56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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[驚きが収まらないながらも、返事を聞けば、目を細めて首を傾げた]
…村人を盾にとって有利に戦争するために?
[ぽつりと呟いた声は、少し重かった。
ベネットが被害を抑えたいと願っている事は、聞かなければ彼女には解らない。
だから、やはり擦りこまれた先入観が、そんな風に言わせる]
つ、常に同行と仰いましても……
自分は軍人であります、殿下。
任務中にまでフィリップスさんを同行させることは
非常に困難、かつ危険を伴いますし、
国内に残って頂くとしても一定の措置は必要です。
それでしたら、正式な捕虜として取り扱う方がまだ……
[そしておろおろし始める。
フィリスの驚きようも無理なからぬ事だろう、
敵国の兵を客人として招くなどという話は前代未聞だ]
近くの街はララント……
確かこの小隊もララントからの派遣だったでしょう?
――だめ?
特例措置で、名目上は警護と監視にしたら通ると思うんだけど
[何で二人ともそこまで驚いているんだろう?
まぁ、余り御多例のある事じゃないけど、別に不可能じゃないと思うけど。
おろおろしてるムパムピスがダメだと言うなら、別に他の方法を考えるのも一つだけど……]
……いいや? そんな馬鹿はしたくないね。
[少し重く呟かれる声には、否と返しただけで。
今態々、全て伝える必要性も無いかなと言う思いから。
立ち上がり、天幕を出て、この調査の為の陣を引き払わせて近くの街まで撤収させようとするけど。
何かムパムピスからあったなら、もう少し考え直すつもり]
だ、駄目かどうかは……
[無理な気もするが、自分では判断がつかない。
その辺りを裁量する権限が、兵士にはないのだ。
つまりはムパムピスの任務を、
フィリスの護送と監視に切り替えるということだろう。
明日のご飯は何にするレベルの聞き方をする公子殿下に、
やっぱり困ったような顔を見せたのだった]
[ 否定して、天幕を出て行こうとする男の背を見ていた]
そっか。……そっか。
[軍に入り、そんな戦術があると知った時、馬鹿なと思ったものだ。
同じように評した青年に、内心驚き。
同時に、彼女はこれから戦争が起こって自分が戦う相手が、わからなくなった。
同じように平和を望んでいるとしたら、何故戦争が起きるのか。
それはきっと政治的なものだとか、色々な思惑による巧みな誘導なのだろう、そうは理解しておれど。
困ったようにボブショートに切りそろえられた髪を掻き、ムパムピスを見た]
……どうすんの?
[だめ?と可愛らしく言った、恐らく上官の言葉に彼がどうするのか、最早見守るしかなかった]
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