276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[ 向かったのは、――。 ]**
(272) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 17時頃
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[ どうしてそこに立ち寄ろうとしたのだろう。 夜の準備は終えていたのだし大人しく自室に篭っていればよかったもの。 向かった先は東屋だったのだから。
一年の頃から見つけては気に入っていた場所。 いつしか住み着くように居座っていた訳だが、 今日も後ろ髪を撫でられるように 向かった理由は正直判らなかった。
もしかしたら。 さっき見つけた一枚>>271がきっかけになったのかもしれない。 メモに記されていた几帳面な文字>>1:272 彼がどのような意味でそれを綴ったのかは 判らない。 ]
(301) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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[ それに、どのような意図を持って、 マークとオスカーの間にあんなやり取りがあったのかも、 問わなかったな、と今になって思い出す。
いつもいつも上手に隠してしまう彼の本心。 今まで自分に精一杯でよく他人のことを見ていなかったな、と。 あれだけ助けてくれた彼ではあるのだ。 思う事があったとしても、 同じように何か助けが必要なら、と。 ]
(302) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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[ それはなんだか、罪滅ぼしのような感覚ではあったし、 その二人がまさか、言葉を交えていただなんて>>285>>288 だが今回は踏み込むことはなかった。
タイミングがズレてしまったせいで、 彼らが何を思ってその話題を掘り返し 本質を貫こうとしていたのかも、 何も知らないままその扉を開いてしまった。 ]
(303) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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―東屋―
…………オスカー?
[ パッとノックもせずに開いた扉は鍵などかかっておらず>>300 座り込んで項垂れている姿がいつかの自分を彷彿させた。 思わず腰掛けたのは彼の隣に。 視線は彼の瞳を覗きながら一つ問いかけよう。 ]
…………なにかあったの? なんだかとっても、悲しそうだけど。
[ その理由は判らなかったから一度黙り込んだ。 そういえば名前を呼ぶなと言われたのに また呼んでしまったな、と遠くで考えながら。 ]*
(304) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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[ 随分と虫の居所が悪そうだ>>305 掌で隠された奥の瞳がどんな有様なのか、 ちらりと覗き込むだけでは計れない。
覚えてないよ、と突きそうな口を留めたのは、彼の態度>>306 逃げるように突き離し、中庭へと 向かおうとする姿。
目を見開いた。 だがそれは此処を出ようとする彼にではない。 さらりと細い黒髪から覗いた眸が、 揺らいで今にも零れ落ちてしまいそうだったからだ。 ]
(313) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 22時頃
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俺は何も言ってないよ、オスカー。 俺は君に会いに来たんだから。
俺が倒れてしまった後医務室に連れて来てくれたのは君だろう? だからその事のお礼を言いたかった。
[ 理由はそれだけでは無かった。 だが彼を一つ納得させるためについた。 それはもしかしたら彼がよく使う手法を 真似たようだったかもしれない。 ]
(314) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 22時頃
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[ だが、それだけなら彼は立ち去ってしまうだろう。 それは即ち今の状態の彼を放るということだ。 友人間であれど踏み込んで欲しくないことがあることは理解している。 だからある意味見送るべきなのだろうとも。
だが、放って置けなかったのだと思う。
気休めにしたって、かみさまが見ていないと言い切った彼を、 今見ないふりして見送ってしまったら もう二度と、踏み込めないような気がした。 ]
(315) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 22時頃
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ねぇ、もう一度聞くよ。 何があったの。 今にも壊れちゃいそうな君を見捨てたくなんか、ないよ。
[ 自分には言えないことなのだろうか。 とは思いながらも優等生を気取る彼が 他に打ち明けられるものがいるだろうか、 と思うと、 尚のこと放って置けず。 ]
俺は、君の助けになりたいんだ。 だから、言ってよ。 できることならなんでもするから。*
