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ねーさん?
[芙蓉の姿を取っている以上、呼び方はそのままだ]
移動したって事、あるかな。
[見れば、ナユタと明之進の姿。
何をしているのかとぼんやり見ていたが、ジャニスを探す方に意識を戻す]
[体育館の中、物の置かれた方へと進む。せめて声が聞ければ、その場所がわかるのに、ときょろきょろ見回して]
あ、いた。ねーさん?
[白いコートの端が見えた。
そちらへと足を向ける]
ここで何してるの? 倒された時のショックが、まだ抜けない?
[どれほどの倒され方だったのか、わからない。
自分のように、一瞬で終わったのなら、それほど苦にもならなかっただろうに、と思う]
[体育館の片隅、雑多に物の積み上げられた場所に
コート姿で彼女はいた。
「ねーさん」と呼ばう声。
相手がすでに死したことを知らなかった彼女は
ナユタや、明之進の時と同じように名を呼ぼうとして]
ふ、っ ……――
[浅く、早い呼吸の内に紛れた。
声音が消える、胸に置いた両手に、余計に力が入った]
[気付かれた。
粘膜を覆う水滴が、近寄る彼女の姿をぼやけさせて
それから眼球から離れた。]
うご、け
[ない、 と答える声も、聞き取りにくい。
一つ目の答えだけ返して また息が荒れる。
過呼吸になったことはあれど、対処は覚えておらず
そのうち収まるのを待つばかりだった。
芙蓉に声が届き、ナユタや明之進に届かないことに
気付くのにも今しばらくかかりそう]
……ねーさん?
[見えた姿はどうやら様子がおかしい。傍に膝をついて]
どうしたの?
息が荒いけど……。
[背中をさする。この状態で息苦しいというのも、少し変な気がして。なら、精神的な物だろうか、と]
大丈夫? ゆっくり、呼吸して。
[過呼吸の症状を思い出す。私も何度かやったことがあったから、その時の対処と同じように声をかけた]
[傍につく気配、
背中にある人の体温
混濁する記憶が氾濫しかけ、けれど
掛かる声は確かに、違った。否定し蹂躙する声ではなかった。
目蓋をきつく閉ざし、一つ頷く。
ヒールの恩恵はないと言えども、
170の男がやるには随分と、随分なものだった]
っ、ひゅ う、
――……、あり、がとう
も 大丈夫 に
[それからまともな呼吸を取り戻したのはすぐの事。]
[歪んだ視界は、惑乱の記憶と共になりを潜め
鮮やかな緑の彩る眼差しがようやく、落ち着いて向けられた。]
ふよ、うちゃん は、
……大丈夫、だった?
[「観戦モード」だという意識も薄いまま、
――芙蓉も、一度死してここにいるとは気づかぬまま、
迷惑をかけてしまった相手の安否を尋ねる言葉は戸惑いがちに]
[背を撫でていれば、次第に呼吸が落ち着いてくる。
それから落ち着かせるように肩に手を置いて]
大丈夫なら、良かった。
ああ、うん、私は……大丈夫。かな?
[少し苦笑気味に答えて]
立てる? もう少しここにじっとしてる?
ひょっとして、今の状態って把握してない?
[自分が倒されたことに、気付いていないプレイヤーもたまにいたから、そう尋ねた]
[苦笑と語尾の上がる言葉。
ハテナをつけるには芙蓉の体は、どこも汚れていないように見える。
瞬きをぱちりと重ねれば、
消えきれなかった体液が角膜の上にもう一度広がった。]
あたし、
あたしなんだか、脚がうまく動かなく、て
把握してない、……のは多分そう、よく分からない、
駐車場、ホームに戻ったのは、覚えて、るけど
[立ち上がらんと、地面に手を付け力を入れても膝から下は上がらない。
先ほど見えた一瞬の映像が浮かび上がりそうで
地面を見たまま目を細くした]
立てないなら、座ってて大丈夫。
[立ちあがろうとして、立ちあがれない様子に肩に手を置いて隣に腰を下ろした]
ホームに、か……。うん。
その内気付くだろうから、やっぱり言うけど、今観戦モードになってるよ、二人とも。
だからもう、戦わなくて良い。
でも、……怖かった、よね。
[ジャニスの方じっと見て。そうしていたら悔しさがこみ上げてきたけれど、目の端に涙が浮かんだだけで、終わる]
[実のところ、芙蓉を使っていて負けたことはそうない。
黍炉を育て上げたという自信もあったし、使う技は似た部分があったから。
黍炉を使っていて負けたことは、何度もある。その度に、最初は泣いてしまっていたけれど、黍炉を泣かせたらだめだ、と思って泣かなくなった。
それが多分、今も続いている。
「芙蓉」は泣いても良いキャラなのに。
負けてはいけないところで負けてしまうなんて、とそれはやっぱり悔しい。
けれど。死ぬかもしれない、ということは、まだ現実感がわかなくて、未だにいつもと同じようについ思えてしまっていた]
[触れる体温は、変わらず暖かい。
諦めて座りなおす肩に乗った手は、女性のものだ。
観戦モードとの言葉に、ピーコックグリーンが煌めき
隣に座る芙蓉に、彼女の目に視線は注がれた。
彼女の目に光るものが増したのも、見ることが出来て]
…… じゃあ、あたし、
私、芙蓉ちゃんも ――死んだ の
[“ジャニス”の表情を作ることもなく、
“ジャニス”の言葉を借りることもなく、呟いた。
意図的に作られる女性味は消え、それでも残ったのはプレイヤ自身の。]
[告げられた事実は映像を伴わなかった。
