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違うよ
……怖いのは、千冬じゃない
[試すような問いに即答し、
やや憤慨したように眉を寄せ、彼から遠い拳を握りしめる。
怖いものがないと虚勢を張れない弱さに歯噛みして。
続く宣言が何を意味するのか、
今はまだ理解が及ばない頭は、むうと目を細め。]
何言ってんの
そんなことされたら、困る
[先と違い、はっきりと言い切る。
そもそもまだ子供扱いするつもりだったのかと
半ば呆れるが。
――背中を通り抜け、腰に回る冷気に。
大げさに跳ねてしまって、頬に熱が集まる。
突然感じた冷たさに驚いたのだと、言い訳しながら。]
――…ん。ありがと
[この位置で、距離でしか届かない程度の声を追うように、
言われるがまま、身を寄せる。
こんな時だけ素直に応じる処は我ながら可愛げがあると思う。
グラスとつまみが運ばれて、酒瓶が現れれば
漸く約束の杯を交わす時が訪れる。
以前と違う、琥珀色でより甘さが漂う香り。
追悼会で飲んだ酒はどれくらいの濃度だったっけ、
なんて思い出しながら。
注がれる量の違いに首を傾げるも、深く考えることはなく。]
―公園
――、……
[こんな、こころ乱されるのは
本当に、ひょっとしたら
初めて位かもしれない。]
わらうな。
[何か、また変な顔をしたのか俺は。]
――たぶん、それくらい。
[
負けず嫌いだ。
[そこは、自覚がある。掴んだ手は離されなかった。引き寄せられる、その手の熱に翻弄されっぱなし、で]
……だから、こどもじゃないって
自分の限界くらい、知ってるし
[介抱の心配は無用だと。
虚勢というよりは、威勢を張り。
――…しばし無言で、グラスを見つめ。
それから、すぐ隣の男に目線を合わせて、淡く、笑う。]
じゃあ、……そうだな
千冬の、これからの旅の無事を祈って
[乾杯、と端を軽く触れ合わせると、
ひとくちめを勢いよく喉に運び入れる。
嗚呼、そうだ。こんなことも、今夜限りで。
そう遠くないうちに彼はまた去るのだと、
唐突に、思い出してしまったから。
少しだけ睫毛を伏せ、憂いを振り切るように。]
はぁ……っ、美味い、ね
これ何ていうの?
[喉奥が灼け付くような感覚が、むしろ今は心地いい。
二杯目を要求する早さは、常の倍以上だった。
――そして。]
ちふゆってさー……
いっつもこっち来て、帰る時ってー
どうやって移動してんのー?
その羽で? それともワイバーンに乗って?
[緊張と諸々からの逃避か、
完全にアルコールに支配されたトレイルは。
やたら上機嫌で、先日夜間清掃時の話題をもち出し
日ごろなら有り得ない揶揄を飛ばす。]
[その後も、着物は何枚持っているのだとか、
寝泊りはどうしているのかとか。
少しでも彼のことを知りたい欲が、
どうでもいい質問となって次から次に、溢れ。]
――…おれのこと、欲しい、なんて
言ったけどさ……
どうせまた、置いてくんでしょー?
おれが、……だから……
[記憶が正しければ二度、
けれどあの時、来年の話題もあったのは事実。
つまりまた、ここを離れて
トレイルの知らない秋と冬と春を過ごすのだろうと。]
[ベンチから眺める間は、視線は、上。
起こされれば、背丈の所為で、下。
笑うな、と、リツ
10秒ほど表情を引き締めて、―――緩んだ。
おれの口は馬鹿になったらしい。]
無理だねえ。
[素直に。]
あんたが追い越したら
……好きなものじゃあなくて、欲しいものなら。
[あるか、と、ズルを厭った彼に、尋ねた。
見付けたいと言う欲と
見付けられたいと言う欲が、半分。
如何にも制御に行き詰り
せめて、繋いだ指に力を籠めた。]
ちふゆ――…千冬……
[最後は言葉にならず、深紺の布地を握りしめる。
行かないで、の代わりに。
どうすれば、何といえばいいのだろう。
何故こんなにも、この男と離れ難いのか。
教えて、と縋るような眼差しを。たった一人に注ぐ。]**
そういうところ、好きだな。
[負けず嫌いを覗かせるところ。
彼の負けず嫌いは、正統派だ。
それを好ましく、横顔を眺めて、黄昏時を歩く。
足音は、車の音は徐々に遠退いて
ぽつりと浮かぶ喫茶店の"BAR"の文字。]
メモを貼った。
――― トワイライト ―――
[夜の店、彼と潜るのは、二度目。
既に賑わいを見せている、席。
決して目新しくはない筈だが
店員としてではない席
おれは疎く、あれ、と首を捻ったり、した。]
リツ、カウンターとテーブル、どっちが良い。
[先日はカウンター席、隣だった。
今回は、ボックス席も丁度空いていて
向かいか、隣か、どちらが良い、と、尋ねた。
―――そのどちらでも、彼が良いと言った席に
腰掛けるわけで、夢を越えて、甘やかしている**]
メモを貼った。
[
見上げられるのも、きらいじゃない。
ただ、引き締めたはずの
口元がすぐゆるむのは、
どういうことなのか]
……なんでだよ
[唇を少し、尖らせた。
無愛想で名をはせるくらいなのに、俺]
――、……ほしいもの?
