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─ もとの時間 ─
[鳴瀬の舌が自分の指に絡んでくれば、自らもそこに舌を絡める。
ぴちゃり、と音を立てて、時折唇を重ねながら。
そして指が十分な湿り気を得たところで、その手を下肢に向けようとする。
そのときに聞こえてきた、鳴瀬の声。
自分の名前]
……はい。
[なんとなく、くすぐったかった]
[キャラクターシートと10面ダイス2個を差し出す顔。
静かな寝顔。嬉しそうに微笑む顔。冷たい眼。にたり。冥い眼]
[忘れられなくて]
[両手を強く握り締めた]
[祈るしか、ない]
[ごめん…]
[赦さなくて、いいから]
[………ごめん]
…………いや、え、…… 、
[冗談は止めてください、とか言おうとしたのだが。
しかし口は上手く回らないし、何より士朗はこんな時に冗談を言えるような、タチの悪い柔らかさは持っていない筈だし。
どう、したものだろう。
頭が回らないまま、何となく、それは相手が先生という理由で、反射的にこくりと頷いてしまってから]
……じゃあ、せんせ、は…… 蛍紫のこと、どう、思ってたんです か?
かわいい。
[悪態に、くすっと笑みを零しながら、もう一回言った。
今度は、今のその枯れた声に対する感想も少し含まれたりして。
そして……無意識に少し離れた身体を、繋ぎ止めてくれる腕。
目を細めて、その腕の中に包まれるようにまた転がった。]
ううん、もうあったかい。
[全身に、距離なく感じる体温。その存在が、嬉しい。]
でもなんか、あったかいもの飲んでもいいな。
[指を舐めた時、そこに文の口が近寄ってきて、
そのまま、キスしたりまた舐めたりする。
そのまま、ぼんやりとしてくるのは、
想像以上にそれが官能的だったからか。
ぎこちなく名前を呼んだ俺を文が笑っている。
それがすごく、何か大人っぽくてどきりとした。
ああ、保険医だったそういえばとかいまさらに。
保健室の白い服の姿もなぜかふと思い出されて…。]
……言ってなかったな。
ユリに、お礼。ホットミルクの。
[何時かの独り言と同じような呟きを、思い出したように口にした。]
それじゃ……えぇと……。
[耳元に唇を近付けて、クスッと笑み]
────士朗?
[低く囁きながら。
湿らせた指を、鳴瀬の下肢の間に割り込ませ]
指、いれますよ。
[まずはゆっくり、1本だけ]
メモを貼った。
[そして、伝えれば、もう、それ以上はいらないかな、とも思った。
違う、自分も好きだったから。
だけど、珀に似ている、が好きの理由だったことが、
本当に、自分のせいでもないのに、
少し浮かれて、今は情けなかったから。]
俺…が甲斐を?
[だから、反射的に嘘をつこうかとも思った。
だけど、そのとき、奴の真剣な顔も思い出した。]
ああ、大事に思ってた。
誰よりも。
[それは正直な気持ち]
――やめろ、馬鹿。
[凄んだつもりでも、声に力が入らなければ、逆効果。
ふい、と顔を逸らしてから、そういえば、と過ぎるいつかのやりとり。]
可愛いって言われんの、俺も嬉しくないだろって言ったの、お前じゃねえか。
[あの時、自分は言われるなんて思っていなかったから、実感もなく。今実際はどうか、と言われれば、ただ照れくさいだけで。
――嬉しくない、というわけでは、ない気がするのだが。]
頃合いをみて、もう1本……。 「いたく、ないですか……?」
また……するに、決まってる。
[癖になって、俺としかできなくなればいい。
唇を尖らせて照れ隠し。
土橋と百瀬。それに鳴瀬先生と文先生が来ていることはまだ知らないから。石神井と蓮端も燃え上がってんのかななんて余計な事を考えたりして。……そのために部屋を同じ階にしなかったなんて妙な気回しまでしたり]
時間わかんないけど、そっだな。誰か起きてるかも。
俺も、何か食いたい。
[何するにもエネルギー不足。
起き上がると自分と道也の放ったものが垂れそうになって、少し急いで風呂へ]
なんか飲むにしても、動くのだりい。
着替えねえと、なー……
[台所に向かう気力、ゼロ。むしろマイナス。そのために蓮端から離れるなんて、考えるのも面倒で。
ただ、ホットミルクのお礼、と聞けば。]
そういや、俺も言ってねえな。あの後、会ってんのに。
どうしてっか、な……
[ぼんやりと、思う、同室者。]
[恋ではない気持ち。『好き』とはきっと違う想い]
[確かめる事があったのに]
[もしも本当なら、『家族』になれるかもしれないのに]
[俺の知ってる『らんかちゃん』は、耀先輩の、こと?]
