52 薔薇恋獄
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[つよく降りしきる雨。侭ならない視界。 抱きしめてくれてた蘭香のあたたかさが、日向の着物と噎せ返るような薔薇の匂いに掻き消されても、まだ。 見つめ続けた、紫の瞳。
驚いていた。当然だ。 それでも最後、稲光の瞬間に手を伸ばしてくれたのは、本当に人が良いとしか言いようが無い。
お前に、蘭香を頼まれたのに。 蘭香に、置いてかないでと願われたのに。 日向に、たいせつなことを教えて貰ったのに。
なにひとつ果たせず、逃げ出した自分に、手を伸ばしてくれるようなやつだから。 ――好きになってしまったのだろう]
(+30) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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ばかやろうって、言われるかな。 ――絶交かな。
[けれどそれも、あの瞬間まで。 日向が蛍紫に、失踪の真相を話せば、自分の挙動の意味と、謝罪の理由を察してしまうだろう。
そうなれば。
軽蔑、するだろうか。 嫌悪、するだろうか。 あるいは、呆れが憎しみに達するほど、恨まれるだろうか。
いつも、彼のほうが先に折れてくれて。 喧嘩が本気で長引いた事など無かったから。
想像も出来ない、彼の怒りに怯えることしか出来ない]
(+31) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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……っ、
[なんで、言ってしまったのだろう。 伝えなくてはならない事を、すこしでも伝えていくべきだと、分かっていたのに。
言っても、どうにもならないと。 良い結果など、あるわけが無いと、ほかならぬ自分が一番、分かっていたのに。
蘭香にも、気持ち悪いと思われたかもしれない。 大事な幼馴染を、もうひとりがそんな目で見ていたなんて。
此処が、予想通りの場なら。 早く、彼に会いたいと思った。 しあわせな所を邪魔するのは悪いけれど、早く、会って、彼の無事に安心して、謝りたい。 何もしてやれなかった全てを、許してくれないとしても、謝りたかった]
(+32) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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[けれど。
蛍紫には。
会いたくない。 会いたく、無い。
誰かと。……士朗と。 しあわせに、寄り添って。 これからを、見せつけるような、姿なんか。
見たくは、ない]
(+33) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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…… 、だから、日向。
[助けなくて、いい。 助けて貰う資格なんか、ない。
この想いはきっと、恋獄にこそ相応しい。
聲は彼女へ届かなくても、そう、願い続ける]
(+34) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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[再び、ひとを見つける為に、歩き回る、足。
ぺたり、ひたり。 ぎぃ、ぎ。 ぱた、ぱたん。
不規則に鳴る、素足が床を擦る音。 止まぬ雨のせいか、ひどく不安定に響く、その音色]
…――― 、
[ひとの声>>+28。男性の声だ。 ぎ、と音が一瞬止まり。ややあって、早まる。
そして]
(+35) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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―― 2階、階段 ――
[階下からは、くすんだ金髪より、白のシャツが視認されたか。
ふわり。
階上から見下ろすよう、俯きがちの人影から。 ひとすじの包帯が解けて、揺らめいた*]
(+36) 2011/05/21(Sat) 16時頃
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―― 1階階段 ――
[ふ、と。人影が階上の方に見えた。 居るのは暫く姿を見ていなかった誰かか、 それとも、見知らぬ何者かか。
…………
近くで見れば判るだろうその髪色は、光の加減の所為かよく判らない。 その面立ちも、はっきりと掴めないまま。 判るのは白いシャツと、揺らめく白。
……見知らぬ何者か、の方に思考が傾いた。]
(+37) 2011/05/21(Sat) 21時半頃
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若者 テッドは、メモを貼った。
2011/05/21(Sat) 21時半頃
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―― 2階、階段 ――
……せんぱ い……?
[見間違うのは難しい長身と長髪>>+37。 けれど、此処の現実味の無さが、断定を躊躇わせて。
ぼんやりした声音で、そのひとを見つめ]
(+38) 2011/05/21(Sat) 22時頃
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―大広間より―
まあ、俺たちが消えたのだって確定事項じゃねえけど、たぶん確定事項なんて、じっとしてても出てこねえだろうからな。
[だから、探す。足を止めても、解決はどこにもないと思った。 繋いだ手は頼まれても離さない。存在を確かめるように指が絡み合ったまま。]
(+39) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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[近くから探す、という蓮端に頷いて、半歩後ろに控えるように歩む。 足取り、手の引き、違和感はないか伺いながら。時折振り向く蓮端と、目が合えばどうかしたかと目線だけで聞いた。]
[異音を聞いたのは、ほぼ同時だったかもしれない。階段側、雨の音ではない不規則な音。]
……ああ。 誰か、いるな。
[上に、には同意を示して。こちらも立ち止まり、階上を伺う。]
(+40) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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[聞こえた、声は。 どちらを示したかわからないが、せんぱい、と間違いなく言った。 「この屋敷」の住人ではない、確かな証拠。]
誰だ?