[ほしいものって、
それは、と今思い浮かぶのは
エフに関することで、どうした俺の思考回路――と、頬が染まる]
― トワイライト ―
あれ…
[
トレイル店員と、
例の綺麗な東洋の人が座っているのが見えた。
――もしや、もしかして、と。
エフに夜のトワイライトに
誘われた経緯を思えば
鈍い俺でも、何かしら察するところは、ある。
邪魔をしないように、気をつけよう。]
……――どっち、ええと、
……
[迷う。顔が見えるほうか、隣に居られるほうか。]
か、 ……カウンターで
[考えて。
顔を見られて、
落ち着かない様子を晒すのは、と結論。
それに、隣に居られるのが、うれしい、し。]
―――こないだ、飲んだやつ
ゴールデンドリーム?
…また、飲みたい
[ちゃんと調べたのだ。
ひっそり、エフの横顔を窺って**]
[温かい視線を感じてた気がした。>>*2
それは、彼にとって義父代わりの
まるで家族のような存在から。
誰かに見守られて居るからとて
トレイルに対する態度が変わる配慮は
生憎欠如しているが
そんな温もり或る2人の関係は、純な羨望が募るばかり
さて、此処まで主張の激しい微熱を
トレイルに注ぐ一夜が在っても
古い友人の存在は、当然に知らぬ侭。
静かに、想い人だけを、視界に閉じ込める
[そして長年蓄積した意思を持つ瞳は
彼の動揺の揺らぎを捉えても
硬く、甘く、彼に固定された侭である
翼を気遣う言葉には、有難うと応答
翼越しに身体まで、痛覚は現在通って居ない
寧ろ其方こそ、冷えた気温が辛ければ
正直に申告して欲しい――と
ジ、と彼の顔貌を見据えて、一言忠告
彼の傍が恋しくて、彼の体温が愛おしくても
自分の霊力の所為で、トレイルの躰に支障が在っては堪らない]
………
[不器用な彼だからこそ
つつける要素が在って、楽しいが
だから
過去に友人のバーで、随分酔っぱらった記憶は指摘せず]
有難う、――――…乾杯。
[掠めたグラス同士、軽快な音を
その間、振り向けば姿の見えた
軽く手を挙げて、挨拶を交わしたのみ]
―――――…
見栄っ張りな、やはり子供?
