276 ─五月、薔薇の木の下で。
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…………、
[何故そんなにも穏やかな顔をするのか。 俺には出来なかったことだ、理解が難しいものだ 俺と彼には、重ならない部分もある。
暫くの間じっと寝顔を眺めていた 思っていた以上に眠りを赦した。]
(0) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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ねえ、モリス。 そろそろシャワーを浴びて、部屋に……
[声は小さくなかったし、揺さぶる動きにも躊躇いはない。 甘やかしい関係ではなくとも、最後まで見送るつもりはある。 これからどう接していけばいいのか 考えるのはベッドで眠り、朝が来たあとのこと。]
(1) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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……モリス?
[ 朝は──……本当に、来るのかな ]
(2) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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[蒼白な顔で肩を貸すように彼をソファーから離し 廊下に出れば、医務室を目指して歩き出す。
モリスの姿は整えられている一方の自分は 汚れたジャケットとネクタイをソファーの裏に押し退け シャツの前も半分程しか閉まらない姿 ──晒した首元の傷のような赤い花を、本人も知らない。
意識のない同年代を支える足取りは鈍い 誰かに目撃されても、おかしくない むしろこんな状況では会いたいとすら思っていた。]
(3) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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── 医務室 ──
[誰かに会っても、ひとりのままでも辿り着いた先 寝台に横たわる黒髪に、何度も何度も呼びかけ ついに諦め傍らで項垂れる。 モリスまでもがおかしい世界に呑み込まれた 絵画のように止まった空間の一部になってしまった。]
……やっぱり、君も
(4) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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────……君も俺をひとりにするんじゃないか。
[棘のある恨み言を呟く 彼が与えたものが俺にそうさせた。 この声が違う形として発されたと、気づかない。]
(*0) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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[ 清いふりをする水面の下の汚泥
暴かれ掬われたそれは、水を穢し染めてゆくのだ。 ]*
(5) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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[薔薇の花なんて大嫌いだ。 何もせず佇むだけでいつまでも美しくいられる。 俺の欲しいものを、掴んで離さない。
いつもいつも、心の奥で嫉妬し続けていた。
俺は花になんてなれない。 踏み躙られ、嘲笑の中何もできず汚され 見限られて引き抜かれるのが似合う雑草。]*
(*1) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[君が俺を受け入れて手を伸ばさなければ こんな気持ちにならなかっただろう。
作品を貰うより、隣にいてくれるほうが好き。 ……欲望を受け入れられるより、隣に、
分からないなりに何かが変わったことを感じる どうしてこんな俺を置いていくのか、と。
まるで子供のようだった。]
(*2) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[地上で虚しく跳ねる魚は
ひとりでは、何処にも行けない。]**
(*3) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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イアンは、ぐしゃぐしゃに自分の髪を乱した**
2018/05/21(Mon) 00時半頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[なんだか、あの頃に戻ったみたいだ。 心を折られる前の俺は、そう もっと強気で、出しゃばりで、だから反感を買った。
自己認識が出来れば落ち着きを取り戻せる。]
ヒュー君、……どうしたんだ
[漸く周りを見渡し、気づく。 歩み寄り覗き込む顔は生徒会長のものだっただろう。
気に掛けていた一年生。 怪我のことも心配して声を掛けたものだ。 彼も、なのだろうか。寝息は穏やかな気がする。 分からない、モリスにしたように確かめる気が起きない。]
(33) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[医務室を後にし、ふと振り返る ……誰かが慌てて出てきて、隣に立つことはない。
扉横の看板に今更気づき、苦い顔になった。
──風に当たりたい。 ここには人がいる、でも、俺が知らない世界にいた。 雑草は生い茂ることを選ぶ。ひとりでは、加害される。
本当に偶然のことだった。]
(34) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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── 中庭 ──
[見つけてしまった。 足が竦むのは短い時間。息を呑み、駆け出す。 仰向けに寝転び、閉ざされる瞼>>26 彼までも、そう思ったって仕方ないことだろう。 何も知らない──いつだってそう──なのだから。]
ヴェリー、ヴェリー 君までそんな、俺は、どうすれば
[モリスにしたものと同じくらいに必死な 遠慮皆無の揺さぶりだった。
──見られたくない姿をしていることも忘れて。]**
(35) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[君達は俺の知らないところで全てを進めた。 俺は本当に何もかも知りはしない 来てはならなかったなんて、分からない。
笑い声が仮に届いたとして、それだけで誰なのかなど 何を考えているのかなど、察せない。]**
(*6) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 01時半頃
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── 隣にいても、遠かった ──
[その日も暑かった。 俺が差し入れた飲み物を手に、二人木陰で座り込み なんでもないことばかり話していたと思う。 ××している相手を独占する時間が、甘すぎる程で あの頃には考えられないくらいの喜びがあった。
……でも。 重ならない視線、横目で見た彼の瞳は薔薇を映している 自分とは違う色が混ざる腕に伸びかけた手は ──気づかれる前に引っ込んで、それきり。]*
(48) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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あ、 ……ヴェル、
[緊張感が無い声がすぐ聞こえ、目が開いた>>37 安堵から息を吐いた後、自分が何をしているか気づく ヴェルツに触っている。 ヴェルツに、こんな、姿]
(49) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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っ、 え これ、なに、何のこと……俺、寝てなんていない
[その声も咽返る芳香と発せられる。 放たれる薔薇の香りに乗せて届く音に 具体的な何かを理解出来たわけじゃないが 相手と自分への違和感だけは、認識した。]
(*15) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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……まだ?ふざけんな、ずっと生きろよ!
