65 In Vitro Veritas
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―わずか前のこと― [振り返れば、幾分黒田の拗ねた顔] なら、サロメは、 生まれながらに、罪を背負っているんだね。
嫌いというよりも、可哀想だ。
[子守唄、冗談のつもりだったけれど、 手向けとなるのなら、奏でようと、 まだ誰もいないスタッフルームで一度旋律をなぞった。
―――心は既に定まっていた。 小さな計器を手に取る、記録計だろうか。 手にするに不自由はなく、金属製でそこそこ重い。 そして再び、病室に戻った時、黒田はまどろみの中にあっただろうか]
(4) 2011/10/04(Tue) 20時頃
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[>>5:8 「殺さなきゃ、生きていけないじゃない」 そう訴えた彼女に、その時は返さなかった言葉があった。 彼女の悩んだ時間も、ついた嘘も知らない] ……殺しても、生きていけるかな。 犠牲にしていたものを知ってしまって、 更に犠牲を重ねて、その上で生きていける?
知らなかったままと、変わらず。
[部屋に足を踏み入れ、そう呟ければ緩く首を振った]
きっと、そんなことは出来ないよ、 出来るというのなら――…、 その存在は裁かれて然るべきだ。
ヨーランダや、蝦江君のように。
[それは最初から、選択肢のない答え]
(5) 2011/10/04(Tue) 20時頃
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だから、おやすみ。
[乱れた黒髪を正すように一度撫でた。 それから横になる彼女の頭部を目掛けて、 手にした金属の計器を躊躇いなく振り下ろす。
鈍い音が一度。
流れる艶やかな髪が濡れていく、 寝台の枕元から、じわりと朱色が広がった。]
(6) 2011/10/04(Tue) 20時頃
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――……、
[本当にこれで、この世界から、 黒田フランシスカという存在は消えたのか。 腕力にはさして自信がなかった、 ただ痛みを与え不要に苦しめるのは望まない。
念のために、とその細い首を更に絞めた、 きっとまだこの世に繋ぎとめられていたとしても、 意識は失われていたから苦しくはなかっただろう。
褐色の皮膚に、白い指が沈む。沈み続けて。 どれほどそうしていたのか、雨宮セシルにはわからない。]
(7) 2011/10/04(Tue) 20時頃
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[聞くもののいない独語を呟き続ける]
……俺のクローンは、 俺とは別の者になろうとしている。
[それはとても不快な感覚だった、 けれど同時に“違う自分の可能性”をそこに見て、 確かに――ねたみのようなものを覚えたのだろう]
彼らなら、やり直せるかな。 歪んだ仕組みを変えられるかな。 少なくとも、俺達よりはその可能性が、あると思う。
……ああ、ごめん。 さすがにもう、大丈夫、だね。
[それからゆっくりと、その首から手を離して、 横たわる身体を美しい髪を手入れされた指先を、 整えて、その部屋を後にした*]
(9) 2011/10/04(Tue) 20時半頃
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[計器はその部屋に置きっぱなし、 ついでに病室の扉も開きっぱなしだ。 たてつけが元より悪かったせいか、 閉じなくなってしまったが、そんなことはもう気にならない。
先ほど、牧野を見かけた場所に戻ろうと思う。 尋ねてみたいことがあったのは、簡単な質問だ。 医学的にクローンとオリジナルを見分ける方法というのが、 存在するかどうか、の見解だ]
……ああ、でもその前に。
[自分のクローンに聞かねばならないだろう。 ヨーランダと蝦江のクローンを殺したのは、誰なのか。]
(10) 2011/10/04(Tue) 20時半頃
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[ゆったりとした歩みでスタッフルームの前を通れば、 “コーダ”と赤毛の姿があった。
オリジナルが死んでも、クローンは生きている。 当たり前の事実を確認する、例えば目に見えぬ繋がりなど、 ないのだろう。同じ者だけれど、別々の個体として存在する。]
オリジナルが死んだ後のクローンは、 どんな風に扱われていたのかな……?
[――ふと、零れた呟きは彼らの耳に届いただろうか*]
(11) 2011/10/04(Tue) 21時頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2011/10/04(Tue) 21時頃
奏者 セシルは、メモを貼った。
2011/10/04(Tue) 23時頃
セシルは、振り返る“コーダ”に呟きの意味は届いていただろうか
2011/10/04(Tue) 23時頃
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/* 相談せずにおんになったら、これだよ!
