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―まだあんまり酔ってないとき>>*37>>*38―
[ なんの肉が分からないけど
食べたことないくらい美味いチーズ焼きをつついていたところ。覚えのある声が俺の名を呼んだ ]
――ケイ?
[ うん、そのはずだ。
厨房担当だと話していたし。
でも。そこに居たのは。 ]
――、――
[ フォークをくわえたまま、
驚き、思考、しばし停止 ]
――、……
――、――、――、ぇっ
[ へび。 ]
[ 驚くと思考が本当に停止して、
つなぎ合わせるのに時間がかかる。
蛇を凝視して、
助けを求めるようにエフを見て
もう一回蛇を見て ]
ケイ?
[ 驚きすぎて、俺は、斜め上のことばを口走った]
手、ない のに
料理、どうやって……
[ちがう、そうじゃない]
メモを貼った。
アシカは、ヒレが、ある、し
[ ちがう、そうじゃない。
二度目の脳内会議指摘。>>*40
ぴろりと舌が赤くて、ほんと蛇。]
――ぁ、え、うわ
[ 驚きの声も出るってものだ。
あっという間に、知ってる姿。 ]
……まじか……
[ 働け言語中枢。
驚きすぎてハングアップ気味。
いや、なんというか、こわいとかじゃないんだけど、なんていうんだ、これ ]
[尋ね返すおと
やはり掬うように眺めてしまって
指を離した表情が、まだ、苦し気な、ような。
肘を突き、手の甲に頬を乗せて
んん、と、唸るのは、思考を捻るおとだ。]
あんたが、どんな風にしてても
好きだな。 ………ッて、意味だが、うん。
[苦い表情でも、笑う表情でも、恥ずかしがる表情でも。
これなら伝わるか、と、首を傾ぐ角度を深めた。
――― それから、眉の角度を心持ち上げて
何で、の、意味も、自分から探し出す。
おれの口は、今日随分と働いていると、思う。]
……いっぱい……
[ 俺の見ていた現実は
ほんの一面だったってこと、か。
本当に、いるんだ。
本の中だけじゃ、なく。 ]
ふ、不穏なこと言うな
それに、……
[ 攫うのは、エフなのだ。
そう、俺は了承したし、つまり、約束。]
……… そういう表情させてるのは
俺じゃないしな。
[探り出した結論。
眉が、妙に、神妙に、うねっているのが自分でも分かる。
こういう表情ばかりしたいわけでも、ないんだが。]
うん。 納得するのか、そうか。
ひとのなりは出来ている心算なんだが
眠いのだけは、如何にもならなくてねえ。
……… はは。
[リツ
覚えていてほしいと、改めて欲を覚えて
笑うおとが殊更甘くなってしまった。]
人間じゃない。
…… いつか、直接聞けば、良い。
拒まないとは、思う。 うん。
[改めた自己紹介の機会を奪うのも本望ではなくて
おれの口は、それを促すことばを吐いてから
辛口の酒
眠気を帯びない、ぱち、ぱち、半目の瞬き。]
飲む。
[飲める、では、なくて。
コーヒーをベースにしたカクテル>>*32は
店長の趣向と蛇の趣向を、凝らしたもの。
ひどく濃いコーヒーが混ざった酒は、辛い、苦い。
一口飲んで、瞬いて、二口飲んで、飲み干した。]
…… 苦いな。
[美味いな、と、同義だ。
咽喉を焼くアルコールに、砂糖の甘さはなかった。
クリームの白が混ざり合う層ですら。
それから、配膳を自らこなす厨房の蛇>>*38
文字通り、蛇、手も足もない、蛇。]
楽しんでる。
…… のは、いつもだけどねえ、今日は特に。
ケイも、有難う、料理が美味い。
[運ばれたグラタンは、ところで
熱くないのか――― と、獏ですら、思う。
苦い酒に、人間の舌にも馴染むグラタン。
夏の暑さも忘れられる熱に、一通り、舌鼓を打った。]
道案内か、任せろ。
[攫うでも、導くでも、手荒な真似をしなければ
ほぼ同じ意味だと、おれは片付けた。
蛇に頷き、店長に目配せ
アマノに手を挙げ、トレイルに礼を。
顎を引き、何時でもポケットに納めている財布から
酒と、料理と、サービス分……… も込みで。
昼代はわりと店長にまけられている現在。
他称大目に、カウンターに添えても罰は当たらない。
服を引く指
昼間のおれみたいな顔をしているリツに。]
送る。
[席を、立つ。]
メモを貼った。
[
爆弾発言が、多、すぎる。]
――っ、……す 、
[か、と顔が熱くなった。
待て、待て、本当に、それは。
この上なく、伝わったけど、
俺が無事じゃない。]
――、……
[
あれ、それ、なんか、こう、
自分がさせるなら、いいってことなのか、
なんか、独占、みたいな、――違う?
