158 雪の夜に
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人狼など、いてもいなくてもいいのだよ。
今回の目的は、
あの処刑台での処刑。
人狼を処刑したという事実なんだ。
運が悪かったと思いたまえ。
[捉えられて、町長の前にきた時、
告げられたのはそんな言葉]
処刑は見世物になる。
人狼もいない町となる。
それで、この町はまた、生きながらえるのさ。
[そして、投獄された]**
[なるほど。
あの頃の再現かと。
人狼がでた町は、人の口にのる。
それは、好奇心から人を運ぶ。
人狼の処刑は正義である。
たとえ、それが、幼い子でも。]
[さもすると、
最初に騒いだ男も、ただの工作かもしれない。
そののちは、企む者がサイモンを殺したのか、
それとも、本当にこの町に人狼が訪れていたのか。
どちらにしろ、企む者は、安全なところで、糸を操っているのだ。]
[実際、老人も人狼をみつけてはいない。
それがいるのかどうかさえ、わからない]
ホレーショーという男が襲われた。
お前の孫娘にちょっかいをだしてた奴だろう。
だから、爺さん、オオカミになって、こらしめたのかい?
[牢屋にきて、そう云った自警団よ長が、
そのあと、ニヤニヤ笑いながら、すまないな、と脚を棒切れで殴打した。
激痛とともに、崩れ落ちる。
そのあとも抱え上げられて、殴られた]
まあ、老い先短い人生。
多少死ぬのが早まってもいいだろう?
この町のために。
[これはきっと、罰なのだろう。
あの時、ジェリーの弟をそのまま突き出した。]
[そう、あの時、
ジェリーとともに、弟も、船に乗せるべきだったのだ。
そして、ジェリーにも、きちんと気持ちを伝えるべきだったのかもしれない]
─ 回想 ─
[翳した掌の下、確かに熱はないようだったから、
そうか。と短く置いて手を離した。目を細める]
…、
[ほんの少し、手を外すまでの間が長かったことはソフィアには気付かれてしまっただろうか。
一瞬、手を伸ばしかけた衝動を堪えるようにして手を引いた。
以前は、何も堪えることなどなかったのに]
すぐ帰って来るとは、思うけどな。
[案じ顔の彼女を安心させるように笑みを向けて、男もまた雑貨屋をあとにした。その後の予感など、あるはずもなかった]
[墓場近く、船乗りの男の遺体が発見された。───いや。
遺体ではない。船乗りの男は生きていた。
けれど発見者は、死んでいると思ったという。
当時、薄く降り積もった雪は踏み荒らされ、闇に鉄錆の匂いが立ち込めていた。
夜が明ければ、既にやや黒ずんだ血が石や土にこびりついているのが見て取れる。
冬の夜は冷える。
だから発見が遅れたなら、どのみち男は凍え死んでいただろう。
そうならなかったのは天恵か。それとも何かの作為だったか]
「… が、……」
「………て、いるのか…」
[ぼそぼそと聞き取りにくい声がする。
聞き取りにくいのは、雑音がひどいせいだ。
ざらざらと何かの流れる音と、何かを打ちつけるかの音。
それらに混じって遠く声が聞こえるような気がした。
良く知っている、懐かしい人たちの話し声だ。
叫び?泣き声…?
何を言っているのか良く分からない]
ハナがいねえだと?
[あの時、確か赤い旅人は、そういった。>>*2
人懐こい旅人に肩を竦めて、男もまた小さな子どもを捜すことにした。
いつしか短い陽は落ちて、人は影ばかりの姿となった]
おーい?いないなら置いて帰るぞー?
[やや間抜けな呼びかけをしたのは何度目か、物音に振り返る。
闇に、赤を見た気がした。夜の闇の中不思議なほど鮮やかに。
翻る。飛沫く己の血だと、男は思った───*]
[町で人狼が暴れていると、町長がきく]
それはいいひっとらえろ。
[しかし、それが子供だとわかると、声色は変わる]
子どもはいかんな。
しかも少女?
それはいけない。
生け捕りにしろ。
[そして、町長は笑む]
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