25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[開け放たれた窓からは庭が見下ろせる。 紗の幕がふわりと風に静かに揺れた。 見上げれば月がある]
…あれらは、何者なんだ。
[明乃進。虎鉄。 招かれざると思しき、花二輪。
後から主催が付け足しただけだと言うのなら、それで構わない。 だが、侍従たちの様子を見るに、少なくとも明乃進の存在は知らされていない。 考えを付き合わせようとしても、うまく咬み合わない]
(752) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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―花達の棟へ―
[気を利かせてくれた天満月に、浅い会釈を一つ送る。 一度振り返ってくれた紫苑色には、眼差しで判っていると返した。]
虎鉄は、相変わらず、主さん前しか舞わんのやな。
[ふと、擡げる疑問を口にしていいのか迷う。 此処に居る意味はどちらかと。 花主に連れられてきたか、それとも……。 暫く、連絡が途絶えていた為に詳しくない事情は、軽く問うには重い。]
ほな、いこか。
[結局問わぬまま、鵠を追う形で、花達の部屋がある棟へと向かう。その途中、ぼそっと思い出したように零す言の葉。]
そういや、鵠さん、指火傷しとった気ぃするけど、今晩大丈夫なんやろか。笛やったら差し支えそうやけど、舞の方なら大丈夫なんかなぁ。
[和紙の蝶は、相変わらず虎鉄の肩口を舞っている。]
(753) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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ふむ。 [困り顔の雛鳥を見下ろして。]
様々な色で飾れば華やかだというのは、些か短慮だな。 似合う色が二つあれば、それで十分に映えるというのに。
わたしは良く黒を装ったけれど、 お前なら…
そうだな、その水干の色は似合っているし、 それに若葉の翠でも添えればよく映えようて。
(754) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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仕方ない事だからね。 ……あとでちゃんと向かうよ。
[溜息。 我侭が通るはずもない立場だと言う事くらいは理解している。 それでも 己の特技は、誇大した噂の真相は 暴かれるのが恐ろしい。
セシルを見送ったあと、少年は片足を不自然に動かしながら荷物の傍へ近づいた。 窓は変わらずあけたまま。 外から幾つかの音は聞こえるけれど、耳を貸していては手が進まない。 少年の身支度はただ、常ならばものの数分で済む程度のことだった。 髪をとかし、服装の乱れを整えるだけなのだから]
(755) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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―A棟へ―
[何を思うたか、其れもいつもどおりか 華月らと歩を逢わせようとはせず先に戻った。 湯を使い身支度を整えねばならない。 花の晴れ舞台。鵠の飛び立つべき場所。
――りん。
鈴が鳴る。]
…――
[呟きが聞こえたのかどうか。 自分の指先をちらと見る。 紅く、なってはいるが――問題はなかろう。 あったとしても、出さぬのだ。]
(756) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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翠……?
[ゆるりと首を傾げば、金糸がさらさらと揺れて。 光の残滓を作る。
手持ちの衣装の中の、新緑に染めた薄物の衣を思い出し]
ありがとう、なよたけの君。 お礼に今日の宴は、 月へと捧げる歌を、鳥は歌うよ。
[ふわりと。紅石榴を細めて笑んだ]
(757) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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不便も慣れれば面白さへ変わるものです。 ……実際苦労するのは 私よりも、私に煩わせられる屋敷のものや 他の花ばかりで
[白布の奥で目を細め、快活に笑んで。 その白布が相手に焼きつくとも知らぬまま。 ……花と主、気持ちが通わねば、 その関係はお互いの親交を深めるにはむしろ枷 ……枷とも思わず利用する花、踏みにじる主が 世には多いのかもしれないが。]
……接木をし咲き誇る花もあれば 潔く散る花もある。 少しなれど惜しむ心を頂けるのはありがたいですが どちらにしても花の命は短いもの。 ――……ただ、それだけのことでございます。
[違いますか?と、やはり笑う姿は明るく。]
(758) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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[目の前の主の表情の変化は その、心の奥の思いと共に 白布で覆う青年には気付けない。]
……祭りの準備も整いつつ有ります。 散る花の舞いも良ければ御堪能ください。 無聊の慰めに少しは役に立ちます故
