254 東京村U
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トレイル! 今日がお前の命日だ!
2016/10/01(Sat) 00時半頃
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─ 東京、四ツ谷マンション『友硯社』支部 ─
[爪を短く切った指がラインの表示画面を撫でる。 「先生にお疲れさまって言っておいてね」と返信を送って、鈴里は頬を手の甲で押さえた。
『同志』から話を聞くかぎり、 進みは順調と言える。]
っ、ふふ
[どうにも口元から、笑みが零れてしまった。]
(*0) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[膝をついて立ち上がり、 本棚から一冊の本を引き抜く。
──東京村。
匿名の人間が書いた、東京のホラー小説。 その拍子を撫でて女は笑った。]
(*1) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[想像してみる。
「もしも」
ある日帰ったら両親が 見知らぬ他人にすり替わっていたら?
あの彼女はどんな反応をするだろう。]
(*2) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[希望通りだと喜んでくれるなら、 それでもいいけれど。]
やっぱり、怖い話が一番ステキよねぇ
[そう「例えば」この本に実体験として書き連ねられているような お話のひとつになるなら]
(*3) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[ それはなんてステキなことだろう ]
(*4) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[想像すると背筋をぞくぞくとしたものが這い登っていく。思わずといった風に、彼女はぎゅっと腕にその本を抱いた。]
どんなお話ができるのかしら。
とっても楽しみねえ**
(*5) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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/*
霊界お二人お疲れさまよう。
東蓮寺くん襲撃は丸投げられた場合、そのまま迷っててねえ。 よかったわねえ帰らなくてすむわねえ(にこにこ ということになるかしら。特にものすごく希望がなければ みょんこ的には別に殺さないつもりでいる感じよ。
それと天声もちが私なので、ふたりとも何か表に伝えたい情報があれば メモとかで教えてもらえれば霊界通信させてもらうわね。
(*6) 2016/10/01(Sat) 02時頃
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**
WEEKLYカルトにゅ〜す 慈善団体?カルト?−硯友社を名乗る団体について‐
三十年ほど前から東京に進出してきた謎のアンケート配り団体。 サイトなどはなく、二十三区内を中心に出没しているようだ。
なお、硯友社と彼らが名乗るようになったのはわりと最近で、以前は「石見友の会」と名乗っていた。
こちらの名前での活動は、東京よりもT県の日南一帯での集団生活などが大正時代以前から報告されている。昔は村を形成していたとの地元住民の証言もとれた。 近年めだつアンケート活動のほか、清掃活動、冊子配布などの運動もみられる。
名称変更の理由ははっきりとはしていないが、彼らは大穴牟遅神を本尊としているともいわれており、近隣で同神を祭っている大石見神社側とひと悶着あった末のことではないかと目されている。(※注1 大石見神社側は同団体との関係性をきっぱり否定している)
(81) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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(中略)
発信の少ない団体であり、勧誘活動などもごく限られたうちで為されているようで報告を聞かない。
東京でのアンケート活動がよく見られているが、これはここ2〜3年のもので歴史は浅い。
よりよい社会のために、等の文言は石見友の会からの系譜を考えると、大己貴命(オオナムチ)が少彦名命(スクナヒコナ)に自分たちが作った国はよくなったといえるだろうか?と尋ねた逸話がもとになっているのかもしれない。
(82) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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また、書いたことが現実になった。ナドの噂があるが、これは単に偶然の一致をそう思い込んだか、もしくは団体所属者のステマである可能性が高いだろう。
Twitterや匿名掲示板などで、特定個人を名指しでいなくなれと書いたら行方知れずになったなど事件性のある書き込みがちらほらと書かれているが、警察にそのような問い合わせをしたところ、該当する事件はないとの回答だった。
(84) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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なおアンケート活動をしているところをよく目撃される女性は地域を問わず出没しており、複数の場所に同時刻にいたなどというオカルト話も出ている。
奇怪なアンケートとの掛け合わせ効果だろうか。オカルト界隈では硯友社の名前を聞くようになってきた気がする。
