人狼議事


226 【突発誰歓】君の瞳に花咲く日【RP村】

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視点:


メモを貼った。


[私が連れてこられた一室は、皆がいた病棟の頃と変わらぬ装い
どうやら私は″模範的″に過ごしていたことと
脚の硬化が進んでいたことから、何もできないと思われているのだろう
部屋の扉は解放され、用意されていたのは車椅子

もう、私を見ている人も知っている人もいない
...は車椅子にゆっくりと乗り、車輪を動かして
部屋の扉を何とか開けて廊下へと繰り出す

部屋には鍵がかかっている部屋、誰もいない部屋
色んな部屋があった

苦痛の声、怨嗟の声も聞こえる]


ここ、は地獄?
それとも牢獄?


[でも、幸せそうに眠る桜の樹と一体化しそうになっている女の子の患者を見れば
もしかしたらここ、天国かもしれないとも思う
なんて不思議で、残酷で、美しい白亜の檻]

……誰か、いない……の……?

[声を出して、私は車椅子で廊下を進む

はた、と気づいた事
ナナオは、確か昨日連れて行かれたナナオは
居るであろう。ならばと

私はとりあえずは彼女を探そうと、廊下を――……*]


メモを貼った。


メモを貼った。


[――死んでいたかと、思った。
夢と現の境界があいまいになってきている。あと、どれくらい生きていられるだろうか――。]

・・・あ。

[眠りに落ちる直前、ペンを転がしてしまって――。
身体につけられた機具が邪魔だった。
固定されているせいで、ペンを取れない。
何て事だ。辺りを見回しても、ナースコールもない。
とはいえ、ペンを取ってほしい――。
なんて、コールをする気にはなれないけれど。]

・・・あ。
あー、あー。あ、か、とんぼ。

[少しだけ、声が戻ってきている。
喉は乾いているけれど――。
書けなくても、歌えるならばまだいける。

あたしは、まだ未完成の歌を歌いだした――。]


……?
誰か、だれか、いるの?

[廊下の向こうのドアから、声がする
聞いた事がある様な、声だけれど……でも何だか掠れている気もする
叫んだか、それとも喉が渇いているのか。原因はわからねど

車椅子の車輪を動かし、その部屋へと向かい]


う、た?
あなたは、だれ?


[私が隔離された部屋より何だか重厚な扉
力いっぱい押せば開きそうではあるけれど――……

扉越しに、私は歌の主に問いかけたのだった]


メモを貼った。


[声質が少し変わって、低くなってしまったようだ。
それは叫んでいたせいか、喉の乾きのせいか――ややハスキーな声は、老婆のようだ。
一気に歳をとってしまったような気がする――。]

――…。

[誰かの声に、あたしは歌を止める。

ああ、あたしはまだ幻にはなっていなかったのだろうか――。
なんて気分で、微笑んだ。]

ナナオ。
――あなたは、どなた?

[声の主は、重厚な扉の向こうのようだ。
たぶん、この部屋はあたしの毒を逃さないための檻だ。
――けれど。
このゴツゴツとした黒い小手のおかげで、部屋の中に毒が充満しているということはない。]


――”何なんだろうな、俺ら”
(そんな腑抜けた顔、見たかったわけじゃないんだよ)
 

[彼の意識が不鮮明だった。夢と現にたゆたう中で、鳶色の瞳が僅かに濡れているのがわかった]

(涙。どうして)

――『消えたくないの』
 啜り泣きが聞こえる。泡となって消えた、少女。
 彼にだけ打ち明けた、悲哀。悲嘆。後悔。未練。
 少女の顔が、青年や女性のものへと代わり、代わる。

ケイトの声が甦る。(
 諦めたくない。此処に居たい。キルロイの絵が見たい。諦めないメルヤが見たいと言った彼女。
 それは等しく、終わりが近づいているゆえの不安の吐露もあっただろう。
 彼女にとって、特別ではなかったから。今までメルヤに辛苦を残してきた人たちのように、本音を零した一面もあるのだろう。
 彼は、そう思う。
  それで良い。それで良かった。


 例えば。ヒナコがナナオを喪う時のように。
 例えば。キルロイがケイトを喪う時のように。

 自分が連れて行かれたことでの悲嘆など、少なくていい。心を、抉られるほどの痛みはないだろう、と。

――”観察者さんだから”(

 彼は、彼が意識していた、気づいていながら気づかぬ振り。踏み込まないことで誰かの特別にならずに済んだ、と彼自身は思っている。

 誰も悲しませたくなかったから、はやく忘れてくれればいい。


 微睡むような意識が、揺れる。


夢とわかっていながら起きられない時のような気持ち悪さが、ひたひたと押し寄せてくる――。


 不意に、夢の中で立っている彼の中から、小さな影が飛び出した。

――”ネイサン!”

 ぞくり、と背筋に悪寒が走った。
 飛び出した小さな影は色を成し、幼い少年の姿を映した。
 まだ、病院に来て一年も経ってない頃の、幼いメルヤが、ピエロの格好をした男に抱きつく。

『メルやん♪ メルやん♪』

 ぐらり、と世界が歪む。
 幼いメルヤは、ピエロの男に抱きついて、受け止めて貰っていた。嬉しそうに、懐く姿。ひどく懐かしい。ひどく狂おしい。過去の残像だ。

 気づけば彼の周囲には、様々な人がいた。
 本を読んでいたり、花に水をあげていたり、絵を描いていたり――様々な人が色んなことを、楽しそうにしている。
 連れて行かれた人達。すでにもう亡くなった人達。みんなが笑顔で、彼を呼ぶ。
 

 メルヤ。メルヤさん。メルヤくん。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。メルヤ。


皆が皆楽しそうにしている。まだ病気の進行がひどくない時の姿で、まだ各々が日々を楽しんでいた時の姿で彼を呼ぶ、嬉しそうに、幸せそうに呼ぶ。

 彼は此処が、夢の中なのか。幻覚症状が悪化したものなのかがわからなかった。
 前者であって欲しいと願いながら、目を奪われそうになる。


視線を避けても、そこにはまた、誰かがいた。

――…ナナオとヒナコとタルトが、楽しそうに中庭で遊んでいて、こちらに気づく。

 堪えきれずに、彼はその場に頽れた。どこからともなく案じるような声がする。シーシャや、キルロイの声のようだった。

 いつの間にか。幼いメルヤが彼の前に立っていた。何の憂いも不安も知らないといった、喜びに満ちた笑顔で。


”もういいじゃん。ぼくのできることはないんだよ
もう、誰も見守ることも見ていることもできないんだよ”

――…”もういいじゃない、なにを我慢するの?
     
《この世界でならみんな一緒に消えられるよ》


なんて――ひどく、甘い誘惑だ。


 幼いメルヤが今度は、オスカーとはしゃいでいる。まだ瞳に感情を残している頃のユリに、桃の花を渡している。
 ケイトはいつの間にか、キルロイの隣に立っていて。

――”ねえ。気づいてたじゃない。幻が幸せにみちてること。
 もう、それに浸っても誰にもめいわくにならないよ!”

”だから、ほら。素直になろうよ、ぼく
        も う 諦 め た ん だ か ら"

 そう、彼は諦観している。彼の望みはみんな一緒に消えること。そんな未来のない望みを諦めるために、退廃と諦観を選んだのは彼自身。
 ここで、幻に呑まれても誰に迷惑がかかるわけではない。幸せに満ちた世界は、憧憬や懐かしさや慕わしさを思い起こさせる。
 
 彼は疲弊していた。幻を見続けて3年が経つ。辛い現実を直視したいという言葉は本当だが、他に誰もいないなら何を見ていればいいのだろうか?
 諦めることしかもう、道がないような気がしている。
彼が望んでそうしたように、彼の中には何も残っていない。


約束も、後悔も――。


 不意に甦る姿があった。
 どこか気怠そうな姿に、彼は怪訝そうになる。彼の幻は、在りし日の中でもみんなが一番幸せそうな頃を映し出していたからだ。


――『“そろそろ”が、良い。』

 その場所だけ冷え切っているような、気がした。冬の夜空の真下のように。
 心の中で悪態をつく。自分と彼とどちらともへ投げつける。

『お前まで“落させて”くれるなよ。』
(その言葉にも、本心が混ざっていたような気がする。ただ、諦めの色が強いだけで)

 踏み込まずに、気づかない振り。それに勘付いていながら、ずかずかと人の中に入って来る。呆れたような嘆息は、誰に対してのものだったか。

”もう、どうにもならないよ? あいつだって忘れるんだ。知るもんか”
 幼いメルヤが、手を伸ばす。彼の内から飛び出した、この幼い姿をしたメルヤは、メルヤ自身の心の一部で本心の欠片。

「そうだね。そうかもしれない。」
 目を細めた。幼い自分に対して、手を伸ばす。自分より幾分か小さな手を握った。

「でもね。僕は――僕の”諦め”なんかより、誰かの望みの方が大事だよ。


今のとこ君のいうとこのあいつの望み、が僕の中にあるんだよ」


『でも、やだな。
あんたから「はじめまして」なんて聞くのは。』

 その言葉は、彼が先にいなくなって果たされるようなものではない。大人振ってるその厚い面の皮の下。消えたいと、望むその裏には。

どこかで誰かの痕になりたい、特別でありたい。
と願っているようだと、思った。本当のことはわからない。踏み込みきれなかった彼にはわからない。

 だけど、それが彼の”未練”となっている。最後の最後。酷く引きづるようなものを残しやがって。恨みがましくそう思う。

”素直じゃないね。おとなって。”

 幼いメルヤは、ふて腐れたような顔を浮かべる。――次いで、大人を小馬鹿にするような小癪な笑顔を自分に向けた。

”それがなにかわかんなくても、キライより大好きな気持ちが大きいって言えば良かったのにさ”

 幼いメルヤが、抱きついてきた。自分の内に戻るように。


 同時に周囲の幻が消えていく――。


―隔離区域―

……死んでも言うか、そんなこと。

[幼い自分に向けて罵倒の声をあげて、彼は意識を緩やかに浮上させた。
白い壁。白い天井。窓はない。冷蔵庫もない。サイドテーブル置かれているのは、どこかで見たノート。
シーシャから貰ったノートを、持ってきてくれたようだ。

ひどい倦怠感が、彼の全身を包んでいた。かすかに金属質の音が鳴る。手錠を嵌められていると気づいたのは、この後だった。**]


――!ナナオ?
私、わたしよケイトリンよ。
貴女、無事だったのね……!

[その声に、...はぱっと顔をあげる
開けなきゃ、この扉
――どうやら隔離病棟は各部屋への施錠はされていないらしい
だから...に残された筋力で何とか扉を開ける事が出来た]

ヒナコも、心配してたの……
貴女を、探してっ……!!!

[私が扉を何とか開ければそこには、拘束具で手を覆われた彼女がいた
小手に覆われた、異様な姿
女の子なのに。なんで。こんなこと

彼女を拘束した者たちへの怒りをそのままに
...は車椅子を動かし、ゆっくり彼女に近寄りその小手に触れた]


ナナオ、ななお。
だいじょう、ぶ?

[自室には目覚めて以降帰っていなかった
そろそろ荷物が届くだろうか――でもとりあえず、は
私は、目の前の彼女の手が拘束された姿に、
息をのんでいた]


[再びの目覚めは最悪だった。
頭痛とも目眩ともしれぬものが、間断なく押し寄せる。

まだ鱗の生えてない右手首に注射の痕。おそらくは、筋弛緩剤系の何かを投与されているのだろう。
手首には手錠がされており、両足も鎖を長めで拘束されている。体を横にして、動かす。

普段通りとは言えないが、十分に歩くことは出来そうだった。
ふらついた足取りで扉の前まで辿り着く。ドアノブを回せば鍵は掛かってなかった。]


……なるほど

[気怠い体を叱咤しつつ、ひとりぼやく。
彼が模範的であろうとしたのを、病院関係者は鵜呑みにしてくれたようだ。
薬の投与や手錠は、肉体的には健康な彼を警戒しての措置といったところか。

廊下には簡単に出られるようだ。頭痛と目眩が同時にして、足取りはやや覚束ない。
倒れている間に鱗が増えたようだが、どこがどうとは確認する気が起きなかった。
左半身の背中は、おそらく覆い尽くされているような感触がある。

包帯は、まき直されていない。]


[廊下は前の病棟よりも広いだろうか。開放されたままの部屋があれば、彼がいた部屋よりも厳重な部屋もある。

狂おしげな声が、聞こえる。耳を劈くような声は、彼には少し有り難かった。
幻聴を消し飛ばすような、辛苦の声は、彼の見る甘やかな幻を一時的にも打ち消すかのようだった。
一歩。進む事に金属が擦れる鎖の音も、現実を見せ付けるのに役立っているとも言える。

彼は自分が思うよりもずっと現実主義で、理性が強い。
逆にその強い理性が、冒していく病に呑まれずに苦しませる要因となっているとも言える。]


