254 東京村U
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
noko 2016/10/07(Fri) 01時頃
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……少女を拉致って監禁…… ……腱を切られてて…… ……骨だって聞いた…… ……人形のように着せ替え…… ……キッチンナイフで胸をメッタ刺しに…… ……ガラスの灰皿でメチャクチャに…… ……うゎ幼女つよい…… ……月守と仲よく歩いてて…… ……誘ったの、女の子からだって…… ……んで、肉を食べて生き延びたって…… ……男を誘惑しては、もう何人も……
……男は悪魔崇拝の儀式を…… ……『憑神』……
(90) noko 2016/10/09(Sun) 15時半頃
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……また心不全だって ……池袋に出たって…… ……三ノ輪さん、これガチやべぇって…… ……キッチンナイフで刺そうとしてて ……本郷さん、失踪? ……新宿のアルタ前広場で…… ……あの子の客ばっかり…… ……やばいって、また歌ってたよ……
……聞いたって、らぶらぶにゃんにゃん ……ジリヤって子はもう死んでて…… ……呪いのアイドルソング…… ……うそ、渋谷で観たよ ……だからいっぱいいるんだって…… ……双子の殺人鬼が…… ……クローン兵士……
……見たら死んじゃう…
……『ドッペルゲンガー』
(91) noko 2016/10/09(Sun) 15時半頃
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……はっ、はっ……はぁっ……!
[走る、走る、走る。 見知った街を。知らない街を。 向かう先もわからず、ただやみくもに走った。]
……ああっ、……!!
[咄嗟に身を捻ると、そのすぐ脇を一閃の刃が走った。 ぱっくりと開いた左肩から血が噴き出す。 右手で傷口を抑え、転身、つんのめりながら、また走り出した。 背後から迫る、ステージ衣装の"ジリヤ" 手にしたキッチンナイフを振りかざし、重力を無視して、 ふわりふわりと軽やかにステップを踏み、どこまで追ってくる。]
(92) noko 2016/10/09(Sun) 15時半頃
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[その無機質な、空っぽの笑顔は、頬の部分がひび割れ、 黒く蠢く闇が覗いている。]
『シ…シ ク…フレ…アイの、クン ネ様と、 …フレ…アイ の……クンネ様 と、 よ、ヨべ ト……いっタだ ロォおお オオオう!!
ラクゥウ ルルウ ウゥ!!!!!』
[ひび割れた頬の奥から、蠢く闇が咆哮をあげた。 ジリヤの心臓が、握りつぶされたかのように痛んだ。 幾度となく聞かされ、心折られた、あの声だった。]
(93) noko 2016/10/09(Sun) 15時半頃
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[地響きと共に、地面がひび割れ、新たな街のがせり上がる。 新宿新南口、新宿スタジオ、喫茶店、 シェアハウス、そして赤坂マンション。 現実を模した建造物は、複雑に連結し、 まざりあい、異様な様相を見せた。 "知らない街"は、その規模を急激に拡大し、 迷宮のように複雑さを増してゆく。]
『♪らぶらぶにゃんにゃん らぶにゃんにゃん』
(……うるさいっ!うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ!)
[ショーウインドの前を横切る。 窓に映った"ジリヤの鏡像"が、一斉にジリヤに顔を向け、 鏡面から躍り出た。]
『♪あなたのこねこになりたいの』
(……木露さんを!澪音さんを襲った! あたしが、頼ったからっ!)
(94) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[街頭モニターに映るライブステージ。 "画面いっぱいのジリヤ"が、モニターから手を伸ばす。]
『♪らぶらぶにゃんにゃん らぶにゃんにゃん』
(……赤羽を!立川を殺した!あたしを、寝盗ったからっ!)
[ジリヤは思い出した。2度も身を救ってくれた、あの破裂音。 その瞬間に、頭に響いた、か弱い声を。]
『♪恋する首輪でつながれたい』
(……あたしを縛り続けた!あんたの理想であるためだけにっ!)
[タスケテ と泣いていた、あの声を――]
(95) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[四方八方から迫ってくる、 幾人もの"ジリヤたち"を躱しながら、遮蔽ドアを抜けた。 ドアを締め、鍵を。 即座に、ドアを殴りつける音が、ガンガンと響く。 空色のワンピースは血で汚れ、靴はとうに投げ捨てて、 全身はボロボロだった。 見るまに変形していくドアを尻目に、 駆け出しながら、ジリヤは携帯に番号を入力した。]
『090-××××-××××』
[自分の携帯番号。コール音。 相手はすぐに出た。無言。 いや、ほんの微かにすすり泣く声]
……どこ!? いま、どこにいるの!?
