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[工房を出ようとして、セシルにいってくる、と声をかけようと振り向いたところに義父の遺した彫刻が目に入って。
そういえば、とそれを手にとった。]
これ。 やっぱり、彫れないや。
[言わなければ、きっと、彫れていたのだろうけれど。
想いを伝えて、気持ちが伝わった今、それはもう、出来そうもなかった。]
ごめんね、お義父さん。親不孝な娘で。
―…でも、お義父さん。 私ね、思ったことがあるの。 お義父さんは、これ。彫れなかったんじゃ、なくて。
彫らなかったんじゃないのかな、って。
(39) 2010/07/09(Fri) 15時頃
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このひと、私のお母さん、だよね?
[直接義父から聞いたことはなかったけれど。 幼なじみの忘れ形見を引き取って育てたと、それが自分なのだと。 人伝に聞いたことがあった。]
お義父さんは、お母さんが、好き、だったんだね。
[他の人に恋をして、その人との子を成して、死んでしまっても、尚。
こうして、残したいと思うほどに。]
私、やっぱり。 お義父さんの、娘だ。
(40) 2010/07/09(Fri) 15時半頃
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[苦笑にしては清々しい笑みで、手に持った彫刻に話しかけ。]
私、お義父さんの娘で、良かった。
それじゃ、いってきます。
セシ兄、もう少しだけ、待っててね。
[そう、セシルに声をかけると。 ギリアンを呼びに、外へと*駆け出していった*]
(41) 2010/07/09(Fri) 15時半頃
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―― 広場 ――
もうすぐ終わるわ。
もうすぐ……
[唄うように紡ぎながら村を歩く。 だいすきな村の一つ一つを目に焼き付けるかのように。]
―――…
[広場で倒れている者がいた。 死病で臥せたのだろうと思う。 もう救いの手も必要ないかと思ったが]
?
[微かに人物が、動いたのを見て、其方へ近寄った]
(42) 2010/07/09(Fri) 15時半頃
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小母様……
[この村に知らない人物など居るだろうか。 いないはずだ。――見知った、女性だった。]
……
[女性が微かに唇を震わせる。 その瞳は既に焦点を捉えていない。 ソフィアの輪郭を見取ったように、呟くのだ]
『こんにちは。 Darf ich mit Ihnen sprechen?(お話をしてもいい?)』
[彼女が紡ぐドイツ語に、どきりとした]
(43) 2010/07/09(Fri) 15時半頃
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[こく、と頷く。 女性はソフィアを、実の娘だと誤認している様子だった。 微笑む女性。 震える手が、ソフィアの頬を撫ぜたいように僅かに持ち上がるが、 力は入らない。 そっと彼女の手に触れ、優しく握った]
『お父さんと話をしたの。貴女のことについて、色んなことを』
…――
[つきん、と胸が苦しい。 お父さん、その響きに、懐かしい思いが過ぎる。]
(44) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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>>29 一緒に居たい家族も恋人もやりたい事も無いよ。 酒場に来ていた人達も殆が此処で眠ってる。
軒先で日に日に人気のなくなる通りを眺めているよりはこうしていた方が良いよ。
それに、私が倒れても此処なら運ぶ手間も最小限でしょう?