[賑やかになる廊下。己もそろそろ祭り装束に 身を包まねばならぬから、緩やかに はじめと同じく頭を下げて]
(759) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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――…花祭。
[花が活けられ、摘まれていく ...がこの場に喚ばれた目的は理解しているつもりではあった けれど同じく乗り気ではない 己の芸を披露することは ...にとってはとても疎ましいこと]
[しかし、]
[花主に媚びを売るつもりは毛頭ないが 花主に気に入られなければ成らない 摘まれる必要性が...にはある どうしても どうあっても]
[身支度を済ませ 真白い西洋の服に身を包んだ...は 宴の会場まで重い足を引きずった]
(760) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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小僧 カルヴィンは、ランタン職人 ヴェスパタインが微笑めば、嬉しそうに笑う。そして支度をするために与えられた部屋へと、翔けていった
2010/08/03(Tue) 00時半頃
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―祭りの前に―
[みどりの黒髪まとめた飾り紐を解けば 鈴の音絡んで豊かに流れ背を覆う。 ――りん。 鈴の音は邪を祓うというが。]
……―ー
[水は流れて肌を伝う。 紫苑の双眸は濡れた紫水晶のようでもある。 椿の花の香りが取れない。 白い掌に受け止めた水に光が踊った。]
花も、花主を 選べ か
[呟いた。]
(761) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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―A棟→本邸―
[更なる棘ある言葉にも、幸得の謝罪にも振り返らないまま廊下へと出た。先ほど一式を借りた使用人が向こうから近寄ってくる]
ええ、追い出されました。 薬箱はまだ使いそうなので、これだけ。
[笑いながら聞いてくる使用人に否定の言葉は返さない。 どんな噂が流れようと知ったことか。そう考える位には腹を立てていた。
外で笛を吹きたかったが、この時間になるとそうもいかない。 代わりに湯場へ寄って水で顔を洗った。 自室に戻ると着物も着替え、本邸へと向かう]
(762) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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……なんだ。 慣れて他の者達の苦労を楽しんでいるか。
[本気ではない戯言を、花の言葉を曲解して言い 浮かべるのは面白がる薄い笑み。 一つ知るのは目を覆うことで隠されるのは その色だけではないこと。覆われた表情からは その者の真意が全く掴めなくなる、敷居が見えた。]
潔く散るを良しと短き命の花が望んだとしても。 ――…一時でも盛りの時を長く、と。 …そう願うのが花主というものだ。
[少なくとも、先代の高嶺はそうで]
……お前の亡き主も、そう思っていたに違いない。
[それは、目の前の花を見て当代の高嶺が思ったこと。]
(763) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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――…舞には刀を使うのだったか。
[祭の準備と言われると、高嶺もまた立ち上がる。 いい加減まんまるにも顔を見せねばならぬ頃だろう。 相槌代わりに返すのは刷衛から聴いていた話で]
主を得ずに散ることを選ぶにしても、 お前は花で、花として生きることを選んだ者だ――
日焼けくらいは、気をつけろ。
[赤鼻の舞はみっともないとそう笑って。 頭を下げる姿を見下ろしてからふわりと衣を返し 高嶺は足音なく表座敷から出て行った。]
(764) 2010/08/03(Tue) 00時半頃
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―自室―
そういえば、要らぬと考えてよいか?
[台の上には刀を見遣る。先ほど優雅に庭で眠ってしまった花。 真剣は切望されていると思ったが、実際はそうでもないらしいと感じた。 使用人に訊いても、取りにきた気配はない。]
まぁいい。
[そして、まだ時間があると見て、真剣の片付けに入る。 価値のある物たちだ。考えればなぜあんなに簡単に貸すなどと言ったのか、と、苦笑いする。]
(765) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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― A棟へ ―
[去る二人へ軽く手を上げて、別れを告げる。 視界に椿の花が映れば、微かにまた世界が揺れた気がした。]
……俺の芸は、主の為にあるからな。 でも、華月の為なら考えてもいいぜ?
[ぽそ、と呟いてから、冗談めいた言葉を付け加える。 主の話題が出ると少しばかり影が差したが、行こうと促されると影を払ってあとに続いた。]
火傷…? 何かあったのか?
