202 月刊少女忍崎くん
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[踏み台にのって漸く首を曲げずに話せるくらいの、 小柄な背丈にはややも大きく見えるカメラが目に止まる。]
……それ
[視線をカメラに固定したままで、 男の手がもちあがった。 無愛想な声と共に、指が、カメラの目をさす。]
(70) 2014/11/15(Sat) 21時半頃
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………
[ゆっくりとそちらに歩み寄ると、寧ろ慌てた様子で 少女の方から駆け寄ってきた。 町を取っていた。という謝罪の言葉と同時に、 持っていたカメラがずいっと差し出される。]
…
[一回り以上は大きな手が、小柄な一年用のジャージを羽織った少女からデジタル一眼レフカメラを受け取る。]
(74) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[ひっくり返すと、小窓に先ほど彼女がとったと思しき画面が映し出されていた。
撮れていたのは、走りこんできた自分の横顔と、 空の向こうに豆粒のような黒点になった鳥の姿。]
───…
[その後ろには、朝日に照らされる町並みと 川の表面が、キラキラと映っていた。 手前の顔にピントが合わされてはいるが、 町と川幅の広さが、よくわかる。]
(75) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[──もし、この公園で写真を撮っていたなら、 鳩などの鳥が映っているかもしれない──]
(*4) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[そう思って見せてもらった写真は、 思い描いたものとは少し違っていたが、 ある意味では、想像以上だった。
手前にある顔にピントが合ってしまっているものの、 高台から撮られた風景は、 爽やかな朝の空気がよく捉えられていて、 陽に照らされる家並みの陰影も、きらめく川も、 手前に佐藤と夢子を並べるのに最適な構図のように思われた。]
(*5) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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ジェームスは、マドカの写真を暫く黙って見つめ
2014/11/15(Sat) 22時頃
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これ、
[たっぷりの間を挟んで、顔が上がる。 無愛想な顔が、正面からそこにいるカメラの持ち主を見止めた。]
もらってもいいか。
[軽く、渡されたカメラを持ち上げる。 低い声が緊張した面持ちへとむけられた。]
(76) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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写真の方だ。
(81) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[一息に生じた誤解を否定して、怯えた様子を見やる。]
…焼き増しでいいから。
[よく言えば落ち着いた、淡々とした声が話を続けた。 渡されたカメラを差し出す。]
……
[じ。と私服の上に羽織られたジャージを見て、 す……と一眼レフを返して空いた手が、 まどかの頭あたりで水平に動き高さを測っていった。]
(82) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[見やる視線はジャージの上に置かれている。 145pの高さを測り終えて、 ジョギングウェア姿の忍崎は頷いた。]
人楼高校の、鷹野だろう?
[── 美術の選択で一緒の。と、 添えて頭のつむじをみて、 うん。と改めて確認したように、 長身の同学年生は、少女の名前を口にした。]
(83) 2014/11/15(Sat) 22時頃
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[カメラを返した少女が叫ぶ。]
……身長?
[──と、ジャージで覚えていたのだが、 カメラを使うのだとは知らなかった。
見下ろしたままでいれば、ほとんどはじめて、 小さい鷹野の顔を、正面から見ることになった。]
(92) 2014/11/15(Sat) 22時半頃
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[美術の授業で、写真を模写していたな。ぐらいの認識はあったものの、顔をはっきりと見た記憶はない。
だから認識は、ジャージ姿とよく見えるつむじと、 作品の下に貼られた「鷹野まどか」という名前だった。]
(意外と目がでかいな)
[上から見るとあまり見えない部分をまじまじと見返しながら、 たどたどしい名前に、ああ。と声を返した。
──どうやら、相手からも認識はされていたらしい。]
(93) 2014/11/15(Sat) 22時半頃
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[焼き増しするから!>>91と、意気込む様子に、 ありがたい。と、礼を添える。]
わかった。 教室にいけばいいか?
