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[ノートに書かれたその詩
指で触れれただろうか]
……ああ、是が貴女の心の声なのね
綺麗で、美しくて悲しくて
幸せ、な。心の欠片
素敵な歌。ヒナコちゃんと一緒に作るの?
きっと素敵で、輝く歌になるでしょうね。
[ノートに書かれた内容は。
何処か別離を感じさせる悲しみを宿す]
それ、僕は楽しくないし救いの手はないのかい?!
[
[憶えていてほしいって思うその気持ちは誰にでもある
忘れないでと言わないけれど、絶対心の中では叫んでる
好きだと歌う声が彼に悲しみを宿すなら私は心の中に飲み込んでしまう
悲しんでほしくない、其れでも悲しんでほしいという矛盾を抱く
幸せでいてほしい、だれよりも幸せでいてほしいと願う
それでも忘れないでと叫ぶ、相反した心を抱くの
恋って本当に、厄介ね
憶えている事は本当にしあわせ?
忘れたほうが貴方の為になると知っていたのに
忘れないでと願ってしまった事はきっと貴方を苦しめたかもしれない
こんな気持ちを知っただけでも、幸せだとは思うの
好きという気持ちは心を満たし、花を咲かせる
だからこの歌は、とても心に響く]
[ここでの日々は幸せと歌い、
人生の花を数えるナナオ
忘れず枯れた花まで抱える貴女はきっと素敵な人
私の周りにも花はあったかもしれない
でもこの手で摘めたのはほんの数輪で
そのうちの1つだけでも欲しかったの
そのうちの1つを、欲しかったの
でも現実は唯残酷
記憶の花を咲かせるのを遠くで見つめるのは苦しいだろうけれど
もう届かないのもわかっていて
だから私はきっと過去の花をなぞる
記憶の花をなぞり、思い出すのだろう
ねぇナナオ、恋するナナオ]
貴女なら――……貴女は
本当にそれで、幸せなの?
その歌の通り、届かないまま幸せを願い過去を紡いで
[最後だけ、何故か零れた、心
その問いかけは、多分自分も答えを求めていること]
あ、僕もナナオの歌は聴いてみたいと思ってたんだよね
[
ノートの内容は覗き込んではいけない気がして、少し離れたところに。
迷った挙げ句に心電図のような器械に腰を下ろす。隔離される前は、目を付けられたくないために運動神経の良さを隠していた。
鈍らないように、トレーニングルームには欠かさず行っていたものだ。手品師(ケイトは道化師と呼んでるが)は体が資本。あと器用さだ。]
ヒナコかあ……
いっそどこか抜け道でも作ろうか? …なんてね。
[などと冗談を口にする。]
じゃあ同情を覚えたほうがいい?
……私?別に無いけれど。
[話してどうなる事でもないのだ
未練を零してしまえば澱から流れるのはきっとキルロイへの想いだけ
それを恋を抱くナナオに聞かせるのには僅かばかり抵抗があった
意趣返し?なんて思ったりもした。話の花を傾けているつもりであることは
残念通じていない]
成程、それで貴方時折――話をしていても″向こう″を見ていたわけか
[すとんと、彼の説明で納得した
顔に出さないまでも何か腹に抱得ていそうな気がしたが
藪をつついて蛇を出すのは今は避けたほうがよさそうか
...はそう考えてはたと気づく]
そんなメルヤを見るのは、とっても楽しいんだけどな。
[くすくすと笑って、
と内心で思いつつ。あまり病気のことには、触れないようにしていた――。
そのせいで、詳しくないのだ。
どんな病気なのか。何を見ているのか。
とても、それは今更なことで――。
もっと、みんなと色々なことを話していれば良かったなと思った。]
ねぇそれじゃあメルヤ貴方――……
[あなた、何度も誰かが連れて行かれる所を再現したりしているの?
それはとても、恐ろしい事の様に思えた]
大丈夫いつかきっと救いの手は現れるわ
[つまり今はない。慈悲はない
割とメルヤの言動や行動がトレイルの嗜虐心を煽った結果だと思った
でも其れを言うのはやめておいた
だって――言っても治るとも思えなかったし]
うん。
[ケイトリンさんの手が、優しく触れる。
大切なノート。ケイトリンさんに見てもらうのは、嬉しかった。]
・・・うん。
[その悲しみも、分かる。
ケイトリンさんにも、好きな人がいるのだろうか――。
と、何となくナナオは察する。
そっとノートに触れる手に、ナナオは触れる。
小手越しだけれど――。
・・・。
あ。やっぱり話さなきゃいけないんだ。
[
夏休みの自由工作から逃げ出したい気分だった。子どもじみた、抵抗のような。]
……いや?
