68 Trick or Treat? ― Battle or Die ―
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―孤児院へ行く前―
[路地裏で一匹、何をしていたのだろうか、レッドキャップを見つけた。 最初の狼よりも人に近いそれに、男は逡巡を見せなかった。
一度跳躍した男はベランダの手すりに降りたった。高綱などまともに練習した記憶もないが、なんとかなる。おそらく向上しているのは身体能力もなのであろう。 手摺伝いにレッドキャップの真上へ向かい、溜めるのはほんの一瞬。]
[地面に向かって飛び降りる。 半端にあけた牙は下降の際、目測を誤って、首ではなく赤い子鬼の肘から先を貰った。
一瞬遅れて噴きこぼれる血。レッドキャップの悲鳴と罵声がその間に滲む。 咥えていたものを地面に吐き捨てて、男は眉を寄せる。 狼の喉を食い破った際に出来たペイントは、レッドキャップの血でさらに赤みを濃くした。]
(*0) 2011/10/21(Fri) 01時半頃
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悪い、間違えた。
もっと楽に殺そうと思った。 [何も気負う様子無く近づいて右手を伸ばす。警戒したレッドキャップが距離を取った。 わずか細める目に男は何を映すのか。伸ばした手は急に引っ込んで、代わりにしゃがみ込みから蹴り上げる。顎を狙った蹴りだったが、パフォーマーとして体は鍛えても格闘技はずぶの素人、狙いをわずかにそれた。 それでも怯ますのには十分だったよう。 顎を上げたレッドキャップの無防備な喉に、体勢を直した男が噛み付き食い破る。 ぶち、と何かが切れる音がして―それはきっと血管の一つだったのかもしれない―血が噴き出す。]
[噛み千切った肉を暫く咀嚼して、飲み込んだ 唇に付いた血をぬぐうよう舌を蠢かす]
なにか、足りない、よなあ お菓子は出ないし
(*1) 2011/10/21(Fri) 01時半頃
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なにが……足りない?
[赤く染まる口元は横に横に伸びて頬が裂けたよう。 クラウンメイクじみた血化粧で、男は静かに聞いてみた。 もちろんレッドキャップは答えない。 死体は答えない決まりになっている、グロテスクな世界でも]
(*2) 2011/10/21(Fri) 01時半頃
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…ん。 何かの比喩かね、「お菓子」。
なあ、お前何を持ってんの?
[そのまま少女の顔に唇を寄せて、囁く。 白い頬に飛んだ血を、ぬらりとひと舐めして、その体を床に投げた。]
探して、みちゃおかね。
[白いワンピースを、襟ぐりから裾まで縦に切り裂く。 露になったその腹――鳩尾の辺りに、ナイフを当てた。]
(*3) 2011/10/21(Fri) 06時頃
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あれ… 変わらないじゃねえか、普通の人間とよ。
[ひとしきり「探した」後、彼はぼそりと呟いた。]
なんだ、バラし損か。 …夢中になって散らかしちまったなあ。
[そう言って、辺りを見回して溜息をついてからゆっくりと立ち上がり、ベッドに腰掛けて、もはや頭部以外は殆ど原型を留めていない少女を暫くの間、愛でる。]
(*4) 2011/10/21(Fri) 06時頃
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さっきのあれ、なんだったんだろうなあ。
[彼は新しく手に入れたナイフを眺めた。 何の変哲もない、普通のナイフだ。
…ふと、思い立って。 右手をすっと、ナイフを投げる形で動かした。
――とすん。
小さな音がして、立ててあった少女の首が転がる。 その柔らかな場所に、小刀が突き刺さっていた。]
――ああ、良く解んないけどそういう事ね。
[男はニイと唇を引いて、笑った。]
(*5) 2011/10/21(Fri) 06時頃
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― 独白・どうでもいい幕間 ―
初めて殺しをやったのは、21の時だった。
俺が初めて殺した女。 あいつは娼婦だった。それなりに気に入って、何度か買った後。仕事を済ませたあいつは、俺に言った。
『――お得意様が、さあ。あんたよりよっぽど金払いのいい奴。 あたしの客にあんたが居るの知って嫌がってんだ。悪いケド、今日限りにしてくれるかい?
ていうか、さあ…。聞いたよ、あんた貴族サマなんだって?人間堕ちりゃ堕ちるもんなんだねえ。なんで良家の坊ちゃんがそんなんなっちまうのさ。
気持ち悪いんだよ、あんた。自分より弱い奴しか相手にできないんだろ。蛇みたいな目ェしやがってさ。いや、どっちかというと小っちゃい蜥蜴ちゃん、か。
ま、悪く思わないでおくれよ。――弟子が同じ女と寝てんのは気に入らないんだってさ。 あんたがクリストファーの弟子だったとはねえ…。道理で似てると思ったさ。
くく、あんたも色々仕込まれてんだろ?あの変態に、さあ。』
(*6) 2011/10/21(Fri) 06時頃
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その日の記憶は、そこで途切れている。
翌朝の新聞で、その娼婦―名はノーマ、といった―と、鍵師、もとい、便利屋の師匠が死んだことを知った。
否、理解した。 洗面台に投げ捨てられた血染めのシャツの理由を。
(*7) 2011/10/21(Fri) 06時半頃
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それから、俺は便利屋の仕事をしながら、ちょくちょく趣味で殺しをやるようになった。
元々素質はあったのだ。それが、ふとしたきっかけで解放されただけ。
「――渇く…な」
さっきのビスケットのせいだろうか、やけに喉が渇く。そういえば昨夜出会った奴の中に、俺の好みの標的が、いた。ひと目見た瞬間に、解った。こいつは俺の獲物だ。
そういう奴に出会うと背筋がぞわりとして、気分が高揚する。あいつが苦しみ泣き叫ぶさまを、見たい。許しを請う姿を、殺してくれと乞う姿を。
このわけのわからない世界で、夜に紛れる必要はないだろう。曇り空の下、獲物を求めて歩き出した。
(*8) 2011/10/21(Fri) 11時半頃
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この方は、なんだかとぉっても固そうですねぇ。 ええ、ええ 爪はすこぉし、刺さりましたが。 刺さっただけですね。
[継ぎ接ぎだらけを見下ろしながら思考する]
(*9) 2011/10/21(Fri) 13時頃
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[お菓子……お菓子の、香りがする……。
彼女を突き動かすのはその衝動。 道中のお化けは、気にも止めない。 お化け同士戦いたいなら戦っていればいいのだ。 彼女の衝動は、それ以外のものを麻痺させていた。
恐怖、疑問、躊躇。 人として欠けてはならぬ感情を。
ひときわ大きなお化けを公園に見止め、お菓子に臭いを嗅ぎつける。 あいつらを倒せば、きっとお菓子が手に入る。
でも、どうやって?