[ラルフとオスカーの墓石に忘れな草を供え、そんな言葉を返す。 ギリアンの体に対する違和感に気づく事はできなかったが彼の側で微力ならが手伝いを続けた**]
(45) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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『私はもうすぐ死んでしまうわ』
『この村にいる人は全員死んでしまうと言うの』
『だけれど馬車が街へ運んで』
『貴女を助けてくれるから』
[最早時系列も儘ならない様子だが、女性は必死で言葉を振り絞る。 こく、こく、と頷きながら耳を傾けた]
(46) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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『お父さんと話したのはね。 貴女がまだ小さな頃のお話。
私の事を初めて、ママと呼んでくれた時の喜びは 今でも忘れられないわ。
私が病気になった時、貴女が花を摘んできてくれた。 とってもとっても嬉しかった。
貴女のいる日常は、幸せに溢れていた――』
[じわり、と、涙が浮かんだ。 母親のことも父親のこともよくは覚えていない。 物心のついた頃には両親とも死んでしまっていたから 母親とはどういうもので、父親とはどういうものか ソフィアにはよく分からない―――]
(47) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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[不意に、ごほ、ごほ、と女性は咳き込んで。 薄ら開けた目が落ちていく。 間もない死を迎えようとしていた。
震える唇が最期の音を紡ぐ]
『私達の大切なEine Tochter《娘/あなた》
どうか、幸せになりなさい―――』
[そう、言って、彼女の手からは力が抜けた。 彼女の死を受けて 溢れたのは涙だった。]
(48) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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パパ、ママ……
[女性の手を握ったまま蒼穹を仰ぐ。 上を向いた瞳から、ぽろぽろと伝う涙が 頬を滑り、自分と女性の手を濡らす。]
嗚呼―――
[両親が産んでくれた、私。 幼い頃に死んでしまったけれど、 さいごのさいごまで、一身に愛情を捧げてくれた両親。
きっと苦しかっただろうと思う。 ――幼い私を、残して、逝くのは。]
(49) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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親不孝な私を、どうか許して下さい。
[私ももうすぐ終わってしまうから。 この村に残ることを選んでしまったから。
両親がこの村に眠っているという理由で、 慈悲を与えたいという理由で、 自ら残るという死を選んだ私は、 きっと両親の願いに副う娘ではないのだと思う。]
(50) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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でもね、パパ、ママ。
[お空で見守ってくれる両親に、優しく微笑む]
私は幸せだわ。 大好きな此の村で、終わることが出来るから。 大好きな人と、同じ地に眠ることが出来るから。
―――それだけでも、じゅうぶ、ん……
[震える声。止め処なく溢れる涙。 途切れた言葉。 ほんの一瞬だけ、寂しさの滲んだ表情。]
(51) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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私は、誰にも言ったことのない、言葉があるの。
[幼い頃に死んだ両親。 育ててくれたティモシー爺。 大事な友達。 遊びで付き合った人。 誰にも――]
(52) 2010/07/09(Fri) 16時頃
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きっと照れていたのか 伝える機会がなかったのね。
[空を見上げた後、ゆぅらりと視線を巡らせ]
―――Ich liebe es.《愛している、わ》
[拙い、ことば]
ピッパさんも、 パパも、ママも、お祖父ちゃんも、 此の村も、皆―――あいし、て、る。
(53) 2010/07/09(Fri) 16時半頃
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[暫しその視線は、
死んだ女性の手許に向けられて
黙す。
震える。
俯いて、
泣いた。]
(54) 2010/07/09(Fri) 16時半頃
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どうして、
どうして……
伝えたい言葉を見つけたのに、 みんな―――誰も、 いない、の
(55) 2010/07/09(Fri) 16時半頃
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[雲一つないような 抜けるほど晴天の、今が。
世界でたった独りのように思えて。 蒼い空には手が届かなくて。
もうすぐ逝くのだと、しても それまでの残された生が、余りにも残酷で]
――…。
(56) 2010/07/09(Fri) 16時半頃
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[そっと女性から手を離し 立ち上がって、足を踏み出す。]
さよなら、なんて 寂しいこと、言わないでよね…――
[袖で目許を拭って。 未だ。 未だ生きているから。**]
(57) 2010/07/09(Fri) 16時半頃
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店番 ソフィアは、メモを貼った。
2010/07/09(Fri) 16時半頃
[まずいな、と思った時には、もう。
今まで何の不自由もなく動けていた代償のように、急速に閉ざされていく感覚は、たった5文字を紡ぐ時間すら与えてくれず。
それでも、傍で。最後まで。
言い逃げてしまったけれど、約束を果たせたことにだけ、苦く笑えば]
……すまん。
[力なくミッシェルに凭れる自分を、自分で見ていることに気づき。
ずるい、と乾かぬままの瞳で呟くミッシェルに、立ち尽くしたまま、謝り]
赦すも赦さないも、無いだろが。
望むことは叶えてやるって、言ったんだから。
[また泣き崩れるミッシェルに。
くちびるをなぞり、少し眉を下げて笑みながら。
彼女が顔を上げるまで。
届かぬ手で、ずっとその背を撫でていた]
……いいから、お前が寝ろと。自己管理くらい出来てるって、主張してたのはお前だろう。
[仕事に差し支えるから、と。
撫でられる髪に、もう何も感じない筈の感覚がこそばゆく。
無意味に、同じところを弄りながら]
オルガンの―…… 何の傍で、死ぬ気も無かったよ。
お嬢様のところのピアノは弾き損ねたし、最後にもう一回くらい、鍵盤には触りたかったけど。
……だから、もう。……本当に、お前は…… ばか だな。
[愛してる、とごめんね、を繰り返す彼女を、愛おしく思わないわけが無い。
ただそれは、彼女が望むかたちと、似ているようで、交わることが無いだけで。無いからこそ。
ばかだ と。
ありったけの愛しさを籠めて、伝わることのない言葉を紡ぎ]
……奏者以外の仕事着で死ぬ事になるとは、思わなかったな……。
[ちいさなオルガンを手に、白いシーツに包まれて眠る自分に、くすくす笑い。
あれが、アレヴィ氏の遺言だったのだろうか、手にした彫刻を手にミッシェルが語るのには、首をかしげたが。
いってらっしゃい、と見えぬ手をひらひら振って彼女を見送り。
ふと]
……?