[ひらひらと優雅に舞う蝶と戯れながら歩き、華月へと問うた。]
(@83) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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門下生 一平太は、メモを貼った。
2010/08/03(Tue) 01時頃
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[白いシャツに、濃紺のベスト。 持ってきた荷物の中から血の色にも似たネクタイを選び、器用に締める。 眼鏡が無い所為で、己の身なりが確認出来ないけれど 至って問題ないはずだった]
……願わくば
[噂を真に受けた花主にだけは 摘まれてはならない。 もしも万が一にも、本当の自分を見つけてくれる人がいるなら―― 浮かんだ甘い考えを一笑して打ち消した。 有り得ない]
無事に、帰れますように
[だから唇からはそう願いを零した。 これから起こる惨劇は、少年の願いを引き裂くか それとも**] →花祭へ
(766) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[湯浴みを済ませ、何時ものシャツとズボンではなく、赤錆色の和服へと。薬瓶は、そのままで。]
……今日くらいはいらないでしょ。 別に、危ないところに来たわけでもないんだから。
[何時もその上に羽織っていた羽織は部屋へ置き去りに、花たちの舞台へと、祭りの始まりの部屋へと足を運ぶ]
(767) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[仕度へ行く雛鳥を見送って、 慌ただしい準備と、やがて集まってくる花主と花とを値踏みするように眺める。 見る目が自然厳しくなるのは、この世界を生き抜いて地位を掴んだ自負があるがゆえ。 その己からしてみれば、やはり当代の花たちは些か甘いとしか見えぬやも。]
(768) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[そして、高嶺との話を少し思い出す。 本当は探しているのだろう?といわれて、
否定はできないな、と思った。
しかし、実際、 花祭、とは、金で人を買う場所。
どんなに否定しようが、こんなところに来る主らは、どこかしら、みんなおかしいのだ。
ふと、そう思う。]
(769) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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…謂われずとも。
[花、は。花でしか ないのだから。 花ゆえの矜持が、ある。
ふと、唇を開いて 何事か紡ごうとしたそれは 結局飲み込まれて、音にはならなかった。]
…さて。
[藤紫の和装に白い透けるほどに繊細な 絹の大きな布を羽織る。 白鳥――鵠の名の由来のもう一つ。 縫い付けられた鈴が しゃん、と音を立てた。 翼の先に見立てた白い指先に赤。 少しだけ息を吐いた。 組紐で黒髪を束ね、相棒の竜笛を伴い、部屋を出る。
――りん。]
(770) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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……洒落込む気分では、とてもじゃないが。
[見つかって欲しくない。 見つかって欲しい。
其のよく解らない、心の狭間にある己の感情を捉えるに悩む。 窓を閉めると紗を引き合わせて、部屋を出ることにする。
本邸の大広間へと、足を進めるために]
(771) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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始末屋 ズリエルは、刀を仕舞うと自室を出た。
2010/08/03(Tue) 01時頃
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おや、これは。天満月さまのところの。 ご無沙汰しております。 [赤の映える姿にゆるりと会釈して。 昔の主に伴われ、幾度か屋敷へ出向いた事もある。
その時に顔を合わせたご子息は、兄か弟かは流石に知らぬ事。]
(772) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[湯あみをしたあと、 水干を模した純白の衣に、新緑の薄衣を天女の羽衣の様に羽織る。
細い手足には、金糸と同じ色の輪が彩りを添えて。 しゃらりしゃらりと、鈴の様に音を響かせた]
(773) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[そういえば、明の主に宛てた手紙はまだ出されてはいない。 連絡先を調べにいった者も戻らない。
少し、気になるが…。]
(774) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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ええ。ここの屋敷の主に呼出されるほどには 私も趣味が悪いもので。
[曲解される言葉。 それに遊びのように毒を織り交ぜ返す。 声の様子、相手も遊びの範疇なのだろうと 薄く笑う姿は見えねど、覆う白布越しの表情より 研ぎ澄まされた聴覚は心情を拾うか。]
……高嶺殿は高嶺殿。わが主は、わが主。 今となっては、我が主がどう考えていたか…… 真意を知ることは、叶いません。
[やんわりと、推測する言葉に否定を返す。 亡き主の意思の推定に高嶺自身の思惑。 そう言うと言うことは そうであって欲しいと思う言い手の思考 それぐらいは青年にもわかるが……気付かぬ振りをして]
刷衛殿から……聞かれましたか。
(775) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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……ええ。初日にはまにあわねど、二日目には
……そうですね、以後昼寝は木陰に致します。
[遠ざかる甘い香り。忠告には頷いて。 香りが遠ざかるまで青年は頭を下げたままだった]
(776) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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―花達の棟―
ほんまかいな? そやったら、気ぃがむいたらみせてぇな。 今、虎鉄がどんな舞するんか、興味あるで。
[思い出すのは、同じ師についていた時、垣間見た練習の風景。 それだけでも、彼の舞が、凡才の自分とは違うと判った。]
鵠さんの火傷は……。 主さんの一人に茶、頼まれたんや。 けど、あんひと、ああ見えて、そゆことは不器用やさかいに。
[何を思い出したのかくくっと喉を慣らして]
嗚呼、わての部屋ここやねん。 虎鉄はどこやろか?
[辿り着いた一室の前で足を止める。 ひらひらと舞っていた蝶は、ぽてっと虎鉄の手の内に堕ちた。]
(777) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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