ただ眼前に光ったものを見た。
意志の強そうな眼差しに煌めいたものを。
無意識に伸びた手は、芙蓉の手に向かい]
…… 怖かった
怖かった、な
戦わなくて、いい……
――でも もう
もう、 誰のことも 手伝えなく なった
誰も助け、られなく、
[悔しさが涙にじませた理由とは知らず、
思考の赴くままの言葉が赤く、薄い唇からいくつか落ち]
死んだ、っていうのは、まだちょっと早いと思うけどね。
まだ、試合に負けただけ。
後は、同じ組の人に頑張って貰うしかないって事。
でも、そうすると紅のみんなが逆に閉じ込められるって事になってしまうけど。
[死んだの、と言う言葉に頷くことはせずに、視線はジャニスへ向けて。
伸びた手を、ぎゅ、と握った]
そこは、残念なところだけどね。
手伝うことも、守ることも出来ないって言うのは。
……言葉を伝えるのも、面倒だし。
[さっきクリスマスを通してヴェラに話したことを思い出す]
ァ 芙蓉ちゃんも白、なのね
あたしも そう
―― …… 白、二人も減ったのね
[掬い取れた事実は、つまるところ白の不利だ。
ナユタが死にかけ――イベント効果で回復したが
次いで敗れたのは白二人。
他の面々がどう動いているのか知る由は無かったけれど
事実としてあったのは、白が減ったこと。
男の手として触れたのは、女の手。
確かにきちんと触れられる存在は、同じ観戦モードならではだった。
けれど、暖かさも、感触も、戦えていた時と同じ。
存在を確かめるように握り返しながら]
言葉、は伝えられるの?
そっか、やっぱりねーさんも白なんだ……。
いきなり白二人落ちは、まずいね。
おまけに自称白が11人もいるんじゃ、誰を信用するのかも難しいし。
[ではジャニスは偽っていたわけじゃ、ない。
じゃあ、誰が。
握り替えされたのは、しなやかな男性の手。
温かな]
クリスなら、私達が見えているから。
言葉も伝えられるよ。
でも、そうは言ってもクリスだからね。長かったり難しかったりすると、困らせるかも。
[苦笑混じりに言って、しばらくはジャニスが立てるようになるまでそこで話している**]
メモを貼った。
[自称白、の単語に、判るくらいに唇を尖らせる。
ジャニスのよくやる顔がようやく浮かんだ。]
そう、嘘ばっかりだ
生き残る為、なのは理解できるけど嘘は嫌い
……信頼できる人、が、ナユタくん
――ミルフィちゃんの傍にいればいいんだけど
[そういって視線を流すのは、
先ほど移動してきていたナユタと明之進の方へ。
明之進がどれほど信頼できるのか、
言葉を交わしていない為判断しきることは出来なかった。
とまれ判断したとしても、今の彼女に出来ることは少ない。]
クリスマスちゃんには、見えるの、か
そうなんだ
――じゃあ、沈んでばかりじゃ、駄目、ナノネ
[最後にほんの少し強く握りしめた手は、そっと離れた。
声音に被せた口調はジャニスのもの。
いまだ少し、被りきれぬものはあったけれど
ともかく、ジャニスはそう口にして、
口端をほんの少しだけ持ち上げた。
形だけの、判りやすい笑み、だけど
これまで接したものなら見覚えの確かにあるものだ。]
なんだか、記憶がぐるぐるしてる所はあるけど、
元気に――というか、楽に、なった、 ワ
芙蓉ちゃん ありがと
ウン……キャラクタチェンジみたいで
ちょっと、恥ずかしい
[指先揃えて頬に添える仕草は
ほんのり赤くなった箇所を隠す。]
でも、やっぱり、この顔には
この口調 よネ
これでわたしの好きな“ジャニス” だわ
[降り注いだ言葉、喉に触れた温度。
おぼろげな記憶の、昏迷した部分はそのまま。
それが自身に降りかかった事実だとの認識は
明確になされている。
殺意をもって、触れたあの指は果たして
ジャニスとわたし、どちらを殺したのだろう。
ぼやけた視界に入りかけ、代わりに埋まったあの切っ先は
誰の、ものだったのだろう。
浮かんだ疑問は、けれど知りたいかと言われれば、明確に否だった。
動かない脚を、膝から下を見下ろす。
片足だけの不自由は、けれど]
それほど動けない、けど
でもきっと 大丈夫
[だと思う。
の言葉は付けない。
無理やりに言い切った言葉に従うように、
壁や――ともすれば芙蓉の力を借りて
二つの脚で床を踏み]
観戦、で、きっと
出来ることは少ない のよネ
――観戦ならではのこと、で、
助けられると、いい、わ
せっかく白しか、ここにはいないんだし
[プレイヤの言葉にジャニスの口調が紛れ込むような、
そんな不明瞭な形で方針を口にした**]
メモを貼った。
ナユタくんが、ミルフィの傍にばかりいるのは、ちょっと危険かなって思うけどね。
もう一人、信頼できる人が欲しいのは、確かだなぁ。
二人だとミルフィを守ろうとするだろうから。
にゃんこは誰かを守りながら勝てる相手じゃないし。
ミルフィがもっと経験あったらって思うけど。
今は、明くんと一緒にいるけど、明くんと二人だけならいいけど、明くんがナユタくん以外を盾にしかねないし。
難しいところよね。
[はぁ、と肩を竦めて視線を少し離れたところにある二人へと向けた]
何も出来ないかも知れないけど、沈んでるだけより沈んでない方が、良いよ。
[いつもの表情に戻りつつあるジャニスへ、ほっとして笑顔を向ける]
ぐるぐるしてるなら、別にはっきりさせなくても良いんじゃない?
