251 【誰歓RP】鬼渡し
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[裾を引っ張る明日香の目を見ることが出来ない。]
嘘…じゃねぇ……。
嘘ならどんなにいいらか…。
善一は、……死んだ。
会えることなら俺だって会いたいよ。
[最後に出たのは弱音。
辰次も決して強いわけではない。
むしろ弱い。その弱さを表に出すのが下手なだけで。]
[ちら、と仏間にある仏壇の方を見る。
そこには真新しい遺影が置かれているが
遺影の中の善一の姿は還暦を越えた姿。
彼女に見せたところで酷というもの。]
とにかく、俺のことどんなに恨んでくれても
かまわねぇが、善一には合わせらんねっけ。
わかってくれや…。
[明日香は俯いてしまったが、理解してくれたかどうか。]
─→北館家─
[車の鍵も捨てたような気がしたが
どうやらちゃんとポケットの中に収まっていたようで
心底安堵する。]
あっぶねー…。歩かんばならんとこやった。
とにかくここに座ってくれ。
[わからぬ様子の明日香を助手席に乗せるとブォンとエンジンをふかし、トラックを走らせる。暗くなってきた夜道に煌々とヘッドランプが二つ、道を灯す。]
明日香はどの辺住んでたんらか?
[沈黙が苦しいので彼女についていくつか尋ねる。
大体の家の位置を聞けばあぁ安部さんの家か。と一人頷いたり。
好きな食べ物とか、好きな遊びとか。
どれもそこまで会話は弾まず。尋ねて、答えて、終わり。
それでも会話がないだけずっとマシだと辰次は思った。]
─北館家─
[七尾家の舗装されていない駐車場と違って、綺麗に舗装されて縁石もある駐車場にハイゼットを止めると、助手席から明日香を下ろして、北館家の玄関へ。
戸を開けると、もう既に話が言っていたのか夫人が出迎えてくれた。]
「 その子が明日香ちゃんね…。さ、どうぞ中に。 」
[明日香と夫人は知り合いだったのだろうか。
ちらと明日香を一瞥して一緒に中へと入った**]
[違う、私が聞きたいのはその言葉じゃない。
その言葉じゃないのに……――]
……善ちゃん
[掛けられる声に事実だと嫌でも察してしまう。]
……ぅ……
[辛いのは自分だけじゃないと彼も言ったから、できるだけ嗚咽を漏らさないように、ぱたりぱたりと大粒の涙を零した。
どんなに願っても、もう元の場所には帰れない。
明日香に取り憑いたオニは、明日香から全てを奪い去った。]
─七尾家にて─
[気持ちの整理も必要だろう、と気を利かせたつもりだが
続く言葉を聞いて大きな間違いだったと痛感した。]
「 ……置いてかねェで 」
[それは悲痛な願い。
いや、願いと呼ぶにはあまりにささやかで
あまりに自然な欲求。]
ん・・・。
置いてかねぇから。
[小さい明日香が更に身を縮こませて言うもんだから
無性に哀れに思えて。
その小さな手をしっかりと繋いだのだった。]
[村長の話を聞く間も
明日香をひとりぽっちにさせないように、と
胡坐を搔いた上に座らせて。
不気味がる村長の驚く顔をしこたま堪能したのは
ここだけの話。*]
―→北館家―
[繋がれた手を引かれて向かった先は鉄の箱。
どうやら中は座れるらしい。中にあった席を示されればよじ登るように乗って座る。
前から後ろへ流れていく景色も、普段ならばはしゃいで見てるだろうが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。]
……家は
[問い掛けられた質問には、ぽつりぽつりと答えていく。
どうやら今、自分の家にはアベという人の家になってるらしい。
そんなことも考えず、ただ質問に答えるからくり人形となっていた。]
―北館家―
[ガタガタ揺れる道をしばらく行くと、途中から振動が殆どなくなった。]
……そんちょの家け?
[昔と違って綺麗になっているが、この場所は村長の家があったはず。
箱の席から下ろされながら尋ねると、返事は帰ってきたか。]
……?
[戸を開ければ女の人の姿。どこかで見たような気がするが……。
最後に見たのは子供の頃の顔。
歳を重ねた大人の顔に、見覚えのあるそうな気はしても、誰かは特定できなかった。
中に入り、座敷で会った“村長”の顔は、やはり自分の頃の村長の顔とは別人だった。
不気味そうな視線に明日香は、辰次の胡座の上で身を竦めながら話を聞いていた。**]
[一方そのころ。]
[辰次は膝の上に乗せた
明日香の足の指を一本ずつ弄っていた。
指ちっちゃいなあ、と思いながら。]
[一方その頃]
……何してるんだ?
[指を弄られてキョトンとしてた。
そんなに珍しいのだろうか。]
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