[白いシャツ。白い揺らめき。 はっきりとしない呼び声だけでは後輩の誰であるか断定できずに、問いを投げた。]
(+41) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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―― 1階階段 ――
[聞き覚えのある声>>+38、のはずだった。 けれどはっきり響いてこない声だったのと、何より一度、未知との遭遇の方に思考が寄ってしまったせいで……咄嗟に誰なのか判断ができなかった。]
誰?
[恐れから、後ろの方に居る哲人と繋いでいる指に、力が籠った。 けれど、聞こえたその言葉をよく振り返ってみれば、「せんぱい」、と呼んできていた訳で……]
……君は。
(+42) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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フーマ、くん?
[少し震えてはいたが、思い当ったその人の名を呼んでみた。]
(+43) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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…… 、先輩だー!!
[哲人の声>>+41が加わって、セット認識しているふたりに、確信。 さらに名を呼ばれれば、こくっと大きく頷いて。
飛び降りんばかりの勢いで、階段をだだっと下り]
オレですよオレ、哲人せんぱいは、記憶喪失とか言わないっすよね!?
[勢いのあまり、夕輝に抱きつきかけたところで、急ブレーキ。 両手を挙げて、踏みとどまり。
ふたりへ向けて、にへっと笑った]
(+44) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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[フーマくん、と蓮端が口にするのに、よく階上を注視したなら、ほんの僅かでも陽の色をした髪が見える、だろうか。 それでも確信はなかった――のと、どういう条件で誰が、といったことに皆目見当もついていなかったから、悪い方向性の何かを危惧して、確認するように、問いを継ぐ。]
珀、なのか。
[そう言うのとどちらが早いか、階段を駆け下りる姿。 ああ、珀で間違いないのだと、苦笑する。]
(+45) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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[さっきよりもはっきり聞こえてくる声。 その声で、やっと確信が持てたところで……]
っわ、ちょっ、やっ……!
[妙に高い声が出た。 駆け寄ってくる楓馬に抱きつかれる……を越してなぎ倒される?のではないかと、一瞬仰け反ったりもした。 結局そうはならず、寸前で止まった訳だけれど。 哲人と繋いでいない方の手で、軽く胸を押さえて一息ついた。]
良かった。フーマくん、だ。
……って、どうしたの、その……恰好。怪我。
[近くで見て、シャツの染みやら包帯やらに、漸く気づいた。]
(+46) 2011/05/21(Sat) 22時半頃
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記憶喪失?
[一瞬他に誰かがそうであるのかと、険しい顔を見せた。 が、すぐに自分が珀へ、誰だと声をかけたせいなのだろうと思い至れば、軽く息をついて、]
馬鹿、あの位置からあの声だけで個人特定するの至難の業だぞ。 他に誰がいるのかもわかんねえわけだし。 こっから見えたもんなんて、その包帯とシャツくらいで――
[そこまで言ってから、包帯とシャツ、に違和感を感じた。]
……怪我、してんのか。
[そう窺う声音は、深い心配をにじませていただろう。]
(+47) 2011/05/21(Sat) 23時頃
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オレです。オレ以外の何者でもないっす。
[下ろし損ねた両手を上げたまま、苦笑する哲人>>+45に、うんうん頷き。 その言い分>>+47に、そういえばそうか、と]
オレは、先輩たちと克希が居るだろうなって、分かってたから。まあ。 ともかく、おふたりが無事なの、確認できて良かったっす。
……すみません。大丈夫です?
[一息つく夕輝>>+46に眉を下げ。 ついで、ふたりから心配げに問われれば、ゆるゆると手も下がって]
んー…… せんぱいたちが居なくなってから、色々ありまして。
[ちょっと薔薇の茂みに突っ込んだもんで、と視線をふたりから落としつつ、比較的傷の無い左頬を掻き。 困ったように、苦く薄い笑いを浮かべた]
(+48) 2011/05/21(Sat) 23時頃
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ヴェスパタインは、楓馬に心配そうに声を掛けた哲人の方を、自分でもまた心配の色の瞳で一瞥した。
2011/05/21(Sat) 23時頃
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分かってた? 何か知ってる、のか。
[今一番知りたい情報を、珀は持っているように聞こえた。 ここがどこで、どうして誰が、ここにいるのか。]
一応まあこのとおり、無事だ。 お前も怪我、ひどいみたいだけど、無事でよかった。 そんだけ走り回れるんだから、十分だろ。
[処置はされているようだから、心配して治るものでもないし、からかうように笑って安堵を見せる。 その笑みに隠して、そっと蓮端の手を自分のほうに引き寄せるのは、小さな嫉妬。]
(+49) 2011/05/21(Sat) 23時頃
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……信じてくれるか、わかん、 ……、……
[ぶんぶん、首を振った。 駄目だ。そうやって、逃げて、どうしようもない後悔を抱えたくせに。
ふるえる手を、ぐっと抑える。 今は痛むはずがないのに、じくじくと疼く胸元に、つよく押し当て]
信じて もらえるまで、話します。 聞いてくれますか?