筆者としては、これは似た印象の別人だろうと考えているが、硯友社の他のやり口からして、意図的に「似せている」という可能性も考えらえる。
期待と不安をあおるような希望アンケートの次はドッペルゲンガーなどを利用しようというのだろうか。出現が不定期であるために確認が容易ではない点が難関だが、近々にライター陣数人で網を張って確認をしようと思っているところである。
(85) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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『ちがうよ。わたしじゃない』
(86) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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[あれは小学四年の夏休み前だ。管理されきっておらず、雑草が生え放題の校舎裏にはうさぎが一匹飼育小屋の隅に蹲っていた。つい一昨日まで番いだった小屋の中で寒そうに身を縮めている。]
『うさぎ、殺したりしてない。 わたしじゃない……』
[そう繰り返す声は震えていた。足に力が入ると、履きかえずに出てきてしまったうわばきが土の上に押し付けられてきゅっと小さく鳴いた。]
(87) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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[泣きそうな声で首を振ると顔のサイズに合わない大きな眼鏡がずりおちそうになって、あわてて「彼女」はツルをおさえた。]
『ちがう。わたしじゃないよ
…… "みょんこちゃん″だよ』
(88) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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[鼻の頭は赤くなっていた。うつむいているせいで硝子の上にてんてんと滴が溜まる。]
『みんなやってないなら、 "みょんこちゃん"がやったんでしょ』
[そう彼女は あだ名をくりかえした。少しの敵意をもって、 きらいなあだ名を、他人に擦りつけようとするように。]
(89) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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[ひっく と、肩がしゃくりあげられる。彼女が周囲からハンニンだと疑われたのは、「おはなし」を書いていたからだ。
──神隠し。人の中身が知らない間に入れ替わっている話。 身近にある怖いアパートの話。夜中のテレビに映る女の幽霊。 いちど迷い込むと二度とかえって来れない知らない道。 よなよな近所のネコを襲って回る斧男。 わかってしまうとこわいことがおきる、ひみつの暗号。]
『ち″がう″もん……』
[暗いし、きもちわるい趣味だと馬鹿にされていた。クラスメイトの中で彼女にそう接しなかったのは、ふたりだけだ。]
(90) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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『な″んでぇ……っ!』
[責められて逃げてきたハンコウ現場で、ぐずつくはなを鳴らして、ついに彼女は顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまった。]
『なんで、"みょんこちゃん" ちがうって言ってくれないのぉ゛っ……!』
[吐き出されたのは彼女らしからぬ、八つ当たりじみた攻撃的な声だった。追い詰められたストレスで、きっとどうしようもなかったのだろうけれど。]
(91) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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[無理からぬことだったと思う。なにせ彼女には──鈴里みよ子には、友達が本当に少なくて、周囲から疑いの目を向けられたときに、かばってくれるような味方は、教室にはささもとくんと、
──「私」の、ふたりだけだったのだから。]
(92) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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(93) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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─ 東京四ツ谷マンション、硯友社支部 ─
[ベランダに出るための大窓にかけられた薄緑のカーテンが、 朝の日差しに白く透けながら光っている。]
ん……ん、
[机で調べごとをしている間に、いつの間にやら微睡んでしまったらしい。頭をのせていた腕と肩が痛かった。幸いメガネは寝る前に外していたため、フレームがゆがんだりする事態は避けられたようだった。]
(94) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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あー…… かたまっちゃってるわねぇ