喜びに満ちた幻に意志すべてを委ねられたら、苦痛など無くある側面に置いては幸せになれたのかもしれない――。


――…それでも。常ならず、彼を呼ぶ幻聴に耳を傾けない。名前を呼ばれて振り返りそうになるのを必死で堪えて、現実に足を踏み留めながら廊下を当て処もなく歩んだ

じゃらり。彼の四肢の自由を奪おうとする鎖の音が耳朶に響く*]


ケイトリンさん。
…大丈夫?無理しちゃ…、だめ、だよ。

[扉を開けようとするケイトリンさんの方が、心配になって。
ここにいると言うことは、ケイトリンさんこそ悪化してしまったのではないか…と想い至り。
ナナオも身体を起こそうとするけれど――固定をされていて無理のようだ。]

――なんだか、久しぶりだね。

[部屋に入るケイトリンさんの様子とは裏腹に、ナナオは穏やかに――。
と言うよりは、枯れた花みたいに静かに微笑んだ。
生気が抜けている。]


[手錠をされたまま、当て処もなく歩く。ナナオとユリが、まだどこかにいるだろうか。
 薬の副作用で動く足取りは鈍く、鎖の音は重々しい。

幻聴がずっと、メルヤの頭に木霊する。
『メルヤ』と呼ぶその声が、誰のものかは判別出来ない。どこか懐かしく、どこか聞き覚えのない声がする。

少なくとも一番頻繁に見る、ピエロの男ではない。彼はメルヤのことを『メルやん♪ メルやん♪』と呼んでいた。その愛称はどうかと思う。

ふと、過ぎる。彼のすべてのはじまりを形成したとも言うべき、ピエロの格好をした男。

本当に一体どこから取り出したのか。一輪車に乗りながらジャグリングをしている。廊下の真ん中を歩いていたので、メルヤの周りでぐるぐる旋回している。

『マジック♪ マジック♪』

愉快な男はいつだって愉快だ。幻だが真実こうであった。そう思う余裕が彼にできてきた。

リノリウムの床は、スリッパ越しでも冷たい*]


…そっか、ヒナちゃんが。

[そして、困ったように眉を寄せる。
大丈夫?――と聞かれたことには、頷かなかった。]

…約束。

ヒナちゃんとの約束が、まだ、あるから――。
あたしは、まだ生きてるよ。

[だから――、まだ、大丈夫だって。
悪あがきをして、かろうじて死んでないよ――。
そんな、風前の灯火のような――微笑みだった。]

…ケイトリンさんこそ。
ここにいて。
だいじょうぶ?

[その微笑むを携えたまま――。
ナナオは、静かに訊ねた。]


無理なんてしてないわ

[身体より、約束を守れなかった事
其れに今、貴女のその声を聞く事の方がよっぽど心が痛いの
綺麗な声だったのに。何があったのかしら]

……ええ、久しぶり、かな
貴女が、私が隔離されてそんなに時はたってないのにね
ナナオ、貴女に何があったの?

[元気はつらつとしていた、輝いていた貴女
中庭で皆と歌っていた姿
ヒナコと笑い合っていた姿

その姿が褪せる程に、貴女の顔には生気が見られない]


メモを貼った。


――これのせいなの?

[...は車いすを動かし彼女に近づけば固定している拘束具
そして小手に静かに触れる

きしり、と関節の音が自棄に響くだろう]

コレを外せば、″貴女は元通り″になる?
ねぇ、ナナオ

[困った様に眉寄せる姿に...は無表情だが心配げな色を映した瞳で見つめる
大丈夫という言葉に頷かないことに、...は気付いていた]


……生きながら。死んでるみたいに見える
ナナオ、貴女に、なにが、なにが……

[嗚呼言葉に詰まる
静かに尋ねる言葉に...は小さな声で]

私は症状が悪化したから連れてこられたの
もう直ぐ荷物も私の部屋に届くでしょうね

[告げる声は平坦ではあるものの、悲哀が滲む]


[ふと立ち止まったのは聞き覚えのある声がした。
の声。彼は何時だって、誰かの声に耳を傾けていた。

弱々しい声と、悲哀まじりの声は、幻でないと断言できる。彼の幻覚は、ただひたすらに喜びに満ちているものだったから。]

…この声、まさか。

[怠い体を叱咤して、足早に近づく。開かれたままの扉の向こうで、見知った二人を見た。]

ナナオ…!
 それに…ケイト?

君まで、いたのか。

[動揺が僅かに声に混じったのは、せめてケイトの時間を伸ばそうと思っていたのもあった。叶わぬことかもしれない、と思っていた。
歯噛みするような思いで、二人を見つめる。手錠と、足首の鎖の音が嫌に響いた。]


メモを貼った。


……ああ、メルヤ貴方もいたのね

[動揺を閉じ込めた声に其方を振り向き絶句する
なに、その拘束されたものはと、声にならぬ声

私と違い、何故2人にはこの様な厳重なものが]

痛くないの?それ
……擦れたり、とかしそうだわ

[じゃらりと響く鎖の擦れる音
それに僅か眉を顰め尋ねよう

隔離病棟というより牢獄だわこれでは
そんな負の側面を見れば...は歯噛みした]


たぶん…、限界、かな。

[何があったか――って?
ナナオは、知らない。
せんせーは、ナナオに何も言ってないから。
寝ている間に、ここにいて――。
寝ている間に、これがついていた。
だから、それ以上は話せなかった。]

これがあたしの毒を吸いとってくれているみたいだけど…、たぶん、…。

[そう言って、黒い小手のような機具を示した。
誰かが入る気配に、言葉は途切れた。]


[――まるでその毒を、採取するために用意をされていたような――黒い小手。

…外しちゃ、駄目な気がする。
だから、ケイトリンさんが外そうとすればナナオは止めるだろう。

外したら、みんな死んじゃうよ。
あたしにさえ効く毒なら――きっと、今は誰にでも効くんじゃないかな。
そう言おうとしていたから――。]


あ。ごめん、これ外せるんだ。

関節外して…ほら、マジックショーとかで、縄抜けとかそんなの見たことない?
っと…、ケイトは余りいなかったし、ナナオはピエロの彼知らないからよく知らないか。

一応ね、これ以上拘束されたら溜まったもんじゃないから。付けてるだけなんだ。

[平然と彼は言ってのけたものだった。]


…メルヤ。

[つい先日まで、あっちにいたのに。
みんな、こっちにきたの?…なんて、思って――困ったように微笑んだ。

力なく微笑むだけで――言葉は、名前を呼んだだけだった。]


……。

[ややあって。彼も部屋に入り込む。
角度を気にして僅かに重々しい扉を閉めた。締め切るのを躊躇ったのは、ここの設備が気になったからだ。]

ナナオ。おとといの朝振り、かな?
と、言っても僕が食堂で見掛けただけだけど、ほら、近くに座ってたから、ね。

[限界。その言葉に瞑目する。
静かな声で近づきつつ、ナナオの痛ましい姿を見つめる。]

…ナナオ
重要なのは黒い小手だけ、かな?

[じいっと観察するような、問い掛けるような視線を送る*]


……そう

[限界、という言葉を聞けば...は歯噛みする
あんなに、元気だったのに
あんなに――明るく笑って、いたのに

私も隔離病棟で治療を受けたほうが良いとは言われたけれど
彼女程は悪化はしていない
――外見、上は]

それは毒を吸い取るものなのね
でも、何だか物々しいわ

[その毒は何処に捨てられるのだろう
外そうとすれば止められて。その事に小さく眉寄せよう
硬石化した身体なら大丈夫な気もしたけれど
メルヤも現れた事で...は外そうとする手は止めた]


……。

[そしてやってきた彼の発言
思わずジトっとした視線を送ったのも致し方ないか

ピエロやマジックはあまりみた事がない
...の家庭は清貧であったので

外せるなら外しなさいよなんて思うも、
確かにこれ以上拘束されたら自由には動けまい
...は無言を貫く事ことにしたのだった]


分からない…。

[ 
ナナオには他にも、点滴らしい管や――用の管や瓶もベッドについていたりする。
開放区にいたころのように、歩き回るのは難しいだろう。
力なく首を振った。]


[視線が痛いのは気のせいだと思い込んだ。]

ケイト、ちょっとあっち見ててくれる?
[指差したのは扉の向こう側。暗に、少し見張ってて欲しいと頼む。

なるだけ、女性の視界の入らないところに言って、手首の関節を捻る。ごきっ、ばきっ…余り聞きたい音でもないし、メルヤも余りやりたい技でもない。

手錠を外せば再び手首の関節を戻す。はずした手錠は指で一回転させた後にポケットに忍ばせた。]


ナナオ。

[視界に留まらない位置を守ったまま、おもむろに上着を脱ぐ。包帯を解き出す。
鱗が増えているのをぼんやりと眺めながら。

覇気のないに声を掛ける。]

会いたいひととか、いるんじゃない…かい?

タルトは、君の約束を健気に待っていたし。

ヒナコだって……いなくなって悲しんでいた。
[僅かに間が空いたのは、彼が逡巡だった。]


あと、トレイルが凄い動揺して僕がびっくりしたよ

[普段からやたらトレイルに構われるので、実は気づいていた。
トレイルとメルヤがいる時に、ふとナナオがこちらを見ていること。

視線はメルヤとは合わない。その意味がわかったのは、やたら構われてたせいだろう。

……鎌掛けも入っていたのはご愛敬である。]


・・・うん。

[――ああ。そうだ。
ぼんやりとメルヤの鱗を眺めながら。
あたしはきっと、だから、まだ生きていられるんだと思う。
でも。――もう、このままでは会えないような気さえする。

また眠りに堕ちたら、帰ってこれないかもしれない――。
目覚めるたびに、生きている感触が遠のいているのだ。
――もう、長くはない気がする。次は無い――。
その不安は、とても現実的だ。

――それでも、会いたい、と想った。
だから、あたしは頷いた。]

・・・会いたい。

[――でも。会えない、と思って。
哀しそうに、眼を伏せた。]


――ええ、わかったわ……?

[何をするつもりかわからないが、素直に頷き
すると何か関節の外れる音
割と きいていて こわい

振り向けば手錠が外されているのを見て成程と思う
でもやっぱり...はちょっと怖いなと思ったのだった

そして、ナナオとメルヤの会話を聞いて
――ナナオにも、どうしても会いたい人がいたのかと思い至った
それが、トレイルとは気づかないまでも
タルトやヒナコだろうなと...は思い]

――会いたいけれどあえないというのは
気持ちはわかるわ

[あう時はきっと、隔離病棟の中だから
私は平和な思い出を、抱いて生きていける、はず]


[なのにどうしてこんなに 哀しいのだろう

     ころん

転がるのは、小さなアイオライト]


[トレイルが――、と聴いて。
ナナオは、ほろりと涙を流した。
嬉しかったのか、哀しかったのか――何故だろう。]


……うん。
僕も、ね。ケイトには気づかれてたし、ナナオも、気づいてたかも、しれないけど。
最後にちょっと未練があって、さ。
[包帯の解く音だけが、室内に響いているようだった。
 元気で、明るかったナナオ。本当に病気の進行だけだろうか。]

…僕も、体がだるいんだけど…ね
どうも、筋弛緩剤みたいなの…投与されてるみたいなんだけど…

ナナオも、そういうのあるかもしれない…けど、さすがに器械も点滴もわからない、か。

[包帯を解ききった彼が手にしていたのは仕込んでいた。
ピンセットと紙やすり。上着だけを羽織って、包帯を椅子の上に置きナナオの方へと向く。]


[顔を背けていための涙には気づかない。僅かな沈黙の意味も、今までの中での当て推量でしかない。

ただ近づいて。どうしても。一言だけ告げたくて仕方がないことがあった。]

ナナオ…余り僕こんなこと言いたくないんだけど
――趣味悪くないかい…?

[ケイトに聞こえないように、小声でぼそりと呟く。昨日の会話の応酬の名残があった。


苛立ちはほとんど自分に向けられているのだが、どうしても言いたくて留まれなかった*]


[ナナオは、その言葉を聴いて。
きょとんとした――意外な言葉だったのだろう。
不思議そうに、どうして?というように首を傾げた。]

・・・?

[一つだけ、思い至ることがあって――。
そっか。
あたしのことを、忘れたのか――と。

――少しだけ、眼に生気が戻った。]


・・・そんなこと、ないよ。

[震える声で、ナナオは言い返した。
約束。――それは、何の為にしたものか。
あたしの方こそ、忘れかけていたじゃないか。
涙が、また落ちる。・・・そうだ。

忘れられたく、なかったんじゃないか。

その想いが、消えかけた蝋燭の火を少しだけ大きくさせた。]

メルヤ。
・・・その辺に落ちてる、ペンをとって貰っていいかな。


そう……
未練、は寂しい、わね

[しゅるり、しゅるりと響く音
筋弛緩剤の存在や手錠、脚の鎖
――嗚呼その存在を感じるだけで嫌になる、と思った

まるで牢獄、まるで煉獄
囚われてしまった終末病棟の様ねなんて

...は振り向けば――メルヤの持つモノに眉をひそめる
なんだ それは
というか貴方何で其れをもってるわけなの?
まさか、この様な事態を察していた?

