人狼議事


18 'Cause I miss you. 〜未来からの贈り物〜

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 それ。
 人狼の存在理由は、きっと悩むことだと思うぜ。
 自分はどちらに属したいのか。
 獣としての本能を抑え、人間としての理性を護るか。
 それともその逆か。

[自身の問いに答えない男に、少年なりの存在理由を伝える。]

 ―――なっ、

[振り上げられた腕、その先に延びる爪に。
 殺される、少年はそう感じた。
 細い腕を盾にして頭を庇う。]

 ……っ、

 どうせなら、背中にしてくれないか?

[腕から血を流したまま、男に無防備な背を向けてみた。]


[ ちょっとした脅かしの心算だった。
 腰を抜かすの少年をからかってやろう、その程度の悪戯。
 誤算といえば、少年の反射神経が想像を上回っていたことか。]

 バッ――!

[ 慌てて爪を引っ込めるも間に合わず、腕を掠めるように裂いた。]

 危ねえなテメエ! 危うくその腕斬り落とすトコだったじゃねえかッ!!

[ 逆上し、慌てて腕を戻した。派手に血は流れるが、爪に残る手応えは浅い――傷は残らず癒えるだろう。]

 まあ、男にしたら掠り傷だろ……自慢できるぜえ? 人狼の爪を受けて生きてるんだしなァ!

[ 頭を書いて笑い飛ばし、振りかぶる。
 ――今度は、人の手で、思いっきり。]

 ほらよッ!!

[ 手のひらは、少年の背を正確に捕らえた。]


[もしも、自身の両親を奪った人狼がドナルドなら許せない。
 けれど、今、目の前にある過去において、ドナルドは両親を殺しはしなかった。
 だから、少年は憎みきることはできなかった。否、寧ろ、憎んではいけないと、少年は思っている。]

 (母さんの笑った顔、怒った顔、どっちも好きだけど……)

[あの日、少年が処刑を買って出たわけは、見れなかったから。
 ドナルドが疑われ、あれ以上苦しんでる母の姿を見たくなかったのだから。]

 ありがとう、ドナルドさん。

[背を押されれば、嬉しそうに笑う。
 今度は、ちゃんと階段を上がれるだろうか。
 目の前には、一匹の″案内人″。]


 全てが終わったら、林檎食べてみてよ。
 ほらぁ、いっぱいなってるでしょ?
 果実の禁断、解いておいたからさ。

[こっちの世界からでも触れるようにしておいたよ。
 そう付け加えて、少年は笑う。
 男は、何か問うただろうか。
 どんな問いがあっても、少年が答えるのはこれだけ。]

 ふふふ、

 僕から皆への―――贈り物(プレゼント)。

[溜まった魔力、その少しだけを使った贈り物は、
 願いを叶える、幸福の果実。]


 欲張ったら、堕ちちゃうからね。
 アダムとイヴみたいに。


 じゃぁ、


[少年の姿は闇へと消える。
 ドナルドの目には、儚く消えるように映ったか。]








 ―――さようなら。


―未来へ続く階段―

 何だよ。
 罰じゃなくて魔力だったのか。

 ……って、あぶねぇ。
 使い果たさなくて良かったぜ。

[″案内人″から堕ちた理由を聞けば、小さく舌打ちする。
 けれど、少年の目元は確かに緩んでいた。]

 なら……今回は大丈夫そうだな。

[闇に浮かぶ、時の螺旋。
 チクタク、チクタク。
 時を刻む音と共に、少年の足音が響くのだった。*]


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