[哲人を、まっすぐ見上げた。 からかうように笑ってみせてくれる先輩に、やっぱり気持ち悪いと思われてしまうかもしれないけれど、話そう。
そんな決意でいっぱいいっぱいだったから、さりげない手の仕草には気づいていないのだった]
(+50) 2011/05/21(Sat) 23時頃
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[楓馬>>+48の眉が下がったのが見えて、不器用にだけれど、緩く笑みを返した。]
だいじょう、ぶ。 ……ごめん、少しびっくりしただけ。
うん、おれも何とか無事。
[けれどその後の言葉に……色々ってどういうこと?と尋ねそうにもなったけれど、言う前に口を閉ざして。 その代わりにというべきか、哲人>>+49から問いかけは発せられた。 答えを聞こうと、楓馬の方を向こうとして……けれど哲人に手を引かれれば、ちょっと下を向いて。 少しだけ恥ずかしげな、でも満更でもなさそうな、そんな感じで頬を染めたりもした。]
(+51) 2011/05/21(Sat) 23時頃
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……俺が聞きたいんだし、聞く、けど。 なんで信じない前提で話してんの。
[単純な疑問。 確かに幽霊だの何だの言っていた話は信じちゃいないし、興味もないが。 こうなっては何か知っている人間の話を信じるほかないだろう、と思う。]
お前の言うことだし、信じるよ。内容によるけど、基本的には。
(+52) 2011/05/21(Sat) 23時半頃
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[下を向いたまま、だったけれど。 楓馬>>+50の言葉が聞こえれば……うん、と確かに頷いた。]
(+53) 2011/05/21(Sat) 23時半頃
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……ありがとう、ございます。
[信じない前提で。 ずきりと、その言葉が胸に刺さった。
なにも。誰も。 ちゃんと、信じていなかったのかもしれない。 だから、……。
信じると言ってくれた哲人に、ちょっとだけ困ったように、へらっと笑ってから。 傍らの、同じく頷いてくれた夕輝を見。 ひとつ、息を吸うと。
話を、始めた]
(+54) 2011/05/21(Sat) 23時半頃
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薔薇恋獄の話、覚えてますか。
[バスの中で、克希の叔父がしてくれた話。 覚えていなければ改めて話すけれど、夕輝からフォローがあったかもしれない]
あれは、ほんとうで。 あの別荘には、日向(ひなた)っていう女の子の、幽霊が居ました。
……日向は、『ひなた』と『ひゅうが』っていう、別れた存在でもあって。 や、同じなんですけどね。 それでその、ひゅうがの方が、怪談の、恋人を行方不明にしちゃう、方 なんです。
ひゅうがは、恋を失ったひとを、恋獄に閉じ込めたい。 ひなたは、オレたちを、それから助けようとしてくれてて。
[此処がどこかは分からないけれど、ヒナタが逃がしてくれた場所であるのは間違いないと思う、と推測を述べる。 それから、ヒナタがヒュウガを抑えるのにも、限界がありそうだということ。
たどたどしい説明が終われば、窺うように。ふたりを見上げた。 己が真相の半分しか聞いていないのは知らないから、それが知っていることの全てだった]
(+55) 2011/05/21(Sat) 23時半頃
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ん。
[ありがとう、と笑う珀。その笑みは、明るくはないようだったけれど、それでも笑みだった。]
(+56) 2011/05/22(Sun) 00時頃
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……正直、ぜんぜん。
[バスは一番後ろ、端の席。運転席からは無論声は届いているけれども、聞き流そうと思えば流せる距離があって。 恋獄の話は興味を惹かれる話でもなかったから、半分寝ていた。 内容を問えば、珀か蓮端からフォローされるか。 けれど、珀の話は、少しでもしっかりと理解しようと、真摯に目線を向ける。]
幽霊、ねえ。見えんのか。 あそこに、事実、いるっての。
(+57) 2011/05/22(Sun) 00時頃
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[別れた存在、でも同じ。そこには理解が及びきらなくて、珀の話を何度か止めながら、質問を挟んだ。]
恋人を行方不明にしようとしている幽霊、と、助けようとしている幽霊、が。 同じ存在?
で、あっちが恋獄で、今ここにいる俺たちは、そこから助けられた?
どうして助けられる? いやそもそも、どうしてはじめに別れた、か。
[何度か挟んだ質問に返る答えは、どうだったか。 頷き、理解、いくつかを交えながら、珀の話を噛み砕いて。 そして、限界がありそうだ、と聞けば、表情を険しくした。]
――助けられない可能性が、ある?
(+58) 2011/05/22(Sun) 00時頃
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そうび、れんごく。 ……うん、覚えてる。 跡取り息子と平凡な娘の、身分違いの恋物語。 娘がいなくなった後、その男と一家がみんな死んじゃった、って話。
[その名前を聞いて、顔を上げて。 ちら、と哲人の様子を伺いながら、その話について簡潔に触れた。
それから、楓馬が話す女の子の幽霊の話。 哲人が疑問を呈すのが聞こえれば、今は自分から質問を投げることはない。 ただ、ふたりを交互に眺めていた。]
(+59) 2011/05/22(Sun) 00時頃
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ヴェスパタインは、疑問、というか質問をするのが聞こえれば、ということだった。
2011/05/22(Sun) 00時頃
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