言葉にならず...は唯無表情に彼を見る
――思う事は唯1つ]


[貴方って後何を隠し持っているのかしら

完全にナナオとメルヤのターン!お話になっているのは感じたから
...は思うだけで、口には乗せないでおいたのだった]


[ナナオは、メルヤが何をしようとしているのか――。
ぼんやりと見つつも、見当がつかなかった。

背中の鱗は、きれいだな――と思ったけれど。

――しかし、それが何の為か。
ピンセットや紙やすり。筋弛緩剤や手錠――。
その意味を分からないまま、見つめている。]


(あ。ダメだ。完全にトレイルに夢見てるよね)

[の不思議そうな顔で察する。恋は盲目とはよく言ったもの。
彼から見れば、ナナオにはトレイルは勿体ない、が。野暮な口を挟むまい。

の言葉には心の中でだけ、ひっそりと返した。
(いやいやいや。あいつ、何だかんだで自分本位だし、拾った子犬みたいに構われるこっちの気にもなれっていうか。……いや、ナナオは悪くないから、やめておこう。)

[つらつらと並べ立てられた悪態は、ここにはいないトレイルという名の男に投げつけた。
ペンを、と頼まれれば僅かに床の上を探す。少し変わった形のペンを見つけ、ナナオの黒い小手にしっかりと渡した。]


……ナナオ。ピンセットと紙やすりで、僕、たぶんピッキング出来るよ

鍵開けマジックは得意でね。昔、色んな人の部屋開けて怒られたんだよね。
…手品辞めた頃にはナナオいなかったから、知らなかったかも、だけど。

で。…ちょっと時間掛かるかもだけど、拘束解いて大丈夫そうなところ解いてもいいかな?

[念のための確認。生きる力を見せて欲しいという願望まじりであったかもしれない。

なお。ピンセットと紙やすりは本当に簡易のピッキングツールです、良い大人は真似をしないようにしましょう。]


[に向かっては、げんなりとした顔を(気怠いのもあって)隠そうともせずに。]

辛いのかなあ。どうだろう、ね。

[小さく零す、彼自身。昨日気づいてまだ持て余している部分だった。
は何を想っているのか、気づきようもなかった。]


・・・ねぇ、メルヤ。
メルヤから見たトレイルの話、聴かせて?

[と、ペンを受け取って――そう訊ねた。

――そう。あたしは、きっとメルヤよりもトレイルを知らない。
惹かれてはいても、そんなに話をしたことはない。
助けにきてくれたから。
遠くから眺めていたから――。
だとしても、きっと、全部を知っているわけじゃあない。
どんな人だったのだろう。
もっと知りたかった。もっと――。

少しづつ、だけれど。
ナナオは、もっと――生きたくなってきていた。
あの人のことを――もっと、知りたい。
そう。この気持ちは、きっと恋だ。]


――あら、辛くないの?
そうだとするなら心がなんとも強い、ものだわ

[私は、キルロイの事を考えるだけでああ、未練が鎌首もたげる
とはいえ何故か何時もの傍観者が、この時だけは動揺しているように見えて

あなたも、未練があるのかもしれないわね

なんて思った
しかしこの道化師さん、ピッキングまで完備しているなんて
――彼の、多芸ぶりに思わず目を見張ったのだった]


・・・でも。
それ、せんせーが動かないようにって固定してるものだから・・・。

[ピンセットで外せるよ、と言われれば少しナナオは渋った。
ナナオから見たせんせーは、医者としては信頼している。
嘘は、よくつくけれど・・・。
この固定が無ければ、ナナオは暴れ落ちていたかもしれない。]

・・・でも。
また、ペンが落ちたら拾うくらいは自分でしたいな。
本当に、外せるの・・・?

[と不思議そうに。
メルヤの手品を見ていないので、半信半疑・・・といった感じのようだ。]


[ナナオが尋ねる、メルヤから見たトレイルの事
其れを見ればなんとなく、ぴんときて

ああ、あなた″も″恋をしているのか

と]

……恋とは偉大ね


[小さく呟き、生気が戻った彼女を見つめる
ピッキングか何かで彼女の固定を外そうとしているのを見れば
できる事はない私は唯、2人を眺めるだけ]


え゛っ

[を聞いてトレイル本人に遭遇した時のような頓狂な声が出た。
 実際に純粋に訊ねて来るのはキルロイや、ナナオといった面子ぐらいだろう]

ケ、ケイトはどうかな?
ケイトからみたトレイルってどう?
ていうかケイトとキルロイってやっぱりそうなの?

[戦略的逃避を計ったのもいつもの癖である。]


…固定されてるとしても絶対どこかに鍵穴か、ボルトみたいだったらその辺の器具拝借して道具作るかな?

[話半分は実際見ていないナナオには仕方ない。メルヤは気にせずに、右腕の辺りを固定している部分を眺める。
後者だったら更に時間が掛かると思っていたがどうやら前者の鍵穴の方だった。]

ちょっと時間掛かるかもだけど、たぶん、外せるよっと

女子ふたりで、ゆったりと楽しい談笑してて。

[そう言いつつ床に座り込んで、固定されているキーポイントである鍵穴にピンセットを通す。感触を確かめながら、紙ヤスリでピンセットを削る。]


辛い、のかなあ。辛いというか
…ひとつぐらい、望みが叶ってもいいのになってとこかな?

何も叶ってないのを見てる、とね。

[僕にもよくわからない。ピンセットを弄りながら肩を竦めた。
ケイトの未練は、聞いている。

少しでも、長く、一緒に居て欲しいと願ったことも虚しく滑り落ちたことを思い起こす。

なお、メルヤが知りようもないが。多芸っぷりなら勝手に父親のように思っているピエロが多芸というより常軌を逸していたため、メルヤ自身は大したことないと思っているのは余談である

ついでにながら作業で話してるので、話しすぎてる感もあった*]


――――其処で私に振るの?

[メルヤの問いに僅かに片眉をあげる
貴方の方がよく知ってるじゃないと暗に伝えながらも
...はトレイルの事を思い出す
ああ、あの人は――]

私から見れば一線を引いている人ね
誰とでも親しくするけど最後の一線を越えさせない人
メルヤとは仲が良かったように見えたわ
後はお人好し?かしら。それと……
ナナオが歌ってる姿を遠目から眺めてるのを見た覚えがあるかな

後――あのひと、視線を合わせないから
感情が読みにくかったのよね

[自分の″紫″に何か思う所があったのかという事までは察せない
...から見たトレイルとは、そんなヒトなのだ]


望みね
望み……叶う望みなら願う前に行動に移している、気がするけれどね

[呟けば小さく息を吐く
彼はどんな望みを抱いていたのだろう
どこか肩をすくめる姿を見れば...はそう思った

嗚呼、未練が心にのしかかる
あいたいってねがってもあえない
でもねがうということは彼の病状が進行するということで
だからこんな事を願ってはいけないってわかっている


それは、″望み″なの、だろうか

多芸な彼を見ながら、外されていく拘束具を眺め]

……本当に器用よね貴方

[呟きぽつりと]


[2人の様子を見て、くすくす、とナナオは笑った。
そして。]

・・・あはは。分かるよ、もう。2人ともひどいなぁ。

[なんて、話し出した。ナナオもまさか、面と向かって趣味が悪いと言われるとは思ってもみなかったのだ。ケイトリンさんの話を聴いて。]

トレイルって、結構可愛い所もあるじゃない?
食堂でデザート欲しそうな所とか、意外と子供っぽかったりするしさ。
大人びていて、格好いいところもあるよ。
それに、格好つけてるなーって所もあるけど。分かりやすいよね。
でも、忘れてることを結構気にしてたり――。結構、あたしのことも――まぁ、妹みたいな扱いとして、なんだろうけれど。気遣ってくれるんだよ。それに・・・、助けにきてくれたんだ。・・・たぶん、忘れているけど。最初に助けてくれた時のことも――きっと。

あたしは、好きだよ。
・・・もっと、話したかったな。自覚するのが、遅かったかも。

[なんて。――話している様子は、少し楽しそうだ。]


お人好しぃ?!トレイルの話だよね?!


[の言葉に大袈裟に驚いた。紙ヤスリで弄っていたピンセットを取りこぼしそうになって空中で拾う。]

ケイトとは視線合わせなかったんだ。
 へえ…案外聞かないとわからないもんだね

あと、仲良しはどうだろうねえ。あっちは僕のこと、どう思ってるか知らないしね。
距離感はそこそこあったよ。

[本人のいない間の話題だったが、ナナオの前でやや失言しているが気にしない
周りから見て仲良く見えるというのが、メルヤ的には心外だった。どこをどう見たらそう見えるのだろう。]


ナナオにはもっと…いいひといそうだけどね
[あくまでもメルヤはそう思った。ナナオにはトレイルは勿体ない。けれど、トレイルへの気持ちが、生きる気力になるなら、水を差すのも野暮というもの。]

ナナオは、やっぱりトレイルのことよく見てるよね。
[よく知ってるという裏付けになっている墓穴になっていることには、普段よりもずっと壁を作らずに話し込んでいたので、当人が気づいていない。]

まあ、良いところもあるよ…ね。
面倒見は良いのは認める。勝手にだけど、踏み込んでくるしね。僕には出来ないし

ナナオは本当に素直だね…
僕も別に嫌いなわけじゃない、なんか苦手なだけで。

[楽しそうな、声になっているような気がして話を続けた。
それがトレイルの話題なのは、メルヤの思惑通りであったが。あの格好つけ男め、とか頭の中で罵倒はしておく。そも、昔からモテるのだ、あの男。何故かは知らないけど。]


……そう、なの?

[私は其処まで、彼を観察していなかった
ナナオの話を聞けば、嗚呼、トレイルとはそんなヒトなんだと
――彼女の瞳から見たトレイルを聞いて
私は記憶をまた1つ仕舞いこむ]

そっか、そっか……
でも私思うわ。好きという気持ちを知った事って尊いんじゃないかって
知らぬままよりもずっと

それに。まだ話せなくなったと決まったわけではないわよ
私達が生き抜けば。何時かまた再会できるかもしれない
この病が治らないと決まったわけでもない


ねぇナナオ
貴方、その気持ちを再会したら伝えるつもり?

[恋の話とはどうして角も素敵な宝石のようなきらめきを放つのだろうか
...は声に楽しげな様子を浮かべながら尋ねる。
だって、貴女がたのしそう、だから
そんな様子、見ているだけで私も楽しくなるわ]


あたしからも、メルヤとは仲良さそうに見えたな。
・・・だってさ。

トレイルって、素直じゃないから。

つい意地悪したりさ。
素直じゃないなりに、かまけていたように見えたよ?

[ トレイルの話は、面白くて――ナナオは笑っていた。
失言というより、メルヤから見るとそう見えたんだって。]


ええそうだけど何か?

[だから……大げさに驚く道化師に、
私が向ける視線はちょっとじとっとしてたかも]

そうなのよね。何が彼の琴線に触れたかは分からないのだけれど
面倒見が良いってのはあってると思うのよ私

仲良いと思ったのだけれどね
貴方はそうは思わなかったの?″自分ではどうなのかしら″


[あっちは僕の事、ならば
貴方はどう思ってるの?トレイルの事]

其れに貴方気付いてる?
よく見てるねってナナオの話を肯定するってことは
貴方も其れだけ、トレイルを見てるってことって

[なんてね。私はさっきの意趣返し。突っついてみた]


僕さ、気づいたけど。望むことって変わるものだね。ケイト

……今の僕の未練は、誰かの望みだよ。
なにも叶わなかった同士の馴れ合いみたいなもんだね。

[の声のかすかな、諦めのつかない悲哀の声に話題を変えるべきだろうか、と思った。
――カチャリ。

ナナオの望み通りに右手側の拘束具の芯となる鍵が外れる音がした。
あとは解くだけ、というところで再びの声が掛かる。]

……そうでもないよ?ちょっと器用なぐらい。

[などと大真面目に返したのは、大体ピエロの男のせいである*]


それに、ねぇ知ってるメルヤ
――恋ってね。″もっといい人がいる″とか
惰性じゃないのよ。知らずに惹かれるものなのよ

[なんて告げる様子は、どこか楽しげ]


いいひとかぁ。
・・・。

[少しだけしゅんとする。
死にかけの今になって、そう言われて――。
せんせーとか?と最初に浮かぶ。
次に浮かんだのは、食堂のおっちゃんで――更に無いなと考えた。
そうしていると、と聴かれて。]

・・・どうだろ。
分からない――忘れられているかも、しれないし。
でも。
えっと。ね、その。
忘れられていても、きっと好きだし、さ。
ちょっと歌にしてみよう・・・かな、って。

[と、言ってノートに眼を落した。]


それはそうよ、私達は生きているのだから
望みも、願いもかわるもの
――其れが未練となってしまっても

……誰かの望み、ね
それならこの隔離病棟にいるならばいくらでも生み出されてしまいそうだわ

[外される拘束具の音
″ちょっと″どころかかなり器用な彼を見つめる瞳は、
どこか苦笑じみている

彼の場合、どこか何かがずれているのに受け答えがはっきり真面目
そのギャップがまた面白いのよねなんて
...はこっそりメルヤにそう思っている]


――歌、に
其れは素敵ねとても
歌って心を揺さぶるから。忘れていてもきっと″思い出して″貰えると私は思うわ

[ねぇどんな歌?
尋ねる声は優しく

彼女の歌
キルロイの絵
メルヤの手品
シーシャの絵本

ああ、″残せる″というのはなんと素晴らしいものだろう
記憶に声に、のこるものを
紡げるとは何て素晴らしい

どんな歌なんだろう、どんな音色なんだろう
私は何時か其れを聞きたいとそう、感じた]


…あのさ、遠くに見えたら逃げようとする僕と、何か意地悪そうな顔して近づいてくるトレイルのどこが仲良く見えるんだい…?

