17 吸血鬼の城
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─少し前:サイモンの部屋─
…ローズマリーさまが、どうしても「あの」マリーねえさまだと言うの?
そんな…信じられないわ。 時を、超えた───…?
[兄は頑固に、ローズマリーが記憶の中のその人だと言うのです。 気だるげに首を振り、けれどそれ以上は教えてくれようとしませんでした。]
(115) 2010/06/20(Sun) 01時半頃
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────?
[首筋に2つ、赤い傷跡が見えます。 指摘しますと、慌てたように掌でそれを覆って「虫に刺された」とだけ言いました。]
え……。 わたくし、たちだけでも逃げろ?
逃げろって、どういうことですの? お兄さまは一緒ではないの?どうして。
[陰鬱に兄は打ち黙ります。 そうしてまた、逃げろ。とだけ、繰り返すのです。
ただ彼が、どうあってもかの翡翠の眸の主を置いて逃げ出す気だけは、どうしてもないようでした。]
(116) 2010/06/20(Sun) 01時半頃
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───ひとまず、ご城主さまにご挨拶がなくては出るも何もないでしょう? お兄さま、一緒に……えっ、行かないですって?
…そう。
[首を振る兄に息をつき、そうしてわたくしは部屋を辞したのです。 振り返ったとき、森から獣の遠吠えが微かに聞こえて、静かな兄の姿をひどく不吉に見せたものでした。
雷鳴鳴り響き、城内に「宴」の時は告げられたのは、程なくのこと。]
─→白薔薇の広間─
(117) 2010/06/20(Sun) 02時頃
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─白薔薇の広間─
…霧が、晴れぬ? そんな、どういうことなの──…?
[広間にはむせ返るような、白薔薇の馨。 城主たる人の姿は、先にお会いしたよりも一層近寄り難く、冷たく抗い難い力に満ちているようでした。>>10
はしばみ色の瞳に、戸惑いの表情が浮かびます。]
[問いに返る答えはなく、不安げに辺りを見渡しますと、見慣れぬ人々ではありましたが、一様に不安や戸惑いの色を浮かべているようでした。]
(129) 2010/06/20(Sun) 02時頃
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マリーねえさま…。
[一段高く、城主その人の妹君としてその傍らにある瑠璃の姿に、そっと小さく呟きます。
ふるり、と一度首を振って再び辺りを見渡しますと、見知らぬ中に見知った有名な顔があることに気付いたのです。]
(130) 2010/06/20(Sun) 02時頃
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…あ。バイルシュミットの姫君…?
[気違い令嬢、と称される彼女も「宴」に招かれたのでしょうか。 社交界で幾度か見かけた顔に、そっと口元を手で押さえます。
その傍らには、やはり見慣れぬ人々がいるようでした。]
(132) 2010/06/20(Sun) 02時頃
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[ローズマリーの呟きは、人たる耳には届きませんでした。>>141 ただ、どこか寂しげにも揺れて見える表情が気にかかり、つい瞳は彼女の姿を追うのです。
───兄も、やはり彼女に魅せられた一人なのでしょうか。
物思いを打ち払うように首を振り、彼女の傍らに添う白い青年の姿にも視線を向けます。]
きれいな、ひと。
[ぽつり。と、白薔薇のような青年への評が漏れました。
グロリアの名を呼んでしまったのは、どうやら宴の喧騒に紛れて届かなかったのでしょう。 所在なげに賑わいの中心を離れて壁の方へと向かいますと、同じように一人腰掛ける漆黒のドレスの女性の姿がありました。>>146]
あの…、ここ宜しくて?
(154) 2010/06/20(Sun) 02時半頃
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花売り メアリーは、小悪党 ドナルドの言葉にちらりと視線を向けた。
2010/06/20(Sun) 02時半頃
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……?どうかしまして?