[……それとも、違う人?]
[あんな眼をさせたのは俺だから。俺の、せいだから]
[入れると宣告される、それにはどう反応していいかわからなくて、ただ俯いた。
求めているはずなのに、本当に恥ずかしくて…これは、多分、今、文に恋しているからだと、また照れくさいことを考える。]
――…ぃ……
[文の指が下肢に伸びて、割り入ってくる感覚にぶるっと震えた。]
ふみさ んッ
訊かなくて……いいから……。
[一つ一つ訊かれてなんて、恥ずかしすぎると。]
増えた指に、必死で耐えている。久しぶりすぎる感覚だったから。
……そっか。よかった。
[蛍紫が、どうして自分を好きだなんて話になったのか、やっぱり分からないけれど。
士朗を好きだったのは、確かだ。
だから、彼にとって、蛍紫が誰より大事だった なら。
彼の想いが報われていたなら、それでいっか と。
あれだけ鬱々としていたのが嘘のように、すっきりと、心に落ちた]
伝えてくださって、ありがとうございました。
せんせが、あいつを好きで、良かった。
[にへっと笑って、頭を下げた。
と、自分がつけてしまった服の皺に気づけば、すみませんすみません、とその倍以上頭を下げて、その腕を摩ることになるのだが。
そうして、落ち着いたことが、今度は彼にも見えるかたちで だっただろうか。
ひとつ、息を吸い込んでから。彼にもう一度礼を述べて、階段を上っていった]
まてよ、と珀を呼び止める。
[白濁が垂れそうなのを見て、うわー、……というよりも、うっかりまたそそられそうになって、視線をそらす。
今はシャワーが先だ、と風呂場に行って]
[こちらは飛び散った白濁を流すだけで一応はなんとかなる。
ざっと流してから、張ったけど結局使わないまま温くなった湯船に沈んだ]
[その反応が可笑しくて、愛おしさが増した気がして……またクスッと笑ってしまった]
……そうですか?
[指の動きは、あまり器用なものではないかもしれないが。
もしかしたら、それなりに経験があることが知れる動きかもしれない。
内側で指を交差させ、緩く曲げて壁を擦り、徐々に其処を拡げてゆく]
好きだったけど、
あいつは、俺より、お前のほうが好きなんだ。
[階段を上っていこうとする珀に急いで呼びかける。]
士朗に首を傾げて立ち止まった。「?」
……うーん……?
[そう、なんですか? と。
いまいち分かりかねている表情で、いちおう士朗には頷いてから。
再び歩を進めた]
珀、よく聴け。
いいか、お前、あいつからどう聞いてたか、俺は知らん。
だけど、あいつが好きなのはお前だ。
それを、
伝えておこうと思った。
[その背中に、ちゃんと聞こえるように。]
――…だ、だって……ぁ……ぅあ
[くす、と笑う文にやや抗議っぽい声をあげるも、
その指の動きにかくん、と腰は落ちる。]
ぁ……くぅ……
[押し込んで、そして、広げられる…。
その内に震える感覚……。
目をぎゅっと閉じて、受け流せるようにと、息を整えようと…。]
…………。
[ますます、分からない。
あいつ、何考えてんだ。
そんな想いが強まったが、ちゃんと伝えてくれた士朗には、再び振り返る]
せんせ。そんなに言わなくても、大丈夫っすよ。
[蛍紫のことを、誰より大事に思ってくれていたなら。
そんなに繰り返し、言いたいものでもないのだろうと。
好きらしいのは、せんせに免じて信じてやります、と茶化すように、けれど真剣な眼差しで、笑い。
ひらり手を振ったのだった]
[今度はもう少しはっきりした明るい笑い声を、顔を逸らした哲人に向けた。
けれど彼の言葉に、いつかのその日がふわりとよみがえって、少し弱った眉の下げ方をした。]
や、そうだった。
[あの時はまだ、哲人への想いを自覚もしていなかった頃。
どこか懐かしい記憶に、けれど、くすぐったさも込み上げて微笑んで。
……が、だるいのは自分も同じ。
着替えなくても良いじゃないか、とは流石に言わなかったが。]
うーん……もーちょっと、このままでいっかな。
テツの側、心地いいし。
[そして、その笑みは薄らぐ]
……ユリも、皆も、どうしてるんだろ。
[どうにか床を汚す前にバスルームへ到着して。
同じように体表の白濁を流すと、湯船に沈んだ道也をちらりと見てから。
部屋よりも余計に声が響くタイル張り、吐息のみを漏らしながら体内のものを指で掻き出しては流し、何度か繰り返せばもう大丈夫だろうか]
あ、痕つけた?
