30 ─今夜、薔薇の木の下で。
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―食堂― [ラルフの仕草がいまいち分からなかったが、釣られて自分の襟元に手をやって、あ、と気付いた。 ネクタイを解いたまま部屋に置いて来てしまった。 あからさまに自分の迂闊さを呪う表情に変わった。]
(6) 2010/09/04(Sat) 00時頃
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>>8 [飲み終わったらすぐに部屋に戻ってネクタイを締めること、と脳内にメモして。 渋い顔で残りの紅茶を飲もうとして、
こちらを見詰めるラルフの、笑んだ唇に漂う酷薄ないろにドキリと――何かが疼いた。]
(11) 2010/09/04(Sat) 00時半頃
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ロビンは、ぶるっと身震いした。
2010/09/04(Sat) 00時半頃
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[……息苦しい。
ごくりと喉を鳴らし、顔を隠すように眼鏡のブリッジに手をやった。]
(14) 2010/09/04(Sat) 00時半頃
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>>16 [無邪気な声が呪縛を破る。 はっとトニーを振り返って、繕うように眼鏡を押し上げた。]
――……いや。別に。何でもないよ。
[そう答えた時にはいつも通りの小生意気な優等生の顔になっている。]
(19) 2010/09/04(Sat) 00時半頃
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ロビンは、台詞が被ったのに気付いて、ちらりとラルフを見遣る。
2010/09/04(Sat) 00時半頃
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[トニーの純真な視線は何となく居心地が悪い。 軽く眉根を寄せるも、不機嫌さをなるたけ出さないように気をつけて]
そう言えば、ユーリィと話すって言ってたのにな。 ちょっとあれから色々あってまだなんだ。ごめん。
[一応はすまなさそうな声音で謝った。]
(25) 2010/09/04(Sat) 00時半頃
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>>26 ……ああ。
[渋い顔がいっそう渋く。]
洗い物するのに邪魔かなと思って外したら、つけるの忘れちゃったんだ。
[半分本当で半分嘘の言い訳を淀みなく吐いた。]
(30) 2010/09/04(Sat) 01時頃
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何って……片付け物をちょっと。
[トニーの子供っぽい大きな瞳を、目を細めてじぃっと見詰め返す。 が、続くラルフのユーリィ目撃証言がその雰囲気を変えたようで、彼はそちらを見て思わしげな表情を作った。 薔薇園の「散歩」の意味を知らずとも、ユーリィが探しているのが逢引の相手ではないかという推理は容易に成り立つ。]
(38) 2010/09/04(Sat) 01時頃
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―食堂― [そう言えばルーカスとはあまり接点がない。 脱走だの飲酒だの万年素行不良の先輩方と異なり、消灯前後の見回りでも、室外ではあまり見かけなかった。 とまれ、今はユーリィのことだ。]
ん……まああのユーリィなら、いくらなんでも無断外出はしないと思うけどね……。
[先輩諸氏の例もあることだし、トニーが言うように本当に夜になったら必ず帰るとも限らないが、まさかあの気弱なユーリィに限って……という思いはあった。]
(49) 2010/09/04(Sat) 01時半頃
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トニーが図書館とプールを探すなら、僕は手伝っても良いけど。 それとも手分けして探すかい?
[僅かに傾けた頭。 ラルフのアドバイスを聞き、トニーに提案してみた。]
(52) 2010/09/04(Sat) 01時半頃
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>>56 別にそんなの気にしないよ。
[呆れ返ったような声を返す。]
じゃあこれ飲み終わったら一緒に行こう。 暑いから水分取っとかないと。
[きっぱりとトニーに告げると、カップにポットの残りの茶を注いで一気に呷った。**]
(59) 2010/09/04(Sat) 02時頃
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―廊下― [食堂は出たものの、ユーリィをすぐに探しに行くとトニーに約束した以上、ネクタイを取りに戻っている暇は無いかも知れない。 せめてもとワイシャツの一番上のボタンだけはきっちりと嵌め直す。]
図書館から先に行こうか。 近いし、ユーリィがいつもいる場所だから。
[上級生らしくトニーを先導し、図書館の方へと向かった。]
(85) 2010/09/04(Sat) 09時頃
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―図書館― [図書館にはディーンが居て、既に鍵は開いていた。 それから、勉強中の彼の邪魔にならないよう出来るだけ静かに、二人で手分けして図書館の隅々まで隈なく調べて回った。
林立する書架の隙間や物陰だけではなく、閉鎖されている司書室や書庫の中を窓から覗くことまでしたのだが、結構な時間が掛かった割には成果は無かった。 ――その頃ユーリィはまだ薔薇園に隠れていたのだから当然ではあるが、二人はそのことを知らない。]
(86) 2010/09/04(Sat) 09時半頃
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[暫くして落ち合ったトニーに、]
やっぱりユ−リィいないね。 プール行くしかないか。
[今は大きな声を出しても咎める者はディーンくらいしかいないのに、規則通り律儀に声を潜めて話し掛けた。**]
(87) 2010/09/04(Sat) 09時半頃
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―プールへ行く途中で―>>99 サイラス?