二人に聞きたいんだけど

[この際だから聞いてしまえ、と思いつつ。ナナオの拘束具をゆっくりと外した。右腕だけ。彼女の希望通りに。]

[の言葉を聞けば細長く溜め息を吐きつつ]
いや、見てるんじゃなくて目につくっていうんだよ。この場合。

[何がメルヤをそう駆り立てるのか。
とにかく否定したいようである。]


本当に外しちゃったんだ。

[と、眼を見開いてナナオは驚いていた。
まるで手品でも見るような。]

・・・ありがと、メルヤ。
ね。・・・ありがと。元気、出てきたよ。

[2回、ありがとうと言ったのは、それぞれ別のありがとうだから。
にっこりと、微笑んで――。
その笑みは、開放区に居た頃のような。
ちゃんと生気の戻った笑みだった。]


ねこじゃらしを見つけた猫と、ねこじゃらしの関係?

[とメルヤの疑問に即答した。
すごく仲良さそうじゃん、と笑って。]


ナナオに追従するわ

[なんて的確な答え
素晴らしいわナナオ。...は彼女に尊敬のまなざしをおくった]


うん。ごめん。恋のひとつもろくもしてないからね。僕。

さっきの他にいい人が〜は取り消すよ。
その代わりに…じゃないけどさ。聞きたかったら少しは、何か話すから。


[のケイトの指摘にはぐぅの音も出なかった。メルヤは恋などしたことがない。
常に踏み越えない。気づかない振りをしてきた彼が、そんな風に誰かを好きになったことなどない]

……少なくとも
昨日はナナオのこと忘れてなかったよ。ていうか通称ピエロさんのことトレイルはなんで覚えてるんだろう?

記憶の落ち方が不規則なんだよね、僕が知る限りだけど。

[のナナオの言葉にぽつり、落とす。
勘付かれないようにしていたけれど、恋の力は偉大ということか。恋する乙女は無敵か。
あの色男め。などと悪態をつく。]


それ、結局、僕おもちゃだよね?毟られるよね?逃げるよね?

[高速で納得する女性陣二人に、少しだけ泣きそうになったのは何故だろうか。]


其処で素直に謝られると私何だか罪悪感

……まぁ其れは置いておきましょう
だってさ、ナナオ
何か話すらしいわよ?トレイルの事

[さらっと話題を反らす...であった
恋でなくても。友情でも親代わりへの情でも
情を抱けばその人じゃないとだめなんだと、そう思う事と一緒で
其れを告げるには少しだけ今のメルヤには早いかなと思って私は口を噤んだ]

あら、そうなのね
記憶の落ち方が不規則、何だか不思議ね
オスカーさんは眠れば一定の記憶を忘却するみたいだけれど

[悪態をつく様子と提示された情報
それが何だかギャップを感じて...はどこか楽しげな声音でふむふむと
何か考える様子を見せるのであった]


はい、種も仕掛けもございます…っと。
これはお決まりの僕の口癖、ね。

[が手品のようだ、と思っているとはつゆ知らず。最後のお定まりの言葉で、おどけた笑みを浮かべる。
もう一度ナナオを見れば、部屋に訪れた時のような、死にゆく顔ではなくなっていて、メルヤが知っているナナオの顔になっていた。
ほっと、安堵の息を零す。]

僕は大したことしてないよ

[サイドテーブルの角度を変えて、ナナオが詩を書きやすいように位置付ける。

解いたままだった包帯を手にして、巻きはじめた。]


大丈夫きっと加減されているわ
タブンネ

[頑張ってね?と無表情で他人事のように告げる...であった
だって結局他人事だし
でも泣きそうになるなら肩は叩きましょう。ぽんって]


[ どんな歌、と聴かれて。さらりと、ノートに何かを書きだした。
筆どりは軽い。中庭でいつも、書いていたように――。]

まだ、歌にしてない所は沢山あるけれど・・・。
書きたいことを、まず書いてね。そこから歌にするの。

[ノートに書かれた内容は――。

憶えていて欲しい、って思うけれど。
忘れないで、とは言わないよ。
あなたを好きだって、歌うかもしれないけれど。
それを悲しんで欲しくはないな。
幸せになってほしいな。幸せでいてほしいんだ。
その為に忘れるのなら、かまわない。]


[でも、あたしは、憶えているよ。
あなたを想って、幸せだったこと。
好きだって気持ち。笑ってたことがあったのもさ。
そういう瞬間が、花咲いていたことがあったんだよ。

ここでの日々は幸せだったよ。
あたしの人生には、沢山の花が咲いていた。
今まで、色んな花が沢山あって――枯れていった。
ね。
――あたしはそれを、憶えているよ。

きっとあなたは、これからも。
沢山の花を咲かせるでしょう。
幸せな瞬間が、きっと来るでしょう。
一つ一つの、記憶の花を、咲かせるでしょう。]

まだ、歌には出来ていなくて――未完成だけれど。
タイトルが"君の瞳に花咲く日。"って言うのは、決まってるよ。

・・・ヒナちゃんと一緒に作るって、約束なんだ。


うん。・・・?
聴きたいな。トレイルのこと。

[ナナオは、何かを疑問に思いかけて――気づかなかった。]

・・・そっか。
やっぱり、憶えてなかったんだ・・・。

[と、聴けばやっぱりしゅんとする。
分かっていたけれど――そっか、と落ち込みはする。
トレイルの記憶の落ち方は、良く分からないけれど。
憶えていたりいなかったり、――それも本人から聞いたことはない。]


うん。でも猫はすごく楽しそうだよね。毟ってる時。
逃げるから余計にじゃれるんだよね。

[なんて、猫で例えたら余計に的確になった気がして。
猫じゃらしも、動かなければつまらなくてそんなに遊ばないのだ。
面白い動きをするから余計にじゃれたくなるんじゃないかな、と笑った。
トレイルの気持ちが少し分かる気もする。]


罪悪感覚えられると逆に僕惨めなんだけど

いや、話さなくてもいいなら話したくないんだけどね。本気で。
ケイトも、話したいことってないの?

[意趣返しのつもりでなく、話の花を傾けているつもりだった。
彼女がを思ったかはメルヤには計り知れない。
メルヤは数多く見送って、悲哀を受け止めた女性の中でそんな人がいただろうか。と真剣に考え出したぐらいだ。]

……って、余り僕から話すことじゃないね、これは。
ケイトには勘付かれてるけど、僕は幻覚を見るんだ。病気が進行しだして、ね。
それは、昔あったことがリアルに再現されるから。

僕の記憶力がいい、種明かしってとこかな。

[人の秘密を暴いているようで、少しばつが悪くなった。
ナナオに元気を与えるには、メルヤが持っている中ではトレイルに触れるのが一番だと思ったからだが。やや、罪悪感。

それすらも、忘れているかもしれないが。とは顔には出さないように気をつける。]


[ノートに書かれたその詩に、叶うならばそっと、緩慢に手を伸ばして
指で触れれただろうか]

……ああ、是が貴女の心の声なのね
綺麗で、美しくて悲しくて
幸せ、な。心の欠片

素敵な歌。ヒナコちゃんと一緒に作るの?
きっと素敵で、輝く歌になるでしょうね。


[ノートに書かれた内容は。
何処か別離を感じさせる悲しみを宿す]


それ、僕は楽しくないし救いの手はないのかい?!

[の白々しいタブンネもしっかりと耳に通していた。
の心境はメルヤには知れない。本人は本能により逃避行動だがそれが面白さに拍車を掛けているなどとは思っていないようだ。]


[憶えていてほしいって思うその気持ちは誰にでもある
忘れないでと言わないけれど、絶対心の中では叫んでる
好きだと歌う声が彼に悲しみを宿すなら私は心の中に飲み込んでしまう

悲しんでほしくない、其れでも悲しんでほしいという矛盾を抱く
幸せでいてほしい、だれよりも幸せでいてほしいと願う
それでも忘れないでと叫ぶ、相反した心を抱くの
恋って本当に、厄介ね

憶えている事は本当にしあわせ?
忘れたほうが貴方の為になると知っていたのに
忘れないでと願ってしまった事はきっと貴方を苦しめたかもしれない

こんな気持ちを知っただけでも、幸せだとは思うの
好きという気持ちは心を満たし、花を咲かせる
だからこの歌は、とても心に響く]


[ここでの日々は幸せと歌い、
人生の花を数えるナナオ
忘れず枯れた花まで抱える貴女はきっと素敵な人

私の周りにも花はあったかもしれない
でもこの手で摘めたのはほんの数輪で
そのうちの1つだけでも欲しかったの
そのうちの1つを、欲しかったの
でも現実は唯残酷

記憶の花を咲かせるのを遠くで見つめるのは苦しいだろうけれど
もう届かないのもわかっていて
だから私はきっと過去の花をなぞる
記憶の花をなぞり、思い出すのだろう

ねぇナナオ、恋するナナオ]

貴女なら――……貴女は


本当にそれで、幸せなの?
その歌の通り、届かないまま幸せを願い過去を紡いで

[最後だけ、何故か零れた、心
その問いかけは、多分自分も答えを求めていること]


あ、僕もナナオの歌は聴いてみたいと思ってたんだよね

[に、僅かに顔を綻ばせる。包帯を巻き直して、上着を着る。
ノートの内容は覗き込んではいけない気がして、少し離れたところに。

迷った挙げ句に心電図のような器械に腰を下ろす。隔離される前は、目を付けられたくないために運動神経の良さを隠していた。

鈍らないように、トレーニングルームには欠かさず行っていたものだ。手品師(ケイトは道化師と呼んでるが)は体が資本。あと器用さだ。]

ヒナコかあ……

いっそどこか抜け道でも作ろうか? …なんてね。
[などと冗談を口にする。]


じゃあ同情を覚えたほうがいい?

……私?別に無いけれど。

[話してどうなる事でもないのだ
未練を零してしまえば澱から流れるのはきっとキルロイへの想いだけ
それを恋を抱くナナオに聞かせるのには僅かばかり抵抗があった

意趣返し?なんて思ったりもした。話の花を傾けているつもりであることは
残念通じていない]


成程、それで貴方時折――話をしていても″向こう″を見ていたわけか


[すとんと、彼の説明で納得した
顔に出さないまでも何か腹に抱得ていそうな気がしたが
藪をつついて蛇を出すのは今は避けたほうがよさそうか
...はそう考えてはたと気づく]


そんなメルヤを見るのは、とっても楽しいんだけどな。

[くすくすと笑って、面白そうに。

それにしても、幻覚――って、どんなだろう?
と内心で思いつつ。あまり病気のことには、触れないようにしていた――。
そのせいで、詳しくないのだ。
どんな病気なのか。何を見ているのか。
とても、それは今更なことで――。
もっと、みんなと色々なことを話していれば良かったなと思った。]


ねぇそれじゃあメルヤ貴方――……

[あなた、何度も誰かが連れて行かれる所を再現したりしているの?
それはとても、恐ろしい事の様に思えた]


大丈夫いつかきっと救いの手は現れるわ

[つまり今はない。慈悲はない
割とメルヤの言動や行動がトレイルの嗜虐心を煽った結果だと思った
でも其れを言うのはやめておいた
だって――言っても治るとも思えなかったし]


うん。

[ケイトリンさんの手が、優しく触れる。
大切なノート。ケイトリンさんに見てもらうのは、嬉しかった。]

・・・うん。

[その悲しみも、分かる。
ケイトリンさんにも、好きな人がいるのだろうか――。
と、何となくナナオは察する。

そっとノートに触れる手に、ナナオは触れる。
小手越しだけれど――。]

・・・。


あ。やっぱり話さなきゃいけないんだ。

[に絶句する。持ち出したのがメルヤ自身とはいえ、大いに悩んだ。
夏休みの自由工作から逃げ出したい気分だった。子どもじみた、抵抗のような。]

……いや?
ナナオのこと、全部忘れたわけじゃないよ。
さっき動揺したって言っただろ? あれは本当

だから、僕。会いたくもないのに会いに行ったからね。
何だろうねぇ。僕から見たトレイル、ね。

まあ、刺激が強い部分と本人のプライバシーに関するところを除くなら。

[白い天井を仰ぎ見る。
 まるでそこに答えが書いてでもいるかのように、目を凝らす。]


[少し涙脆く、なっているのかもしれない。
笑ったり――泣いたり。少しの間に、ころころと。
――また、ぎゅっと胸が締め付けられて。]

・・・。

[――生きたい。
生きていられるなら――。
我侭だって、言いたい。
そう。その想いは、確かにあたしの中にある――けれど。
でも、書き記していなかった。
ぎゅっと、少しだけ強くケイトリンさんの手を握ったのは――。
悔しさか。
哀しさか。
もっと、生きたかったな――。
その、――諦めか。]


