17 吸血鬼の城
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[女の――ローズマリーの言葉にも、 なんら揺れるものを見せずに白薔薇は、怯えたような気配の娘にくすくすと笑う]
なんのこと? わたしは最初からあの方のもの――あの方の薔薇。
[ふわり、漂う薔薇の香]
逃げないのですか、捕まえてしまいますよ?
[足の竦む娘にそのまま手を伸ばし、 白い手袋のその手は細い首筋を軽く握ろうと]
(188) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[遠く最上階にありながら、 届かぬはずの声を聞き、薄く囁きを零す]
優しくして欲しいのか?
――…此処に居れば、 本能に抗わずに生きてさえ居れば 私はお前を傍に置き、愛でよう。 立派な吸血鬼に育ててやろうぞ。
この闇の城で咲き誇るといい。 血縁を喰らった吸血鬼の、傍らで。
(*47) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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本屋 ベネットは、小悪党 ドナルドに話の続きを促した。
2010/06/25(Fri) 22時半頃
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―→ベネットの客室― [エントランスを抜けてベネットの客室へと向かう男は心なしか青白い顔をして。 しかしそれでも出来るだけ急ぐ。
客室の扉の前で一度息をついたのは、走ってきた鼓動を落ち着かせる為と心の準備の為。 扉を軽くノックし、返事を待たず大きく開ける。 威勢良く入ってきたのに言葉はでてこない]
…ベネット、大丈夫か。
(189) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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……っ……!?
[びくりと動きをとめて目を見開く。悔しそうな顔でぎり、と奥歯を噛み]
(190) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[セシル――白薔薇の視線が不意に外される。 魔物の視線が切れたことで僅かに圧迫感が緩み、竦んだ足に力が戻るが、今度は背中側から黒薔薇の声が聞こえて]
(逃げなきゃ……。 逃げないと、殺される。でも、どうやって?)
[躊躇う内に痩せぎすな首筋に手が伸ばされ]
いやっ!!
[人狼の牙を握り締め、白い手袋目掛けて振り下ろした]
(191) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[ふ、と首を傾ぐ。娘の後ろに近づいた気配。 その銀の枷を見て――白薔薇は、ああ、と薄笑いを浮かべた]
従者風情に、 呼び捨てにされるいわれはありませんが。
……ああ、なんといったか、そう。 私と対の名を持つ者……、邪魔をしないでいただけます?
[ゆるりと笑めば、薔薇の香気は強く。主にも似た闇の気配が、漂う]
(192) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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―最上階― [独り部屋に残る 遠く、鍵盤を弾く音がする。 窓の外には無数に並ぶ墓が見えた]
――…舞台は、動いている この度の寸劇は思いの他……予想外の出来事に見舞われたが
[終幕は迫っている。 其々の役割を担い、奔走している人々を 城主は直接己の手を下す事無く静観している]
(193) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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立派な吸血鬼……
[時間の流れも、違ってしまったのだろうか。 ミッシェルが死んで、そして自分も――その時、ベネットは]
なあ、ベネット。 俺はな、無理な話だとは思うが、もし生かし続けてもらえるんだったらな――
[そこまで言いかけた所で、再び視界がくらりと回る。 血が足りないゆえの猛烈な睡魔か――自覚した頃には、身体はシーツの中に、意識は薄闇の中に沈み込んで*]
(194) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2010/06/25(Fri) 22時半頃
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想い出になれば…… そうね、綺麗な記憶のまま…… いられれば良かったのに。
[舌先に触れるのはドナルドの鮮血。 それは甘い香りを伴い女を酔わせる酒精のよう。 甘いを感じる自らに感じるのは罪と虚しさ。 それでも女の指は名残惜しむかのように 唇に残る赤に触れた]
――…さようなら。
[背を向けた男を追う気も無く。 その背にメアリーの許へと駆けた自分の姿を重ね 最後まで見詰め続ける事は出来なかった]
(195) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[伸ばしかけた手に、小さな衝撃]
―――…ッ、
[一度手を引けば、白い手袋を切り裂いて ぱくりと割れた赤い傷跡が手の甲に――それは白を濡らし]
……ああ、あの方からいただいた血が。
[見下ろせば、ふ、と哀しげに呟く]
(196) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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[黒薔薇は、紅色の月を背にして、口角を上げた。]
くっ……… くくく……… ふ、………
[口角を上げるだけは抑えきれなかったのか、男の口がゆっくりと開いてゆく。]
ははは………!
今日ほど愉快な宵は無いよ、白薔薇……
いや――…セシル=フロレスク。
……っはっはっはっはっはっはっはっは!!!
(197) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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……やっぱり筒抜けなんですか。
[むっとした声で囁き返す]
……。
[もう人間に戻れないことは分かっている。それでも、自分はどうするべきなのか――未だに答えを出せず]
(*48) 2010/06/25(Fri) 22時半頃
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執事見習い ロビンは、腹を右手で抱え、ゲラゲラと笑っている。
2010/06/25(Fri) 22時半頃
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――…ひどく愉快だ。
嗚呼、ひどく愉快だ。
今日、はじめて、 私は君への嫉妬やわだかまりの全てから解放されたのだ!!
なあ、素晴らしい記念日だとは思わないか? ――フロレスクの名を持つ、祓魔の血を引く男よ!
(198) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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お前は私と血を分かつもの。 何処で何をしていようと……手に取るようにわかるぞ?