私も、やられた時のことなんて覚えてないし。
あーあ。誤算は芙蓉の体力のなさよね。あれくらい、黍炉の時なら耐えられたのに。
[立ちあがるジャニスはまだ足が動かないのかぎこちなく見えて、肩を貸そうと手を出す]
じゃあ、ひとまずクリスの所? 後でここに来るとは言ってたけど。
[そう言うとジャニスを*見上げた*]
[ナユタ、ミルフィそれぞれに信頼できる人が傍にいるといい。
その趣旨で告げたはずが言葉足らずに終わった。
それだけプレイヤの表層化が進んでいた、進んでいるのだろう。
事実、眼差しも床を這うように動くことの多かった。]
―― ミルフィちゃん、大丈夫かな
[小さく零したのは「守られる側」の彼女の事。
遠距離には対応しがたい“ジャニス”であったから、
遠距離から物理攻撃を仕掛けられたらまずいと、
いくら共闘を組んでも守れないと
公営競馬場で思ったのは、事実だった。
けれど死ねば意味のない懸念で
呟いたことを打ち消すように首を振り]
結局白は……、誰が白かもはっきりしてなくて
チームも組みがたい状況 なの ね
紅に付け込まれなければいい わ
[最後にそう結論付けるように口にした。
芙蓉の口ぶりだけ聞けば随分と明之進は不安定のようだった。
それでも、白――もとい、ナユタを盲信しているようにも受け取れて。
瞬きを重ねて眺める相手が、どうにも忠犬のように
ケロみちゃんドリンクをナユタに渡すのでそれ以上なにも言えなかった。
自分の、兄への態度と似たようなものが窺えた。]
[ぱちり、と強めに瞬いて浮かびかけた感情の発露を打ち消す。
ほんの少しだけぼやけた視界が、名残のようにあってすぐに消えた。]
――……あんなものまで、ある のね
美味しくないの ヨ アレ
[芙蓉までも地元民とは気づかないで、
奇妙に生じた間を埋めるように、毒々しいドリンクの味を口にする。]
[手を借りながらも立ち上がれば、
やはりジャニスの方が背が高い。
片足の、地に触れている感覚はほぼなかった、けれど
立つぐらいならば、もう片方で地面を掴むことが出来た。
そうして生じた身長さの下、今の自分のキャラクタを一層意識して]
そ うね
多分怖いこと だろうし
あぁ そう言えば……芙蓉ちゃんは、誰に、――されたの?
[悔しさの感じられる言葉に、それ以上深く聞くのは
駄目だろうか と思えども次いで出た言葉は消しきれない。
クリスマスが来るかもしれない可能性があるなら
此処に留まる旨を言葉にしながら、そっと、芙蓉の目を
先ほど紅涙の浮かんだ箇所を見]
[ミルフィのことを心配する声に公園で別れてから会ってないことを思い出す]
……一人じゃないと良いけどね。
見つかったら狙われそうだから。
見に行ったとしても、見てるだけしか出来ないし。歯痒いなぁ。
白が11人、ただ、その数に入れてたラルフくんは紅だったから10人かな。
ひょっとしたらまだ白がいるのかも。
でもそれって、紅だって多分はっきりしない状況だと思うんだよね。
なら、勝機は充分あると思う。
[ナユタと明之進の方へ視線を向けると、回復ドリンクを手にしたいるらしかった。
その手に握ったドリンクは、見たことが、ある。地元では見なかったから、地方限定の品だと思っていたのだけど]
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