[背後で破壊音。遮蔽ドアが破られた。]
(96) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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『……線を』
[電話の向こうから、微かな声]
『線を辿って……』
[地面に、白い線が浮かんでいた。 チョークで引いたような、ジグザグで、癖のある線。 ラクガキのように書きなぐられた、文字、記号、そして矢印。
進むにつれて、増えてゆくラクガキ。 壁に、地面に、柱に、木々に。 いたるところに記された矢印は、すべて同じ方角を指し、 1点に集約しているようだった。
全速力でそこへ走った。迷いはなかった。]
(97) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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― ??? ―
[旧い戸建ての木造住宅。 ジリヤは悪寒に竦み、震える身体を必死に抑えた。 2度と来たくなかった場所。 2度と思い出したくなかった記憶。 そして、ジリヤの奥底に巣食っている"元凶"]
……。
[表札の掲げられた名前は――『月守』 拳を握り、息を吐いた。 頭の中で、自分のための曲を弾いた。 いかなくちゃ。玄関のドアを開き、足を踏み入れた。]
(98) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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― "月神"邸 ―
[そこには、一人の子供が居た。 暗い寝室で独りぼっちの女の子。 ゆっくりと顔を上げたその少女と、目が合った。
翠色の瞳。色素の薄い金髪。 その幼い顔は、精気が抜けたかのように虚ろ。 生まれたままの姿でベッドに横たわり、 毛布の下で縮こまるその姿は、怯えているように見える。
少女の手元には、ボロボロになった黒い本。]
……あんた、だったんだね ずっと……助けてくれたのは。
[その子が誰なのか。 その本を渡したのが誰なのか。
ジリヤには、わかっていた。]
(99) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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『――ヅいカ』
(100) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[少女に微笑み、その小さな手をとった]
『"ジリヤ"……みーつけたっ』
(101) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[外から、蠢く闇が迫っていた。 押しつぶされる家が、ミシミシと悲鳴をあげる。 ぐずぐずしてはいられない。 "幼いジリヤ"を抱きかかえて、押入れの中へ急ぐ。 天井板をずらすと、開いた隙間から、広い空間が覗いている。]
さ、はやく、入って。
["幼いジリヤ"を天井の隙間から入れると、 自分も続いて中へよじ登った。 "どちら"へ出るのか、もうここからは賭けだった。 奥へ、奥へ、はいすすむ。右も左もわからない。
少女の手を握る。少女も強く握りかえした。]
(102) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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みよ子さん!! いまわかった……アンケートの答え! あたしの望む未来。
あたしは――
(103) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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◆希望調査アンケート
記入者氏名 : 日付: /
項目1 どんな未来をご希望になりますか?
≪自分を取り戻した未来≫
(104) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[辺りを包む闇から、声が轟いた。]
『イくナぁアぁアアあああ!!もどレぇェェッ!!
おまエは、おレ様のものダぁぁァぁぁッ!!
もどってコぉォォい、ラクゥウ ルルウ ウゥ!!!!!』
(105) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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["月神"の咆哮。 自分を呪縛し続けていた"月神の影"へ、 ジリヤはハッキリと返した]
ふざけんな!!ばか!!
あたしは……あたしのもんだ!!
[言った!ジリヤは笑った。
言ってやったぞ!少女も笑った。
闇は咆哮をあげて、霧散してゆく。
やがて、暗がりに明りが見えた。
どこかへつながる"出口"が――。]
(106) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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* * *
(107) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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― 某日:新宿駅新南口 ―
『――でね、その日から、人が変わったように、 我が強くなったんだって。 そのまま警察にタレこんで、売春関係も全部ぱぁ。 まゆゆも、小遣い減ったって嘆く嘆く……
え、人に媚びる方のジリヤ? へへっ……そっちのジリヤはねェ〜 もう誰も見てないんだって!
これ、まゆゆ…… あ、"ともだちのともだち"から聞いた話、 ってことにしといてね!』
[そういうと、少女は私の手をとって、 南口脇の人だかりに向かいだした。]
『ほら、はやく。もう、はじまっちゃう。』
(108) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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[人だかりの中央には、地べたに腰を下ろした1人の少女。
汗を吸った白い無地のTシャツ。 ネイビーブルーのダメージジーンズ。 無造作に被った黒いキャップ帽。 身の丈に不釣り合いなアコースティックギター。
弦を荒々しくかき鳴らし、 暗く鬱屈した歌を叫んでいる。 怒りといら立ちをぶつけながら、 それでも負けるものかと、 反抗的な、反撃の狼煙をあげていた。
脇に置かれたダンボール。 その立札に記された曲のタイトルは、
≪ドッペルゲンガー≫
ふと、先日読んだ怪奇小説を連想する。 さて本の題はなんだったか――……**]
(109) noko 2016/10/09(Sun) 16時頃
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
noko 2016/10/11(Tue) 00時半頃
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