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…………。
[ここにいるシャルルは、船のおそれの象徴であった「ネイサン」とは、別人のような気がした。
それは、彼の聲を聞くうちに、何度か感じた違和でもあった。
独りで生きてきた獣には、今ひとつ理解できない感情。
強者が弱者の上に立つは当然のこと。
この道化は、それを体現していると思っていた。
だからこそ従い、だからこそいつかその喉笛を咬み喰らう機を窺っていたのだが。]
[何が変わってしまったのか。
それが、この道化にどういう影響を及ぼしているのか。
紅い眼は、じっと、観察する。]
[死にたい奴ほど死ねない。
生きる欲を持つ者ほど、あっけなく命を落とす。
それは知っていても自らの願いは変えられず、
自ら命を絶つことも出来ず
最後に、ようやく――生きることを諦めなかったのに]
…………う、 ぁ
[刀を持つ手に、ギリアンの腹から温かい血が降りかかる。
これがもし、逆だったら――腕を失くしたのが自分で、刀を持つのがギリアンだったら、きっと、こうはならなかった。
つまりは、力の差は明らかだったわけだ]
[風はまだ吹かない。
絶望か希望か。
何処ととも判らぬ先に導く風はまだ吹かない。
水面は凪いだまま。
その水面の下に多くの命と怨念を隠したまま。
風はまだ吹かない。]
[細いものが折れる音が耳の中で響いた。
軽い音なのに、随分と響く――なんて、何故か思考はゆっくりと。
形になりそこねた思考は、言葉の端から崩れて、もう幾人もの血を吸った床へと落ちていく。
置壱の血と一緒に。
命と一緒に。
落ちて、砕けて
―――全てが終わった]
[そういえば、道化が「仔」と呼んでいたミナカの姿が見えない。
てっきり、彼かギリアンの近くにいるものと思っていたのだが。
あの異形は、冥い海の中、どうしているのか。]
メモを貼った。
[この船には、仲間なんて居なかった。
そう思っていた。
仲間など、自分にとって一番遠いところにあるものだった。
同じ船に乗っているだけの人間。
だから、「仲間」殺しを楽しめた。]
[獣嫌いの女神は、
正しく獣を撃ち殺した。
獣よりも獣。
そんな、ろくでなしを。]
【人】 紐 ジェレミー[甲板の床板を踏んだとき、ギリアンが道化の腕を掴んだ。 (63) 2014/12/16(Tue) 22時半頃 |
[人を信じるだとか、共に笑い合うだとか。
そういう相手が一人でもいたら変わっていただろうか。
あの道化師の行動と命令の矛盾に気付けただろうか。
あの船長にとっての「仲間」は、
船に乗っている奴らのことではなかったと。]
[此処は絶望だというのに。
もとより、希望などないというのに。]
[絶望を望む、
そんな矛盾した思い。]
[そんな些細な絶望を残し
ろくでなしは、]
[ホレーショーの容赦ない言葉
グレッグは苦笑するほかない。だって事実だし。
俺、船長と戦うとか無理だし]
だろー、ニコ。俺の兄貴はスゴいんスよ。
[ニコラスに同意を求められれば
ふふん、と自分の事のように誇らしげに胸を張った]
……ん、兄貴。行くんスか。
[ホレーショーがふわりと立ち上がると、グレッグも後を追う。
突然海原の底の船医に向かって、礼を言うホレーショーに。
グレッグはしばし面を食らったが]
俺は兄貴と違って礼は言わないんスからねー。
ミナカのばーか、ばーかーー。
[ここにはいない船医に向かって、あっかんべーした。
だって自分はガキなのだから。そうだろう?*]
……?
[ひく、と小さく鼻を鳴らす。
ホレーショーに感じた気配、匂いとは、また違う。
獣のようであり、そうでないような。]
[シャルルから意識を離し、気配の出所を見れば、リーの姿があったろうか。
獣は、なにか問うわけでもなく、じっと船大工を見つめた。]
[引き攣った笑いでニコラスが憎まれ口を叩く。
いいことない人生だった―――客観的に見ても全くそうだろうなと思う―――と、
その後に続けられた言葉に。]
…抜かせ、クソガキが。
[フン、とせせら笑って鼻を鳴らした。
ぎりぎり、と頭を掴む手に力が入ったのが
幾ばくかの照れ隠し混じりのものだなんて悟られてたまるか]
なんだ、本当の事だろ。
[黒歴史を暴かれて呻くホレーショーを尚もからかいつつ。
ちなみに酒飲んでる時のニコラス
………聞きたいなら今ここで聞かせてやってもいいけどな。
[首を傾げる青年に
【人】 紐 ジェレミー私の死に場所は貴方の爪先に口付けたその瞬間からこの船の中と決めておりましたので。 (70) 2014/12/16(Tue) 23時頃 |
―回想:10年前―
ひゃはははは!
おめー、命知らずだな?
でも、俺が獅子でこのおっさんがゴリラってーのは気に入った!
よろしくぅ?
[10年前。下っ端からようやく脱出した程度の若造は、今よりも痩せていて、見本となるようなチンピラだった。ケタケタと下品に笑って中指立てたのも、ミナカと同じ理由。絶望号の一員として、舐められないようにとよく吠えた。
忘れておきたい歴史は結構多い。]
……へえ、そこそこやるじゃん?
しゃーねーなー、半分くらいなら分けてやんよ!
[貸し作って、作られて。
船医が戦友になったのは、いつの頃だったろうか。]
酒ねーんだよ、よこせ!勝負だ!