ナナオのこと、全部忘れたわけじゃないよ。
さっき動揺したって言っただろ? あれは本当
だから、僕。会いたくもないのに会いに行ったからね。
何だろうねぇ。僕から見たトレイル、ね。
まあ、刺激が強い部分と本人のプライバシーに関するところを除くなら。
[白い天井を仰ぎ見る。
まるでそこに答えが書いてでもいるかのように、目を凝らす。]
[少し涙脆く、なっているのかもしれない。
笑ったり――泣いたり。少しの間に、ころころと。
――また、ぎゅっと胸が締め付けられて。]
・・・。
[――生きたい。
生きていられるなら――。
我侭だって、言いたい。
そう。その想いは、確かにあたしの中にある――けれど。
でも、書き記していなかった。
ぎゅっと、少しだけ強くケイトリンさんの手を握ったのは――。
悔しさか。
哀しさか。
もっと、生きたかったな――。
その、――諦めか。]
静かに、メルヤの話すトレイルの話を聴いている。
何も覚えなくていいから。
無いんだ、何か。話してたら気が紛れるものかと思って、さ。
[
結局のところ。異性を本気で愛したことがないメルヤには、根本的にはわからない部分が多いだろう。]
…ケイトはよく見ているね。
なるだけ視線は向けないようにしてたんだけど。つい、ね
[ケイトとナナオは、ピエロの男を知らない。
ピエロの男が如何に愉快で、トリッキーであったか。唐突に始まる、バナナ売り。中庭の木と木を綱渡りする、顕著な像を見れば一瞬でも目を移すなという方が無理な話だ。]
……――。
[
幸せで甘い幻覚の中に、一欠片。誰かの悲惨な状況を見ることもあるのは、口にしない。
彼女の声は、雄弁だった。表情など無くても、豊かな感性が伝わってくる。]
[触れる手は小手越し
それでも心は、触れ合っていると感じる
恋をしているという点に関して
私とナナオはきっと、同じ
ぎゅっと握られた手がきっと、答え]
……あのねナナオ
私狡いのよ――とってもね狡い、の
貴女の詩の様に綺麗に生きられたらよかったんだけどね
[とってもずるい願いを持ってるのよ
忘れられたくないの。彼の心に住んでいたいの]
其れでも私、諦めきれないのよ
何時か″此処から出て″
また再び会える日を夢見るの
その時まで、忘れないでいてと願ってしまうのよ
[誰に、とは言わない
それでも。叶わぬ願いでもそれがきっと本音なの
――だから、この歌は綺麗過ぎて、切なすぎて
私の心の琴線を揺さぶって捕えて離さない]
・・・分かるよ。
羨ましいな。
あたしは、トレイルにちゃんと好きって言ってもないから。
[
好かれていると、想えるなら――。
願っても、それを狡いとは思わない。
むしろ、願うだろう。好きって、もっと伝えたい。
そして、憶えていて欲しいって。全力で歌うだろう。
ためらいがちなあたしの想いは、まだ始まってもないのだ。]
じゃあ無我の境地に達しておいてあげる
私は貴方達を見ているだけで十分気が紛れているけれどね
[むしろ貴方のてんぱっているのを見ればと
他者に踏み込まぬ選択をしていた時点で彼の感情、情緒の発達は未熟なのだろうと思う
むしろ別方面では多感になり、別方面では赤子の様なものではあるのだろうとも
アンバランスさを、抱いているのだろうとも]
私は忘れないから
朧になる事はあっても、ね
それは、何度も貴方と会話をしていたらわかるわよ
[貴方が誰かを記憶に刻もうとしているように
貴方を刻もうとしている人もいるの、と
彼の見る幻は何かは知らないが
もし見えていたらじっと其方に意識が集中してしまうだろうけれど
――知らなければ、分からぬ事である]
一言で言うなら結構どころか我が儘だし、諦め悪い感じ。
[諦めてメルヤの知るトレイルを、言葉を手繰り手繰り寄せて、最初のトレイル評がそれである。]
ナナオも言ってたけど、子どもっぽいと思うとこあるよ。具体的にどことは言えないけどさ。