ぐるぐる思考は、
眉を寄せるエフに、少しとまる]
――わるい、そんな顔、させたかった、わけ、じゃ…
[そろり、指先を伸ばしかけて、
まだためらいが、ある。
甘い笑い声に、
く、と胸が詰まってしまったが。]
行き倒れさえしなきゃ、いい。
そうする
[
こういうのは直接、ちゃんと
聞くべきだろう。]
――、
[飲む、と、言ってくれたはいいが。
全然口に合わなかったらどうしようか、と、見守って]
――苦い。飲める?
……そか。よか、った。
一緒に、飲めたら、いいかなと、思って。
[自覚して、爆弾をばら撒くような
高等手段など、獏に備わっていない。
薄明りに赤く染まった顔色
伝わったか。
[すっ呆けているわけではない。
至極、真面目に、
伝わったならこの言葉が正解なのだ、と、学習した。]
……… 百面相。
[寄せていた眉間と、眉尻の角度が緩む。
ぐるぐる、カフェ・コレットが描いた渦みたいに
表情を変化させる横顔を眺めて、指摘した。
―――この表情をさせているのは、自分。
自意識過剰でも、流石になく、自覚して
ふ、と、鼻先から洩れる笑みも、甘いので。]
あんたが謝るのは、違う。
俺が勝手に、狡いと思っただけだからなあ。
[伸ばされかけた、指先
視線を伸ばしてから、手を差し伸べた。攫う心算だ。]
……ん。任せ た
[
代金、……
[おぼつかない指先で、
財布を取り出して、
ちゃんと、札を出せたかわからない。]
……ん。
[送る。何だか、嬉しい。
足が少しふらついた、けど。だいじょうぶ。]
[
俺がいくら鈍いって言われてても
勘違いのしようも、ない。
本当に、エフの言うとおりに見えてるに違いない
表情が多少緩んだのは、
よかった、と思った。
甘い
甘い、わらい。
もっと、聞いてみたくなる。]
でも、……原因は、俺なのに …?
[さらわれる。指先が熱い]
[ケイが店長を促したので
会計は、店長の住まうカウンター。
客の出入りは、その間も続いていて
本日も夜の営業は盛況しているようだった。
払う金額は、昼の分、コーヒーを一杯含めた分。
サービス分とか、お礼とか、昼時のツケとか
おれが口にしなければ如何とでも伝わりかねない。
―― 多い、と拒まれさえしなければ
その金額を支払ってしまって、席を離れた。]
隠しているのも
楽なことばかりじゃあ、ないからな。
[多分、きっと、喜ぶ
勝手ながら、おれはそう、頷いた。]
うん。
…… 気、使ってくれたのか?
[舌の嗜好。
苦味とアルコールの熱は
口の中に、心地よく残っている。
一緒に飲めたら
指先を攫い、引き寄せがてら、尋ねた。
―――しかしながら、財布を出す指
おれの指で制すのだ。
覚束ない指を、空いた、もう片方の指で。]
今日は、おれが払うから。
また、来たときに、あんたが払えば良いな。
……… これからも、また、来るんだから。
[これからも、また>>*42
蛇のことばを借りて
リツが口にした、二杯か、それ以上の
アルコールの仕方を利用して、有耶無耶を、求めた。
彼の、頷く仕草まで覚束ないから
おれはまた、昼間のように
眠気を湛えたみたいな足取りを、合わせて。]
ご馳走様。
……… また、来る。
[店の、店員に、店長に、告げてから
約束通りに、家まで攫うから、店を出た。]
[
あんたも、…隠すの、たいへん?
