254 東京村U
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― 朝・自宅 ―
[ぼんやりと、目を開く。ベッドがある側とは逆の壁にかけられた、多数の歯車をデザインしたスチームパンク風の時計、それを見ると、早朝の域を脱しつつある時刻だった。 あれからいつ眠ったのか、覚えていない。長く転々していた気もするし、案外、すぐ眠ってしまったような、そんな気もする。ただ、どちらにしろ、徹夜でもしたかのように、体が怠かった]
……、
[数分、寝転んだままでいた。 その後、億劫にもベッドから這い出、 机に置き去りにされたiPhoneを見て、指を強く結んだ]
(0) 2016/10/01(Sat) 01時頃
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[二度、三度、静かに深い呼吸をする。 そして電源を入れ、立ち上がるのを待つ、
…… 立ち上がって、暫く。 また「彼方」からの着信が来る、事はなかった。 開いた履歴は、メンバーとのそれが最新だった。 昨夜のそれは全て消えていた。
心中に浮かぶのは、安堵。 痕跡がない事に関する、掴みどころのない不安。 あれが夢のように思えてくる、現実味の揺らぎ]
(12) 2016/10/01(Sat) 01時頃
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[だが、全てが夢などはありえない、昨日の記憶は幻ではない、その事実をメールが証明する。木露とのやり取りに、加えて、秋葉からいつだか送られていた返信。 『先輩、なんか憑かれました?w』そんなほぼ想像通りの軽口から始まって、電話の怪談、なら似たような話は幾つもある、ただジャストはない、少しあたってみる、そのような内容だった。 結局は木露と同じ真摯な反応に、有難さと、心強さを覚える。ありがとう、と、感謝の意を返しておいた。
それからようやく起き支度へ入る。 尾鰭が出来たリンフォンを一瞥し、洗面所へと向かい、]
……、……
[一瞬、何か違和感を覚えた。 けれどもそのまま、歩き進み]
(26) 2016/10/01(Sat) 01時半頃
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[洗面所から戻ると、ベッドの端に腰かけた。Twitterをアプリで開き、呟くでもなく眺める。「解放治療カルテ」で名出し個人アカウントを取っているのはシーシャ一人だ。オフィシャル情報アカウントと並存するそのアカウントでは、不定期に他メンバーの写真や代筆がツイートされもする。 青年はといえば、全く無関係に匿名に、読書した感想を主に呟くアカウントを持っていた。そのツイート数は多くはない。なおシーシャはやたら多く、「ミュートすんなよ!」を定番ネタにしていたりする]
……
[TLを眺める途中、ふと意味もなく室内に目を向けて]
…… ?
[止まる。何か、違う、気がした。 何かが変わっている、気がした]
(41) 2016/10/01(Sat) 02時頃
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[そして、青年は、それに気が付いた。 PCデスクと書き物机を兼用するシンプルな形の机。 その上に置かれた、一枚の紙に]
…… なに、 これ。
[それを手に取り見て、呟いた声は、掠れていた]
(62) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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・ ・ ・
さようなら その裏側を見る 裏側に書かれたそれに 私は気付かない 私は気が付かない その裏側に すべてがかかれているというのに
私は気が付く事はなく そうして私は 柘榴を食べて笑うのであり
さようなら さようなら さようなら
私が柘榴を食べ切ったなら 貴方も私を食べて欲しい 柘榴のようにたべてほしい
業火に焼かれる私を想って
(63) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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柘榴のように きらきらとあかく ひかった 私のノウズイは
きっと あまいです
・ ・ ・
(64) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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[紙に書かれたそれは、歌詞のようだった。 それは確かに己の字で書かれていた。 己が書く歌詞らしい、ものだった。
だが、それに、青年は全く覚えがなかった。
一つ、二つ、三つ、 何やら水滴の染みが付いた紙面を、無言に見つめ]
(66) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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[続けて、青年は、それ、にも気が付いた。 リンフォン。 それを、青年は鷹の完成まで進めていた。 それが、更に、魚のはじめまで進んでいる、事に]
