25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/08/02(Mon) 12時半頃
さすらい人 ヤニクは、執事見習い ロビンに話の続きを促した。
2010/08/02(Mon) 13時頃
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[宴席は邸の主が戻ってからだと聞く。 顔を出すのは自由だとは言われたものの、 花主には花主の世間体もあり、花ならば評価に関わるか。
使用人たちが噂するのは、今年の花には艶も媚びも足りぬと。]
望まねど 咲けと請われて 泣くならば 何故野辺草の ままでおらぬか
嫌なら一生、田でイナゴでも追っていればよかろうに。
[皮肉交じりにそう漏らしたのを、聞き咎めるものがあろうと今はかまわぬ。]
(570) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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[別段待ち合わせはしていないらしい。 それは解ったので、言葉にかるく、すまんと一言断りを入れてから座った]
…おまえ、幾つだ。
[それは年齢を聞く言葉だと解るだろうか。 あまりに唐突な言葉だが、それを向ける。 鉄色の視線を目の前の鈴の花からそらしたのは 蓮茶が運ばれてきたその一瞬だけだった。 侍従が勝手に気をきかせたのだとは、考えなくてもわかった]
(571) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2010/08/02(Mon) 13時頃
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そろそろ月も、満ちる頃…か。
[空染める紺紫が漆黒へと未だ変わりきらぬを、窓越しに見る。 緩く結わえたままの濡髪はいつもより深く漆黒に近い。 衣紋を抜いた白いうなじがよく映えた。]
(572) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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―食堂―
……、――
[居住まい正して向かい合えば 唐突な質問にひとつ、またたく。]
…今年19になりました。
[遅まきであろう、少年というよりは青年か。 鉄色の眸を見ながら答えた。 やはり先ほどの“見聞き能わず”は 目をあわせてこなかったと少しだけよぎった。]
(573) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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19。
[緩く足を組み、肘をつく。 茶の椀を持とうとしたら予想外に熱く薄い碗は 冷めるまでとばかり遠ざけられた。 其処に李をぶつけられた花もいたならば、同じ質問をする]
そろそろ、どうにかして売り込みたいと言う年頃だな。
[鉄色をそらさないのは、今は話す目の前の花を 対話相手としてとらえている証拠でもある]
…。 ……一つ、尋ねてみたいことがある。
[今度はちゃんと前置きを一つ置いた]
(574) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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…花にとって死んだり、老いたりすると言うのは、どんな気分なんだ?
[自分は買い手であり、買われる商品と言うのは。 どんなものなのだろうと、漠然とした疑問。 ゆっくりと瞬きを落としてから、鉄色で真っ直ぐに見やった]
(575) 2010/08/02(Mon) 13時頃
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/* パスタの辛辣さに吹く。 いい、大好き。
まあ、確かに花主なんていらねーよ!ぺっ とか言われると しょぼん。 とはなる。
なるんですよ!
割と、花と花主の力関係が均等気味でどうしたものかと。
(-123) 2010/08/02(Mon) 13時半頃
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――…。
[沈黙は肯定の答えか。 名が売れていないわけではない鵠は 未だに、ここにいる。]
…――はい。なんでしょうか。
[前置きに、鉄色を見たまま。]
――…、
[問われたことは、 1つ、根幹に関わるであろうこと。]
(576) 2010/08/02(Mon) 13時半頃
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――…花は…
[静かに口を開く。]
花は、…うつくしさと 芸と…そういったもので“愛でられる”ものです。
その 拠り所が失われる 老い は ……――避けられぬ、恐ろしいこと。 “商品価値”がなくなれば 見向きもされなくなるでしょう。 ――それでは。いなくていいのと同じだ。
[そらおそろしく胸の内に空虚を穿たれるようだ。 だから磨く。忘れられないように。]
(577) 2010/08/02(Mon) 13時半頃
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…死ぬことは。 ――或いはそういう“脅迫”じみた 時の流れから開放されることやもしれない。
[表情は変わらず 淡々と――を、努めている様子。]
若くして堕ちた、花を。知っています。 “白鳥”という。ご存知かどうかは、 …分からないのですが。
[霞月夜に焦がれた“花”だ。 己の先達、もういない花。 少しだけ遠い目をした。]
彼は笑っていた。 最後まで綺麗な――…
(578) 2010/08/02(Mon) 13時半頃
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己を買うに値する主を待っているだけでは、花はただ枯れるのみ。 …それは、どの花でも同じこと。
[無言の肯定。 其れを前に、思うことはただ口にする。 このことは、男は変える気配はなかった]
買う人間には、解らないことかもしれないが、 それでもお前達の中にはあるのだろうな。
[其の感情の名前を口にはしない。 ただ、知っている。 それが少なからずとも自尊の餓えであることは。 だからこそ、己に相応しい主を待つ花がいる。
待って、待ち続けて、その花達は、どうするのだろう。 そう、ぼんやりと考える]
(579) 2010/08/02(Mon) 14時頃
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愛でられる、と言う割には気の強い花が多く見えるが。 …ああ、今回は特に。
[花祭の経験が少ないわけではない。 勿論、気が強くとも芸が出来れば、と言う主がいる事も知っている]
…恐ろしい、か。
[ぽつりと、把握するかのように呟く。 それは少しだけ、噛みしめるような韻を持っていた。 遠ざけたワンを少し手元に引き寄せて触れてみる。 少し温度が下がったようにも思うが、まだそのまま]
(580) 2010/08/02(Mon) 14時頃
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解放?