[ちょっと、気になったのだ。
心臓を宥めながら――]
飲 むなら、好きなもののほうが
いいだろうと、思っ …て。
[財布を出すのは、制された。
なんで、と疑問符浮かた。]
――ぁ、……
うん、……じゃあ、そのとき、払う。
今日は、ありがとう、で
[ふわふわした意識で、ああ、また、来る、これる、一緒に、と。つい、頬が緩む]
[からん、と、ドアベルは昼と同じ、響き。
夜風は夏の空気を含んでいて
頬を撫でるそれが、心地よかった。
店の前はまだ、相変わらず、世界から隔絶された空気。
ぽつ、ぽつ、点る明かりを頼りに
繋いだ、リツの指を引き寄せながら、送り獏。]
原因が、あんたでも。
おれにこういう顔をさせたいわけじゃあ……
ふああ、 無い、んだよな?
[紛れた空腹感が、リツ
外に出た途端に欠伸を漏らすのだ。おれは。]
ごちそう、さま
[エフに倣う。
歩いてくれるのが、ありがたい
ぬるい夏の風に目を細める。
手を、離したら
迷ってそのまま、夢の中みたいにひとりになりそうで、引かれるままに身を寄せる]
――、
[心音、あがる。]
ん、――させたいわけじゃ、ない。
……わらってたり、とか
そういうほうが、……いい
[酒は、少しだけ俺の言葉を流れ出やすくする、らしい。
道を行く、俺の家、あっち、とさすがに足が覚えている]
―ほろ酔いのころ>>*45―
[酒もほどほど進んだころ、
コテツ店員にぽつり、とたずねられた。
――?と疑問符ふわり。それから]
おどろきは、してるけど
こわく、 ない。
[ほんとうのことだ。]
――いい、店だな って
おもってる
[いつもより、ちょっとだけ、口数多め。]
[
長年に渡る、いままでの現と夢の行き来を思い出す為。
寝て、寝て、起きて、寝る、繰り返しの記憶。]
おれが、大変だと言ったら………
流石に、なんだ、叱られる覚悟は、する。
[正直に、答えた。]
それは、あんたも同じだ。
……… 好きなもの、飲めたか。
[俺の目にも甘く映ったカクテルの連続。
店長の耳打ち>>*43を思い出して、ふ、と、息を吐いた。
酔えるくらい美味いものを提供されたのだろうから。]
[金額の受け渡しは
獏にしては強引に、店長>>*43の苦笑いに、負けない。]
少ないより、良い。
[次のサービスに行き付く、橋渡しに。
美味い飯も、美味い酒も、独特のコーヒーも
また、いつものように、期待しているから。
――― そんな、胸の内も、まあ多少。]
心配ない、……… ちゃんと送り届ける、から。
今日は、ありがとう。
おやすみ。
[去り際には、何時ものように。]
――― 帰り道 ―――
[段々と、ぽつりぽつりとした明かりが
現実味を帯びて来て、星明りも落ちる、良い時刻。
擦れ違うひとは流石に、疎らなので
厭、と言われなければ離さない、指を繋いでの帰路。
身を寄せた者同士。傍らとの距離は、近い。
徒歩の速度もゆるいので、帰り付く頃には
ほんとうに、良い時刻になっている筈だ。]
うん。
…… だったら、あんたはやっぱり、謝らなくて良い。
[良い
リツが辿る帰路を進んで、横顔は、はは、笑う。]
あんた、着くまで、寝るなよ。
[足取りも時折覚束ないリツに
まさか、おれが、こんなことを言う日が来るとは。
獏なりの感慨を覚えながら
店を出る際の、アマノの様子を、思い出した。
小さく笑った表情>>*46は、眠気に淀むいつもなら兎も角
腹を満たして醒めていたおれならば、気付けたので。
――― まったく、いい店だ。
元は人外が、今はひとが、切り盛りする不思議な店。
きっと、また、訪れる、一緒
―マスターに>>*43―
[苦笑いのマスターと、
やや強引な受け渡し、
ゆるやかな瞬きが切り取った。]
―― うまかった、す。
―― また、きます
[>>*47 ありがとう、と。
さっき言ってくれたコテツのほうも、
去り際ちょっと見て。
つぎ、会うのも 楽しみ。]
― 帰り道 ―
[のんびり、歩くのは
久しぶりだ。
いつも、走ったり。
急ぐような、早足が癖なので。
エフがとなりにいるせいも、あるか
……なんで?
[謝らなくていい理由になる、のは。
笑うようなら、まあ、いいのか。いいのかな。]
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