[混乱が重なる頭は選択肢を導き出さなかった。 良かった、見られたくない、離さなきゃ 汚い、ごめんなさい、汚い。 混濁した感情の激流が制御出来ない 本人にはそんなつもりはないかもしれない そう考えつけず、声を荒げた。]
ごめん、ごめんね……でも、良かった。 君もあんな風になったのかと、思って、
[ぱっと離れ、胸元を抑えて緑の上に座り込み 相手を見つめる表情は笑みはなく、困ったようなもの。]
(50) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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それ、……どうしたの。
[視線が一点に集まり、両目が見開かれた。 相手が隠そうとしていても、無駄なことだった。] 怪我、治さなきゃ……中に戻ろうよ。
[狼狽え、気遣う声を向ける それが誰のせいかも知りもせず。 こんな時も笑っているのだなと、今更思った。]*
(51) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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[傷だらけの手が痛ましい ……でも、いつからそうだった? きっと気づこうともしていなかった。
そうしたのは、誰? 怯えて動けない癖に、晒したくないものを抱えている癖に 見てほしいなどと自分勝手なことを想ったのは。 自分の傷ばかり見つめる奴が 他人のそれを癒せるわけがない。]
(*16) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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誰…………?
[短く混じった囁くような声>>*13 ──いつも聞いていた、ような。
弱った子供のような戸惑いの問いに、返る音はあったかどうか。]**
(*17) 2018/05/21(Mon) 13時頃
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イアンは、オスカーと彼のことは知らない
2018/05/21(Mon) 13時頃
記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 13時頃
イアンは、「知らない」「分からない」そればかりの男。**
2018/05/21(Mon) 13時頃
イアンは、メアリーの声は、当然届くことはなく
2018/05/21(Mon) 14時頃
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[あの時、中庭にいたのは ただ話をするモリスと、欲を抱いた俺。
彼はそんなつもりじゃ無かったけれど、 「汚れ」が何なのか知ってしまって、迫られて 望まない行為を受け入れた。 弱い部分を知って、認め合う。 本当はそういうつもりだったのだと思っている。 俺にとってはそういう認識だった。 怯えたのは、後輩に欲を向ける最低な男だと知られたような気がしたから。
でも、少し俺はズレていたような 知ったような言葉>>59に予感があって。 掴みきれない不安が、形になる────]
(63) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ 絵画のような風景だけを見つめ続け 庇護する腕に、欲望をぶつける
どちらに対しても残酷な仕打ちだ。 ]
(*23) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[薔薇が呪うとはどういうことなのか それは、君もなのか。 さっきの声は「彼」なのか。 言いたいことが沢山あった筈で、
全部頭から消えてしまう。]
遂げた、って ……君はどこまで、俺達のことを
[身体から温度が去っていくのを感じる。
モリスに打ち明けられたことは この男には、この男にだけは 絶対に知られたくないことだった。]
(*24) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ きっと、あの微笑みではない違う顔が見たかった。
……それはこんな表情では無かった筈だった。 ]
(*25) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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なんで君がそんな風になる必要が、
[知られたのならば、軽蔑した筈だ 相変わらず自分が見えるものだけを信じていた。
その行動に驚き、弱い力にあっさり引き寄せられる 過剰なくらいに反応し、跳ねた身体は
次の一言を聞いて、硬直する。]
(64) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ 連なるように放たれた香りが
何故だか、混ざり合わないように感じた。 ]
(*26) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[心臓が止まるような、錯覚。
こいしいひとの腕の中で全てに気づいた。>>62
気づかなかったのは、 傷つけたのは、 何もしなかったのは、 表面だけを見ていたのは、──全部、俺。]
(65) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[俺が彼のために行動したのは、今この時だけ。 最後の最後、終わりの時だった。
ずっとずっと甘えていた。 自分には恋愛は許されないと思うのなら 秘めたままでいるなどと自分に酔わずに
────離れてしまうべきだった。]
ち、…………
[違う、なんて。 今更言う権利があるわけがない。
抱き締める彼には見えないところで泣きそうに歪む顔。]
(*27) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ああ、そうか。 傷を舐め合うみたいに求めるのは 自分を受け止めようとしてくれる人に欲を向けるのは ────普通じゃない。
“あいしてる”なんて言われたことが無いから 「イアン」と優しく呼んでくれる人がいないから すっかり忘れてしまっていた。
××するのも、想いを秘め続けるのも 元から資格すら持っていなかった。]
(66) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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