[何故トニーの口から急に万年不良上級生の名が出てきたのか、不思議に思い鸚鵡返しに聞き返した。]
知っていると言えば知ってるような、知らないと言えば知らないような……
ここだけの話。 僕が夜見回りやってるの知ってるだろ? あの人、しょっちゅう寮を抜け出してるみたいなんだよ……上手く誤魔化してるようだけど。 あの分だと、飲酒や喫煙もやってるんじゃないかな。 決定的な証拠はないけど、それらしい痕跡は結構見てる。
[忌々しげな顰め面。 彼の中ではサイラスは「手に負えない不良」というイメージらしい。 よくつるんでいるヘクターと並んで、セシルに悪い影響を与える困った人物という位置づけだった。]
(104) 2010/09/04(Sat) 11時頃
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―プールへ行く途中で― ……僕が言ったことは内緒にしてくれる? まだ確証を見つけてないのに、印象で人を貶めたみたいになったら困るから。
[とトニーに釘を刺したところで、最初の疑念が蘇る。]
でも何でサイラス? 何か気になることでもあった?
[同じ寮内に居ても、この夏期休暇が始まるまでは最上級生のサイラスと一番年下のトニーとでは接点など殆どなかったはず。 何かあったとしたらこの数日の話だろうと、トニーの顔色を窺いつつ尋ねた。]
(105) 2010/09/04(Sat) 11時頃
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[トニーが急に困ったように黙り込んでしまったので、それ以上追求しようがなく。]
……ま、いいけど。
[興味はあれど、基本的に他人に情の薄いロビンはあっさりと引き下がった。*]
(108) 2010/09/04(Sat) 11時頃
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―プール― [そうこうしているうちに二人はプールに着いた。 青く煌めく水面には人影のひとつもない。 ただプールサイドには、誰かがそこから上がったと思しい大きな水溜まりがあって、まだ乾き切っていない足跡が転々と続いていた。]
(112) 2010/09/04(Sat) 12時頃
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―プール― 居ないね、ユーリィ。
[元より書物を好む大人しい下級生とプールは結びつかないのだが。 もしかして隠れているかもとシャワーや更衣室を覗いて見たりもしたが、やはり居ないものは居ない。
こうして無駄に終わった捜索を話し合い、ぼーっとプールを眺めていると、きらきらと光を反射して風に波打つ水面はいかにも涼しげだ。 それに比べて、遮るもののないコンクリートの床のプールサイドはじりじりと熱く。 容赦なく照りつける太陽が二人の黒々とした陰をくっきりと刻んで、不快なことこの上ない]
……何か余計に暑くなってくるな。
[はたはたと手で顔を仰ぎながら襟を緩めようとしないロビンは呟いた。]
(116) 2010/09/04(Sat) 12時頃
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―プール―>>115
…………え。
[衝撃の告白から間を置いて零れたのはそんな間の抜けた声。]
それってつまり、 夜中に呼んでた、相手、ってことだよね?
[我ながら何と言わずもがなの質問だと言ってしまってから気が付いた。]
(117) 2010/09/04(Sat) 12時頃
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[トニーの声は深刻だし、表情も暗い。
サイラスがユーリィの想い人だとしたら。 まだトニーと変わらぬ幼い彼に、性的なあれこれを教えたのもサイラスで。 手首に付いていたと言う紅い痣をつけたのも彼、という事になる。
そう思い至ると、思いがけぬ興奮にカッと頭に血が上ったが、同時顔からに血の気が引く思いもする。]
(120) 2010/09/04(Sat) 12時頃
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>>118 [何か頭がくらくらしてきた。 額に手を当て眩暈を抑えながら、見上げるトニーの視線を受け止める。 水面の反射がギラギラして目に突き刺さって落ち着かない。]
うん、まあ……一般的にはそういう解釈が成り立つけど。
[徒や疎かなことは言えず、お茶を濁してしまった。]
(121) 2010/09/04(Sat) 12時半頃
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―プール―>>122 [トニーの怒りを見れば、ちょっと不用意な言葉だったかと、ちらり後悔が過ぎる。 どうも自分はこういう時相手の気持ちになって考えられず、親身になって相談に乗ってやるというのができない。 ふう、と溜息をつき、]
男同士だけれどもさ。 「好き」って気持ち自体は、そういうの関係ないんじゃないかな。 友達の間柄だって、誰よりも一番の親友だと思ったらその一番て位置は取られたくないって思うだろうし。
[トニーの気持ちを考え、性的なことは抜いて、純粋に好意という意味で説明を試みた。]
(125) 2010/09/04(Sat) 13時頃
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[ロビン自体に性的な禁忌はない――あるのはただ、他人に弱みを握られたくないという自己愛による強烈な抑制だけだ。
幼いうちから賢過ぎ、色々な知識を貪欲に身に付け過ぎた彼は、一方で道徳よりも知と利を愛するエピキュリアンで。 自分の性向については早くから書物で調べて知っていたし、世間からはどういう目で見られるかについても学んでもいた。
だからこそ。 自分の不利益になるかも知れぬ、他人との交流なぞ論外であったし、軽はずみに欲望に負けて自分の人生に汚点を残すつもりはなかった。]
(128) 2010/09/04(Sat) 13時頃
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―プール―>>137 お、おい!ちょっと!