(316) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 22時頃
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[ 壊れそうだと口にする>>327 彼はここにいるはずなのに酷く頼りなかった。 その癖してその口は憎まれ口>>329を叩く。 彼の言葉に確かに遣る瀬無い気持ちは浮かび上がった。 なぜ?どうして?君がそんなことを? 戸惑いは分かりやすく眼差しに現れる。
だが、それよりも、何故。 彼は自らが悪者だと主張するのだろう。 何故彼はこんなに怒っているのだろう。
考えて、飲み込んで、黙り込んだ。 ゆらりと浮かび上がる可能性。 ]
(337) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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君は、俺に嫌われたいんだね。
[ やけに落ち着いた声色で決めつけた。 ]
ねぇ、俺が君を嫌って跳ね除けることが 君の救いになるのだとするなら、 オスカー、やっぱり君の言葉はおかしいよ。
[ 凪いだ瞳が彼を直向きに覗く。 ]
(338) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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だって、君の言葉は嘘ばっかりだ。
[ そう気付けたのはきっと、 痛いことから逃げ出すなど背中を押してくれたせんぱいのおかげで、 また、欲しいものに腕を伸ばすことを肯定してくれた、友人のおかげで、 この気持ちを教えてくれた彼のおかげだった。 ]
(339) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ だからきっと、気づいてしまったのだと思う。 矛盾だらけの言動に、隠された彼の根っこの感情。 今からきっと彼にとって優しくないことを口にする。 ]
オスカー。 欲しいと思うのは、間違い?
[ 夜とは程遠い光が差す東屋の中で、 彼に尋ねたのは、彼自身が口にしたセリフ>>1:268 ]
俺は君を助けてあげないよ。 君をこれから傷つけると思う。 それでも君に聞こう。 ねぇ、オスカー。
(340) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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君は俺が好きなんだね。*
(341) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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― ―
[ 飽きもせずに花を見に行く。 その目当てが近頃変わりつつあるのは内緒だが。 視線をちらりと映しながらも栗毛を探し、 それが見つからなければ中庭の花を見つめる辺り、 現金な性格はしていた。 ]
花は好きなんだよ。
[ ぽつりとこぼしながら視線は合わさない。 避けているつもりではないがこれくらいの距離が心地良かった。 それでも間引かれる一つ>>322に相変わらず 良い気分はしない辺り複雑だっけれど。 ]
(345) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ 今日は手折られかった一本に目を見開く。 燦々と降り注ぐ日光が照らす明るい庭園で 伏せていた眼差しが空の色を覗かせた。
差し出された手は土いじりをしていたせいか、 泥がついていたような気がしたけれど、 彼が差し出す手に迷いなく腕を伸ばした。 ]
水差しに水のあげすぎは関係ないよね。
[ ほんの少し、自信なさげに言葉にしながらも 緑色のまだ未熟な薔薇の蕾に触れよう。 口許にはやんわりと孤が描かれる。 思った以上に満足のいく表情が浮かび上がった。 ]
(346) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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あいで咲く花なんてロマンチックだな。 せんぱいがそんなこと言うなんて、ちょっと意外だったけど。
でも、そうだね。 俺が咲かせてあげる。
[ 未だ覗かぬ花弁なれど、いつか 誰もが見たことのない綺麗な花を。 彼から受け取った命に触れながら ]
綺麗な花になるように、あいすよ。
[ そっと未熟な蕾に口づけを。 薔薇の香りはどこか甘くやさしい気がした。 ]*
(347) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ その花が見事な花弁を覗かせた時。 気障ったらしいような気がしたが、 ピンク色のリボンを結んで飾ってしまった。
なんというか今からしようとしていることは、 相当小っ恥ずかしい自信があるので、 どうか笑わないでいて欲しいと願う。
向かったのは中庭の庭園。 そこに主がいない瞬間を見計らって、 足音を消してこっそりと歩み寄る。 ]
(348) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ 伸ばした指は栗毛を梳く。 いつもと同じように編むような動きで触れながらも、 今日はいつもと違う悪戯を試してみようと思う。 ]
…………怒るかな。泣かれたら流石に傷付くけど。 出来たら喜んでる顔が見たい。