(67) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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「……おい。……おい?」
(68) 2016/10/01(Sat) 03時頃
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― 昼頃 新宿・某スタジオ ―
[はっとする。重なる呼びかけに、己が意識を遠くしていた事に気が付いた。見れば、呼びかけの主ヴェスパタインは、また他のメンバー達は、心配げに此方を見つめていて]
「大丈夫か? 顔色、悪いぞ」
……ああ、うん、ごめん。大丈夫だよ。 少し、ぼんやりしてた。 寝不足かな。呆れたものだよ。我ながら不摂生で。
[そう冗談めかして言い、笑う。胸の裡には、昨日からの幾つもの奇妙が、不穏な感情が、渦巻いていた。 己は、何か病気にでもなったのだろうか、と思う。 夢遊病、怪奇小説を思わせる、それにでも、……**]
(69) 2016/10/01(Sat) 03時半頃
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[ヴェスパタインの提案で、一旦小休憩を取る事になった。ステージの端に腰かけ、りんご風味のペットボトル水を煽る。と、いきなりばしりと背を叩かれて、少しむせた。 口元を肩にかけたタオルの端で拭いつつ、横に座ったその手の主を睨んでやる――といっても目元はあちらから見えないわけだが、ともあれそいつは、シーシャは軽率げに笑って]
「どうしたよ樹〜、風邪かぁ? 声低いぞお」
……それは元からだよ。 風邪、もしそうならキミのせいって事になるけれどね。 八割くらい。 っていうか、寝不足だって言ったでしょうよ。
[いつも通りの軽いノリのシーシャに、青年はやはりいつも通りを努めて返した。昨日からの件を、彼やヴェスパタインには言ってみようか、そんな思いも過ぎったけれど、緩やかな躊躇いがそれにまさった]
(79) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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[そもそもがオカルトでしかない話だし――シーシャはそういうものは「信じたくない」タイプの、ただ占いやら縁担ぎはつい気にしてしまうような、まあ言ってしまえば怖がりであったし、ヴェスパタインは冷静に科学的に信じないタイプだ、亡霊やら魔術師やら似合う見た目してるくせに――今のところ別に際立った実害が出たわけでもない、出てはいない、 それに、 今この時、青年はオカルトな実情よりも、 己の正気を疑いかけていた。痕跡がない怪異、そう、メールが文字化けしたらしいという事実以外には、他者は認識していない、して貰おうとしても出来ないのだ、この異常は、なら、あるいは、全てが己の白昼夢や、妄想、だったとしても、 何よりあの、自分が書いていない、自分の、]
あの、パズル。 ついやってしまったんだよ。夜中まで。 おかげで鷹までは進んでさ。
[可能性の否定したさに。全てを遠ざけたさに。 切り出す代わりに少しの嘘を交えて戯れた]
(80) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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「おいおーい。 そんなに面白いん? あれ。確かにすごそうだったけど」
面白いよ。全部終わったら貸そうか?
「えー、俺パズルとか苦手なんだよなあ……」
知ってる。
[たわいないやり取り、 ふと、シーシャが思い出したように壁の時計を見た]
「あー、例の子、いつくるかなー。楽しみだなあ」
[そうして呟く、内容は周知のものだ。シーシャによれば、以前打ち上げイベントで一緒になったアイドルの子、そのメンバー仲間に此方のバンドのファンがいるらしく、ならスタジオにおいでよ、と誘ったのだという。 その女子について、シーシャの「可愛いコだから楽しみ」的気持ちと同じものは青年には全くなかったが、単純にどんな子なのかと思うような興味はあった]
(83) 2016/10/01(Sat) 16時半頃
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ドリベルは、ジリヤの話題から、次は今朝のニュースの話、一時のお喋り**
2016/10/01(Sat) 17時頃
ドリベルは、ジリヤに話の続きを促した。
2016/10/01(Sat) 17時頃
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[一時の合間を挟み、再び演奏が始められる]
[…… すなわち、祖先代々より遺伝し来りたる無量の記憶と、その血統中に包含されたる各人種、各家系、各個性等の無数の性能の統一体たる人間の性格のうち、その一部が覚醒中に分離してあらわれたるものが所謂二重人格にして、同じく睡眠中に発露されたるものが夢中遊行症なり。 ……
…… 蜜蜂のうなり ……]
[迷妄めく思考も、 ただベースをかき鳴らしていれば、うすれ**]
(134) 2016/10/02(Sun) 00時頃