あとは、人からかうの好きだし。こっちにずかずか入って来る割には、最後の半歩ぐらい?残しておくんだよ。それで、気づいてませんって顔するから、うん、何かごめん。
思いだしたら殴りたくなってきた。
……そうだねえ。ちゃんと良いとこもあげておくとしたら。
…………――。
[果てしなく長い沈黙が生まれたのは言うまでもない。]
[震える声に帰らぬ返事
其れが答えと...は納得した
だからこそ、追の言葉は言わなかった
嗚呼なんて、哀しい(こわい)のだろう
...は″可哀想″とは思わぬものの。苦しいだろうなと、そう思った]
メルヤに、トレイルの良い所は貴方視点無いの?といった視線をおくった
口笛を吹き出した。
[
ここから出て――か。
さっき、冗談のようにメルヤが言っていた一言にもそんなような――。
――冗談のような、その夢は。とても、輝いている。]
・・・わか、るよ。
あたしだって・・・、分かるよ。
[でもさ。って小さく呟いて、涙がこぼれる。
――次は、無い。]
確かに・・・。
[
うん。・・・うん。
[そして、長い沈黙。
うん、って聴く準備をしていただけに、中々でない様子に耐え切れない。
・・・泣いていたのに。
泣き笑いになってしまう。
あたしは、トレイルのそういうからかう所は良い所だと思っていた。
それに、我侭な所も、諦め悪いところも、良い所だなって。
全部良い所に思えてしまう。]
メルヤも、トレイルが好きなんだろうな、ってことは分かったよ。
[なんて、涙を拭きつつ笑った。]
……うん
そう、だよね……そうだよね
[小さく呟かれた言葉、続かぬ言葉
彼女が零した涙に、私も小さく零す宝石
パライバトルマリンは悲しみを内包した青]
でも、夢で位は――私達、自由よ
[歩けぬ足、飛べない翼
伸ばせぬ、腕
夢の中なら、願う中くらいなら私達誰よりも自由だもの
ゆめをみたって、いいじゃない?なんて]
……うーん。
何ていうか。ナナオはトレイルのいいとこ、ちゃんと見てるし。
僕は何だろう。
面倒見が良い? 愛想が良い? 人好きしそう? 仔猫拾いそう?
というか天敵みたいな相手の長所、出ないよ。
今さら、というか。口にすることがないや。
(お互い面倒臭いなあ。
今更になって、君に告げる言葉なんて本当に無かったし、会いたくなかったのに腑抜けた顔してるから。)
[良いところを探そうとして、ふと浮かぶのは遠い冬空の下の中。
ずっと撫でてくれていた手は、昨日久方振りに撫でられて冷たくなっていた。
不安を隠すのは、自分本位が主だろう。でもそれが全てじゃないことメルヤは知っている。]
[ケイトリンさんの涙は、とても綺麗で――宝石だった。]
・・・、なんだか、悔しくなってきたな。
[夢でくらい――。
その言葉を聴いて、素直にそう想う。]
・・・もっと、生きたいな。
生きて、我侭言って、好きだって伝えてさ――。
もしフラれたって、きっと――。
[――夢のことを考えると、逆に現実に生きたくなるのはどうしてだろう。
夢なら、幸せ――。
なんだか、それはとても悔しいのだ。
もっと、――時間が欲しかった。現実に、一緒に過ごす時間が。]
[彼は恋を知らない。奇しくもケイトが思ったように、メルヤの精神はアンバランスと言っていいだろう。
ひどく熟達している部分と、ひどく子どものままの部分。
女性同士の、どこか悲しげな恋の話には、耳を傾け、心に留めて置こうと思った。
ふと。思い出されるのは人影は、噂をしている人物だ。
軽々しく話せるものではないため、黙して秘するように目を閉じる。]
メルヤ。
あたしさ。全部、好きだよ。
トレイルのこと。聴いてて、もっと好きになったよ。
[なんて、笑ってみる。
メルヤとトレイルの関係は、メルヤからすれば複雑かもしれない。
けれど、一つもいやなところなんてなかった。]
僕の鼓膜が破れたのかな?
[
その表情は”不本意”といった名が付いた彫刻のようでさえあっただろう。]
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