[つまらないことで喧嘩をして。酒を取り合って。
年齢と共に段々と落ち着いてきたが、それでもたまには些細なことでムキになって争った。
グレッグの「兄貴」になるなんて、出会った頃のミナカに言っても信じてもらえるか、怪しい。*]
[やがて話が道化の方に向き、
そりゃそうだ。道化は強い。そのことはよく知っていた。
単純な実力でも強いのに、それが人狼とあれば秘める力は計り知れない。
異形の化物に姿を変え1対1でやりあったミナカのことを思い浮かべる。
残された人間――それももうどれほど居るのかも分からんが――が、あれに勝ち生き延びる確率は果たしていか程のものだろう。
幾らその先が絶望であろうとも、惨劇であろうとも、
最後まで見守ると誓ってしまったので。]
……さて、そろそろ行くか。
[そう呟きホレーショー
ゆっくりと自分も立ち上がる]
おい、化物船医。
そんな辛気臭い所にいるより、こっち来て見物でもしたらどうだ。
あの道化はテメェの同族なんだろうが?
また牙を向けて来やがったら何度でもぶっ飛ばすけどなぁ。
[皆に倣って、昏い海に沈んだ狼にはそう声をかけておく。
そのまま下に降り、今まさに戦いが繰り広げられている方へと*]
―第三甲板―
[すごいと言われて嬉しくはあるのだが、命がけでもせいぜい一撃、という結果にどうにも本人は納得が行っていないものがある。
……グレッグの命には全然足りないし。
複雑な気分で反応に困ったので、頭を掻いて「ありがとよ」と一言言うだけで、下へと降りてきた。階段を降りきり、そろりと距離をあけて部屋の隅へ。
生者たちのやり取りを、座して見守ることにした。*]
【人】 紐 ジェレミーそうか。 (75) 2014/12/16(Tue) 23時頃 |
――10年前――
あぁ?誰がゴリラだぁ?このクソガキ。
舐めた口きいてると船の連中看る前に
自分の傷を自分で縫うはめになるぜ。
[まだまだ若造だったミナカがこの絶望号に乗った頃。
当時のヘクターは血の気が多かった。そりゃもう多かった。
故に、船に乗って来たばかりの生意気な年下に舐めた口を聞かれて黙っている体などどこにもなかったので。
いかにもごろつきさながらと言った体でぱきぱき腕を鳴らして睨みつけ、殴り掛からんとせんばかりの勢いだったのを覚えている。
ついでに横でげらげらと笑い声をあげるホレーショー
調子のんなこのボケッ!!!
[と思いっきり怒鳴って横っ面を殴り飛ばそうとしたか**]
[死んだと気付いたのは、
あの焼けるような痛みがなくなり、
自分自身の死体を見下ろしていたから。
やはり、痛みは生きているから感じるのだと
死んでから確信を取れるとは思っていなかった。]
[銃弾にやられ、血の中に倒れた身体。
つまらない。
誰とも分からないくらい、酷く死ねたら良かったのにと。
死ぬ間際に感じていた、あの痛みも。
叶うなら、もっと酷い痛みを欲しかった。
死ぬほどの痛みを。
自分自身の死体から興味をなくし、顔を上げる。
死んだはずのヴェラーヴァル
[元々あまり太くもない首が、青魚よりも細く潰れて
太いギリアンの腕に抱えられているような姿は
見ていてなんとも、気持ちの良いものではなかった]
……………あれ
[自分を見ているのだ、と。気づくまでに随分とかかった。
階段からひとり、またひとりと死に損ないが降りてくる。
そのうちに吐かれた舌打ちが、自分に向けられたものだと
何故だかわかって、鼻を鳴らす。
たとえ笑っても、空気は震えない。
それをわかって笑うのが悔しくて、空っぽの唾を飲み込んだ]
【人】 紐 ジェレミー……、 (80) 2014/12/16(Tue) 23時半頃 |
[
ただ強くなった手の力にギブアップを訴えて、命の恩人へ恨めしげな視線を送る。
半笑いには、慌てて首を横に振って]
いや、なんかいまスゴく嫌なことを思い出しそうだったから、やめとく……。
[加えて、ヘクターの笑みが不穏極まりない。
永久に記憶の奥底へ沈めることに決めた。
うちの神様の方がスゴいだろう。スゴいだろう。敬えよ小僧]
はあい。
[
立ち上がるヘクターに、生前と死後と変わらずについていく。
なにがあったって、自分の人生唯一最大の恩人のそばから離れることなんて出来ずに。
共に向かうのは、絶望の船の中。
各々、海底の人狼へ声をかける姿を見て。
一番最後、暗い海に向かって視線をやったけども。
許すことも怒ることも出来ないから、困った顔をしてしまった]
……。
[小さく呼び掛けるように手を振ってから。
最後尾で、海賊たちの背中を追いかける]
―第三甲板―
[他の連中に続いて下へと降りる。
生者達が乱戦を繰り広げる最中、適当に見物できそうな場所を陣取って。
座するホレーショー
視界には10フィートはあろうかという白い狼。
恐らくあれが道化の正体なのだろう。
各々それと相対する者達を少し遠くから観戦する。]
…酒が欲しいな。
[率直に呟いた言葉は、どこか緊張感にかけるものであった**]
【人】 紐 ジェレミー[真白な毛並みが医務室を埋め尽くし。 (82) 2014/12/16(Tue) 23時半頃 |
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