276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[ 凪いだ視線は、多くの言葉を落としていった。 押し付けられたハンカチ(>>2:290)は穢れひとつない。 また、返さないものがひとつ増えた。 ]
そう、な。俺は誰も見ちゃいないのかもしれん。
[ それは誰も、俺を見ないように。 ]
あいしてる。 あいしてる、か。 なんだろうな、それは。
[ 唇が紡ぐのは簡単な5音なのに。 それは優美な調べにも、甘い呪文にもならない。 空っぽな箱を振っただけのような、声だった。 ]
(23) 2018/05/21(Mon) 01時頃
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変な奴だね。 人の代わりになる必要なんて、ねーのよ?
[ 赤く咲き乱れる薔薇を背に落とされた言葉(>>2:291)に いらないといわれた(>>2:290)笑顔で返した。]
キミさ、植物に水やりすぎて死なせちゃうタイプでしょ。
[ 遠まわしに、お人よしだと告げたつもりなのは 疑問系ではなく確信の音を持って謂う声に表れるか。 フェルゼが立ち上がりどこかへ向かうのなら それを止めることはない。
彼が思うように(>>2:289)また 彼に差し伸べる手は、この指ではないから。 ]
(24) 2018/05/21(Mon) 01時頃
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ども、ね。
[ ただ離れていく背中に、呟く一言は 届いていなくたって、かまわない。 ]*
(25) 2018/05/21(Mon) 01時頃
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―中庭―
[ フェルゼと会話を交わしてから、暫くは座っていたけれど 結局また、地面に仰向けに寝転んだ。
見上げる月。落ちる月影。 やはり変わらない位置に佇む円い光を見て。 夜と同じ、射干玉の瞳孔が収縮した。]
………ふ、ははっ。
[ 思わず零れ落ちた。 なぜ笑っていたのか、わからないけれど。 そのまま、世界に蓋をするように瞼を閉じた。 ]**
(26) 2018/05/21(Mon) 01時頃
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[ 声が届く。 今まで聞こえていたものとは違う、声。
拗ねた声(>>2:213)のような。 それよりももっと棘のある(>>*0)ような。
嗚呼、そうか。
つまり彼は奪えたのだろう。 無理やりにでも、強引にでも手に入れたいと思っていた、ものを。 ]
(*4) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ ぞわぞわと、心の奥が痒くなった。 掻き毟ってしまいたかったけれど、今その体力はないし。 いや、わかっていたから先に掻き毟ったのか。 薔薇――自分自身――を。
あまりにも可笑しくて、おかしくて。 零れたのは、笑い声だった。
やはり喜ばしい日だ。喜ばずしてどうする。 互いが求めるものを見つけられたのなら。 こんなにも素晴らしい時があろうか。 ]
(*5) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ 手を伸ばしたって今は何にも届かず、――(>>2:214)。 ]
(*7) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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う おぉ おおお じしん じゃねぇ、いっ――
(36) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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――――いっちゃん。
(*8) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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なに、ちょ、生きてます、いきてるって
[ 突然揺れだしたから、何が何か一瞬わからなかったけれど 目を開ければ、いっちゃんの必死すぎるほどの姿(>>35)。 事情は把握できてないが、揺れる視界に届いた顔があまりにも必死で。
ああでも、人を見ていないと謂われたこの小さな眼光は 衣服の乱れや首筋に残る花弁にも気付いたけれど。 ]
だいじょぶ、だい、じょぶ。 まだ生きてるよー、いっちゃーん。
[ 困ったように、笑った。 ]**
(37) 2018/05/21(Mon) 02時頃
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[ 見つかったのが、諦めたように手を降ろしてからでよかった。 この手を無意味に、出来て、――よかった。 ]
おはよ、いっちゃん。 お目覚めはいかが?