[それも仕方ない。上半身を起こすと組んだ腕を上に伸ばして軽くストレッチを試みた。みしみしと筋肉がきしむ。]
やぁねぇ……ずいぶん懐かしい夢みちゃったわねえ
[たぶん、昨日、彼と再会したせいで記憶が揺り起こされたのだろう。口端に苦笑が浮いたが、それもあくびにとって代わられた。目端に浮いた涙を指で拭う。]
(98) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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[左右に体をひねって、さらに柔軟性を少しでも取り戻せるようにあがいてみる。]
あら。
[そうして、いくらか体がほぐれたところで、テーブルの上に置きっぱなしのスマートフォンに通知が来ているのが見えた。
『知り合いに招集かけられたんで、 病院から離れました。 さっき東中野まで行ってきました』
『現状続行でOKですよね?』
『寝てます?』
『いないか』
サミュエルからのメッセージが連続して届いており、一度あきらめたようにタイムスタンプに間が開いていた。]
(99) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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[画面をスクロールすると、つい先ほどの時刻に続報が届いていた。
『事後になりますが知り合いの方には 問題ないって報告あげときました』
『幸い個人的な知り合いはいなかった様なんで おおむね大丈夫かと』
どうやら、こちらが微睡んでいる間に彼がよいように計らってくれたらしい。「ありがとう。問題ないわ」と、みょんこはその場でLINEにレスを返した*。]
(100) 2016/10/01(Sat) 17時頃
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─ 四ツ谷マンション、硯友社支部 ─
[部屋のカーテンを開けると、外には朝日を浴びた街並みが見えた。チュンチュンと鳥の声が聞こえる。今朝もこの街は相変わらずだった。相変わらず見知らぬ他人同士が大量にひしめき合いながら暮らしている。顔見知りや同級生たちだとて、共有の場所から一歩踏み出せば互いが何をしているかすべて把握している関係の方がきっと珍しい。
だからこそ、自分たちのようなものが 動ける隙間があるのだけれど。]
ん……あら?
["病院″の方へ逃がさないようにという連絡を終えて、顔を洗って着替えて化粧をしてと出かける準備をしていたせいで、その着信に気づくのは間があった。コール音が鳴っている。]
(*7) 2016/10/01(Sat) 19時頃
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[手にしかけていた眼鏡を机の上へ戻す。 それから、通話ボタンを押した。 ジ、ジッ ザ ァーーーーーーーーーー と、 まるで何かの妨害電波か何かのようなノイズが数秒続いてから、 音の砂嵐は静まった。
首を傾げる。一秒、二秒。無音が続いた。]
(*8) 2016/10/01(Sat) 19時頃
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[かけてきたものをとったのにも関わらず、呼び出し音が流れる。 それからさらに3秒待ってから、鈴里は口を開いた。]
……こんな朝早くに、珍しいわねぇ
どうかしたの、東蓮寺くん?
[画面に表示された相手への呼びかけは、 ごく悠長に、*のんびりとしたものだった>>+26*]
(*9) 2016/10/01(Sat) 19時頃
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─ 四ツ谷マンション、硯友社支部 ─
[軽くシャワーを浴び髪を整えて化粧をした鈴里は耳元にスマートフォンを当てて、首をかしげていた。ふと、ノイズ交じりにだが、あっ。と人の声がした>>+27。]
……………。
ええ、鈴里の携帯よ。
なんだか少し聞こえづらいけれど、 ちゃんと聞こえてるわ
[問いかけに、驚いたような声で答えを返す。電話口から聞こえる東蓮寺の言葉は常になく急かされるようだった。不安、緊張、狼狽、理不尽への不満、恐怖。感情が入り乱れているのが表情を見ずとも伝わってくる。]
(*10) 2016/10/01(Sat) 22時頃
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……駅、どこかわからない? 新宿駅じゃないの?
[わからない、駆け足の言葉についていけていない──風に、きょとんと理解が追いつかないように問い返しを挟む。口元を手で押さえた。]
出社できないってことなら、 そう伝えておかなきゃいけないわねぇ
[声にだけは話の展開への戸惑いを乗せながら、頬を押して、引き延ばす。──唇が三日月に笑ってしまうのを堪えなくてはいけなかった。]
(*11) 2016/10/01(Sat) 22時頃
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ねえ、まずはちょっと落ち着いて、東蓮寺くん 近くで一番めだつものはなあに?
[迷子になって、焦っている相手にそう接するように声は仕方なさげな風に取り繕う。わからないと返事があれば、悩むように間をおいた。耳だけは澄ませておく。沈黙が、解決しない時間が、彼に与える影響を聞き漏らさないようにだ。]
(*12) 2016/10/01(Sat) 22時半頃
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