彼女は、様子を窺った]
(*10) 2011/10/21(Fri) 13時半頃
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殺したら、お菓子は―――
出てきますかねぇ?
(*11) 2011/10/21(Fri) 21時頃
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[見渡す。 建物の隙間から見えた、人の姿>>105。
道化は息を飲んだ。 演じることを忘れた男は呟く]
人、か……?
それとも、吸血鬼、みたいな……?
(*12) 2011/10/21(Fri) 23時頃
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――あれ、普通に人、だよな…
[そこにいたのは若い女。自分の他にも同じ境遇の者がいたのだろうか、と、ぼんやりと考え。]
どうせ殺すなら… 化け物より女の方が、色気があっていい、ねえ。
(*13) 2011/10/21(Fri) 23時頃
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[不自然な色のお菓子を見れば、胸が締めつけられるよう]
ああ、あれ が [小さく喉が鳴る]
ほしい
(*14) 2011/10/22(Sat) 01時頃
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奪えばいいか、
それとも殺せばいいか
[麻薬の禁断症状のように思考を圧迫する。 「お菓子を集めればいい」だとか何か、言われたことは思考の隙間に埋もれてしまった]
(*15) 2011/10/22(Sat) 01時頃
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[大げさな身振りで話す中、考える。 負傷した左手、背中、アバラ 2体と戦って無事にお菓子を奪えるか否か。
一つ瞬きをする間に出した答えに従って、道化はまだ動かないことにする]
(*16) 2011/10/22(Sat) 02時半頃
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[近くから香る甘さに、酔ったように曖昧な笑みが引き出されるが――
見える姿は三日月の笑い、気付かれることはない]
(*17) 2011/10/22(Sat) 03時頃
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あの死体、舐めとけばよかったかな。
[甘いにおいが鼻に残って、物欲しそうに死体を見やる。 けれど本当に欲しいのは違う。きっとそうだと、道化は確信している。
ほしいのは、お菓子や、それから―――……ね?]
(*18) 2011/10/22(Sat) 05時頃
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[彼女は目の前の人間を見た。 お菓子を食べた人間、その魔力に憑かれた人間]
ホウ……。 (ほう……。)
[これは、私と、一緒? これが、私……?
無意識に彼女を突き動かしていた衝動は、急に小さくなった。 自分はこんなにも、何かに侵され、うかされ、動かされていたのだろうか。 こんなにも、醜い――]
私は、気付けば、あなたに、なって、いたのね。
[心に直接語りかけることができるはずだ]
(*19) 2011/10/22(Sat) 08時頃
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――で、お姉サン。
なんでアンタ、お化けの姿してねえの?変身でもするんかい? それともあれか、何か特別なお菓子でも、落としてくれんの?
――どっちにしろ殺すんだけど、さあ。 やっぱガキより野郎より、キレイなお姉サンの方が殺し甲斐がある、ってね。
いい声で、啼いてくれよ?
[男は狂った笑みを浮かべて、ナイフを構えた。]
(*20) 2011/10/22(Sat) 08時頃
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へえ。言葉通じるのね。 さっき殺したフラスコ野郎はさっぱりだった、ぜ。 んじゃやっぱお姉サン普通のヒトなわけ?
――で、どうすんの、殺るの、殺らないの。
(*21) 2011/10/22(Sat) 08時頃
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――逃げ出す少し前
いいえ。 私は、お菓子を、食べてしまったもの。 きっと、元には、戻れないわ。
あなたは……。
ほう……。
[そして]
私は、あなたは、殺したくない。 あなたからは、美味しそうな、血の匂いがするけれど……。 人殺しは、できないわ。
(*22) 2011/10/22(Sat) 08時頃
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人殺し?
ああ、俺もなんか化け物に見えてんのかと思ってたんだが、違うんか。だったらもう、遅いんじゃねえの?
俺がさっき殺した化け物は『人間になりやがった』ぜ? 美味いお菓子をくれたけどな。
(*23) 2011/10/22(Sat) 08時頃
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ああ でもとてもうれしい!! お化け同士で戦ってくれれば、ね、素敵!
(*24) 2011/10/22(Sat) 22時半頃
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ね、ね、甘いお菓子。 持ってるんでしょうか。
[僅か細まる瞳は、けれど、花々に埋もれて外に覗くことはない]
ああ もってると、いい です ね!
(*25) 2011/10/23(Sun) 00時半頃
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