[訊かれた日本酒の品名を応える間には
既に出来上がっていた彼に、宣言と違うと間近に溢した溜息
それでも自ら捧げた毒素に染まり色付いていったのは、愛しい過程]
……深夜に羽を広げて。
まあ、数日位かけて此処に来るね。
着物は、故郷には十数着……
[やがて質問の乱舞に、わりと隔たりなく素直に応え
寝泊りに関しては、それこそ山小屋を勝手に借りたり…
そこまでは、公表する事は止す
舌足らずな口調で、名を呼ぶ聲
子ども扱いして、からかおうかと、口を開いた刹那]
[
彼の本音が
クリアに鼓膜を震わせる。
彼が恐れていた矛先は、もしや自分に繋がって居たのかと
繋ぎ穂を合わせ推測すれば、途端左胸が重く痛む]
―――…トレイ…ル…
[慣れぬ毒素に、喉も、声も 焦がす想い人
それでいて家族を待つ寂しがり屋な息子みたいな]
[考えるより先
服を掴む身体ごと
傍らにいる彼を、羽の様に、そっと抱きしめる。
端から見れば、酒に脆弱な彼の介抱をする仕草で]
なんだ… お前は …今も
誰かに置いていかれる事が、怖いのか
[温かさも 癒しも無い身体は、彼の体温を容赦なく浚い
されど、彼の瞳に篭るのは拒絶ではなく、期待を増長させる代物]
私は、自分を必要とする人間の傍に居ないと
”消滅”する 脆弱な存在だから
………、お前も
私を 欲しがってくれるなら
傍から離れる事は、止すよ
[漏らした言葉は自分も自覚せぬほど乾いた。
彼が強請る以上に、己は不足を覚えていたのか
意図も込めず、掌は彼の背筋をあやすよう撫で擦り]
トレイルは 私にとって
誰よりも―――……特別な人
[氷の腕の檻中
曝け出した額に合わせた唇は、夏の日差しなどより余程熱く、**]
メモを貼った。
メモを貼った。
[夜の喫茶店に向かう道すがら
背を伸ばせばまた見下ろす姿勢で、歩く、走らない。
口許を緩ませた笑みは
リツ
引き締め直すことも出来なかった。]
たのしい、…… から?
[傍に居るだけで、見詰める、だけでも。
首を傾ぐような響きになったのは
伝わるかな……… と言う獏の心情に寄る。]
あんた、そういうの
さっぱりしてそうだなあ、 …あるのか。
[まるで
今はほしいものがある、ような反応をするから
好奇心も傾き、あるのか、なに、繰り返した。
そうして、幾らか静かに扉を潜り
店員の隣に、涼しげな色、手を振る
ああ、ああ、二度、頷いた。
ひとの手を此処に、引いてきたのだと、理解して。]
うん。
[カウンター
隣に居られる場所に、腰を据えてから、手が伸びた。]
[あの日と同じように
近い指先を攫いたがる、手で。
厭われなければ、絡める、カウンターテーブルに。]
はは、 黄金の夢。
……… いい夢が見られそうだねえ。
じゃあ、おれも、前のと、同じ。
[オレンジ色の酒と、コーヒーの酒、砂糖抜き。
忙しそうな店長に注文して
"前の"と言う注文でも、彼なら、用意が叶うだろうから。
目の前に並ぶ、甘い、苦いいろに、視線を落とす。]
そういえば
酒……… 弱い?
[注文を終えてから
今更、と、隣に尋ねる。
知ったところで、カクテルは勧めるのだけれど**]
メモを貼った。
……たのしい ?
[
首を傾いで、確認するみたいな仕草が見えた――からかうような意味じゃないらしい。]
そ、そうか。へんな、やつ
[くすぐったい心地でついぶっきらぼうに。
たのしいー―例えば俺も感じてる、あえてうれしい、とか。そういうのか。しまった、それだと俺も「へんなやつ」じゃないか]
俺にだって、
ほしいものくらい、…ある
[さっぱりしてそう、という感想は
わりと合ってるとは自分で思う。
走り込みも、
記録を上げたいというのも、
自分で叶えるもの。
強請るものじゃない。
でも、
エフに関することだと
どうしたって
こいつに願ったり、働きかけたりしなくちゃいけないわけで。それは。とても、気恥ずかしい。慣れてないんだ、そういうのは。食い下がるな、やめろ、やめてくれ。]
い、いいだろ、
気にすんなっ
[
[トワイライトの先客、
座るカウンター、
なんだか馴染んできた、気がする]
――、っ、
[手を絡められる、
拒む理由なんてない。
期待、してるくらいかもしれない
繋ぐ手をちらと見ると、
気恥ずかしいような、うれしいような気持で、心拍数が上がる]
いいゆめだと、
あんたは、食えないけど
[死神に追いかけられる夢、とかなら食べると言っていた。うん、黄金の夢じゃないな。怖い本でも読めば見れるか。悪夢。]
……気に入った?
[あの、カクテル。それなら、嬉しい。
え?
[
前回の酔い方を知ってるだろ。
ぼそり、と答える。
飲める方が格好いいのだ、というのは部活仲間の共通認識ゆえ、俺は立場が強くない。余談。]
飲むのは好きだけど
――あんまり つよく、ない。
[弱いと謂わないのはなけなしのプライドだ。あまり強くない、と弱い、の間にはれっきとした壁が――ある。多分。多分な。]
エフは、どうなんだ
[飲める方なのか。どうなのか。**]
メモを貼った。
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