249 Digital Devil Survivor
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[くつくつ、]
[彼が、彼である証拠のような喉鳴りの声もこれで暫くは聞納めかなと思うと、名残惜しいものは、ないと言えば、うん、嘘だ。
久方ぶりの記念すべき再会は、 そうして、祝すべき友人となった彼との再会は、 人にとっても短ければ僕の、そして彼らのようなものには更に、短いもので────、]
( けれど、同時に、 彼は人という存在を取り戻す権利がある。 そして、悩める子羊を助けたいと思うように、 未練を、そして決意を下した友人の力になりたい、 そう思うのは、“人として”当然の感情だろう? )
(171) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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[だから。] [その決断には、間髪を挟むことも、ない。] [その代わり、ひとつを最後に問うことにしたのだ。]
( うまく分離できれば、彼は、 消えずに済むかもしれない。
けれど、失敗どころか、 分離方法を謝れば、「どうなるか保証はない。」
そんな賭けを分かった上で、自分の興味を優先する問いを投げかけるのは、少々以上の罪に問われてもしかなかったかもしれないけれど、)
[真に悪たる悪人は、錬金術士足りえない。だから、如何しても、──その、正義の悪魔さんに聞いてみたかったのだ。]
(172) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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(答えの返事は、)
…… 良かったよ。
( ふ、 )
[酷く、安堵したかのように崩された相好は、 けれど直ぐに道化を帯びて、『知ってたけどね!』と、菫色の天秤はかくも、雨時の紫陽花色の天硝子に傘を被されたかのように見えなくなり、色彩をがらりと変えるのだ。]
[屈託なく笑う彼の隙間に 物珍しい寂寞のいろはもしも覗こうものならば、 寂しい?なんて。
にこやかを気取った揶揄もできたのだろうけれど、]
(173) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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[促すは、実に、 終わりのように静謐に。 一点で留まる黒の双眸を見つめ返す 蝋燭を吹き消したかのような哀愁は、ほんの一秒。 すぐにまた、硝子は煙に曇り始めて──。
台座に嵌められ、 タイを飾っていた手持ち最後の『赤い石』を 結び目を解くように、握って、彼のもとへ翳した。]
──── 目を瞑ってくれるかい。
(174) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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[促すは、実に、 終わりのように静謐に。 一点で留まる黒の双眸を見つめ返す 蝋燭を吹き消したかのような哀愁は、ほんの一秒。 すぐにまた、硝子は煙に曇り始めて──。
台座に嵌められ、 タイを飾っていた手持ち最後の『赤い石』を 結び目を解くように、握って、彼のもとへ翳した。]
──── 目を瞑ってくれるかい。
(所謂、 アニマとアニムスの分離のようなものだ。 結合が出来れば、原理としては解体もできる。 けれども、それをより確実にする為に──。)
(175) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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[frugativi et appellavi]
( 何某かの言葉に口を動かせば、 店内を埋め尽くすような紫光が破裂した。 )
[彼の悪魔の魂を『盗み』、ヘルメスの力を借りて『魂の導き手』として赤い石の方へと引き寄せる。上手く往けば、それと結びついて“肉体生成”が行われたかもしれないが、]
[────禁忌にも近い行いが出来るかは、次瞬。]*
(176) 雨京 2016/06/29(Wed) 23時半頃
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─ After Story ─
[あれから、歳月が、幾許か過ぎた。]
[相変わらず人間にとっては早く、 人為らざる存在にとっては、遅い。 付喪神にとっては、…さあ、どうかなあ。]
( ん? じゃあ、僕にとっては、って? そうだなあ、普通かなあ。 )
[嘗て、辿った足跡を廻るように異国の、 僕にとっては故郷の土を踏み帰ったのは、 荒れ果てた街が復興してからのことだった。]
(181) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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[最後見た、瓦礫と廃屋。 血と肉溜まりで塗れていた御渡の地はすっかり、 そう、すっかり様変わりしていたものだ。 (僕は何も変わっては、居ないのに。)]
── やあ、 10年で本当に此処まで立て直したんだ。 科学のチカラって、すごいねえ。相変わらず。
[腕を広げながらも上機嫌で、ヒュウ、っと 口笛を高鳴らせたなら静寂の湖が風に揺れた。