[人楼高校の選択授業は数クラス合同だ。 鷹野は何組だっただろうか。そんなことを思いながら、 また今度。とそういうのに頷いた。]
(94) 2014/11/15(Sat) 22時半頃
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──ああ。じゃあ、また学校で。
[それが、初めて鷹野と交わした会話だった*。]
(95) 2014/11/15(Sat) 22時半頃
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─ 人楼高校、写真部展示室 ─
[展示室に飾られた通学路の急坂は、 初めて鷹野と話した公園にも続く道だ。
ああ。そういえば、そんなこともあったな。と、 ふと、初めて話したときのことが思い出された。
あのときは徹夜明けで、 ネームが終わっていざ下書きを。と 思えば鳩の丁度いい資料がなく、 鳥を追いかけ、上を見上げながら走る──という不自然な苦しい姿勢での行動を強いられていたのだった。
おかげで軽く首を痛め、 暫く湿布が手放せない生活だった。]
(133) 2014/11/16(Sun) 00時半頃
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ジェームスは、──は。と、そこで何かに気づいたように動きを止めた。
2014/11/16(Sun) 00時半頃
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[昇る坂道を移した写真の前、 サァァ…… と 光のように理解が降りた。]
( そ う か ……!)
[よく考えればわかることだった。 出会いのときにヒントはあったのだから。]
(ああ……そうだったのか……)
[かわいそうだ。と栗栖が言った訳も、小柄な体格が良い。と言ったら何故かゆすられた理由にも、全て納得がいった気がした。]
(134) 2014/11/16(Sun) 00時半頃
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ジェームスは、── よし。と、心ひそかにひとつのことを決めた。
2014/11/16(Sun) 00時半頃
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─人楼高校、写真部展示教室─
[後ろから掛かる声に、ん。と背後を振りかえる。>>136 たどたどしかった呼びかけは、今では随分耳慣れたと思う。]
ああ。わかった。
[その場で頷いてから小さく首を振る。 気にしないでいい。と下がる眉に手をふった。鷹野も四六時中大男と一緒では息も詰まるだろう。整理についていって何ができるわけでもない。]
(148) 2014/11/16(Sun) 01時頃
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[とまれ、一時別行動の提案に頷いて、 念押しに、少し表情を和めた。初めて話したときの、怯えていた顔を先ほど少し、思い出したせいかもしれない。]
わかった。何か手伝いが欲しかったら そっちからもメールしてくれ。
[荷物運びなんかの用事があれば、 手伝うこともできる。 強い念おしに、もう一度頷く。]
(149) 2014/11/16(Sun) 01時頃
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[じゃあ行ってくるね!という鷹野に 軽く手を振って背を見送る。]
じゃあ、あとでまた。
[口にした台詞は、公園で出会ったときのものと、 少しばかり似たものになった*。]
(150) 2014/11/16(Sun) 01時頃
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──人楼高校、校内──
[鷹野と分かれて写真部展示室を出て後。 忍崎はパンフレットを凝視しながら校内をひとりで歩いていた。
校庭は先ほど大まかには見回り終わり、 回っていないのは校内のイベントが主にである。]
(……とりあえず文芸部にもよって…… 新聞部の方も見ていくか)
[パンフとにらめっこをしながら、 回るルートを確認する。]
(163) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[ホラー映画上映会の様子からして、(実際は、気絶までするほどこわがる氷見山のお手柄のようなものだったが)おばけ屋敷に鷹野を連れて行っても問題はないだろうが、怖い。とは言っていたし、ひとりで回るのもなしではない。》
(できれば、誰か捕まえたいが)
[怖がるヒロイン役とそれを安心させる ヒーロー役が欲しいところだった。
──既に、花園と氷見山がある意味その形式に嵌っているとは知らず、思案する。
展示物の方はたしか新聞部も、笠原から聞いたところによれば、二階渡り廊下でバックナンバーの展示や人気記事投票をやっていたはずだった>>1:35。]
(164) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[展示教室近辺を歩きながら、窓の外をみると校庭が見えた。 屋台の下に、トラックがすこしだけ顔を覗かせていた。]
───。
[新聞部に文芸部に、陸上。 思い返して少し歩く速度を緩めた。
そのみっつが繋がる線を、 自分は知っている。]
(165) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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──回想、忍崎の自宅──
[忍崎が初めてその冊子のことを知ったのは、 氷見山と二人で作業をこなしているときのことだった。]
? 寄稿者がたりないんですか?