[するすると服を脱ぎ始めたトニーを制止しようと慌てるが、間に合わず。 ざんぶと大きな水音の後、盛大な水飛沫が降り掛かる。 咄嗟に腕で庇ったが、眼鏡に水滴が飛び、ズボンやワイシャツにも点々と水濡れの染みが。]
ああ、もう。 水着着ないで、服のまま入っちゃいけないんだぞ。
[濡れて張り付いたワイシャツの腹の辺りを気味悪そうに肌から離しつつ、顔を顰める。]
(140) 2010/09/04(Sat) 14時頃
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―プール―>>139 [飛び込んだままトニーがなかなか顔を出さないので、少し不安になって水面を覗き込む。 と、彼が急に飛び出してきて、また眼鏡に盛大に水飛沫が飛んできた。 慌てて眼鏡を外してハンカチで拭きつつ、妙に晴れ晴れとした笑顔のトニーを見遣る。
ぼやけた視界の中、差し出された手。 眼鏡を掛け直してそれを確認すると、途惑って彼はトニーの笑顔と掌を交互に見詰める。]
(141) 2010/09/04(Sat) 14時半頃
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……いいよ。僕は。
[眉がハの字に下がる。 水中だと眼鏡が掛けられない――つまり、よく見えないので楽しくない(ついでに言うと泳ぎは得手でないし、足元が滑るので不安だというのは内緒)……と渋った。]
(143) 2010/09/04(Sat) 14時半頃
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―プール― ちょ、
[掴まれた手を振り解く間もなく、]
わひゃっ?!
[間の抜けた悲鳴を残して、バランスを崩した身体は水の中へ。 眼鏡を押さえる余裕などありゃしない。]
(149) 2010/09/04(Sat) 15時半頃
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[ざっぱーん!!
大きな水柱と飛び散る水飛沫。 着衣のままのロビンがごぼごぼとプール底に沈んでいった。]
(150) 2010/09/04(Sat) 15時半頃
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―プール― [一頻り水中でもがいた後、やっとのことで浮上する。 水が鼻にでも入ったか、ごほごほと咳き込みながらトニーを睨みつけた。
秀でた額はあくまで白く、眼鏡が無いと彼の顔は少女人形のように瞳が大きいのがいっそう明らかになる。 長くカールした睫毛の先端にはきらきら光る水滴ががガラスビーズのように宿っていた。]
(152) 2010/09/04(Sat) 15時半頃
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何するんだよ、全くもう…… ずぶ濡れじゃないか。
[額に張り付いたはしばみ色の前髪をかき上げて。 一拍遅れて視界のぼやけの原因が水濡れでないことを悟ると、ぱたぱた顔と身体をまさぐる。 眼鏡が無いのに改めて気付くと、血相を変えて辺りの水底を見回した。]
メガネ、眼鏡!眼鏡どこ?!
(154) 2010/09/04(Sat) 15時半頃
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―プール― [焦りを浮かべて水に潜ってプールの底を手で浚ってみたり、目を凝らしてきょろきょろと見回すのは、傍から見たら滑稽かも知れないが、本人は必死だ。]
ちょっと、探せよ! 君の所為でもあるんだからな!!
[物が見えないのは死活問題だから、ついつい尖った声をトニーにぶつけてしまう。]
(161) 2010/09/04(Sat) 17時頃
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―プール―>>169 [トニーの手に乗った眼鏡。 ひったくるように取ってまずは顔にかけると、すまなさそうなトニーの顔が目に入ってくる。]
……いいよ。別に。
[何となく、自分の怒りが大人気ないもののように思われて、濡れた睫毛を伏せて小さく呟いた。]
(170) 2010/09/04(Sat) 17時半頃
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―プール―>>171 痛くないよ。平気。
[気が咎めるのを振り捨てるように、]
ああもう。濡れちゃったし、しばらく涼んでこっかな。
[殊更に大きな声を張り上げ、トニーから離れてざぶざぶとプールサイドに向かって歩いていった。 そうして水から上がると、濡れた制服を思い切り良く脱ぎ始める。 ワイシャツとズボン、靴と靴下と順番に脱いだものをよく日に当たるようにコンクリートの床に広げていく。 最後に眼鏡を大事に端っこの方に置いて下着姿になった彼は、今度はわざとトニーに水飛沫が掛かるように自らプールに飛び込んだ。]
(172) 2010/09/04(Sat) 18時頃
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ロビンは、トニーに話の続きを促した。
2010/09/04(Sat) 18時頃
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―プール― [暑過ぎる夏の日差しの所為か、それとも大人の居ない非日常的な空間がそうさせたのか。 トニーと水を掛け合い、追ったり逃げたり。 我ながらむきになっていると思うくらい、楽しんだ。
普段ならば、こんなふうに水遊びをする同級生を真面目な顔でたしなめつつ、内心白け切って見ていただろう。 早熟なロビンは、相応の歳であった頃でさえこんな子供っぽい戯れをしたことは殆どなかったのだが、今日は何故かそれが許せる気分だった。]
(204) 2010/09/04(Sat) 22時半頃
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―プール―>>196>>202 [水中での鬼ごっこは、年下でもトニーに分があったようだ。]
ちょっ…… くすぐったい、くすぐったいって!
