楽しいこと、ないかなあ。
[結局私は、駅前広場のベンチに座っている。こじ開けられて目茶苦茶になった自動販売機をぼーっと眺めていた。
ここは、ずっと束縛されて生きてきた私が、唯一ちょっとだけ休憩を楽しむことができた場所だ。
塾から帰ってきてこの駅に着くと、乗るバスをひとつ遅らせて、駅前のコンビニでチョコレートを買ってここで食べる。
冬の夜は肌が切れそうなほど空気が冷たくて、酔っ払いなんかもいたりして、だけどこの場所でささやかな自由を味わうことが、私の唯一といってもいい楽しみだった。
でも、今の私は自由なのだ。あの、我慢を強いられていた頃と同じことをしたって意味がない。時間帯は違うとはいえ。
そう思うのに、何も思いつかない。
……ああ、そうか]
私、自由をもてあましてるのか。
[今までまったく手に入らなかったものが、突然ぽんと転がり込んできたから。
どう扱えばいいのか、わからないのか]
(9) 2014/01/16(Thu) 00時半頃