静かに、メルヤの話すトレイルの話を聴いている。


何も覚えなくていいから。

無いんだ、何か。話してたら気が紛れるものかと思って、さ。

[の心理まではわからない。他人の恋愛の助言は出来ても、自分の恋愛に関しては初心者以下だ。

結局のところ。異性を本気で愛したことがないメルヤには、根本的にはわからない部分が多いだろう。]

…ケイトはよく見ているね。
なるだけ視線は向けないようにしてたんだけど。つい、ね


[ケイトとナナオは、ピエロの男を知らない。
ピエロの男が如何に愉快で、トリッキーであったか。唐突に始まる、バナナ売り。中庭の木と木を綱渡りする、顕著な像を見れば一瞬でも目を移すなという方が無理な話だ。]


……――。

[の震える声には黙っていた。
幸せで甘い幻覚の中に、一欠片。誰かの悲惨な状況を見ることもあるのは、口にしない。
彼女の声は、雄弁だった。表情など無くても、豊かな感性が伝わってくる。]


[触れる手は小手越し
それでも心は、触れ合っていると感じる

恋をしているという点に関して
私とナナオはきっと、同じ

ぎゅっと握られた手がきっと、答え]

……あのねナナオ
私狡いのよ――とってもね狡い、の
貴女の詩の様に綺麗に生きられたらよかったんだけどね

[とってもずるい願いを持ってるのよ
忘れられたくないの。彼の心に住んでいたいの]


其れでも私、諦めきれないのよ

何時か″此処から出て″
また再び会える日を夢見るの

その時まで、忘れないでいてと願ってしまうのよ

[誰に、とは言わない
それでも。叶わぬ願いでもそれがきっと本音なの
――だから、この歌は綺麗過ぎて、切なすぎて
私の心の琴線を揺さぶって捕えて離さない]


・・・分かるよ。
羨ましいな。
あたしは、トレイルにちゃんと好きって言ってもないから。

[ そう願えるほど、相手に好かれていたなら――。
好かれていると、想えるなら――。
願っても、それを狡いとは思わない。
むしろ、願うだろう。好きって、もっと伝えたい。
そして、憶えていて欲しいって。全力で歌うだろう。
ためらいがちなあたしの想いは、まだ始まってもないのだ。]


じゃあ無我の境地に達しておいてあげる

私は貴方達を見ているだけで十分気が紛れているけれどね

[むしろ貴方のてんぱっているのを見ればと
他者に踏み込まぬ選択をしていた時点で彼の感情、情緒の発達は未熟なのだろうと思う
むしろ別方面では多感になり、別方面では赤子の様なものではあるのだろうとも
アンバランスさを、抱いているのだろうとも]

私は忘れないから
朧になる事はあっても、ね
それは、何度も貴方と会話をしていたらわかるわよ

[貴方が誰かを記憶に刻もうとしているように
貴方を刻もうとしている人もいるの、と

彼の見る幻は何かは知らないが
もし見えていたらじっと其方に意識が集中してしまうだろうけれど
――知らなければ、分からぬ事である]


一言で言うなら結構どころか我が儘だし、諦め悪い感じ。

[諦めてメルヤの知るトレイルを、言葉を手繰り手繰り寄せて、最初のトレイル評がそれである。]

ナナオも言ってたけど、子どもっぽいと思うとこあるよ。具体的にどことは言えないけどさ。
あとは、人からかうの好きだし。こっちにずかずか入って来る割には、最後の半歩ぐらい?残しておくんだよ。それで、気づいてませんって顔するから、うん、何かごめん。

思いだしたら殴りたくなってきた。


……そうだねえ。ちゃんと良いとこもあげておくとしたら。


…………――。

[果てしなく長い沈黙が生まれたのは言うまでもない。]


[震える声に帰らぬ返事
其れが答えと...は納得した

だからこそ、追の言葉は言わなかった
嗚呼なんて、哀しい(こわい)のだろう
...は″可哀想″とは思わぬものの。苦しいだろうなと、そう思った]


メルヤに、トレイルの良い所は貴方視点無いの?といった視線をおくった


口笛を吹き出した。


[
ここから出て――か。
さっき、冗談のようにメルヤが言っていた一言にもそんなような――。
――冗談のような、その夢は。とても、輝いている。]

・・・わか、るよ。
あたしだって・・・、分かるよ。

[でもさ。って小さく呟いて、涙がこぼれる。
――次は、無い。]


確かに・・・。

[ ぽつりと、同意を挟んだ。]

うん。・・・うん。

[そして、長い沈黙。
うん、って聴く準備をしていただけに、中々でない様子に耐え切れない。

・・・泣いていたのに。
泣き笑いになってしまう。

あたしは、トレイルのそういうからかう所は良い所だと思っていた。
それに、我侭な所も、諦め悪いところも、良い所だなって。
全部良い所に思えてしまう。]

メルヤも、トレイルが好きなんだろうな、ってことは分かったよ。

[なんて、涙を拭きつつ笑った。]


……うん
そう、だよね……そうだよね

[小さく呟かれた言葉、続かぬ言葉
彼女が零した涙に、私も小さく零す宝石
パライバトルマリンは悲しみを内包した青]

でも、夢で位は――私達、自由よ

[歩けぬ足、飛べない翼
伸ばせぬ、腕
夢の中なら、願う中くらいなら私達誰よりも自由だもの

ゆめをみたって、いいじゃない?なんて]


……うーん。
何ていうか。ナナオはトレイルのいいとこ、ちゃんと見てるし。

僕は何だろう。

面倒見が良い? 愛想が良い? 人好きしそう? 仔猫拾いそう?
というか天敵みたいな相手の長所、出ないよ。

今さら、というか。口にすることがないや。

(お互い面倒臭いなあ。
 今更になって、君に告げる言葉なんて本当に無かったし、会いたくなかったのに腑抜けた顔してるから。)



[良いところを探そうとして、ふと浮かぶのは遠い冬空の下の中。
ずっと撫でてくれていた手は、昨日久方振りに撫でられて冷たくなっていた。

不安を隠すのは、自分本位が主だろう。でもそれが全てじゃないことメルヤは知っている。]


[ケイトリンさんの涙は、とても綺麗で――宝石だった。]

・・・、なんだか、悔しくなってきたな。

[夢でくらい――。
その言葉を聴いて、素直にそう想う。]

・・・もっと、生きたいな。
生きて、我侭言って、好きだって伝えてさ――。
もしフラれたって、きっと――。

[――夢のことを考えると、逆に現実に生きたくなるのはどうしてだろう。
夢なら、幸せ――。
なんだか、それはとても悔しいのだ。
もっと、――時間が欲しかった。現実に、一緒に過ごす時間が。]


[彼は恋を知らない。奇しくもケイトが思ったように、メルヤの精神はアンバランスと言っていいだろう。

ひどく熟達している部分と、ひどく子どものままの部分。

女性同士の、どこか悲しげな恋の話には、耳を傾け、心に留めて置こうと思った。

ふと。思い出されるのは人影は、噂をしている人物だ。

軽々しく話せるものではないため、黙して秘するように目を閉じる。]


メルヤ。
あたしさ。全部、好きだよ。
トレイルのこと。聴いてて、もっと好きになったよ。

[なんて、笑ってみる。
メルヤとトレイルの関係は、メルヤからすれば複雑かもしれない。
けれど、一つもいやなところなんてなかった。]


僕の鼓膜が破れたのかな?

[の泣き笑いのようなナナオの顔を心配そうに眺めていた顔が、みるみる内に歪んだ。

その表情は”不本意”といった名が付いた彫刻のようでさえあっただろう。]


[ くすくすと笑って。
2人に共通しているのは、素直じゃない所だと思った。]


――あら。フラれたってなんて考えちゃだめよ
楽しいこと考えましょうよ

[願いを持つ事は自由なら。振られたなんてこと考えず
もっと前向きに。もっと自由に
もっと、希望を持って]

生きて、一緒に手を繋いで笑いあって
そうねピクニックをもう一度――…するのもいいかもしれないわ
頬に触れて、その瞳を見つめて

……あの人の羽に触れて

[最後の言葉を零した瞬間、あっしまったと...は固まった
聞いてないわよね、とぎぎぎと緩慢な動作でナナオを伺う...は、冷や汗をたらしている]


じゃあ代わりに猫じゃらしなる?

[おどけた調子で返してみる。
本心では、メルヤがトレイルを嫌ってない。嫌なら本気で逃げれば良いだけの話だ。

不意に鼓膜に甦ったのは、トレイル本人の声だった。

――『何なんだろうな、俺ら』(

それこそ、今さら過ぎるだろう。関係性に名前を付ければ、その関係にだけになる。
だから、いらない。どんな関係かなんて。いらなかったとメルヤは思う。]

面倒な性格してるよ。僕も、トレイルも、ね。


[...は願った。
現在ほのぼのな雰囲気で行われているメルヤやナナオの
――トレイルの思い出話、人物像の話

其れに紛れてきっと私の話題は埋もれるだろうと
唯只管無表情で願ったのだった]


考えちゃうよ。
だってさ。トレイル、モテるじゃん?

[なんて、軽く言ってみる。
メルヤだってさっきそう言っていた気がしたけれど――。
あたしのこと、妹みたいにしか見てなったり――とか。
有り得ると思う。うん。
それでも、良いけれど――。
もし、生きられるなら――さ。
好かれるように、努力してみたいじゃん?
なんて、乙女心。は、話さなかったけれど。
泣いていたけれど――今は、楽しそうだ。]


・・・あの人の、羽?

[と、楽しそうだったナナオはスルーしなかった。]

もしかして、ケイトリンさんの好きな人は・・・。

[分かった、というような顔で。]

ヒナちゃん!

[と笑顔で言ってみた。
ナナオからすれば、羽といえばまずヒナちゃんなのだ。
子守唄を作ったことのある、キルロイさんよりも。]


ううん。
そしたら、あたしも猫になろうかな。

[メルヤにじゃれてさ。
なんて、笑って――。]

そうだね。・・・素直じゃないよ。
あたしも、ね。


そうだね。楽しいこと考えようよ。
抜け道がダメなら、職員の弱味握ってあっちとこっちと行き来出来るようにするとかさ?

[冗談なのか本気なのかで言えば、冗談九割本気一割だった。
メルヤには身体能力の点に置いて、ピエロの男が余りにも常軌を逸してそれの真似をしていたので

一般的成人男性よりもむしろ上だが、本人にその自覚はない。]

フラれるかどうかは、僕にはわからないなぁ
[顔の前で手を振った。]

ピクニックと言っても、中庭だけど…ね。
[の焦りには特に気づいていないようだ。]


あら、トレイルってもててたんだ!

[...は正直、長年温めていた自分の恋心に気づいたのがつい先日だった為
恋の噂には疎かった
メルヤはそういえば聞き上手。何か相談でもされていたのだろうかと
彼をじーっと見つめていれば……

嗚呼、ナナオはスルーしてくれなかった
というかばっちり聞かれてた。私は穴を掘って其処に埋まりたい

でも告げられた名前が違ったので]

えっ違うわよ?

[と、反射的に答えて...はしまったという顔をした
此の施設で羽を持っている人は、現在知る限りでは2人であるから、して]


あら弱みを握るのはいいわね
其れは試す価値はありそう。若しくは同情をちらつかせるとか

[凄く物騒に脱獄もとい抜けだしの事を考えました
割と本気だから性質が悪いです]

中庭でも良いじゃない
其処に皆が集まれば、中庭だって景色が変わるわ

[楽しい事は、幸せを運ぶ]


何故、あいつがモテるんだろうか。

[こんなにトレイルの話に華を咲かせたことがないため、メルヤは無意識にトレイルの前での雑な口調になりかけていた。
要するに潜在意識での甘えだが、当人は気づいてない。]

そうだね。
……今までいなくなった人で、僕が知ってる限りは…三人、かな?
誰も打ち明けなかったけどね。

そして僕が聞く羽目になる現象をどうにかして欲しい

好みとか聞かれても知らないし、食べ物とか。色とかしか知らないし。
[だんだん、愚痴になってきている。]


[そんなケイトリンさんに、にこりと笑って、・・・肩をぽむ。]

そっか。
・・・ケイトリンさん。ちょっと、意外かも。
あたしもキルロイさんと、話したことはあるけど。

ね。・・・聴いても良い?
どんなところが、好き?


待って。何で僕が弄ばれる側から開放されないんだい?