たいみんぐあいすぎるだろう僕ら。
(-3) 2011/10/04(Tue) 23時頃
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[>>19 引き止めるような問いかけ、 無論自分が知るわけでもないことだけれど]
君達がオリジナルのために造られた、 ……それを前提として考えれば、 余りいい結論は出そうにないな。
[単純に考えれば、 労働力として養われるだけの価値があるか。 クローンを維持するためのコストに見合った、 価値が彼らの労働にあるか、ということだ]
少なくとも、オリジナルが存在しなければ、 クローンとしての君らの価値は失われるだろう。
[こころはひどく覚めていた、 ゆっくりと静かにほつれていくように、 その分思考だけに純化していくようなそんな気分だ]
(22) 2011/10/04(Tue) 23時半頃
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―――だから、 君たちがオリジナルになってしまえばいい。
[視線を向けるのは、赤毛にたいしてた。 そして蝦江と黒田、2人のクローンの姿も視界に探す]
(23) 2011/10/04(Tue) 23時半頃
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そのままでは、 認められはしないだろう、当然のことだ。
オリジナルになる気があるなら、 考えはあるけれど、その前にひとつ、聞きたい。
[次いで向ける問いは“コーダ”に対してだ。]
蝦江くんとヨーランダを殺したのは、誰だ?
[強い怒りを抱く者、 それは目の前の“コーダ”と同じ、 オリジナルの為にあること、それ以外に、 自己の存在意義を見出した者なのだろうか]
(29) 2011/10/04(Tue) 23時半頃
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[>>32 その名前を聞けば、 確かに姿を余り見てないな、とそう思う。]
彼は、オリジナルを殺して、 ここから出られたとして、
そこから先のことは、何か考えているのか?
[向ける問いの言葉は、 感情の抜け落ちたように色がない]
……彼だけじゃないな、君もだ。
[まだ転送装置は動かないのか、動かないのだろう。 そしてそれが動いた結果、彼らの行く場所がどこになるか。 考えているのだろうか、と]
(35) 2011/10/05(Wed) 00時半頃
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[沈黙に小さく息を吐いた。 カウンターの上に手をつく、ヴァイオリンケースはそこに]
――非常用転移装置は、 恐らくは医師や看護士や……つまり、 オリジナルを逃がすためのものだろう。 あれはソリテスに繋がっているはず。
服を……交換した方がいいかもしれない。
それで向こうについたら「何も覚えていない」って、 記憶喪失のフリでもしてればいいんじゃないか。
[記憶喪失、という言葉が通じなければ、 覚えている全てを忘れてしまうこと、と説明するが]
(42) 2011/10/05(Wed) 01時頃
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オリジナルと入れ替わるんだ。
[ゆっくりと、目を向ける。 すがるもののないまま、壁にもたれる赤毛の姿。 眼球を差し出すほど、岩瀬という存在に寄っていた 彼にそれが出来るかは、わからない]
もう壊れてしまった岩瀬の代わりに、 君が岩瀬になる、そういうことだよ。
[転送事故に巻き込まれ記憶喪失になった野球選手、 舞台女優に――ヴァイオリン奏者も加わる可能性があるか。 どこまで物語に真実味をもてるか。
偽りを通すことが出来ないのなら、 追われるリスクを負ったままでも、 逃げて行方を眩ませたほうがよいのだろうけれど]
(43) 2011/10/05(Wed) 01時半頃
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[雨宮セシルはゆっくりとほつれ始めている。 怒りに任せてオリジナルを殺そうとする、 そんなテロリストを、ソリテスに解き放つ。
想像すればひどく心がおだやかになる。
これは、犠牲の、喪失の、罪悪の、 省みられないものの、切り捨てられたものの、復讐なのだと。
崇高な気持ちにさえ、なる。 美しいハルモニアの重なる音が聴こえるようで――目を閉じる]
(45) 2011/10/05(Wed) 01時半頃
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[“自分”を俺と言いなおした>>44 姿を見やる。 ゆるく首を傾げた、小さく笑みを湛えて]
どうかな? 過酷な体験で面相が変わるって言うのも、 よくあることみたいだから――、
無理とまでは思わない。 やってみる価値はあるんじゃないかな?
[他人事めいてそう口にする]
(46) 2011/10/05(Wed) 01時半頃
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そしたら君は、 “クローン”という存在のまま、 雨宮セシルの代替品のままだよ?
元の生活に、戻りたいの?
[囁く言葉の意味は、 雨宮セシルを殺せというに等しく。 けれど声音は酷く穏やかなままだ]
(*1) 2011/10/05(Wed) 01時半頃
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――君は君だといいながら、 岩瀬のために壊れようとしたじゃないか。 そして岩瀬と共に、壊れるのか?
なら、君は君自身とはいえないと俺は思う。
オリジナルの為にしか存在できない、代替品だ。
[もしかしたら――それは、 赤毛の岩瀬へのごく単純な好意ゆえかもしれない。 けれど雨宮セシルは、そこには“彼”自身の意思がないと そのように決め付けて、場を立ち去ろうとする。
考えておくと告げる“コーダ”が、小さく耳元で囁く]
(52) 2011/10/05(Wed) 02時頃
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そう、君たちは知りすぎている。 だから、元の場所には戻れないだろう。
君の居場所は、きっとなくなる。 だから、俺の場所で君として生きればいいんじゃないのか?