[ ぶつぶつと逃げ腰な呟きを落としながらも そよぐ風を浴びながら目を細めた。 中庭の眠り姫はいなくとも、 中庭で眠る恋しい人は変わらず此処に在って。 彼に一輪の花を捧げながら 午睡から目覚める彼の一番をもらおう。 ]
(349) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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目を覚まして、マーク。
[ 祈るように屈んで。 そっと唇を奪ってしまえば彼の左薬指に キラリと光る輪っかに満足そうに 笑うのだろう。
そして彼の胸に抱かせた花はあの時、 芽吹いていなかった蕾>>329が綻んだ姿。 ]
(350) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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おはよう、俺の愛しい人。
[ どこまでも赤い薔薇の花言葉を囁きながら 君がいて、俺たちがいた薔薇の木の下の近くで。 ]
(351) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ 五月の連休が終わっても続いていく日常。 その中で確かに起きた夢のような出来事。
それらを胸に刻ませたまま、 すんっと、鼻を鳴らした。
何処かで紅茶の香り>>342が漂っているように感じられて また暫く、あの時を思い返すよう、 瞼を閉じる。 ]
(352) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ それはそう――五月、薔薇の木の下で ]*
(353) 24kisouth 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[ 嘘だ>>364 だが、これはきっと本当>>365 だから押し倒された衝撃>>366はこんなにも、 痛かったのだろうと思う。 目を見開いて眉を寄せそうになるのを 留めて代わりに口角を上げた。
痛々しい程の叫び>>367は 穏やかな朝の下、似ても似つかない程に 狂おしい程の情熱を感じた。 ]
(390) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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[ 逆上せたような顔>>368 もう何者でもない、置いてけぼりにされた 迷子の子どものような姿がそこにあった。 途切れて掠れた言葉と、はらはらと 花びらのように落ちる雫>>369 こんなに苦しめたのは紛れもなく自分の存在なのだろう。 だが、気づかねば彼はいつまでも此処に 縛り付けられてしまうような気がした。 自覚が彼にとって望まぬものであったとしても、 それでも自分を偽り傷つけ続ける姿を 他でもない俺自身が見たくなかったのだと思う。 ]
(391) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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…………ごめんね、オスカー。 君は俺を何度も救ってくれたのに、 俺は君を傷つけてばかりだ。
[ 伸ばした腕は子どものような髪を撫でたがる。 慰めでもなんでもなく本能に突き動かされた行為は、 また彼の心を傷つけてしまうかもしれない。 それでも構わないと切り出した。
(392) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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[ 終止符を打つために。 ]
(394) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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[ これもまた怒られるようなことなのかもしれない。 でもきっと気づいてしまったからあの頃には戻れない。 枯れた花が再び咲くことのないように。
二人だけの秘密の場所。 ノートの切れ端。赤いペン。 合言葉は、互いの秘密。
かけがえのない日々だった。 それに間違いは無い。 だがやがて訪れる五月に君が笑えるように 髪を梳いた手で抱き寄せ、瞼に触れる口づけを。 ]
(395) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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なかったことにはしないで。 君の心なんだから。
[ 終わらせるために覚えていろだなんて、 薄情だとは思う。 それでもいずれ彼の中で色褪せるその時まで 笑みを浮かべる姿は性悪に見えているといい。
こんなやり方しか知らなかった。 そんな言い訳も隠して。 ]
(396) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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俺を許さないでいてね、オスカー。
[ 時計の針すら届かない場所で、 せめて葉巻が燃え尽きる僅かな時間だけ、 君の傍に在れるといい。 ]**
(398) 24kisouth 2018/05/28(Mon) 00時頃
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