[胴体を捕らえて身体をまさぐるトニーの手に、けらけらと笑いながら悶える。 磁器の如く白く、細い体躯が、少年の日に焼けた腕の中で撓った。]
止めろって!もう!!
(205) 2010/09/04(Sat) 23時頃
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く、苦し、ほんと、止め
[痙攣性の笑いの発作は止めることが出来ず、息苦しくなってきた。 ほんのりと顔が紅く染まり、目の縁に涙が浮かぶ。]
(206) 2010/09/04(Sat) 23時頃
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―プール―>>208 [やっと擽る手が止まった後も、笑いの発作は暫く治まらず。ひくひくと身を捩っていたけれど。]
……ああもう。
[抱き締められた腕の中、深い溜息をついた。 二学年も下なのに、トニーは殆ど自分と背が変わらない。 多分幼少から外遊びで鍛えたのだろう、細い腕は見かけよりも結構力強い。]
ガキっぽいことするなよー。
(211) 2010/09/04(Sat) 23時頃
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―プール―>>210 なっ、馬鹿!!
[カッと顔が羞恥と怒りに染まる。 あまりのことに絶句して二の句が告げない。]
(212) 2010/09/04(Sat) 23時頃
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―プール―>>215 [さっと振り向いた瞳に映る、幼い残酷さを帯びた笑顔。 それはあまりに無邪気で幼く、ロビンが志向し夢想する「それ」にはまだ届かないけれども。 白い歯が不意に肩に刻んだ痛み、それだけは。
ずきりと甘い痺れをもたらし、紅く色づいた口唇からか細い喘ぎを零した。]
(217) 2010/09/04(Sat) 23時半頃
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―プール―>>219 ……ふ。
[まだ成長し切らぬ細い指の爪を、幼い猛禽の鉤爪のようにも感じ、息を呑む。悩ましく眉根を寄せる。 トニーの言う『好き』がどのレベルの好意なのか、定かには分からず、ロビンは当惑した。]
(223) 2010/09/05(Sun) 00時頃
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>>225 痛ッ。
[背に走った痛みと、囚われて強いられているという感覚が、下肢にいっそうの疼きを呼ぶ。 非日常的な空間が、理性の箍を緩めていたのかも知れない。 が。
結局、固い自制と他者を信じぬ利己が彼を依怙地にさせた。]
(226) 2010/09/05(Sun) 00時半頃
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――もう、離せよ。
[妖しいざわめきを厳しく律し、敢えて冷たい声音でそう告げると、乱暴にトニーの腕を振り解こうとした。]
(227) 2010/09/05(Sun) 00時半頃
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―プール―>>231 [胸がひりつくような疼きはまだ消えない。 けれども。 再び捕らえられた手首を強引に引き戻し、]
勝手にしろよ。 別に「好きになるな」なんて言ってない。
[睨みつけるのは、相手が下級生で自分とさして背丈も変わらぬトニーだと言う侮り。 それが、たとえ苦痛を媒介にしても、彼の焦がれる夢想との接続を困難にしていた。]
(233) 2010/09/05(Sun) 00時半頃
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ロビンは、普段同級生や上級生の時には欠かさない周到さをすっかり失念していた。
2010/09/05(Sun) 00時半頃
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―プール―>>236>>238 ……後悔だって?何言ってんだ?
[虚勢でなくそう吐き捨てられるのは、自信とやはり侮りがあったのだろう。 いつもならとっくに困って謝ってくる相手が、今日に限って屈服しないのにも腹を立てていた。
だから、急ににこりと笑い出した時も、不審に思いつつ油断していた。]
(242) 2010/09/05(Sun) 01時頃
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>>238 [ざぶりとトニーの頭が水面下に消える。 一瞬虚を突かれたが、ハッとさっき捕まえられた手を思い出して、慌てて下を見て、]
(243) 2010/09/05(Sun) 01時頃
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!!!!
[耳まで真っ赤になって手で大事なところを隠して屈み込む。]
――……! ……!
