310 【R18】拗らせ病にチョコレヱト【片恋RP】
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次にお知らせがある時は、 窓じゃなく扉からお願いしますね
[ 長い鉛筆を差し出す。 これを届けただけなら入る必要なんて無かった。 入室を許した相手も>>91理解していただろうこと。
返却は、此処にいる理由を手放すに等しい。 今は惜しくもなくそれが出来る。 ]
こんな時間に入れていただいて、ありがとうございました
[ 一礼する時には表情は元の鉄面皮、何も無ければそのまま辞すだろう。* ]
(108) ガラシア 2021/02/21(Sun) 03時頃
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─ 朧の間 ─
[ 傷ついた顔をしたように見えた気がした。>>111それは表情を変えるには至らない。 思い上がりじみた錯覚に違いないとすぐに考えたからだ。
口にしたのは冗談の続きで、自分は圷にとってただの隣人。 もしかしたら他の者達よりは話す機会が多いかもしれない、その程度の存在。
対するこちらから見る彼は、言葉選びがシニカルで、人とは違う視点から物事を見ていて、こちらの伸ばす手など容易にすり抜けてしまう。相応の年の差を感じさせられる大人の男。 もし寂しさを感じてくれても、表層に現れるような傷を付けることなんて無い筈なのだから。
大切な欠片をまた自分の物差しで歪めて測り、途絶えなかった一方的な喜びが心を落ち着つかせていく。 望む距離をどれ程危うい薄氷の上で育んできたのか>>110 相手を思って行ったつもりの踏み込みが、どれだけ足元と彼に負担を掛けていたのか。 何も知らないまま、伝えられなかった言葉など分かる筈もないまま。 彼が口を閉ざすことで訪れる沈黙を、届け物を差し出すことで容易に壊してしまう。 ]
(136) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃
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[ なぞるような撫でるような、けれど触れることはない動き。>>112 煙が流れてゆく様を彷彿とさせられた。
ただその仕草を目で追った。日常に帰還した頭が意図を問うことを選ぶ程の時間は、そこには無かった。 隣人が思っていたよりも綺麗な指をしていることに、今更気づく。 ]
いいえ。 必要があれば、何度でも呼んで下さい
[ 辿り着いた指先が迷子を掴めば、あっさりと引き抜けただろう。 この異質を終わらせることに憂いはもう、無くなっていたから。
普段相手から受け取っているような、答えにならない答え。 互いの手が握手にも似た形を作る状況では、まるで重大なことを告げたようであったが ほんの少しの踏み込みで何かを知った気になり満足した男は、先程の様子を気にしていたわけではなく。 当たり前にあると思っているこれからについて、ごく自然に口にしただけだった。 ]
(137) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃
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─ 朧の間前 ─
そちらも夜更しは程々に。 風邪は治りかけが危険ですよ……お休みなさい、また明日
[ どちらともなく向かった出口。 なんともぶっきらぼうな言葉選びの見送りだろうか。>>113
隣人がらしくあることが、何より落ち着き安心させられる。 迎えられた時よりは口数多く残していくこととなる。
冷え切ったのか、拳を形作り握りしめていた手。>>109 一度視線をそこに落としてから、背を向けた。
思いもよらなかった打ち明け話は 甘くもなく、潮風で冷えて形もない、癖がある煙の香りをしていたが。 他人への誰かの想いではない、良い贈り物だった。 ]
(138) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃
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[ 真夜中の邂逅を誰かが目撃し、今尚座り込んで待っている>>90ことに気づくには 目線は高く、視界は狭く、夜は深く、帰路は短すぎる。 そして凪いだ表層の奥で、未だ完全には冷え切らない暖かなものがあった。
大田竜海は彼女が潜む方向を見ることも無く、朧のすぐ隣、最奥の201号室へと消える。* ]
(139) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃
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─ 2月15日 ─
[ カーテンまでは閉じ忘れていた窓から、色の変わり始めた空が見える。 未だ世界は薄暗く、布団から露出した首と片腕が上がりきらない温度を感じている。
五指を折り、緩く握り込むと 指先の冷えが掌に伝わった。
規則正しい出社する会社員すらも、眠っているだろう時間帯。 バレンタインデーは終局し、新たな日が訪れた。 ]
(186) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ 不必要な早起きだというのに、妙にすっきりと目覚めている。