[悲しげな表情を浮かべる彼女に、ちいさく首を傾けます。>>158 同年代と見えましたから、少しだけ気安い思いで彼女へと微笑みました。]
ありがとうございます。
[そうして、傍らの従者の男性へも視線を移し、>>160]
わたくしはメアリー・トレメインと申しますの。 どうぞよしなに。
黒薔薇さん…そう。 ロビン、とお呼びさせて頂きますわ。
[薔薇を口にしなかったのは、城の随所に飾られた城の薔薇の為か──もしくは、過去の薔薇の園の思い出のためであったか。判然とはせず、どこか曖昧な面持ちで軽い礼を返しました。]
(164) 2010/06/20(Sun) 03時頃
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[薔薇は自ずと、ひとりの人の面影を呼び起こします。 ふと其方を見遣れば、かたりとグラスを置いて俯く姿が映りました。>>161]
─────。
[儚げなその姿が気にかかり、息を詰めます。 傍に行って慰めたいほど慕わしいのに、「なにか」が足を止めさせるのです。]
『……逃げろ。おまえらだけでも逃げろ。』
[ふと脳裏に過ぎったのは、兄の言葉。 一度目を伏せて再び彼女を見遣ると、思いを振り切ったように嫣然と微笑むローズマリーの姿がありました。>>166]
(167) 2010/06/20(Sun) 03時頃
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花売り メアリーは、水商売 ローズマリーの姿に密やかなため息を落とした。
2010/06/20(Sun) 03時頃
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マーゴットさま、ですのね。 キャンベルというと…キャンベル卿の?
[この辺りでは有力な、街の領主の家名。 彼女と直接の付き合いはなくとも、その家名に聞き覚えはありました。
慎ましく目を伏せた彼女へ、やわらかい笑みを向けます。]
気になさらないで。 何か悲しいことがおありになったの…?
[黒のドレスへと視線を向け、暫くそうして辺りの様子に耳を傾けました。**]
(174) 2010/06/20(Sun) 03時半頃
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─???:いつかの時─
『……綺麗だろう?』
[夢の中。兄が嬉しそうに微笑みます。]
『綺麗な薔薇だろう?』
[白い薔薇。亜麻色の髪の乙女。銀の羽根。]
『──…私のローズ。』
[愛しげに呼びかける声。]
(374) 2010/06/20(Sun) 22時半頃
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─城内:サイモンの部屋付近廊下─
『皆様の無事を───…』
[マーゴットの祈りの声は、宴の華やかさにも似つかわしくなく、どこか不安げに響いたものでした。>>179
──無事。 その言葉が、兄の警告にも重なって響きます。
逃げろ、逃げろ…と。 切羽詰った声、けれども自らは決して逃げようとはしない、兄の漆黒の瞳に浮かんだ決意。それらが全て、胸騒ぎを書き立てるのです。]
お兄さま……。
[気がつけば、わたくしは兄の部屋への道を急いでいました。]
(375) 2010/06/20(Sun) 22時半頃
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─城内:サイモンの部屋付近廊下─
サイモンお兄……あっ。
[兄の部屋の前。 しんと静かなその部屋の前、開いた扉の丁度廊下との境目近くに、一人の人影が見えています。>>367 石のお城の黒き薔薇。
従者の背に、足を速めて兄の部屋の前へと向かうのでした。]
ロビン…ですか? サイモンお兄さまが、どうかしまして?
[兄の姿は、ついぞ白薔薇の間に現れませんでした。 或いはそれを咎められるのかと、声が不安に揺れるのです。]
(389) 2010/06/20(Sun) 22時半頃
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────っ!?
[イアンの声が、兄の部屋の中から響きます。 ひどく切迫したその響きに、部屋へと駆け寄り開いた扉へと駆け寄りました。 そこに見えた光景は───]
…サイモン兄さま?
[陶然とした漆黒の瞳を、麗しき翡翠へと向ける兄の姿。 息を呑んだように、立ち竦むイアンの姿。 彼を制するように鋭い視線を向ける、「黒薔薇」の姿。
──そして。]
……マリーねえさま……っ!!!
[兄に腕を投げかけ、嫣然と微笑むローズマリーの姿。]
(402) 2010/06/20(Sun) 23時頃
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