[それは、少しだけ意外でもあった。 そんな発想は、少なくとも自分にはなかった。 ───どうであったかも、よくわからない]
…お前と同じ、名だな。
[鵠、と言う名が事実であるなら。 聞いたような気は、無きにしも、けれど自分が花というものから 遠ざかっていた時期のことかもしれない。 霞がいつ花から主になったかも記憶に定かではなかった]
(581) 2010/08/02(Mon) 14時頃
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[花咲ける時期など短いが故に、 己の選んだ手段は朽ちかけた大樹の上に芽吹き、根を生やすこと。 儚く散りゆくことよりも、己が幹を伸ばし枝を張り止まり木となろうと。
そのために足蹴にしたものも、広げた葉陰で萎れた花も、おそらくは少なくなかろう。
宴席の支度が整えられていくのを廊下からゆるりと眺めつつ、人を呼びつけて今宵咲くべき花の目録と寄越させる。 あの丸い指でよくぞという達筆な字で記されているのは、並べられる花の呼び名のみか。]
…夜、光………だと? [目に留まったその名に、灯火に映える白い肌はサッと殊更に蒼ざめた。 あの頃からは幾年月。あの笛の名手の彼であるはずもない。 そも…このような場所に来られるはずもなく…
いや、追い落としたは…、二度と吹けぬようにしたのは、紛れもなく己。
目録を下男に突っ返すと、 からり、下駄の音は幽鬼のごとくさまよう。]
(582) 2010/08/02(Mon) 14時頃
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―食堂―
……そうですね。 此度は――一風変わった者が、多いようで
[己も含めて、主たちも含めて。 なよやかなものを求める主には向いてなかろう。 ――分かっている。]
はい。
[短く肯定した。 恐ろしくないなどという誤魔化しはしない。 花が萎れるのは必然なのだから。 それを超えられるのは、幾人か。
例えばあの、霞月夜]
年長の花なればこそ 思うことかもしれませんが
(583) 2010/08/02(Mon) 14時半頃
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……無論、死は恐ろしい。
ですが…否定するものも在りましょうが。 私は、解放だと そう 感じることもある。
[もう 白鳥は 居ない。 届かないからと 死んだのだ。]
…同じ名です。 先達で、年上でありましたが 良くしていただき名を。
(584) 2010/08/02(Mon) 14時半頃
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[いつしか足が向いていたのは庭か。 庭園に流れる池にかかる小さな太鼓橋。 その朱塗りの欄干に身を預け、ぼんやりと水面を眺める。
幾度か、跳ねるこいのおと。]
(585) 2010/08/02(Mon) 14時半頃
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一癖も二癖もある。 まあ、なくて七癖を考えれば可愛いものだ。 …昔に比べて、花の意思は尊重されている。 それだけのことだろう
[昔からの言葉を思い出しながら男は小さく呟く。 自分が花を求めた時代は、今よりもずっと格差は大きく。 金は花と花主を繋ぐものとして重要なものであったし、 それゆえの力関係と言う者もはっきりと色濃く存在していた。
今は違う。育てられる花から育てる主へ。 確かに実例はないわけではないが、圧倒時に少なすぎる。
年長なれば、という言葉にすこしだけ視線は揺れた。 そう告げる言葉に想うことはあれど、今は口を引き結ぶ。 少し頭を整理するために碗へと手を伸ばす。 漸く飲める温度になったそれを口に運べば少しだけ 自邸の蓮の匂いを思い出した]
(586) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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…そうか。 名を譲ると言うのは、花にもあるのだな。
[花主の中では、世代交代や家督の移譲は良くあることだ。 それをまた花も名と言うものによって行うのだろうか。 其の事は不思議と面白いと感じた。 碗の中身を三分の一ほど残して、立ち上がる]
参考にさせてもらおう。
[助かった、と言い残して。それから一つ思い出したように]
礼に───…一つ、教えよう。
[椅子の背を押しながら男は口にする]
(587) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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[眠るは一時の事。 うつらうつらと舟をこぐ頭を緩く振り、 閉じがちな紅石榴を、細い指が擦る]
……おはよう、ロビン。
[親交深い友人の寝顔へ声をかけ、 秋色の髪をくしゃりと、一つ。
そして音もなく、窓から外へと]
(588) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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花の咲く頃合いは、花によって違う。
一年目で朝顔のようにすぐに咲く花もあれば、 二年、三年と長い時間をかけてやっと咲く花。