忌避し恐れていたあの箱は、一晩眠った後で開いてみるとただのチョコレートと造花が入っているだけだった。
一粒を口に放り込み、無言で咀嚼する。 見た目にも味にも飾り気のない、素朴な甘さ。
女性と比べると、男はあまり甘い物が得意ではないことが多い。 きっとそこまで考えたのだろう。 巡る思考はもう既に、何処までも他人事だった。
そして──── ]
(187) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ 時を止めたように数字の代わりに名を掲げる部屋の前を、通り過ぎてゆく。 足取りは時間を考え静かで、しかし重みは無かった。
全てが解決し、隣人からは吉報を受け、互いが許せる範囲で距離を少し縮めたと思っているのだから。
引き戸が受け止めた重さも、彼の悲鳴も>>148 その後のことも何もかも、認識出来ない境界の向こう側の出来事。
獣にはなれない誰かが己にばかり傷を抱えることで、大田竜海は多少の変化を経ても保たれ続けている。 盲目に、偏執的に、ただ唯一への想いを宿して。
木の板を軋ませ降りてくる妄人を、揺らぎなき美が冷ややかに迎える。 眠れない時、時間を持て余した時、密やかに会いに行くことは今までもあった。 ]
(188) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ 常の眺める距離より近く、触れるには至らない場所で 片膝をつき、絵の中の冬に佇む青年を見上げた。
いつかの舞台でもこんなことをした。 真の恩人の想いも知らず、他の女性を愛する役だった。 男は物語の終盤に彼女に跪き、愛を伝えるのだ。あの娘が見ていることも、知らないままに。
差し出すのは言葉ではなく、青。 人造の奇跡は彼にとてもよく似合っている。
そう、会いに来る次いでに思いつきを己の視界で試してみたかっただけだ。
指の先が摘む海色の花の生首は、 想い人を振り向かせることも彼の世界へとその色を届かせることも無いまま、虚しく床に落ちる。 ]
(189) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ そんな風にあっさりと手放せたのなら、楽になるだろうか。 いや、常人にとっては拗れて歪み理解の外にあるのだろうそれが、今更まともになる筈もない。
陰る想いと相反し、笑みも苦渋もこの顔には浮かばない。 当然だろう、完全を前にすれば全てが停滞する。
大田竜海は人間である。それでも──── いつか同胞と命なき作品を比べより美しいほうを選び取ったように、その目が映す世界では美が何よりも優先される。
揺らがせるものがあるとすれば、それは不定で未完結の何かだ。 自分が愛することはない、何かだ。 ]
(190) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ 陽が登り、数多の足音が外へと通り抜けて行っても 風も光も、その場所には当たらない。 誰の目にもゴミとしか見えず、やがて片付けられるだけ。
きっとそうなるだろう。 拾い上げた指は、想像の未来を否定する。
誰にも気づかれたくなどない、糾弾を受けたくなければ認められる筋合いも無い。
これは自分だけの、恋なのだから。 ]
(191) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ Werd ich zum Augenblicke sagen: Verweile doch! du bist so schön!
]
[ 声として捧げることはない、恋の賛美。 ]
(192) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ 此処にはただ一人の男と一つの作品があるばかりで、 悪魔の声も祈りも、聴こえない。いつまでも幕は降りない。
完成を良しとしながら、何処かで愛されたい想いを抱えた矛盾に気づいていながらも 悲恋の結末すら、不変の海に呑み込まれる。 ]
(193) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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[ その日以降も大田竜海は、何気ない毎日を過ごしている。
バイトに追われる合間に少しづつ、次回の公演に向けて仲間と進んでいく。 たまに商店街の片隅の店に足を運び、隣人と世間話をする。
どこまでも無表情で、平坦に。殆どの住民が思う自分の姿で 温度の無い視線を最愛に注ぐ。
変化と言えるものは、美術本の新刊が入らなくても定期的に本屋に通うようになった、それくらいだ。 ]
(194) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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あっ……
[ 小さく声を上げ、一冊を手に取るのは
取り上げられた終わりの代わりにそれを抱えて帰るのは、未だ遠い未来。* ]
(195) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃
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