[の猫になる発言を聞いて、本気の抗議を示した。]

ナナオは素直だよ。
本人がいなくても、こうして素直に口にしてる。

僕はもっと、何か面倒なんだよ。出会いが遅すぎたんじゃなくて、悪かった。


弱味かぁ。

[タルトちゃんにはせんせーは結構甘い気がする。
ラブレター貰ったらきっと喜ぶだろうなぁとか。
案外あたしにも甘い気がするのだけれど、どうだろう。人によって結構印象が変わるけれど、みんなして嘘つきだって言われているような――。

職員の弱味、というと後は色恋沙汰くらいか。
あとは、食堂のおっちゃんがこの前アルコールを横流ししているって噂を聞いたことがある。
一体どこの誰に流れてるんだろうな、と思ったけれど言わなかった。
ナナオは、結構病院のみんなには感謝しているのだ。]


同情するなら…僕に手錠とか足枷とか……ナナオをこんな風にはしないと思うよ。
ナナオの病状、精神的なものに関係するのかもしれないし

やっぱり脅迫材料を探すほうかなあ…
[ちょっと真面目に考え出す辺りが物騒だった。
何せ手の甲にも突起した鱗がある人間凶器な上に、軽業を使うのだから、病院関係者も気が気では無さそうだ。
むしろ手錠と足枷で済んだことのほうが、奇跡に近い。]

まあね。中庭でも…良かったんだけどね。

[僕はトレイルのせいでほとんど楽しんでません、とはさすがに言えない。]


3人も。へぇ……

[...はそうなのかーとメルヤの話に不思議そうな顔をした

とはいえ、ナナオの挙げたトレイルの良い所を
きっといなくなった3人も、見ていたのだろう
だから惚れたのだろうなとも思った

だとすると――]

貴方ナナオのこと趣味が悪くないかって尋ねていたけど
普通にナナオって見る目あるんじゃないかしら

[と、至極真面目に過去の話をほじくり返した
愚痴の様な話には、同情の目線をおくろう

そうね、割と聞かれても困るわよねと]


[ううん、と笑った。]

本人がいないから、だよ。
いたら素直に言えないもん。
いなくていいよーとか言っちゃうし。

・・・少し意地悪とかも、したくなるかもしれない。
好きなんだけど・・・、好きだから、色んな表情見たくてさ。
喜ばそうとすることもあれば、その逆もあると思う。


誰、とは言わないけどね。
彼女たちの面子のために。この話だってここだけの話ってやつだしね。

[はキルロイしか本当に見てないんだろうな。と思っていることが露見されたら、また無慈悲なる言葉の暴力が襲っていたことだろう。]

いや、トレイルにナナオは勿体ない。
あと僕は、まあ。色々と、まだ黙っていることあるよ、とだけ言って置くよ…

墓下まで持っていくべきことぐらい、尊重するよ。例え相手が天敵でもね。

[溜め息を長くついた。
要するに彼女たち全員の趣味が悪いと言いたいようだ。]


[肩を叩かれればあっばれてーると...は降参した
意外と言われて、そうかしらと首をゆっくり傾げ

どんな所が好きか、と聞かれれば恥ずかしがって薄く頬を赤に染める
暫し迷った後――]

そうね、絵を描く時の真剣な表情とか
おにぎりを両手でゆっくり食べる様子とか
はにかんだみたいに笑う姿とか
……ううん、それだけじゃない。彼の笑顔はどの笑顔でも可愛いのよね

優しい声に、凛とした眼差しに
私の体調を気遣ってゆっくり歩いてくれたり
タルトのお弁当のリクエストを叶えたり
酔い潰れたメルヤを介抱する際の優しさに
それから――……

[まだまだあるのだが、言い過ぎたと。これでは惚気ではないかと
...は緩慢な動作で口を手で覆った]


[ トレイルのことでメルヤに聴きにいきたくなる気持ちは、よく分かる。
あたしもそのうちの一人なんだろうか――と思うと、ちょっと寂しいけれど。]

ううん。
トレイルは、ちゃんと助けにきてくれたよ。辛い時にさ。

[と否定する。
だから好きになってしまったのかもしれない――。
と内心で想った。]


[弱みを考えるナナオを横目に
同情はどうやら使えないとメルヤは一刀両断
確かにそうかと頷く。私は車椅子を用意されたりと拘束はなかったが
2人の状態を見ればさもありなん。情に訴える手段は使えなさそうである]

やはり脅迫の路線ね

[駄目だ、物騒なのが集まって最凶に見える]

……?

[メルヤが何か口ごもる様子には首を緩く傾げたけれど
流石にその理由にたどりつくまでには至らなかったのであった]


ケイト、さりげなく僕の罪状バラさないでくれないかい?
あとそれ、トレイルには言わないでね。本当に。

[酔っぱらったに反応する。
食堂の中年の酒横流し先は、無論メルヤである。]

トレイルは面倒見いいし、大体の人には優しいからね。
いまのは職員の話だよ、ナナオ。

…実際拘束されてるしね。
足枷も外したいけど、また着けるのも面倒だしなあ。
[には、さすがに本人の名誉のために肩を竦める。
動く度に鎖の音がするのは、囚人のような気分だ。]


分かっているわ。オフ・レコードよね知ってる

[自分とて彼女らの立場に立てば秘めていた想いを他者に露見されるのは嫌だと思うから
とはいえメルヤの杞憂は実は正解だ。きっと言葉の刃は的確にメルヤを切り裂いたろう]

……本当に、分かってないのね、メルヤは
あら、黙っている事があるの?

[と、揶揄するも其れを深く追及はしない
墓下まで持っていくと言っているのだ。そこは好奇心だけではつつかぬが賢明だろう

ナナオの呟きに私は内心呟いた
ほら、やっぱり――ナナオの趣味は、良いじゃない、と]


うん。うんうん。

[にっこりとしつつ、聴いた。
泣いたり、笑ったりしつつも――その様子はとても楽しそうだ。]

分かるよ。
男の人って、たまに可愛い所あるよね。

[格好つけようとしてる所とかも、あたしは可愛く見えてしまう。
朝の散歩してる所とか。うんうんと同意をして。
優しい声とか、分かるなぁって。]

2人とも、仲良いのかなって思ってたけど。
好きなんだ、っていうのは気づかなかったな。

[話を聴きながら、ナナオから見た2人は姉弟みたいだと思っていたから。]


あら、私″何時″酔ったかは言ってないけれど?

[貴方が酔った事は何度かあったわよね?数少ない施設のイベントの時とか
その事を軽く揶揄してみた]


さっきから思ったけど、君達男の人の枠に僕入ってないよね?

いや…いいんだけどね。

[男女平等。どちらとも取れぬ立ち位置を取ったのメルヤ自身だが、こうして話の華が咲くと明らかだった。]

ま、君達には想い人がいるのもあるんだろうね。

[そう口にして、器具の前から下りる。]

…さて。こっちの施設のひとを脅迫するかどうかは、さて置いて。
僕は一回、部屋に戻ろうと思うんだ。

椅子持って来たいし、もしかしたら…部屋の荷物届いてた嬉しいんだけど。
……多分無いだろうけどね。

[巡回も来るかもしれないという懸念があった。]


そうなのよね。
男の意地っていうのかしら。恰好をつけたがる所とか
其れからちょっとした仕草とかね

[分かってくれる?とナナオに尋ねる姿は無表情ながらどことなく嬉しそうだ
同意を得られるのは嬉しいものだ
――そして続けられた言葉に、...は少しだけ目を泳がせた後]


……そのね、自分の恋心に気付いたのはね
一昨日なのよ……


[ある意味、距離が近すぎて気付かなかったというやつである
私も弟見たいと思っていたはずだったのにね、と
気付いたら異性として意識していたのと、恥ずかしげに告げた]


・・・あれ?
酔っぱらったって、もしかして。
食堂のおっちゃんがアルコールを流してたって噂、本当だったんだ。

[と口元に手を当てて。
そして、 職員の話だったか・・・、と勘違いを恥ずかしそうに。
でも、とそれも否定した。]

あたしのは、心因性だけじゃないよ。
本当に、これ・・・毒のせいだと思う。
これが治療かは、わかんないけど・・・。

[と黒い小手をいじって。
ナナオは、あんまり脅迫には乗り気でないらしい。
この部屋から出るのでも、周りを危険にさらしてしまうんじゃないか――と心配なようだ。]


[メルヤに言われて、今更ながらに気がついた。]

メルヤは、その代わりに話しやすいと思う。
こう、からかいやすくて?

[とフォローしたつもりだったけれど。
フォローになっていない気もする。]

うん。・・・あたしはあんまり、脅迫は乗り気じゃないけど。
分かった。・・・これ、ありがとね。

メルヤ。
――またね。

[そう言って、にこりと手を振った。]


キルロイさんもそういうところ、あるんだ。

[うんうん。と嬉しそうに同意する。]

一昨日?
・・・あ。でも、あたしもそれくらいだよ。

[思えば、その前は兄みたいに見ていたし――。
恋心と自覚し出したのは、その頃だ。
撫でてくれて――。と思い出すとちょっと恥ずかしい。]


メモを貼った。


ナナオ。

[先ほどまでとはややトーンが違う声で、呼び掛ける。
元気を取り戻してきている彼女に言うべきことでもない気がするが]

僕が気が聞いたこと、言えないからさ
……もし、次に会うとしたら。トレイルは、僕のことも君のことも忘れてるかもしれない、けど。

ま、僕もそれ知ってたし。
…そうだね。忘れてても”初めまして”って言わないでやって。

[もうひとつの懸念は秘したまま。メルヤは穏やかな笑顔で、告げる。]

あ。それと、もし誰か来たら。拘束具繋いでるように見せかけて置いてね。


[服の中から手錠を出して、自らの手首に掛けた。
脅迫には乗り気ではないらしいことがわかれば、メルヤも積極的にやろうという気も起きない。]

いいよ、大したことしてないからね。
ただ、からかいやすいは撤回して欲しいけどね

[そうおどけて見せて、手を振ってメルヤは行きと同じように手錠と足枷をしたまま、部屋へと戻っていった

"また"という言葉は、やはり彼の口からは出なかった*]


メモを貼った。


ええ、あるのよ。可愛いでしょう?

[自分の知っている宝物の様な彼の様々な事
其れを1つ1つ出していく
と、どうやら彼女も想いに気付いたのは其れ位の様で――]

私たち何だか、似てるわね

[何か思い出したのか、恥ずかしがる様子を見て
...は緩く口角をあげた]


いや、一応男の枠に入れているわよ?
タブンネきっと

[一応、という所から推して知るべし
さて、メルヤの話から巡回が来るのは不味いかと...も思い至る]

……巡回が来たら私達が集まっているのを知られて
もしかしたらより拘束が厳重になるかも
今は一旦戻った方がよさそうかしら
私も、荷物が届いたなら見てみたいし

[殺風景な我が自室であるが、それでも少しばかりは荷物があった、はずだ
...も一旦部屋に戻るかと車椅子のブレーキを外す]


ナナオ、私″また″此処に来るわね
一旦私も部屋に戻るわ
そうしたらそのね。またね

[恋の話、してもいい?なんて
声を潜め尋ねる姿は年相応*]


メモを貼った。


[ 初めまして、か。]

うん。分かった。
その時は・・・、どうするかな。
あたし、泣いちゃうかな。怒るかな。

[想像をしてみて。――ちょっとだけ、寂しくなる。]

トレイル。・・・会えるのかな。
もしここで会うなら、それはひどくなってるってことだしさ。

・・・でも、会いたいな。

[ぽつりとつぶやいた。]


うん。
ケイトリンさん。・・・ありがと。

[もう一度、ぎゅっと手を握って。]

うん。・・・また、ね。

[恋の話、楽しみにしているねって。
そう、約束を重ねて――。

だから――、あたしは。生きるんだ。
目を瞑って――、また目覚めるんだって。**]


[自室に戻ったメルヤの元に看護師のような男が現れた。手錠をしていて良かった、とメルヤは心底思った。

――…前に訪れた時は意識が無かった。
 手錠と足枷は健康状態を気遣ってやむなく。

などと言った台詞を、得意の病院関係者向けの愛想笑いで誤魔化した。内心は辟易していたが、鍵が開いているから好きなように病棟を歩いていいというのを聞いた。]


……僕の、荷物は?

[わざとらしく弱々しい呟きを吐く。看護師は口籠もった。メルヤの荷物は、治療にはそぐわないので処分された。そんな文言を耳にする。
心の中でかすかに溜め息をつく。もう少し持ち出せば良かった。

メルヤ自身。ここに連れて行かれるという時点で諦観に身を寄せていたが、ナナオやケイトと話をしていて気が変わった。せめて彼女達だけでも、という気持ちが大きい。

頭の隅でそんな風に考えている。看護師の男がまだ何かを言っていた。
――以前に、手品で随分騒がせた男が居たから。

その言葉に、メルヤははっと顔を上げる。]


その人は?
 いつもピエロみたいな格好してて、あの、楽しそうにしてませんでした?

その人はどうなったんですか?

