25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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あるじと呼ぶ
其の時から
繋ぎとめられるのは
花だけでなく
[静かに呟く
瞳は現世を映し]
迷い断ち切れぬのは
キミも、同じじゃないのかい明之進
|
主様は、まだ主様ではありません……! ですから、
従うことは――
[首を振って、己を掴もうとする。 その腕を拒絶する、のだけれど――燃え盛る炎の迫るに]
―――…ッ、主様
[膝をつく傍らに添えば、腕を差し出す。 言葉に過ぎるは危惧のみで]
お別れを告げるためです。 主様を、危険にさらすためでは在りません…! はやく、庭に……
[ふわり、立ち上がれば満ちる煙の先へと導こうと]
(@27) 2010/08/09(Mon) 22時半頃
|
[熱さは感じず。ただ花主と花の様子を見ている。
抱いた花の頭を撫でる。
もうすぐ――]
お前の歌を、もう一度聴きたかった。
[眸に移るのは寂しげな色]
[秋色の髪に触れた手
気付くに間が空いた]
主さま
歌も、笛も、足が治れば舞いも
この身が覚えた芸事は
幾多もありましたのに
[腕の中、背を靠れさせたまま
主の顔は見えず]
…――
|
[狭間の声にふるり、と震える。 あやまちは幾度とあれど――]
――…主様、
[行かずば、主の命の危うい。 けれど手を重ねようと、それはきっと重なるだけ。 ――己が身があれるは、この邸内のみであるのに]
舞は、――舞は…… 主様が、月瀬殿とのお話に夢中になってただけではないですか…!
[それどころではないのに、 反論の言葉を返して、怒ったふりで哀し心を誤魔化して]
(@28) 2010/08/09(Mon) 23時頃
|
───ああ。
[冬の花の言葉。
己にはそれで十分。
そう思えば、何処かから聞こえる喧騒。
───姿は消え。
そしてある場所に降り立つ。
視界には、歎く椿の姿]
[彼は、椿の事を何と呼んでいたか。
その椿へと、一つ、二つ。
足音のない歩みは近づく。
少しためらったが迷いはない。
椿の背から、そっと。守る様に両の腕を伸ばして、包むために。
確か研師はこう呼んでいなかったか]
───明。
[一度で反応がなければ、もう一つ。
自分に気づけば、合わせるようにと鉄色の瞳は無言で告げる]
|
―――…ばぁか。 ホントお前は辛気くせえな。
[琥珀は宙を見て、狭間へ声を届ける。 その刹那、満ちる煙が少しばかり風に巻かれ、明之進と刷衛の前に細い道が姿を現すか。]
…行けよ、明之進。 主と共に。
[宙を見た琥珀を伏せて。]
(@29) 2010/08/09(Mon) 23時頃
|
聞こえる自分の扇の音に少しだけ口元を緩めたが、笑みはすぐに消える。
―――――御意。
[ごく丁寧に、答え。
それさえ重なり、しろい鷺の花が
小さく揺れた。]
屋敷なくしては
保てぬ
……きっと
[琥珀伏せる姿に
ぽつり、囁き落とす]
|
[蓮花の気配に、面を上げる]
――…本郷様、……ッ
[鉄色と交わった、刹那。 触れるはずもなかろう手を引かれた]
(@30) 2010/08/09(Mon) 23時頃
|
[二つの声、重なった返事が戻れば黒檀を伏せて]
―――…うん、
[少し、幼い頷き。下りた髪が揺れる。
安堵したかのように浮かぶ笑みは、
死に際にも浮かべた憂いの乗らぬ穏やかな…]
[少し遠くから聞こえるのは儚き花を呼ぶ声。
炎は止まぬ、花を留めようと呼ぶ声も。]
生者は、生者の道を
死者は、死者の道を
もし
同じ道を望むなら
生者死さねば
叶わない
[呟き、溜息ひとつ
視界が紅くあかく]
望みはひとつ
願いはひとつ
ふたつ心懐いたなら
|
[―――歪めて、見上げる。引かれる手の先]
わ、私は……、 私は、大丈夫ですから……
迷わず逝けますから、だから。 もう、――主様、
[炎を過ぎる。 視界が滲むは、熱気のせいではない。 そんなものはとうに感じない、のだから]
はい、一生……、 覚えていて下さい。
[微笑ば、琥珀の声のする]
(@31) 2010/08/09(Mon) 23時頃
|
落胤 明之進は、メモを貼った。
2010/08/09(Mon) 23時頃
[するりと。
手元に残ったものは何もない。
椿は既に、向こう側に]
───。
[驚きのあと、小さく苦笑が零れた]
こちらへと招く手は、必要なかったか?