[ふと鏡をみると、赤い花びらがついていた。
嬉しそうに指でなぞり、道也の方を見てにへっと笑みを浮かべる]
―― 階段 ――
[しかし]
…――まじ意味わかんねえ。
[蛍紫は、士朗が好きだった筈で。
それはこう、何と言うか、好きなやつのことだから、分かってしまう、というか。
確か、だと思う。
で、士朗も好きだったわけだ。
めでたく相思相愛、何の問題も……や、生徒と先生とか、男同士ってのは、今の状況、問題じゃねえ。うん。
それでどうして、オレが。
オレのほうが好きって話になる?]
……あれか? あれだ、文せんせが士朗せんせ好きなのは、多分当たりだろ。
だから、こう……遠慮、したとか?
[夕輝らが消えた時。
真っ先に文が向かった部屋が、士朗と蛍紫の部屋と聞いた時に、何となく感じたこと。
その予想が正解とすれば、あながち間違った発想ではないんじゃないかと、思う]
いや、でも…… うーん……。
[が。
それでどうして、オレが以下略。
やっぱりさっぱり、分からない。
ああでもない、こうでもない、と階段を上りきるまで、うんうん考え込んでいたのだが]
[そう言えば、いつかのその日。
哲人と自分と共にいたのが、悠里であり桂馬であり。
そのどちらも、今まだ此処に姿を見ていない人だった。
見ていないのは寧人もそう。蛍紫も、蘭香も、それから……]
…………。
[いわゆる、想い、があるわけではないから。
その追憶は何の力も持ちはしない。
ただ、過るだけ。
そしてただ……この現状の元凶かもしれない存在を意識するだけ。]
[つまり、自分。
「彼」に自分自身が呑まれてしまうような感覚はもう大分なくなってきていたが、原因の可能性としての自分の存在については、まだ答えが出せていなかった。]
[つーか。
何で、オレがこんな延々と、目の前に居るわけでもねーあいつの気持ちを考えてやらなきゃならねーんだ?
はた、と腕組みしたまま立ち止まる。
今まで喧嘩で、折れて貰ってばかりの傲慢さが、にょきりと鎌首をもたげた。
だって、だ。
そりゃ察しろって言ったって無理だけど、アイツのことが好きなオレに、蘭香を選べとか言いやがったヤツだぞ。
オレが怒っても、調音の反応で何か納得するまで、さっぱり分かんなかったみたいだし。
たしかに、状況が状況だったのは分かってる。
だけど、今だってそうじゃないか。
よし。
何の問題がある。いやあるわけが無い。
あるって言って良いのは、日向だけだ。
あいつの気持ちなんか、知るかぼけ]
[そうして。
考える。
考える。
考えるのは、別荘の人々の こと]
その時
お前、そんなに甲斐のこと、好きじゃなかったのか?
[
なんでだろう。]
言わなくても大丈夫ってどういう意味だ?
俺のもとに、あいつは来なかった。
なんでか知ってるか?
俺はお前の代用だったからだよ。
[そんな言いたくないことを言う。]
だから、俺はあいつを選ばなかった。
お前の代わりなんて、ごめんだからな。
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