大事な物は掴んでいた方が良いよね。
　逃がさないように。誰かに奪われる前に。

　さいごまで、繋いでいられたら良いわよね。

[大事なら。

呟くように微笑む。]