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[朝から今に至るまで、あの、「彼方」からの着信が、また届く様子はなかった。だからこそ、悪夢を見た後の経過のように、異常も不安も、遠ざかっていく一方だった。
遠ざかっていく一方だった。
ただこの瞬間の、ただ青年の主観においては]
(165) 2016/10/02(Sun) 02時頃
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[程なくして。 スタジオに一人の少女が姿を見せた。約束がなされていた、その少女。ジリヤと名乗るその少女に、シーシャは「やー、ジリヤちゃん。来てくれて有難うね。やっぱり可愛いなあ、テレビで見る三倍可愛い」と、まあライブ外の情報発信のイメージ通りではあるだろう、わかりやすくチャラい反応をした。 ヴェスパタインは「此方こそ有難う。わざわさ、差し入れまで貰ってしまって……まあ、ゆっくりしていって欲しい。男ばかりで、なんともむさ苦しい、お嬢さんには失礼なところだけれどね」と、やはりそれらしく言って]
[青年はといえば、 ジリヤという少女、そのアイドルとしての実態には、思い返せば確かにテレビや雑誌で見た事があるかもしれない、という程度の、流行りに疎い人間程度の認識しかなく。 ただ、]
……やあ。初めまして。 と、いうのも、違うかな。 ……よく、ライブに来てくれているよね。 曲を好いて貰えて、嬉しいよ。
[代わりに、オーディエンスとして、その少女には、見覚えがあって。素直に喜びを示す言葉と、微笑を返した]
(178) 2016/10/02(Sun) 02時半頃
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え、
[動揺する少女の様子に、青年は、呼応するように、戸惑いを零した。なんで、という少女の言葉、 自分は何か間違った事を言ってしまったのだろうか、と、刹那傍らのメンバーに向けた視線は、また別の当惑を捉える事しか出来なかった]
噂……って、ええと……? うん、 多分、ボクは、その噂とやらは知らないと思うけれども。
[戸惑いのまま、言葉を継ぐ。 脳裏に微か過ぎったのは、 (はずれ) あの、彼女の、去り際の言葉だった]
「あー、あれだ、 こいつ、最近の色々みたいなの、疎い方だからな。 仮にもバンドマンのくせによ。 だから不届きな事に、ジリヤちゃんの事もしらねーの」
[ごめんなー、と、軽い調子で。状況は把握出来ないままにも場を繕おうとするシーシャの声が続く]
(188) 2016/10/02(Sun) 03時半頃
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うん、宜しく。
[ともあれ落ち着いたらしい少女の様子を見ると、 ほっとしたのをそのまま気配に、青年は改めて微笑して]
そっか。こちらこそ、ごめんね。 なんだか驚かせちゃったみたいで。
シーシャの言う通り、ボクは色々疎いものだから。 でもだから、すぐに気付けたのかな。
[その後。開かれた昼食会にて、 青年は紙コップを両手に包みつつ、頷き]
勿論。気軽に話してくれると、こっちも嬉しいよ。
(193) 2016/10/02(Sun) 04時半頃
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[視線を向ける、 すぐ隣で、身長の差から見上げる形になる少女には、その元が確かに見えただろう。伸ばした前髪の隙間、似た色の光彩、そもあまり目付きの良い方ではない友人メンバー二人と比べても、それ以上に鋭さがあるだろう、切れ長で白目の広い双眸が。 少女らしい口調、熱を持った語りに、 青年は、その瞳を柔らかく細めて]
……神様だなんて、恐れ多いな。 でも、――嬉しいよ。 ボクの作った曲で、「解放治療カルテ」の音楽で、 人を、キミを、救えたなんてね。
こうして、やってきて、 良かったよ。
[紡ぐ言葉は、本心ばかりから。 身に付き纏う不穏の断片らも、 霧散していくように、*感じられた*]
(194) 2016/10/02(Sun) 05時頃
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有難う。
キミも音楽を作るんだね。 …… そうだな、 どちらかといえば、曲より歌詞の方が、浮かぶタイプかな。
本当、好き勝手書いてる、ってだけなんだけど。 代わりに曲で大抵悩み過ぎているよ、
[はは、と笑い頬で指を掻く仕草をした。 ジリヤが音楽の自作を口に出すのに興味を引かれた、 直後、一瞬詰まった沈黙は、ただの会話の狭間程度のもので、特別奇妙には思われなかった、事だろう。――勝手に――その言葉に僅か意識がぶれた、一瞬は]
(221) 2016/10/02(Sun) 15時頃
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うん。 ……作り続けるよ。 ボクは、いつまでも、……作っていたいな。
[どんな事があっても、聞き続けるから、 それに返した言葉はゆっくりと、 何処か半ば独りごちるように、静かに、噛み締めるように]
キミの曲も、いつか、聴けたらいいな。
(225) 2016/10/02(Sun) 15時頃