[ぽっかり生まれた、何もない時間。
することがあるうちは。考えることがあるうちは。
忘れていた、衝動。
ぽろぽろ、ぽろぽろと。
転がる飴玉のように、水滴が零れていく]
……ああ… ……、
[消えていく、営みの声。
先にいってしまった弟。
後に残してしまった、彼女。
終わってしまうそれらが、悲しかったのだと。
今更になって気づくのすら、悲しかったのだと。
差し出したてのひらに落ちる水を、歪む視界でただ見つめ。
音無くしずくを滴らせながら、物言わずふわふわ、歩き出した*]
墓堀 ギリアンは、メモを貼った。
2010/07/09(Fri) 19時頃
墓堀 ギリアンは、メモを貼った。
2010/07/09(Fri) 19時頃
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―墓地―
[男が墓をまた建てた時、そこに見るのは、ミッシェルの姿だった。]
――……ああ、セシルが逝っただか。 ………………残念だな。
どこさいるだ?ああ、お前ん家が……。 じゃ、迎えに行くだべ。
[昨日まで棺を抱えていたものが、今日はその中に入る。 なんだか、笑えない現実だった。]
オルガン聴きたかっただな。
[ミッシェルはどんな顔をしただろうか。]
(58) 2010/07/09(Fri) 19時頃
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墓堀 ギリアンは、メモを貼った。
2010/07/09(Fri) 20時頃
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― 墓地 ―
[墓地に着くと、丁度ギリアンが新しい墓をたておわったところで。
声をかけようとして、逆にギリアンからどうした、と声をかけられた。]
ギリさん、あのね。
セシ兄が、死んじゃった、から。 お願い、して良い?
セシ兄。私の家で、待ってるの。
[そう言うと、わかった、と了承してくれて。 彼の零した言葉に、一瞬息が詰まったものの、すぐに弱く微笑んで、うん、と頷いた。]
私も。もっとセシ兄に、弾かせてあげたかった。
(59) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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―ミッシェルの家へ―
ああ、勿体ないだ。 でも、しょうがないだ。これも、また運命だべ。 >>59 [ミッシェルの言葉に応えながら、家に向かう。]
入っていいだが?
[ミッシェルの家につくと、入っていいかどうか。ミッシェルに尋ねる。 きっとシーツに包まれているセシルを見れば、不届きなことに多少、何か勘違いするかもしれない。]
(60) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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─ →自宅 ─
─…うん。そう、だね。
[ギリアンの言葉に頷いて。 家に着けば、うん、お願い。とギリアンに頼んだ。 セシルの元に案内すれば、勘違いされているとも気付かないだろう]
ごめんね、私が運べるならわざわざギリさんに頼まなくても済んだんだけど。 着替えさせてあげることも出来なかったし。
(61) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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>>61
そ、そうだが…着替えさせることも が。
[何だか完全に勘違いしました。]
で、いうが、うん。 ま、まぁ、ええどその………。
彼も幸せだっだんでねがな?
[完全に勘違いした部分からの言葉だったけど、 意味はミッシェルには違うように伝わったかもしれない。]
(62) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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墓堀 ギリアンは、ほんのり、かすかに、赤くなった。
2010/07/09(Fri) 20時半頃
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どうだろうね? オルガンの傍で死ねたら良いって言ってたし。
私にとってセシ兄は男の人だったけど、セシ兄にとって私は、手のかかる妹だったから。
私が最後まで傍に居て欲しいって言ったから、仕方なくだったのかもしれないし。
[ギリアンの勘違いには気付かず、そのまま淡々と返して。 ほんとに過保護だよね、と苦笑した。]
(63) 2010/07/09(Fri) 20時半頃
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