会えるよ。 ニーナにも。
君の望むかたちではもちろん、ないけどね。
[耳元くすぐるようにそっと囁いて、離れる]
(*4) 2011/10/05(Wed) 02時頃
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[確認するように、 あるいは雨宮セシルに聞かせるように、 繰り返される言葉、自己を主張する言葉。
あれは別のものだ、と認めてもいいのだろう。 けれど、まだその個を示す名を音にして呼ぶことはなく]
……下へ降りる、 ついでに見てくるよ。
[転送装置については、そう告げて場を離れた*]
(54) 2011/10/05(Wed) 02時頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2011/10/05(Wed) 02時頃
奏者 セシルは、メモを貼った。
2011/10/05(Wed) 18時頃
奏者 セシルは、メモを貼った。
2011/10/05(Wed) 22時半頃
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―非常階段付近― [地に倒れ伏す牧野の亡骸の前にある。 確認するまでもなく、死んでいるのだろう、 ああ、と小さくため息を零した]
……残念だ。
[牧野の顔を覗くようにしゃがみこむ]
あなたは償うべきだった、 楽にする気など、なかったのに。 本当に、……残念だ。
[薄く笑んだ唇が、音を漏らし始める。 小さく乾いた笑いが、おかしくもないのに、零れて]
(88) 2011/10/05(Wed) 23時頃
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……ああ、
[笑いが収まれば、また思考だけが鮮明に巡り始める。 移植医である彼女の父は、娘を失ってクローンが残された、 それを知った時、どうするのだろう。]
親子の情のようなものはあるのか。 あるいはそれが娘と同じ存在であっても、 クローンはクローンとして扱うのか。
全てを知っていて尚、移植医として生きる罪深い人間は、 あるいはそれが正しいことだと、信じているのだろうか]
(90) 2011/10/05(Wed) 23時頃
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[そこまで考えて、ふと思い出す。 “彼女”はどこにいるのだろう]
……無責任だね、 君のオリジナルは罪を悔いていた、 なのにそれを贖うことなく、逃げたんだ。
[まだ動かぬ転移装置を確認した後、 上に戻ろうと歩いていればその姿は見出せるか]
リーネ。
[覚束ない足取り、何事か呟きながら歩く彼女に呼びかける]
(92) 2011/10/05(Wed) 23時頃
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[>>83「こわして」と訴えかける言葉に、 ゆるく首を振る――先ほど過ぎった問いの答えが、 無性に知りたかった。
そう望むことが、、 彼女を“彼女”として見ていないということに、 もしかしたら、気付いていたかもしれない。]
結局、牧野さんは最初から最後まで、 君から……君達から、逃げただけだ。
彼女を追うのはもうやめるんだ。
[それだけ言い残せば、彼女の願いを叶えることなく、 立ち去ることになるだろう]
(97) 2011/10/05(Wed) 23時半頃
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セシルは、聴こえた呟きに一度、振り返った。
2011/10/06(Thu) 00時頃
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[振り返る刹那、 長い前髪の隙間から頬を伝い落ちる涙を見た。
ほつれたこころに、憐れみは浮かぶ。 “彼女”は確かにクローンという存在を知る、 ひとつのきっかけであったから]
……そう。 わかったよ、ちがうんだね。
[否定はしない、ただ一つうなづきを返し、 適うなら、一度その髪を撫でただろう。 けれど、その望みを適えることはないままに、 震える声を聞いていた]
(102) 2011/10/06(Thu) 00時頃
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[――“コーダ”と蝦江のクローンと、 ふたりの間で交わされた、偽りの約束を知らない。 けれど、その彼に見える時こそ、
“自分”が終わるときなのだと、思う]
(*7) 2011/10/06(Thu) 00時頃
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[思い返している。 目の前のリーネと同じくオリジナルを失った、 岩瀬のクローンのことを。
赤毛は――きっと駄目だろうと思う。 この世界から逃がしてやったほうがいいのか、と、 そう過ぎりもする、皮肉にも自らのクローンと同じように、
けれど手を下さずとも、 彼が眠りに落ちかけていることは、知らない。]
(*8) 2011/10/06(Thu) 00時半頃
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君には仲間がいるよ。
クローンの仲間を壊されたことに憤って、 あるいは仲間を壊されないように――、って、 その為にオリジナルという敵を殺せる仲間がね。
きっと守ってくれる。
[彼女の孤独を、クローンの孤独を、 オリジナルである雨宮セシルには、 本質的には理解出来ないのだろう。
ましてや、リーネが牧野を手にかけたなどとは、 想像すら出来ないこと。
口から零れるのは、的外れな慰めだけだ。 それでも縋る言葉を受け止めて、嘆願を聞き続けていた*]
(105) 2011/10/06(Thu) 00時半頃
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