[水に浸かった口からぶくぶくと泡が洩れているのは声にならない罵倒。 火を噴く勢いでトニーを睨んだ。]
(245) 2010/09/05(Sun) 01時頃
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バカバカバカッ。トニーのアホッ。シンジマエッ。
[顔を真っ赤にして叫ぶのは、日頃の嫌味なほど慇懃無礼な優等生とはかけ離れた幼稚な悪口。]
(250) 2010/09/05(Sun) 01時半頃
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ロビンは、怒りにぷるぷる震えながら水中で下着を履き直した。
2010/09/05(Sun) 01時半頃
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[今はもうショックで縮んでしまったが、トニーに拘束されて痛みを与えられたことに反応していたのを見られていたら、きっと死にたい程欝な気分になっただろう。]
(253) 2010/09/05(Sun) 01時半頃
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―プール―>>254 何言ってんだよっ。僕は大嫌いだよっ。
[笑い出したトニーにむっつりと返す。 背を向けて、ぷりぷりしつつプールサイドに向かう。すっかり警戒して、下着を両手でしっかと押さえているのがご愛嬌か。
けれども、決して本気でトニーを嫌っているのではないことは、憤然とこの場から走り去っていないことからも分かる筈だ。**]
(257) 2010/09/05(Sun) 01時半頃
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―プール― [ふたりとも身体を拭くタオルや着替えなどは持って来ていなかったから、濡れた身体は自然乾燥させるほかない。 本当は下着を脱いで水気を絞りたかったが、さっきの一件の後では到底そんな気になれず。 どうせ着替えるしかないにしても、濡れたまま歩くのは嫌だったので、プールサイドで日向ぼっこして乾かすことにした。
コンクリートの床に直接座り込んで、前に伸ばす。 熱されたコンクリートは肌に熱かったけれど、今はその熱さが冷えた身体に心地好い。 両手の平を後ろについて身体を支え、足先や足指でリズムらしきものを取りながら、ぼーっと水面を眺めた。 まだ自分から口を開こうとはしなかったけれど、トニーが側に来るのは、拒否しなかった。]
(283) 2010/09/05(Sun) 07時半頃
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>>274>>278 [身体がある程度乾くと、広げて干しておいた衣服を着込む。 寮に着いたらすぐに脱いでシャワーを浴びるつもりだったから、靴下は履かず靴だけを突っかけてプールサイドを出た。
図書館から出て来たディーンとラルフにばったり出くわす頃には、すっかり機嫌も直っていたから、トニーとふたり連れ立って歩きながらじゃれあう姿が見られただろう。 「元気だな」と落ち着いた調子で声を掛けてきたディーンはともかく、いつも物憂げで神経質なイメージのあるラルフの晴れやかな笑顔にはちょっと驚いた。]
(284) 2010/09/05(Sun) 08時頃
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―寮内― ……そう言えばあの荷物、何だったんだろう。
[と疑問を声に出したのは、追いかけっこのように寮内に駆け込んでから。 ロビンの性格として、好奇心を惹かれてもあまり他人に質問しない癖がついている。
いずれにせよ自分には関わりない、どうでもいいことと判断して、トニーと別れて自分の部屋に帰った。]
(285) 2010/09/05(Sun) 08時頃
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―自室― [自室に戻ると、扉脇に今日の洗濯物が畳んで置いてあった。 取り上げるとふんわりと良い香りが拡がって鼻腔を擽る。 日なたのやさしい匂いと石鹸の香り――そして、あともう一つ。]
あれ。洗剤変わったのかな。
[洗濯物に鼻を近付けて、改めて匂いを嗅いでみた。]
(288) 2010/09/05(Sun) 08時半頃
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―自室― [感じるのは仄かな薔薇の香り。 じんわりと脳髄を刺激するそれに、瞬時意識が遊離しそうになり―― ぶるぶるっと首を振った。]
……ぼんやりしてる場合じゃないや。シャワー浴びて服着替えないと。
[そう独りごちて、さっさと部屋の中に入った。]
(289) 2010/09/05(Sun) 08時半頃
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―浴室― [着替えを持ってシャワールームに行き、頭から温かい湯を浴びる。 塩素の臭いのついた髪を洗い、ついでに全身も石鹸で泡立てた。 気持ち良さそうに目を細めて、手の平と指で隈なく泡を乗せていく。
ここでは、殊更に裸身を見せびらかすこともないが、必要以上に隠すこともしない。 だから、淡い薔薇色の翳りを帯びた白い膚も、まだ雄性の少ない中性的な細い体躯も、見ようと思えば見ることは出来た。]
(291) 2010/09/05(Sun) 09時頃
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―シャワー室― あ、痛ッ。
[背中に手を回した時に、ひりっとする痛みを感じて思わず声を出した。 さっきからどうも背中がひりひりすると思ったら、さっきプールでトニーに引っかかれたことを思い出した。 泡をシャワーで流しつつ、振り返って背中を見る。 が、良く見えない。 背中の真ん中だから、というのを除いても、眼鏡を掛けていないから、余程しっかり傷痕になっていないと見えはしない。 他人から見れば、うっすらと薔薇色の線が背中に三条引かれているのが見えるだろう。]
(297) 2010/09/05(Sun) 10時頃