[激しい勢いで食い付いてきたメルヤに、看護師は随分前のことだから、と一言付け足して。

――なくなった。

なくなった。その言葉の意味を一瞬メルヤは理解出来ずにいた。なくなった。無くなった、亡くなった。
どこか茫洋としている彼の鳶色の瞳が、看護師は注射器を取り出している。治療のためだとか銘打った言葉には、彼には届かない。

――身体的な健康な成人男性である、メルヤへの予防措置。

軽めの筋弛緩剤を、まだ鱗の生えてない部分に打たれるのを静かに見つめた。ようやく四肢の自由が効きだした頃合いだったという考えは一瞬で霧散する。
 この病棟にいる”家族”の残像が過ぎる。胸の奥で、かすかな翳りがすべてを覆い尽くした

注射を打たれた彼は、脱力したようにベッドの上に倒れ伏した。]


( 僕は
 
                どこかで

     
  ×××××かもしれない

                と思っていたんだ――。)

[心臓が早鐘を打つ。動悸が、する。
 血の巡りが悪くなったように、全身が寒かった。
 筋弛緩剤のせいだろうと、彼はおのれの内面から目を反らした。慕っていたピエロの男が、亡くなっていることなど当に理解していた。そう、呟いく。

 視界の隅で、ファイヤージャグリングをしているピエロの男がいた。今の症状がどれほどのものかわからないが、熱気を感じる。
 とにかく部屋から出ようと思い、重々しい体を持ち上げた。ジャラリ、鎖の音が耳に響く。頭にも鈍痛がして思考が上手く紡げない。]


[ふと過ぎった残像は、先ほどまで話題に上がっていた年上振った男だった。逢いたくない、強く思った。]

(…逢いたくないな)

[”そろそろ”と言っていた。彼は恐らく、メルヤが先に”連れて行かれる”などとは思っていなかっただろう。昨日、部屋を訪れるまで。
白い、白い、手紙の山。
部屋では淡紫の花は咲いていた。彼の執心する、紫。

――…その執心が、朧気だった。

諦めた”振り”をしながら、諦めきっていない。薄紫の花を、外からのものを、追い続けていた。
どんな気持ちで見ていたか、彼は知らないだろう。

せめて――。
        

望みは何時だって、何ひとつ叶わない]


[廊下を歩きながら、注意深く隔離病棟を眺める。
 医者は、あちらの開放されていた場所の、笑っているのに目が気に入らなかった男とは違う人物のようだ。看護師も男の方が多いが職員数は然程ではない。

隔離されている患者数自体が少ないのだろう。

ぼんやりと歩きながら、椅子を持ち出すのを忘れていたことにメルヤは思い至る。
少し。病棟の構造や中を見て歩こうと思った。知っていて損はない。

行動と、茫洋とした思考は理性的だった。いつものように。
彼は彼が思うよりも理性が強く、故に今まで幻覚に囚われずに、諦観しきっていると(メルヤ自身は)思っているのに呑まれずに生きている。

それが幸か不幸かは、定かではない。

そしてどこまでも、現実主義者だった。現実は、現実でしかない。

人の心の傷みにばかりかまけて、自分の心の傷みは切り離して生きてきた**]


[慣れぬ車椅子を操り、自室に戻れば其処に待っていたのは、
検診で自分を診察した医師だった]


『やあ、車椅子に馴染んだようでなにより』


[...はそうですね、と無表情に返す
表情筋が動かなくなる奇病であることを理解している医師は、
不愛想な返事に怒る事もなく、拘縮の様子を観察したり硬化の度合いをモニタリングしたりした後
どうやら...は害がない、と見られているらしく簡単に問診を終えれば解放された

まぁ段々と関節が硬化し身体が動かなくなる病だ
元々運動能力もそこまでない為そう思われるのも納得ではあった

荷物は其処にあるよと告げられて、その個所を見れば段ボール1つと梱包、
というより何か袋に入れられたものがあって
...は元々あまり部屋に荷物を置かない上、趣味も読書な為本は図書館で借りれば事足りる
故にの荷物の少なさで――とはいえ]


……?

[その中で見慣れぬものが1つ
医師が去った後、その袋に入れられたものに手を入れて
ゆっくり引き出し、出てきた、ものは]


……ああ。キルロイ


[其処にあったのは、2人で空を眺める絵
絵の中の私と、貴方は誰よりも自由で
傍にいて、幸せそうに寄り添っていて

ねぇキルロイ、コレを描くのに貴方はどれだけ無理をしたの?
どれだけ、痛みに耐えたの?

――綺麗な、きれいな蒼い空を眺める2人
其処に閉じ込められた思いを抱きしめ、...は零す薄桃と黄色のダイヤモンド]


[幸せな時間
切り取られた幸福
でも、今現実では私、殺風景な部屋にひとり

メルヤやナナオと話していて、とても楽しかった。でも
それでもあなたが、いないの]


あいたい。あいたい、わ


[転がる宝石、心の雫
思い出すのはナナオの歌
キルロイ、愛しい人

――今、貴方は――幸せ、ですか?*]


メモを貼った。


[一旦、自室へと引き返したのは薄ぼんやりと院内をさ迷った挙げ句のことだった。
シーシャに貰った本を手にして、再び廊下をさ迷う。

鎖を引きづるような金属質な音。まるで囚人のようだ、と頭の隅で思う。


ナナオの部屋を通り過ぎ――引き返そうともせずに歩いていた時だった。

かすかな囁き。耳覚えのある声に、メルヤの意識が傾いた。
ドアは開いていただろうか。メルヤはその囁きがある方まで、足を運んだ*]


メモを貼った。


[暫し絵を抱きしめ輝石の雫を零していた

ほろり
     ほろり

其れは絵を濡らす事もなく、心を閉じ込めて粒となり
リノリウムの床に零れ落ちて

と、...は顔をあげ扉の方に顔を向ける
廊下を這う鎖の音は聞こえずとも、人の気配くらいはわかる
...は絵を一旦床に置き、車椅子の車輪を動かし扉越しに声をかける]


……誰?先生?


[先程所見は終わったはずなのに、と小さく呟き扉を開ければ
其処にはメルヤがいたろうか
絵本を抱いて貴方何してるの?なんて問いかけるはいつもの、無表情]


 
やあ、ケイト。
ちょっと入ってもいいかな?
 
[コツン。ドアをひとつ叩く。普段通りの澄ました顔をして確認を取る。長く共に過ごしているとはいえ、想い人のいる女性だ。
男とか余り数に入れられてなくても、きちんとするのが礼儀というものだろう。]


ええ、かまわないけれど

[彼が入ってきたなら、持っている本を見て
それどうしたの?といった視線をおくる

割と律儀な性格のメルヤは、確認をとってから入室してきて
それが自分に想い人がいるからとかそういう理由であるとは思いもしない
唯、礼儀正しい所があるのねと思うだけである]

さっきぶり、かな
荷物はどうだった?私は全部送られてきてたけど
これ梱包を解くのもちょっときついわね

[荷物は少ないが、動かす身体の軋みが酷く
だから未だ手をつけられていないの、と肩をすくめた]


さっきぶりだね。
梱包?僕がやろうか?


[本に視線を送られているのを見て、ああ、と小さく零す。]

シーシャに貰ったノートなんだ。
まだ中身見て無いから、持ってきた

[梱包の前まで来たら、目で確認する。
自分が開いてもいいだろうか。視線で問い掛ける。]

僕のとこには、荷物届かないみたいだよ

[手品グッズばかり置いてたからね。などと、小さく呟きを零した]


本当に、さっきぶり
じゃあお言葉に甘えてお願いしてもいいかしら

[此処に来る前は強がっていたものの、正直身体を動かすのは辛いのだ
どうやらメルヤによれば、彼の持つモノはシーシャのノート、らしい
つまりは日記帳だろうとあたりをつけた]

そう、彼に貰ったんだ

[″もう1人のシーシャ″、日記を紡がぬシーシャは其れを許したのかと
...は考えつつも視線での問いかけに緩く首を縦に振った]

貴方の手品グッズこそ此処では必要だと思うのだけれどね
だってここ、何もないじゃない

[廊下と、個室と、眠る様に
若しくは苦しみを吐きつつ叫ぶ
そんな患者で溢れている此処にこそと]


[ややあって、梱包を解く。患者にも解けるようガムテープしか無かったものを、一旦近くのテーブルに置いていった。]

うん、そうなんだ。
ちゃんと見て置かないと、思って。

[結局のところ踏み込まない信条であるメルヤが、シーシャと、”シーシャさん”が一体何であったのかはわからない。
ただの二重人格か。はたまた病気の何らかの進行か。
考えても詮無いことを、思いつつノートに視線を送る。]

僕の手品グッズがあれば、まあ。
ジャグリングの棍棒とかは普通に凶器認定されたかもしれないね…

[さり気なく物騒なことを呟く。

廊下の方で、ピエロの男本人そっくりのマリオネットを操っているピエロの男の幻を見る。いや、もしかしたら操っている振りしてる方がピエロの男か区別が付かないほど精巧だ。]

僕の手品なんて…大したことないしね

[何となく幻の方を見ないようにしながらも、小さくぼやいた。]


ありがとう、助かっちゃった
やっぱり男手があるのはいいわね

[梱包を解くのを手伝ってもらえれば礼を言う
男扱いもするのだ、一応はね]

成程、手品グッズも凶器になる、か
まぁ山ほどのボールは狂気の沙汰…もとい凶器だったわね

[酔っ払いの一件を軽く揶揄すれば悪戯っぽく小首を傾げる
とはいえその動作は緩慢だ

それ凶器に使うつもりだった?なんて尋ねつつも――
続く彼の言葉にゆるり、と菖蒲色を向け]

貴方は、″誰″と比べているの?
私は貴方の手品は十分凄いと思うわ

[ほら、また誰かを、みてる。其処に居ないなにかを、みてる]


あれは嫌な事件だったね。
[の64個ものバウンスボールが室内に大乱舞を、勝手に過去形にした上に元凶がぼやいた。]

机の上に置いたままでいいかい?
車椅子でも取れる高さだから、不自由は無いと思うけど。
[ケイトの体が硬化していっているのを知り、メルヤは添えた。]

……凶器には出来るよね
あとブーメランとか…アーチェリーもあったし。僕は苦手だったんだけどね。
[紫水晶の双眸を見つめる。
”誰”と問われれば、一人しかいない。

どこか繕ったような笑顔を浮かべる。]

僕の、手品の師匠だよ。
ケイトは余り知らないかな?
大体はピエロさんとか、ピエロの男とか…そんな風に言われてる人でね、何だろう。
彼の部屋もね、小さなサーカスみたいで色取り取りでね。凄かったよ。

[昔懐かしむように目を細める]


[             どこかで。
      子どもが

          泣いている声がする。]


……ケイト
[かすかに躊躇うように、彼女を呼ぶ。]


もしもの話だけど、ね
トレイルが来たら君が、ナナオの部屋とか案内頼んでもいいかな?

[どこか繕ったような笑顔のまま、メルヤそんな風に頼みを口にした。]


そうね、嫌な事件だったわ

[般若も降臨したしね
睡眠薬と酒の摂取でそうなった、とは知らなかったため
...の中ではメルヤに酒をたくさん飲ませたらあぶないという認識が芽生えていた]

ええ、もちろんよ
迷惑掛けるわね。後は自分で何とかできそう

[そう告げれば、...は聞こえたメルヤの言葉にへぇと呟く]

そんなものもあったのね。ブーメランは貴方の手品で見たことなかったわ
紙吹雪や鳩みたいなの?あれは見た事があったけれどね
……そう、師匠さんなの
私、此処に来た当初はあまり部屋からは出なかったから


[でも貴方達が手品で楽しそうにしていた様子は、知ってたわと小さく
繕ったような笑顔を見つめながら...は告げた]


どんな部屋だったんでしょうね。嗚呼、知ってみたかった
今となってはもう遅いけれど

[後悔は、いつも後にしか起こらないのだ]


[彼が、なにをきいたのかはわからない
     何を思ったのか


わたしは タルトの事が苦手
否――タルト自身は好ましく思うけれど。彼女の病気が苦手なの

だって私、笑えない
一番笑顔が必要な子の前で、私では助けられない

私の精いっぱいの笑顔は、僅かな微笑みにしかならないから]


――ええ。いいわよ
任せなさい。恋のキューピットって柄じゃないけれど
ああ、じゃあ私も貴方に1つ、お願い事していい?

……もし、万が一タルトちゃんが、此処に来たら
貴方に案内頼んでいいかしら

[躊躇う彼に、...も何処か苦笑じみた声で頼む]

私じゃ、彼女の病を悪化させるだけ、だもの


もう二度と酒なんて呑まない。

[般若の降臨は実は酩酊状態だったメルヤはよく理解していなかった。
 鎮痛薬と酒を一緒に呑めば、当然の帰結でもあるが。]

ブーメラン苦手なんだよね。
手元に戻って来ないから
僕なんて手品師紛いだよ。

[手品の説明を受ければ、繕った笑みの中で小さな笑いを含めて。]

僕の手品とは次元が違うよ。……うん。

[常軌を逸しているという説明の方が正しいが、ピエロ大好きのメルヤはそう思っていないので伝わりにくい。]

手品でっていうか、僕は彼が大好きだったからね。
[やはり、ポーカーフェイスか。道化師のメイクのように繕った笑みを浮かべて、そう呟いた。]


小さなサーカスみたいだったよ。うーん、何か色んな色の旗とか、鮮やかでね
夜には七色に光ったんだ。光るステッカーとかだったのかなあ


[そんな部屋で暮らすのは、常人ならば発狂しそうである。]


単純に僕がトレイルと二人きりになりたくないんだけどね

[少しだけ本音を零す。ここだけの話は、隔離されてから多くなったように思う]

タルトが。来るとか考えたくないけど。
来たらもちろんだよ。
ナナオに会えたら喜ぶかもしれないね。

[表情が動かせないケイトと、他人の笑顔を見ていないと発作を起こすタルトでは、遠慮をするのはごく当然だと、素直に頷いて引き受けた。]


そうね、飲まない方がいいわ。貴方凄かったのよ?