中には牡丹のように時間も手間暇も掛けて やっと大輪の花を咲かせるものもある。
[パチン、と音を立てたのは扇だった]
…私が昔育てた花は、手元に来た時、二十歳だった。
[そう告げて、踵を返して扉へと向かった。 其れがどういう意味を持って告げられたのかは 男は口にすることなく、鈴の花の裁量にただ任せるのだが]
(589) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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白鳥は かなしからずや…
[物思いにふけるさまは、その名の霞のとおりに淡い。 この池の畔、いつの祭りの頃だろう。 かつての笛の音と、白絹を手に舞う姿とを…
空の青にも海のあをにも染まることを由とせぬ、高潔な人を思い出す。 染まりきり穢れようとも空の月へと手を伸ばす、浅ましき己とは対照的な。
人目のある場所では取り繕う顔も、ひとり在るときは盛りを過ぎた姥桜でしかない。]
(590) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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/*
正直無茶ぶってすまなかった。 霞ならやってくれる…!
(-124) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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[夜の庭園は月が支配する世界。 ならばあの闇夜を抜き取った黒髪の、なよたけの君もいらっしゃるかと。 鳥は素足のまま、庭を翔ける。
恋の跳ねる水音に、足を止めれば。 朱塗りの欄干に、月の光を浴びる佳人の姿が見えて]
思はぬに 月が笑まひを 夢に見て されど現に まさらざりけり
(591) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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小僧 カルヴィンは、近くの枝を一つ鳴らして、囀る様に歌う。
2010/08/02(Mon) 15時頃
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―食堂―
…――そのようですね。 時代は移り変わるものだと。
[格差。花がただ商品として在ったとき。 パトロンとしての絶対的な主従関係が 強いものだったと聞く。
揺れた鉄色の視線に気づき、 紫苑はひたと彼を見つめたが続く言葉はなく。 花の香りは、変わらず漂う。]
……常に、というわけではありませんが、時折。
[――それでふと思い出す。 夜光、と名乗った彼の名は、別の花の名ではなかったかと。]
(592) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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…――参考となったのであれば、なにより。
[自身は椅子に座ったままだったので 本郷を見上げる形となる。 続く話は、花の咲く頃の物語。]
――……。
[ぱちり。言の葉の区切りに扇が鳴る。]
それは、…
[言葉を上手く探し当てられず。 扉へ向かう花主へ、 見送るように立ち上がって頭を下げる。 ――りん、と鈴が鳴った。]
(593) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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夜更けて 鳥目も月の下ならば 啼く音聞ゆは 小夜啼鳥か
[聞き覚えのあるあの声に、ふと目を上げる。 かさりと揺れた枝に、淡く微笑んだ。]
(594) 2010/08/02(Mon) 15時頃
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少しだけ、はずれ。 僕は鳥だけど、小夜啼鳥ではないんだ。
[枝の影から花のかんばせを覗かせて。 先程の憂い顔を思い出す]
なよたけの君、どうかなさったの? 月が雲間に翳っているよ。
(595) 2010/08/02(Mon) 15時半頃
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/* 逢ってない いっぱい
逢った 華月 イアン ロビン 夜光 明之進
高嶺 本郷
半分くらいか
(-125) 2010/08/02(Mon) 15時半頃
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[いつもながらあの雛鳥は、気の回る聡い子だと思う。 見目や舞楽のみが芸ではない。 教養も行儀作法も、話のやり取りすらも芸のうちだと、己の頃はきつく躾られたものだ。
詩を詠み交すことも、かつて仕えた物書きの元で覚えた。 それでもまだまだ未熟ではあると思うけれど。
声だけではなく、サラリと切り返す機転も、あの雛鳥の才覚か。]
(596) 2010/08/02(Mon) 15時半頃
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