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[プールでの戯れで、自分がうっかりトニーに見せてしまった醜態―― 恐らくまだ子ども子どもしたトニーは気付いていないと思うが、他人にこの性向に気付かれて弱味を握られるようなことは絶対にしたくなかった。
しかし、そのことを思い出すと、またもやもやとしたものが胸を熱くさせるのだ。 望んでいるものとは異なるけれど、その萌芽に近いもの――
妄想がはっきりと形を成す前に、冷水と温水のシャワーを交互に浴びて火照りを覚まし、さっさと出ることにした。]
(299) 2010/09/05(Sun) 10時頃
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―廊下― [着替えを終えてシャワー室を出る頃には、自分が偉く空腹であることに気付いた。 育ち盛りだと言うのに、今日はまだ朝食しか食べていない。 今日の晩御飯は何だろうと考えつつ、洗い立ての濡れ髪を額に張り付かせて、とてとてと廊下を歩く。]
あれ、ディーン先輩。
[丁度ランドリールームに入っていく、蜂蜜色の整えられた髪を見かけた。]
(301) 2010/09/05(Sun) 10時半頃
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―廊下― [しかしその後、後を追うように飛び込んで行く銀色の陰には。]
……え、あ、ちょっと。
[この半日、探していたユーリィ本人に間違いない。 呼び止めようと慌てて駆け寄り……しかし室内のただならぬ気配に足を止めた。]
『サイラス先輩が抱くのは、ディーン先輩だけでは、ないですよ? 佳い気にならないで……。』
[ヒステリックなくすくす笑い。 これは本当にあの、日陰にひっそりと咲く花のようだったユーリィの声なのだろうか?]
(304) 2010/09/05(Sun) 10時半頃
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[その驚きに撃たれて、言葉の中身、サイラスがディーンを…の件の衝撃が薄れたのは幸いであったのか。 ディーンが何事かユーリィに返したのは聞こえたが。 立ち竦んでいるままに、パッと銀色の陰が飛び出すのを見送ってしまい、一呼吸遅れて慌てて後を追った。]
(305) 2010/09/05(Sun) 10時半頃
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―廊下― ちょっと、ユーリィ!! 待てよ!
[走るのはあまり得意ではないが、相手がユーリィであることもあって何とか追いつくことに成功する。 荒い呼吸、必死に腕を掴んで]
トニーが心配してたぞ。 一日探し回って……って話を聞けって。
[駄々っ子のように手を振り解こうとするのに閉口して、少し声を荒らげた。]
(306) 2010/09/05(Sun) 11時頃
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[腕を掴み直し、こちらに身体を向けさせようとして。 涙を湛えた哀しい瞳で睨み付けるユーリィの顔を、真っ向から目にしてしまい、ドキリと心臓を躍らせた。
蒼褪めた貌は艶めかしく、噛み締めた唇は深紅の花弁のよう。 追い詰められて狂乱した小動物のようなその表情。 細い身体から噎せ返るような薔薇の香りが立ち昇り、ロビンの思考を奪う。 急速に被虐と裏返しの嗜虐心が湧き上がってくるのを感じ――
――追い掛けて来たディーンの気配で我に返る。 呆然とした一瞬の隙に、ユーリィは乱暴に彼を突き飛ばして、廊下の先に走り去って行った。]
(308) 2010/09/05(Sun) 11時頃
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―廊下― [呆然としていた為か、突き飛ばされた時に踏ん張れずに、床に尻餅をついてしまった。 何故か――立ち上がれない。
近寄ってきたディーンが差し出す手を、茫洋とした瞳で見つめ、次にディーンの顔をまっすぐに見上げた。 胸が苦しくて、とても、息苦しい。 はふ、と艶めいた吐息を零した。]
(310) 2010/09/05(Sun) 11時半頃
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ロビンは、下肢にじんわりと熱が溜まっていく。
2010/09/05(Sun) 11時半頃
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―廊下― [ディーンの腕を、抱き起こされるまま受け入れて。 セシルのように薔薇の精そのものの香を吸収したのではなく、その残滓を嗅いだだけだから、変化は暫定的なもの――今はまだ。 ゆるゆると進行するそれに侵されつつあることは気付かねど、今の状態がおかしいと思う理性は充分に残っている。]
……すい ま せん、匂いの所為で、眩暈、が
[頭をゆっくりと振りながら、ディーンの腕に細い指を食い込ませて縋った。]
(312) 2010/09/05(Sun) 12時頃
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[ディーンの――自分よりも丈高い男の身体に触れていると、日頃は秘めたまま内に抱えている妄想がぐろぐろと渦巻いて。 足をもじもじとすり合わせてしまうのが止められない。
ディーンに対するのは尊敬の念。 理知的で、自己抑制的……理想に近い姿として。 同じ「優等生」でも、単に純粋なだけの神の信徒であるベネットよりも彼は望ましく、優れているように見えたのだ。 だから、その敬愛する先輩の前で、このような醜態を晒しているのは耐え難い恥辱だった。]
(313) 2010/09/05(Sun) 12時半頃
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―廊下― ごめん、なさ い
[ふらふらと自力で立とうと試みる。 疼きは潜熱となって下肢に籠もり、思わずきゅ、と尻肉を引き締めてしまう。 それなのに、ディーンからは優しく頭を撫でられて。 自制心が決壊しそうになって、じわりと目の縁が涙で潤んだ。]