[なんて言いつつ...はあの時の事を思い出す
今は遠き、日常の欠片を]

あらそうなの。コツは確か手首のスナップがどうとか聞いた事があるわね
難しそうよねぇブーメラン
……紛いかどうかは、決めるは観客次第
私は立派な手品と思うけれどね

[私が知るのは貴方の手品だけだから
次元が違う、と言われてもわからないの
――だからこそ、噛みあわぬ思いでも、ある]

……そっか。貴方が慕っていたわけか
その人に追い付きたかったのか、その人になりたかったのか
それとも思い出をなぞったか
分からないけれど、きっと素敵な出会いだったのでしょうね

[でも、その繕った笑みは私、少し苦手だわ]


割と凄い部屋ねそれ。私だったら色の洪水に発狂しそう
どうやって精神の均衡保っていたのかしら

[淡々と。...は無表情にそんな事を告げる]

光るステッカーってどんな感じかしらね。星とかあったのかしら


ああ、まぁねこじゃらしだから仕方ないわね

[ナナオのたとえを持ちだしそう告げよう
納得、と小さく呟きました

頼みを引きうけてくれたのなら、...はホッとした顔をして礼を述べた
とはいえ無表情が僅か、目元が緩んだだけなのだが]

……貴方、今の貴方の方がずっといいわね
私貴方の観察者じゃない姿って、トレイルの前以外ではあまり見かけなかったから
だから今の貴方はとても新鮮で面白い

[告げる声は無表情だが何処か面白がっているよう]


…そうだね。
記憶があるからなおさら辛いんだけどね。

[シーシャはバナナを喜んで受け取ってくれただろうか。
そんなことがちらりと、過ぎった。]

そうだね。そっか。
決めるのは観客次第、か。そうだね。
…ありがと、ケイト。

[ピエロの男の手品は手品というより最早魔術の域だが、ツッコミ要員が今は不在である。]

何だろうね?
一緒に過ごせたらそれで楽しかったから。なりたかったとかじゃないよ?

一緒に居たかった、それだけだったから、思い出をなぞったが正しいかな。

[何か。少しでも残して置きたかったのかもしれない。
ピエロの男がいたという名残を。無邪気に慕った、唯一の人の存在を。留めて置きたかったのかもしれない。]


…彼は24時間で記憶を失う人だったし。
僕と違って常にピエロだったからね。精神構造は…どうだったんだろう。

まあ、何考えてるかわからないとこが、素敵だったよ。

[メルヤの憧れの基準が謎過ぎることが、今ここに発覚した。]

僕もその頃はまだ、しっかり覚えていようとしてなかったから…朧気なんだよね


その例え忘れない?

[納得されれば、それでもいいか。渋々と引き下がる。
安堵の息を零す。]

ケイト。僕は…覚えていること、気づかない振りをすること。入り込まないのは、もう癖みたいなものだからね。
…変わってないと思うよ? 

変わったように見えるのだとしたら、その由来は……”未練”だろうね

[なんて。小さく自嘲まじりに微笑んだ。
 望みのひとつぐらいは、叶ってもいいのにと思いつつ。]


でも忘れるよりはマシだわ。どれほどひどい記憶でも、忘れてしまえば唯の幻想になる
其処に誰かがいたなら、其れは尊い記憶

[と、...は思う。夢に記憶を食まれる老人を知っているからかそれとも]

どういたしまして
当たり前の事を言って礼を言われるのは何だか不思議ね

[突っ込み要員などいなかったのだ]

そう。思い出をなぞったのね
……私も、なぞれば良かったかもしれないわ
通り過ぎて行った人々。憶えているだけじゃなく、そうすればより強く
記憶も輝きを持っていたでしょうにね

[こうかいするのはいつも、おこってから
動かぬ身体だから記憶をとどめようとして
それは甘絵だったのだときづかされた]

―― 一緒にいたかったか。胸に響くわね


常にピエロはすごいわね
わたしにはとてもまねできない

[24時間くるくるり。映写機のフィルムをとりかえる様に
記憶を喪うのは怖い事だろうと思う

その奇病にかかる前の過去の記憶は?
おぼえてるの?わすれちゃうの?
名前すら、わからなくなるの?
――聞きたいと思えど其処に
彼の隣にピエロがいない、それがきっと″真実″なのだろうとおもう
だって此処は]

何も考えない事ってある意味素敵と思うわ
色んな事から解き放たれてるってことだもの

[でも解き放たれすぎるのもまずいよね]


嫌ね素敵な例えなのにどうして?

[扱く真顔で尋ねました]

あら、じゃあ未練って素敵ね本当に
貴方をより人らしくみせる
――叶えば其れは希望になる

貴方は希望を抱ける?メルヤ

[私は、抱いているわと...は精一杯口角をあげる
不敵にみえるように、笑みを形作る
望みを持ち続ける事、それは私達に許された最後の自由で
叶えることも不可能じゃないと、信じたいから]


僕は。何人か、忘れたくなくても忘れてしまうひとを知ってる。
だからじゃないけど。その分僕は覚えていようと思ったんだ。

その人の分までってわけじゃないけど、さ。
[ふ、と溜め息を零す。]


通り過ぎていった人が多過ぎるよ、ケイト
だから。全員の思い出はなぞれない。再現はされても、ね。
…普通の人だって、いつか忘れる。

忘却は、罪じゃないよ。
…誰もが皆、忘れるんだ。

僕は”忘れられない”性質なだけ。多分、病気の副作用だよ。

[それを伝えたかったのは、ケイトではなかったかもしれない。
それはメルヤにもよくわからない。]


そうだね。七年も前のことだから。
僕がこうなったのはそのせいかもね。
[おどけたように笑って見せた。その口元は微笑を浮かべる。]

だから彼はピエロだったんだよ。僕にとっても、みんなにとっても。

[当人が亡くなった。彼は死んだ。
それを聞いてまだ時間は少ししか経っていない。

ケイトが告げる彼の小さな変化のさざ波は、ピエロの男の死を確信してしまい、その心の傷みに気づいていないのもあっただろう。

ひどく心は渇いているのに、何故か雄弁になっていた。
その変化を、彼女はおそらく勘付かない。]


断固として否定したいからだよ。

[メルヤも負けじと、言い返した。]

人、らしくね。
…何だか僕が今まで人間らしくなかったみたいな言い方だけど。

叶うかどうかわからないよ。ケイト
ただの未練だから、叶ったらいいけどね。

……僕は観察者失格だとしても
諦観者には変わらない。希望なんて、無いよ。

現実を見つめ続けるだけ。


[淡々としたものには、諦観と退廃しか宿っていなかった。
メルヤの未練は、彼の望みではない。他の誰かの望みに触れてしまったが故の、未練。

――ピエロの男とずっと一緒に居たかった。
それがはじめの望みだった。

――みんなで穏やかで過ごしていたいだけだった。
次々と皆連れていかれた。

――…みんな、一緒に消えられれば良かった。
その望みが叶わないと知っていて抱いていた。心の中に望みを仕舞う箱があるとすれば、彼の箱の中身は空っぽだった*]


メモを貼った。


私も知っている。けれど
私もその人たちの分までってわけでは無かったわね

私が忘れたくないから。大切な記憶をとどめておきたいから
だから忘れない

[何れ蝋人形の様に生きながら死ぬ姿になる
覚悟して、私は宝石の涙を流すようになった
そうしても結局、弟は助からなかったけれど
でも此処で沢山の人に出会った

通り過ぎた人もいた
亡くなった人もいた
――でも皆に会えた。キルロイに会えたから私は]


忘却は罪ではない。けれど罪悪感は常に残るわ
私もその副作用が欲しかった
……と言ったら、怒る?

[貴方が見ているのは誰
私に話しかけているのか、それとも私の背後に話しかけているのか
それとも第三者か其れはわからない
それでもわすれたくないと、心は叫ぶのに、ね]


7年、長いわね
――あっという間のようで、長いわ
皆にとっての道化師なら。それは……ストロボみたいに
記憶に残ってはなれないでしょうね

[黄昏のシネマみたいに貴方は再現するのね
フィルムを映写するように何度も何度も

道化師の戯れを
道化師の生きざまを

ふと彼の、手品の前の口上を思い出す
あれもきっと、そのピエロの口癖だったのだろうと
普段より多弁になる彼。されど...はその変化の理由は思い至らず
真実の歯車は歪み噛みあうことはない]


あらそうなの。でも私は其れを却下する
 
[言い返す言葉を一刀両断]

あら、そうとは言ってないわ
人であれど観察者という枠組みに自ら囚れたように見えただけ
貴方が諦観を抱くなら私は希望を抱きましょう
現実を見つめながらも私は最後まで希望は捨てやしない

例え諦めても、何度でも
私は再度、希望を持ち続けるわ

[空の絵の様に。あの光景の様に
もう一度、私は彼と景色を共に眺めたいから]


[きっと私、一昨日連れ去られていたのなら
メルヤと同じ気持ちを抱いただろう
諦めと、退廃と
未練を残すのが嫌だから、唯、記憶して心の宝石箱に閉じ込めて
時折其れを眺める余生を歩もうとしたろう

でも私は光を知ってしまった
未練を抱いた
欲を抱いた
希望を、抱いた

だから私は、諦めない
瞳の中に花が咲く。希望という名の花が咲く
彼の箱は空っぽかもしれないが、私の希望を仕舞いこむ宝石箱は、
輝くもので満ち溢れているのだ]


僕も忘れたくなかったから。感情も、鮮明に留めて置きたかったからね。
だから、僕は傍観者だよ。

[の瞳の奥に微かに灯るものを、眩しくなってメルヤは目を細める。
メルヤは両親から、およそ愛情というものを受け取らなかった。生意気で小賢しい性格が災いして友達と言える相手も外の世界にはいない。

何も残してきていない。だから何も遺したくなかった。]

知ってるよ。知ってる。嫌という程知ってるよ。
怒らない。

……僕には、忘れてしまう恐ろしさがわからない。
そして僕には、忘れる救いも訪れないって言ったら皮肉にしか聞こえない人達がいるかもしれないからね


[芯を捉えていないような瞳は、ケイトにどう映っただろう。
ここにいるようで、いないような感覚。過去と、今。錯綜する想いは何時だって、現実的だ。

それでも過去と今が混ざることが、なかった。]


君も最近僕にひどくない
 
[ついに聞いてしまった。]

うん。別に囚われようとしたんじゃないよ。僕がそう位置づけた。
そうだね。いいと思うよ。

僕には何の望みなんて無いからね。
[声は抑揚がなく、何かを隠している風ではなかった。]


[彼女の瞳には、一昨日までの絶望が嘘のようだった。

瞳の中に花が咲く。そう比喩したのは誰だったろうか。
それは希望なのか、生きる気力なのだろうか。

彼自身、彼の心などわからぬまま。希望などない心の中を見つめずに、ただ、静かに現実を見つめることを、選んだ*]


[忘れえぬ記憶、

それはとても残酷で
それはとても素敵で

前提が違い過ぎればそれは、何も生まないのだ
――認識の祖語のみ、紡がれる
価値観の違いのみ、紡がれる]


其れは貴方があまりにもいじりやすくてつい

[全く悪びれもせずにしれっというものの、
最後の言葉にゆるりと菫色は細まる]

――ああ。また戻ってしまったわね
貴方の言葉(こころ)は、虚ろだわ

[メルヤの声に抑揚を感じないのに気づけば
ただ、...はそう返した]

扉の音が聞こえるわね
また、誰か――くるのかしら

[耳欹てれば音が鳴る
重厚な音。扉が開く音がする
あちらとこちら、つなぐもの

...は、そろそろ部屋に帰らなくていいの?と尋ねる
今日はもう、疲れで部屋から自分は出れそうにはない]


[傍観者よ、君自身が1歩進もうと思わなければ
眼前の道も見えはしまい

現実の前に転がる未来地図
あまねく未来への道は無数にある
それを見つめ、誰かが選ぶのを唯黙って見ているのだろうか

――私には、彼の苦しみなどはわからない
寄りそう事も出来ない

唯、道はあるのにと呟くだけしかできやしない
歌いながら真実紡ぐ鳥の様にはなれない
キーウィット、キーウィット。其れはなんて哀しいお伽噺!

同じく他者を見つめ記憶するのに
どうしてこんなに、違う思いを抱くようになったんだろうね*]


そうだね。邪魔したね。ケイト。
……それじゃね。

[メルヤは長く話していたから疲れただろう。巡回がまた来るかもしれないと思い、暇乞いをした。”また”とは口にせず。]

頼んでたこと、よろしくね。


[それが明日でなかったとしても。
 もう――長くはないのだろう、とメルヤはほとんど確信めいていた。

彼が”連れて行かれる”ことを望まなくても。
足取りよりは帰りよりは、軽い。筋弛緩剤の効果が無くなってきたのだろう。

心はどこか虚ろだった*]


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