[椿に尋ねる。
主と呼ばれた男に、決別を進めたのは自分。
そこまで情が深くなったというのであれば、行方知れずの椿の主のかわりに
椿をこちらへと招くための手を差し伸べてこそと思ったけれど]
|
辛気臭い……
[宙に琥珀を探してみれば、 揺らぐ存在の引き寄せられた。 収まるその幻は――望むからに他ならず]
―――……、でも、 でも、私は……
[――今、この時だけ、としがみつき、 その人を切なく見上げれど。
それでも、躯は薄れゆく。 燃え落ちてゆく、屋敷と運命を共にするように。]
(@32) 2010/08/09(Mon) 23時半頃
|
[2つの同じ返事、受けて主は幼く頷いた。
それに愛惜の念を持つ。
―――2つが花であるとき。
それは、主が花の名2つ呼ぶ時。
鵠と呼べば白鷺が。
華月と呼べば胡蝶が。
それぞれ花に身をかえて、糸を頼りに蒼穹より舞い降りよう。]
[今は花として、主の隣に控え、同じものを見る。
駒鳥の啼く唄に想いを馳せながら。
望みはひとつ――蝶でありたい。
願いはひとつ――花でありたい。
ふたつ心懐いて。]
|
さて、俺はどうしようかね。
[明之進とは違い、未だ現世に姿を濃く残す虎鉄。 それは未練の強さか、行き先を失い縫い止められた迷い子か。 パチパチと散る火の粉に混じり、琥珀を伏せて独りごちた言葉に狭間より囁きが降る。 屋敷なくしては、保てぬ、と。]
…大事なのは其処に在るかどうかじゃなくて。 繋いだ手を離さず、ずっと見失わない事だ。
[言ってから、自嘲気味に微かに笑って。]
それに、どうせ屋敷と共に朽ちる身だってんなら。 死にてえ場所で死んだって、罰はあたりゃしねえだろ。
(@33) 2010/08/09(Mon) 23時半頃
|
[邦夜達が無事な場所まで辿り着けたのを確認して。
ゆらり光は人影に。
手には主が持つ笛を強く意識して構え。
別れ告げる長い音色]
されど。
こころはきえることなく。
[現の風には乗らぬ一音を吹いた**]
|
[苦笑交じりの声に、小さく返す。 狭間へ向けるその声は、主は耳にはもう届くかどうか]
――…ありがとうございます、 弁えております から。
[冬の言もその通り
いけるものはいける道、 しせるものはしせる道]
(@34) 2010/08/09(Mon) 23時半頃
|
[――朧月は、笑む。
憂いの乗らない笑みに、
自然、つられるように顔がほころぶ。
頷けば
――りん、と鈴が鳴る。
双翼は蝶であり白鷺。
華月であり鵠。
朧なる月の傍に舞う。]
繋いだ手はここに。
見失う事は無いでしょう
死期を悟ったそのときに、体は勝手に動くもの
[虎鉄の笑みに混じるいろ
あの微笑み方を知っている]
燃える、もえる
あかく、紅く
黒煙のぼる その先は
現し世か 移し世か
ゆく先は、ありやなしや?
[遠く、唄う声が聴こえた気がした。
―――…気のせいかもしれない。
辺りを包むは触れることできぬ現世の業火。
唸る焔の唄に周りの音は掻き消され
――…りん、
傍に在る鈴の音が炎の中涼やかに鳴る。]
[弟弟子の、自嘲気味な言葉を拾って尋ねた。]
死にたい場所が、あったんやろか?
なぁ、ずっと手は繋いでられへんけど。
そゆ場所があるんなら、連れていったりたい。
[片手は鵠と繋いだまま。
けれど、もう片手を、
誰かに暫しの間、伸ばすことは出来るだろうと。
ええやろか?と言葉なく尋ねるのは、
鳴る鈴の音の元に。]
[其処を離れようと思わないのは願いがあるから。
重なる二つ、添う花主と花。想いあう月と鳥。
その二つが燃え尽き消えるその時まで、
ちゃんと寄り添えていれるようにと…。
蝶と鳥の名を持つ花達がこの場を離れようとも
主は何も言わないだろう。離れても繋ぐ糸は此処にある。
月の片割れは、業火に混じる唄を聴きながら二人の姿を見守っている。]
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[朱い虚空に降るのは、兄弟子の言葉。 お前はどうしたいと問われ、立ち尽くしたままの琥珀は一度瞬く。]
俺は…、…還りたい。 主の下へ。王璃さまの傍へ。
…でも、還り道がわからねえんだ。
言いつけを破ってしまったから。 あの方の手を離してしまったから。
俺は―――…、還れない。
[ゆる、と頭を振るとその場にゆっくりと屈み込んだ。]
(@35) 2010/08/10(Tue) 00時頃
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