>>119運ばれてきたのは、小波だけではない。 何処からか、レクイエムにも似た儚い笛の音の残滓が空に融け、漣、かき消えて往く。]
(182) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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[すれ違う、月を想わせる女性は、 “あの時”よりも大人びた顔立ちをしていた。
ふと、その横にいる 満月のような金の瞳とかち合ったものだから、 10年前と変わらない微笑みを返しておこう。]
(183) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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[そのまま、通り過ぎて行き、 聳え立つ赤白の塔の袂で額に添えて仰ぎ見る。 明星は幸か不幸か、残念ながら輝いてはいない。 やや、3色目の錆色が目立つ。それだけだ。
焼け焦げた炭花もすっかり植え替えられてしまった 遊歩道を辿ってゆけば、ふと、うら若いカップルのお話が耳を過ぎて行く。]
「ねえ、こんな話知ってる? 口裂けならぬ、口裂け男。」
「──ああ、“くちさけ”だろ?」
[きゃあきゃあ騒ぐ男女、いやいや微笑ましいねえ。 何処となく、口元にガーゼを貼った彼を思い出しながらも、そのまま道は商店街を通り過ぎ、やがては大半がシャッターの閉まった繁華街へと入る。昼空には、電光形はまだ早いか。]
(184) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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[── 音匣、のあった場所の前で漸く足を止めた。]
[けれど、それも移ろいゆく陽炎のように。 玉響にも満たない時間を超えたのなら、また、ふたたび、短い距離を歩く。
すぐに最果て。 街の奥地まで辿り着いたところで、『生命の水』の看板があったところを、さっきよりも長く──、眇め、眺めてから、]
(185) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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[これまた、 かつてと変わらないロイヤルブルーを翻す。]
(そのまま、向かうさきは ────渡背の山。)*
(186) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時頃
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── 渡背山 ──
(山の神様への捧げ物は甘いもの。 特に羊羹が良いと、いつの間にか流れる噂を聞いた。)
[宵に差し掛かる頃合いか。 片手に栗羊羹の包を提げて罅割れ、朽ちの増した、 苔生す石畳の参道を登りきる。
澄んだせせらぎを頼りに境界を超えた瞬間、だ。 >>142拡がるのは、紫、紫、紫────。
あの日置き去りにしてきた摘草が殖えたかのような、 菫、紫陽花、竜胆、露草、それらが一同に月を見上げていた。]
(196) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時半頃
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( それは、彼女を甘やかす 紫の群れに呼ばれたかのように、 )
[丸めては、 金の睫毛は弱ったような、困ったかのような、 何とも言い難い八の字を描きながらも、一歩進む。
ぽっかりと空いた社跡は、すっかり花々の遺跡になっている。踏まないように難儀しながらも、土を踏む音は>>143甘薫に囲まれ、花の座に或るひとつの影のもとへと、近付いて往く。]
( その側へと近寄れば、 月から月色が、 夜色を隠す影になっただろう。 )
(197) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時半頃
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… やあ、 ── 「この間ぶり」。
元気だったかい、寂しかった? いや、それとも忘れられてないだろうな?
(僕は君を忘れないけれど、君はどうなのだろう。) (なんて、悪戯めいた喉鳴りは、くすくす、と、)
(198) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時半頃
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── 待たせたかな、と、 思うのは僕の自惚れかな。
── … 戻ってきたよ。
[がさり、と、身体を折って、腕を伸ばせば、 見下ろした彼女へと「お供え物」を渡そうか。]
(199) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時半頃
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… ただいま。
(可愛らしい、仔犬の頭を10年越しに、撫でた。)
(202) 雨京 2016/06/30(Thu) 00時半頃
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