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[シーシャのジリヤへの軽口と、 そして己へ流されるからかいには、肩を竦めて]
ぴったり……かな? この間、古本屋で売ってるのを見かけてさ。 多分外国の、古いやつで。
……と、 ほら、こういう。
[パズルの話題が出れば、iPhoneを探り、二十面体、熊、鷹、と画像をスライドして見せた。鷹、はついでにシーシャにも見せて]
リンフォン、っていうんだって。 結構、凝ってるでしょう。 だからつい、夜更かししてしまったんだよね。 子供みたいだな、こう言うと、少し恥ずかしいけれど。
(226) 2016/10/02(Sun) 15時頃
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ドリベルは、ジリヤが席を立つのを見送り、
2016/10/02(Sun) 15時頃
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[いいコだなー、なんて上機嫌に感想を零すシーシャに、そうだね、なんて返しつつ]
……、……
[考える。
自分が作りたい音楽は、 自分が音楽でしたい事は、 ……
迷路みた思考が、 少しく明瞭な輪郭を持った、*気がした*]
(232) 2016/10/02(Sun) 15時半頃
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…… え?
[少時の前。 ジリヤが口にした疑問に、青年は虚を衝かれた。 その様は、先の空白と比べ強かで露で、 彼女にも、その違和は、確かに感じられただろう]
……あ、 うん。 次は魚で……説明書みたいなのに書いていたのが、そこまでで。 だから、多分、それで終わりなんだと思う。
説明書が、完全だとは限らないし。 その先も、あるかもしれないけれどね。 もしかしたらさ。
(274) 2016/10/02(Sun) 20時半頃
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― 夕暮れ時・新宿通り ―
[薄く紫に青に染まりゆく、暮れなずんでいく新宿の街。百貨店から様々の喫茶店、洋服屋、大通り沿いのショーウインドウが並ぶ通りを、青年は一人、ギターケースを背に歩いていた。 スタジオ練習が終わってから、メンバーで夕飯を食べようかという話が出たが、ヴェスパタインとキーボードの二人がそれぞれ用事があるという事で、今日は解散の流れになったのだった]
……、
[人波のあいまを歩きつつ、青年は漫ろに考える。 一つはバンドのこれからについて。 もう一つは、]
……なんでだろう、……
[何故、自分は、あの時ジリヤに問われて、すぐに答えられなかったのだろう。躊躇ってしまったのだろう。リンフォンが、次は魚になるという、魚が終わりらしいという、それだけの知り切った単純な事実を、 言い淀んで、しまったのだろう?]
(275) 2016/10/02(Sun) 20時半頃
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― 新宿通り沿い喫茶店 ―
[それは相違なく不可思議で、とはいえどうでもいい事だと思っただからあまり深く考え続けはしないまま、青年は近くの喫茶店チェーンに入り、珈琲を飲み、]
…… 、
[いつしか、頭を垂れ、居眠りしていた。 朝からの「眠り」への一種恐れは昼の色々の内に薄れ、代わりに浅い睡眠の反動の眠気に襲われた、そのままに]
(276) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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(これ、完成したら、何になるの?)
…………
(277) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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[深い谷底にいた。酷く暗いのに、辺りがよく見えた。空を仰ぐと赤かった。赤い、何処までも赤い、まるで火のような、まるで血のような、この世の終わりのような、この世のものではないような、おそろしいまでの、赤。 自分は崖を登っていた。己が手足のみで、必死に登っていた。爪は割れて血が滲んで、だがそれに気をかける余裕はなかった。谷底は遠ざかっていく。谷底は暗くなっていく。それでも確かに見える。谷底には、無数の白い肉が、あらゆる人人が、蠢いている。 手が伸ばされる。遠い、届かない。 手が伸ばされる。届く事はない。 手が伸ばされて、それは、自分の両の足首を掴み、 見える。見えてしまう。白い顔。長い髪。黒い眼窩。赤い口。赤い口が、開いて、大きく、裂けるように、開いて、開かれて、]
(279) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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つ れ
て っ
て
よぉ
(280) 2016/10/02(Sun) 21時頃
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