人狼議事


47 Gambit on board

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[だがそれが現実となる事はなかった。

 ――大戦が始まったのだ。
 男達の一部は戦いに参ずる事になった。そこには父も含まれていた。以降父と会う事はなかった。後に戦死したのだと知った。
 村人達は悲嘆と困窮と恐怖の中に日々を送っていた。そして、大戦も終盤に近付きつつあった頃、村は敵国の兵達に襲われた。男達は戦い、散っていった。女達は犯され、殺されていった。彼らが命をかけて守ろうとした子供達も次々と死んでいった。
 まだ戦う術など、護る術など知らない少年であった...は、その惨劇を見ている事しか出来なかった。守りたいという思いなど、圧倒的な暴力の前では何の役にも立たなかった。
 母も死んだ。妹も死んだ。友人も、知り合いも、全て。
 ...だけが一人、生き残った。幸運にも――不運にも。

 それから程なくして大戦は終わった。...はとある慈悲深い夫婦に引き取られ養子となり、バーナーの姓を冠する事になった]


[その後、...は士官学校に入った。軍人を目指したいという...に、その身を案じる夫婦は反対したが、世界を平和にするためだと説得すると、苦慮の末に納得してくれた。
 だがその理由は偽りだった。本当の思惑とは違っていた。
 ...はただ、壊したいと願っていた。絶望に満ちた世界を、絶望ごと滅茶苦茶に壊してしまいたいと思っていた。そのために力が必要だと考えていた。その時の...の中には、悲しみと苦しみと憎しみしかなかった。夫婦に恩と情は感じていたが、それを以てもどうしようもない程に、...の絶望は深かった。
 そんな破滅的な願望のままに生きていた...を、闇から救い出してくれたのが、第4師団の前師団長だった。いつかの訓練の際、己を省みず戦う姿に目を付けられ、話をしたいと呼び付けられた。彼は語った。己も幾多の愛する者を失ったのだという事を。その上で、もう失う事のないように、失わせる事のないように、人々を、世界を――愛した者達も愛していたそれを――「護る」ために、己は力を振るっているのだと]


[忘れかけていた守りたいという願望を、ありし日の愛する者達と村の姿を、彼は思い出させてくれた。そうして彼の信念は...に受け継がれた。月日が経ち、...は第4師団に所属した。
 特殊能力を――種類の違いこそあれ、「護る」という一点については同じくするものを...が発現させたのは、奇跡的な偶然というしかないだろう。今から数年前、前師団長は死んだ。老いによる平穏な最期だった。他でもない...が、その後を継ぐ事になった]

……、

[...は思う。大戦を行う事で本当に揺るぎない平和が齎されるのなら、それは辛くも仕方がない事になるのだろうと。だが、そうでないのならば。...には大戦による平和を信じる事は出来なかった。むしろそれこそが真に「理想」なのではないかと思えた。
 だからこそ、...は和平に願いをかける。
 確信無きままに大戦を望む事など、無数の絶望を生み出す選択に賛同する事など、出来る筈もなかった]


[――そのような事を考えていたから、男は周囲に目を向けながらも、心此処にあらずといった状態だっただろう。何か声をかけられたならば、そうでなくとも暫しが経てば、はっとして]

……いえ。……
こうなっても、ただ……
信じるばかりですね。私達に、出来る事は。

[何度も口にした言葉を、些かの強さを伴って*発した*]


メモを貼った。


[誰かに請われたなら、請われるまま外の状況を話すか。
聞こえ来た呟きにも、返答は短く。]

……終われば、よいのですが。

[苦い顔で、ただそれだけ紡ぐ。例えばこの諍いが計画されたものだとしたなら、まんまと手中なのかもしれない。
音のない視界では、起きているすべてを知るのは困難だ。]

バーナー師団長?

[告げる状況への返答などどこか上の空に感じれば、名を呼ぶ。
信じるばかりだ、と返れば、重く頷いた。]

――信じています。

[あの時の言葉をまた、繰り返す。そっと、視界を閉じた。
ハミルトン師団長とマイコフ師団長が場を離れたのは、視たか、視なかったか。]


メモを貼った。


 ……―――。

[ゲイルの独り言を聞く。
耳を傾けるそれにすっと表情が消えていく。]

 責を他人に押し付けている?
 なら、自分の思うままに好き勝手に戦えばいいと?

 ガーランド師団長。

[眩暈を感じながら上半身を起こし。
壁の向こうへ、名前でなく師団長と呼び掛ける。]


 貴方はボクを何だと思っているんですか?


 ボク達は命令によってのみ戦うんですよ。
 命令に従い、国の為に戦うんです。

 ……ボクが命令を出すのに向かない――師団長に相応しくないというならそうだと思う。
 でも、貴方の言い分には……。

[見えないだろうが、ゆっくりと首を振る。]


 ボクはそんなにも間違っているんですか…―――。

 ………。
 好き嫌いは、あまり考えた事無いけど。
 貴方の事、嫌いじゃなかった。

[少しだけ悲しげな響きを乗せ、黙り込む。
もう話す事は無いと突き放されたから。]

 道の先が和平であっても大戦であっても。
 前線に出て来ないで欲しい。
 貴方は真っ先に死にそうだから。

[最後に小さく呟いたのは、独り言。]


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