[あちこちの部活で助っ人をしている氷見山は、顔が広い。かつ、どことなくものを頼みやすい空気が漂っているためだろう。 時折文系部から悩み事が持ち込まれることがあるようだった。]
(*7) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[文化祭の定期発行日>>+10がくるというのに、 どうやら完成見込みの作品が少ないらしい。
「どうにかならないかな…!」と文芸部部長の悩みを聞いて、 どうにかならないかな。と、当時二年の氷見山から、 原稿作業中に話を聞いたのが最初だった。]
……そうですね……
形式にこだわらないなら、 穴埋めくらいは手伝えますけど
[小説。というよりはキャラクタに喋らせる台本形式に近くなるが、それでもよければ手伝いましょうか。と、氷見山の手伝いもあり、 〆切りより大分手前で完成した原稿を整えながら提案をしたのも やはり、ほぼ一年程前のことになる。]
(*8) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[なお、そのときに「江入 ひみこ」のP.Nで (名前は氷見山と相談して決めた) 寄稿した読みきりの作品は、当時から月刊マーマレード連載中の 「恋バナっ!」の雰囲気とよく似た内容であり、 そこから笠原が目ざとく忍崎の正体をかぎつけ、 笑顔で取材にやってくることにもなったりしたのだが、 それはまた別の話である。]
(*9) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[──ともあれ、そんな氷見山を介した縁で、 忍崎は文芸部と繋がりを持つようになり、 不定期発行される『珠玉』の入手も随分と楽になった。
そして四月になり、新入生が入ってからは 文芸部にヘルプを頼まれることはなくなっていた。]
へえ。文芸部にいい新入が入ったんですね?
["早乙女スピカ"。
その名前を知ったのは、氷見山との作業中、各部活に入った(漫画的な意味で)注目できる新人の話を聞いていた中でのことだ。]
(*10) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[ぱら。と作品を読むと、そこには誰にも読みやすいように配慮された童話がつづられていた>>+8。
情感豊かに息づく世界の中で、 登場人物たちは、 生き生きとした表情をみせる。
不可思議の中にも切なさと温かみが同居した 星を集めるこどもたちの話。]
(*11) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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[スピカの名前に似合う作品を読み終え氷見山へと顔を向ける。 走りきった後のような、爽快感のあるいい読後感だった。]
どんな子なんですか?
[こんなに爽やかで素敵な話をかける人物なら、漫画のネタになるかもしれない。──そう思い正体を聞いてしまったのが、正解だったのか間違いだったのかは、今でも、よくわからない*。]
(*12) 2014/11/16(Sun) 15時頃
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…………
(166) 2014/11/16(Sun) 15時半頃
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ジェームスは、遠い目で窓の外に広がる青い空を見た。
2014/11/16(Sun) 15時半頃
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(いや、だって まさか
あの話の作者が あんなだとは思わないだろう……!)
(*13) 2014/11/16(Sun) 15時半頃
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[氷見山から"早乙女スピカ"の正体を聞く少し前に、 ススムから"新聞部の新入部員"のストーカー 基い 強烈な取材については話を聞いていた。
聞いていてしまった。
それゆえ、激しく衝撃を受け、「ェ"っ」 と、 濁った声で驚いてしまいはしたが、作品に罪はない。
作品に罪はない。連載を持つ際に編集部から、
「やはり先入観をもたれないように、 男だとはバレないようなP.Nで──」
と言われたことが妙にはっきりと思い出されてはしまったが、 作品がすばらしかったことに代わりはない。]
(*14) 2014/11/16(Sun) 15時半頃
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