(317) 2010/09/05(Sun) 12時半頃
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―廊下― 大丈夫、です。 自分の部屋で、休みますから……
[辛いけれど、早く自分の部屋に行って誰にも知られないうちに埒をあけてしまいたいという気持ちが勝った。 気丈に、なるだけふらつかないようにとディーンから離れて、背筋を伸ばして立つようにした。 今は自分のことで手一杯で、ベネットの視線に含まれるものに気付くことはなかった。]
(322) 2010/09/05(Sun) 13時頃
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ロビンは、自分の身体の変化にベネットが気付きませんようにと祈りながら。
2010/09/05(Sun) 13時頃
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―廊下―>>323>>324 [こくりと従順にベネットに頷く。 一刻も早く独りになりたかった。
ディーンは自分の異常に気付いているのだろうか。 多分気付いていて素知らぬ振りをしてくれているのだろうと思うと、とても有難かった。]
ありがとうございます……
[零れた感謝の言葉は、ベネットの優しさに対するものだけでなく、ディーンの気遣いに対するものでもあった。]
(333) 2010/09/05(Sun) 13時半頃
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ロビンは、ふたりに丁寧な礼をした。
2010/09/05(Sun) 13時半頃
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―廊下― [ディーンの気遣いを無駄にしたくはなかったし、ベネットに心配されて気付かれるのも嫌だったので、少しぎこちなくはあるけれど、しっかりと床を踏みしめて歩く。 ディーンから離れると、疼きは徐々に治まってきたような気がした。]
(334) 2010/09/05(Sun) 13時半頃
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―自室― [逃れてきた筈の自室なのに、戻ってくると何故か一時治まりかけていた疼きが今度はより激しく自身を苛む。 それが部屋に置いた洗濯物から漂う薔薇香の所為だと気付かぬまま、ベッドに倒れ込んだ。
トニーに付けられた背中の傷の引き攣れるような痛みと。 先程触れたばかりのディーンの肉体の質量と体温。 それらが相俟って、どうしようもない崖っぷちに彼を追いやった。]
(342) 2010/09/05(Sun) 14時頃
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―自室― [荒い息を吐きながら、うつ伏せで腰を高く掲げて、もどかしくズボンを下着ごと膝まで引き下ろす。 色づいた頬をシーツに押し当て、固く目を瞑って慣れ親しんだ夢想に耽る。 それは奇しくも、今薔薇園で行われているのと似たような、それよりももっと激しく、暴力的で技巧に飛んだ凌辱。
いつものような秘匿の為の準備も、小道具を出す余裕も無い。 細い体躯いっぱいに、淫らな想念が溢れて今にもはち切れそうだった。]
(348) 2010/09/05(Sun) 14時半頃
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―自室― [そろそろ食事時だから誰かが覗きに来るかも知れない。 そう思いつつも、快感を紡ぎ出そうと動く手は止まらない。 歯を食いしばって、声を押し殺すのが精一杯だった。
――時が経って。 濡れたシーツの上に四肢を投げ出して横たわる身体は、壊れた人形の如く。 白い膚は未だ薔薇色の火照りを残して、白い穢れを下肢に纏わせていた。 着衣も乱れて、半裸よりも裸に僅かに服を纏っているだけで、ほんとうに凌辱を受けたかのようにも見える。
けれども、既に欲望は開放されて静まった筈なのに、求める息苦しさは消えないのだ。 それは薔薇の呪いのような外から来たものではない――元々彼が持っていたもの、ずっと隠匿してきたものが偶然の重なりで引き出されただけ。
一度火が点いて現実味を帯びてしまった妄念は消えはしない。]
(355) 2010/09/05(Sun) 15時頃
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―自室― [夕闇の部屋の中、のろのろと服を着込んで、また喉元まできっちりとボタンを留めてタイを結ぶ。 開いた窓から夜風が吹き込んで、遠く薔薇の香りを運んでくるが、麻痺した嗅覚はもうそれを感知しない。
今朝洗って窓辺で干したばっかりのタオルがまた使われて、床に散乱している。 寝乱れて体液の染みをつけたシーツが半分剥がれているのに、いつも几帳面にベッドメイキングする少年らしくなく放置してある。
やがて、身支度だけは普段通り完璧に整えた彼は、ふらりと部屋を出て食堂へと向かった。]
(368) 2010/09/05(Sun) 16時頃
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―廊下― [ロビンの表情は何も変わらない。 ただ、瞳だけが。
レンズの奥の灰色の瞳だけが、夢見るように此処ではない何処かの景色をうっすらと宿していた。]
(370) 2010/09/05(Sun) 16時半頃
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―食堂― [食堂へ入っていく足取りも普段どおり。 先に座っている先輩方に形ばかりの挨拶をして。 トレイを取って、用意された料理を乗せていく。 紅茶もカップに注いでトレイに添えると、無造作に席に着いた。]
(372) 2010/09/05(Sun) 16時半頃
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―食堂― [先輩の向けた安堵の微笑は、本当にロビンの眼に……こころに、映っていたのだろうか?