[其れはドナルドが扉を開くタイミングにあわせて]
――…さあ。 何も悩むことなど、無いだろう
お前は最早人にあらず。
本能のままに、貪り喰らうが良い。 ひとの情など、捨ててしまえ。
[其の後で、あの薔薇のように苦しいと泣き叫び縋り付いて来るならば、其の記憶まで喰らってやっても良い。 思えども未だ口にはせず、揺れる心情を見つめている]
(*49) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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――…貴方はあの方のもの。
[人間であった頃とは違う白薔薇の答えに 少しだけ寂しげな表情を過らせて]
薔薇は存外――… 強い花だったのね。
[ぽつり呟き指先に残る赤を味わう]
(199) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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>>189 [聞こえた友人の声に振り返る。が、同時に漂ってくる甘い甘い、本能を刺激する匂い]
……ドナルド……?
[まだ、大丈夫。我慢できなくは、無い――]
(200) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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どうした…… お前まで私の命に背くのでは、あるまいな?
其れを我が眷族に。 お前が喰らわぬなら、私が――…
[ベネットへ 追い討ちをかける聲]
(*50) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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>>194 !!
[再びベットに倒れるイアンにびくりとして、慌てて息を確かめる。大丈夫、眠っているだけのようだ……]
……何を言おうとしたんだろ。
[答えは後で良い。今は、このままの方が良い]
(201) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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[その哄笑に、己が手から視線を外し、黒薔薇をみやる。 娘の姿はすでに目に入っていないかのように、怪訝にそれを見つめて]
……どうなさったのですか。
なにがそんなにおかしいと言うのです。
[見つめる瞳には冷ややかな怒りの篭る、 しかしその呼び名を聞けば、とくり 鼓動が乱れて]
おやめなさい。
笑うのを、おやめなさい――。
[傷ついた手袋を脱ぎ捨てれば、 その手は黒薔薇の頬を打つべく宙に振り上げられ――]
(202) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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[白薔薇の手から流れる血が、少女の顔に降りかかり、 視界の端を赤く染めた]
あ、あぁ……。っ……。
[恐怖にかたかたと身体を震わせながら、よろよろと二歩三歩後ずさり、転がるように闇雲に走り出した]
(203) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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――…ちゃんと逢えたかしら。 人の逢瀬などみても詰まらないもの。
だから、確かめなどしないけれど
逢えるといい 言葉を交わせるといい
私には果たせなかった事を………
[黒薔薇の笑声を聞きながら紡がれた声は 祈りにも似た響き――**]
(204) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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―ベネットの客室― [入り口から覗けば 部屋にあるベッドには―身じろぎしないイアンの姿>>194 最悪の想像をして一歩、ふらりと部屋の中に足を踏み入れる。 ベッドの傍らには服の趣向の違う友人>>200。]
お前は、お前、だよな? 吸血鬼になっても
[まさかイアンを殺す訳―。
眉を寄せ、苦しそうに顔を歪める]
(205) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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ドナルドを、眷族に……?
[声に怯えと、恐怖の入り混じる。友人を、自分の手で吸血鬼にしろというのか。怒りがこみ上げてくる]
……嫌だ。誰が貴方なんかの言うことを聞くもんか。
(*51) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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お前がせぬのなら、私が直接手を下すまで。 彼の行く末はもう決まっている。
ならば、せめて お前の手で生かせて遣るが良いだろう。
そのために、お前に血を分け与えたのだからな?
(*52) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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>>202 [頬に手袋が当たる。 だが、男はそれを気に留めることなく――否。より深い愉悦の色に染まった笑みを浮かべた。]
教えてやろうか、「我が愛しの」白薔薇よ。
――…お前は、何もかもを恐れたんだ。
ヒト故の、「死」の恐怖を。 眷属故の、「永遠の生」がもたらす恐怖を。 そして全てを放棄し、魂を宙に浮かせたまま、お前は全てから「逃げ出した」。
惨めだな。 そして、堪らなく無様だな。
――フロレスク。
(206) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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― 御堂 ―
人は、 人であるから――
――い。
[黒いドレスの女は静かに指を止め、残響に紛れて微かに*息を吐いた。*]
(207) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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[背後に黒薔薇の哂い声が高く響いた。 白薔薇が追いかけて来るのか否か、振り返り確かめることなど出来ない]
……やだ、こわい。……こわいよ。
[恐怖から逃れようと霧の中を駆け出した。 その道はかつて、魔物狩人がまだ幼かった頃、 城を出ようと懸命に走り抜けた道であることを少女は知らない]
(208) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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[>>203無我夢中で走る子供の姿。 其れがいつかの彼の姿に重なる]
……、10年ほどあとに もう一度、我が元へ来るが良い。
熟した其の頃に、もう一度な。
[くすくすと笑いながら ネズミが一匹走り回る様にそう呟いた*]
(209) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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>>205 [苦しそうな表情にどうしたのかと一歩近づく。濃くなる甘い匂い――間違いない、どこかケガをしている。 渇きから噛み付きたくなるのを何とか我慢して]
……僕は僕、だよ。 それより、ドナルド……どこか、ケガでもしてるの……?
(210) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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――……フロレスク、
[呟けば欠けた記憶が揺れる、 祈りの血は脈動する、ふるり首をふれば 血濡れる手でこめかみを押さえて―――
ああ、けれど
そのものに反論をすべく記憶は――もはや何もない。
なにも]
(211) 2010/06/25(Fri) 23時頃
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