[ 困ったように、笑いかける。 その声は、音は、薔薇の香りを連れるようにして届く。
傷だらけの手を――隠せるわけもないのに――隠そうとした。 だってもしこの手が無意味じゃ無くなってしまったら。 ]
(*9) 2018/05/21(Mon) 02時頃
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[ ―――きっともう、笑っていられなくなるから。 ]**
(*10) 2018/05/21(Mon) 02時頃
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[ ざわざわと、風もないのに薔薇の木々が囁く。 その声は聖書の一節を落とした相手のもの。
──惑わない、でもない。
ロジェのように、小夜啼鳥のように 囁き返すこともできないで、いる。 ]**
(*14) 2018/05/21(Mon) 08時頃
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ユージンは、イアンの声や顔に少し驚いた顔をして。
2018/05/21(Mon) 15時半頃
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[ そこにあったのは、珍しすぎるほどの焦燥(>>49>>50)。 余裕のある、大人びた、生徒会長の顔はなかった。
最初の頃は(>>0:253)そんな顔を見ていたかもしれないが 幾らか経てば(>>1:19>>2:213)やがて違う反応が増えた。
視線には気付いていた。 隣にいるときも(>>48)、そうでないときも(>>0:282)。 雨の降る日に佇む傘のない時を、可憐な眠り姫のいない時を 見計らっていたのも、───気付いてた。
それに、傲れていたのかもしれない。 ]
(58) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ だから、自惚れていたのかもしれない。 ]
(*18) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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ずっと生きろってなに謂ってんの。 大丈夫、俺はいるよ、ここに。
[ 咄嗟に出た声は、きっと本心から来るのだろう。 小さな瞳は薔薇を映すのではなく。 今は、目の前で必死になるいっちゃんを映している。 ]
あんな風に。 あー、……───モリス?
[ 今まで此処に居た癖に、知ったような言葉を溢す。 緩やかにフラッシュバックするのは、ずっとみていた二人の姿。 ]
(59) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ 誰も俺なんて見ていない。 この瞳がみていたものだって、きっと。
俺を通した、別のなにかだったんだろう? ]
(*19) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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この声が聴こえるのは、薔薇に呪われた奴だけ。 欲望や、奪ってでも手に入れたい想いがある奴だけ。 モリスもそうだし、……さっきのも。 まあ、誰とはいわねーけどさ。
[ なぁ、と(>>*13)聞こえた声の主の名を謂うことはなかったけれど。 ]
モリスは想いを遂げたからね。 疲れて寝ちゃったんでしょ、きっと。 大丈夫。朝になれば起きるよ。 そんで、きっと、いっちゃんの傍にいてくれる。
[ 来るかもわからない朝は、きっといつか来る。 その時傍にいるのは、咲きもしない薔薇なんかじゃない。 夜が明けたあと、横にいるのはきっと《いつも》の。 ]
(*20) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ 自分でもわかるほど、薔薇の匂いが濃く、なる。 ]
(*21) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ おかしいな、上手く────笑えない。 ]
(60) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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なんかね。すげー、むしゃくしゃしてさ。 いっちゃんは素直になれる相手、見付けたんだろ? 嬉しいことだと思ってたんだけど。 違うのかもしれん。
ねぇ、いっちゃん。
[ 離れた身体を追いかけるみたいに、隠せない傷だらけの手が動いた。 中に戻ろうと、心配する身体を掴まえて。 弱い力で、払われたらすぐに離してしまうような力で
一人の男を抱き寄せる。 ]*
(61) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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いっちゃんは、 俺のこと好きなんだと思ってた。
(62) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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───俺の勘違い、だったんだな。
[ こんなに必死になってくれる姿は たぶん、俺のためなんかじゃなのに。 恥ずかしいと思うより、傷ついたこの手より。
空っぽのはずの場所が、今更────痛い。 ]*
(*22) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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ユージンは、フェルゼの髪色とは真逆の色をした瞳で――
2018/05/21(Mon) 23時半頃
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[ 雨が(>>68)、雨が(>>69)、降る。 言の葉の暴力のように叩きつける、雨が(>>70)。 俺はその雨の中に居て。 ただ、抱き寄せた弱い力は跳ね除けられなかった(>>64)。
なにも謂わず。 時として無言は、刃となることを知りながら。 俺は、黙して。
いっちゃんの心を ただきっと、ズタズタにしただけ。 ]
(123) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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[ いくら薔薇の香が色濃くなろうとも。 互いの匂いが混ざり合うことは、なく。
かなしい言葉の涙(あめ)の中。
俺が見ていた景色は 全然別のものだった。 ]
(*37) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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―――――――。
(*38) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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[ それは、暑い夏の日(>>48)。 木陰で他愛ない話を繰り返した中で。
無意識に けれど意味を持って 落ちた言の葉。
唇が繰り返していたけれど それは灰色の、空っぽだった箱の中へ ぽかりと浮かんだ。 ]
(*39) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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そっか。うん。
そうね、やっぱり俺の勘違いだったみたい。 やだなー、はずかしー。
[ どうでもいい、恋なんてしていない。 被害者だ、男なら誰だって。 そんな無意味な言葉を全て、聞き入れながら。
たぶん俺は、笑っていた。 ]
(126) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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[ こんな風になっても 嬉しいだなんて思えるのは 可笑しいのかもしれない。 ]
(*40) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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ありがとね、いっちゃん。
俺はいっちゃんの事、好きだよ。
(128) 2018/05/22(Tue) 00時半頃
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