彼は行儀良く、だけれども歳相応の旺盛な食欲を示して料理を口に運んでいく。 先程の廊下での出来事の影響は、そこには全く影を落としていないように外からは見えただろう。]
(373) 2010/09/05(Sun) 16時半頃
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―食堂―>>390 [食べ終わって、ナプキンで口を拭う動作も恭しく。 と、セシルが迷子のような顔をして食堂に入ってきて、一目散にフィリップに駆け寄るのが目に入る。 それに対する反応は、眉を僅かに上げたのみ。 「ハーモニカ」がどう、という言葉にも殆ど無反応で、]
さあ。見かけませんでしたね。
[と、フィリップの問いにも素っ気無い。 優等生の仮面を維持する為に同情する振りで繕うことさえ忘れたようだ。]
(392) 2010/09/05(Sun) 20時半頃
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―食堂― [かたりと椅子を引き、立ち上がる。 食べ終えた食器を載せたトレーを運ぶ端整な横顔は、セシルとフィリップのやり取りなど眼中にないようだ。
戸口に現れたトニーが問い掛けた時だけ、ちらりと視線を動かした。]
(395) 2010/09/05(Sun) 20時半頃
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―食堂― ユーリィならさっき見たよ。
[淡々とした声音。]
僕を振り切って、またどっか行っちゃったけどね。
[トニーを見遣る眼差しはあくまで平静。 いや、平静過ぎるほど。]
(398) 2010/09/05(Sun) 20時半頃
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ロビンは、そのまま食堂から出ようとする。
2010/09/05(Sun) 20時半頃
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―食堂― [自戒の堤防の罅割れから漏れ出す「何か」は目に見えぬ薄膜のようにロビンを覆う。 けれども、それが何であるかに気付くものは、]
(405) 2010/09/05(Sun) 21時頃
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ロビンは、トニーの言葉を聴かず、廊下に出た。
2010/09/05(Sun) 21時頃
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―廊下― [まだトニーの悪意の棘に満ちた声が聞こえてくるけれど。 彼はそれにはもう注意を払わない。
全く平静な顔で、はふ…と熱い吐息を零す。 何かを待ち望むようにうっすら開いた口から、やわらかい舌が閃いて、薄紅いろの唇を湿した。]
(411) 2010/09/05(Sun) 21時頃
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[自室には帰らず、亡霊のように寮内を彷徨う。 砂漠で水を求める遭難者の如くに。]
(414) 2010/09/05(Sun) 21時半頃
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[ふと横を向くと、窓の外は既にか黒い夜闇に覆われている。 そして、ガラスに映る己の顔。 少女人形のような貌と、温度のない眼差し。]
――まだ、大丈夫。 うん。僕は、大丈夫だ。
[自身も何が大丈夫なのか分からぬままに声に出して呟いた。]
(417) 2010/09/05(Sun) 21時半頃
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―廊下―>>417 [けれどもそう言った端から胸塞ぐ「何か」に息苦しさを覚えるのだ。
いつの間にか窓に寄り掛かって、額をこつんとガラスに押し当てていた。]
(435) 2010/09/05(Sun) 22時半頃
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ロビンは、夜の温度を伝えるガラスに、熱夢を醒まそうとするように。
2010/09/05(Sun) 22時半頃
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―廊下― [こつり、こつり、と硝子に額をぶつけて。 渇望と抑制の鬩ぎ合い。 背後を通りかかったディーンの姿が、窓ガラスに映っても気付かぬほど己自身に集中していた。]
(461) 2010/09/05(Sun) 23時半頃
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―廊下―>>464 [声を掛けられても振り返らず。 硝子に映ったディーンの姿が自分の顔のすぐ側に現れて初めて、灰色の瞳に幾らか焦点が合う。 にも拘らず、肩を叩かれた時には、怯えたようにびくりと身体が震えた。]
ぁ……
(468) 2010/09/06(Mon) 00時頃
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―廊下―
僕は 大丈夫 まだ
[大丈夫かと聞かれたら、機械的に答えを返す。 それは先程自分自身に言い聞かせていたのとそkっくり同じ文句。 硝子に額を付けたまま、横目で見上げる眼差しは、ディーンの心配なぞを余所に、恐ろしく抑制の効いた温度の無いそれ。]
(479) 2010/09/06(Mon) 00時半頃
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―廊下― [サイラスが現れると、その姿を認めるか認めないかの前に、灰いろの瞳が急速に熱を帯び始めた。 ふ……と薔薇の香りを求めるように唇が開く。 ふらり彼を追うように、窓硝子から頭を引き剥がした。]
(481) 2010/09/06(Mon) 00時半頃
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