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[キリシマが頭を下げる様子に、一度だけぱちりと瞬いて。
然し、何処か安堵した様に薄く笑みを零す。
信用できるか否かと、個人の好き嫌いが別解とまでは知るに及ばないが
強く拒絶をされている訳ではなさそうだとは、何となく察しがついて。
もし毛布を動かす事も難しいようならば、手を貸す心算でいたが
何とか整えた様子を見ると、そのまま手を引いた。]
――だ、そうだよ。…エンライ師団長殿。
[鉄格子より向こうから届く声
ランドルフ皇子、GJ。と内心無礼な物言いで親指立てながら
其れを悟られぬ様に、翠をナユタへ向けた。
…常は言えぬ立場だとしても、此処は戦場では無い。
一度ぐらい、本音を零したところで罰は当たらぬだろうに。と
先に聴こえて来たゲイルの言葉には微か思うところもあったが。
当人にとって、事は其処まで簡単なのではないのだろうと結論付ける事にした。
――若さかな、と一人ごちるのは自分を見返っては少々切なかったが。]
ええ、七が一番命に厳しいのは、理解していますよ。
世話になっている身としても、それを貫いていただきたいですね。
……貴女も、一応怪我人でここに叩き込まれているわけですし。
過労とまではいかなくても、気をつけてください。
[それから、白衣の天使なんて言葉が聞こえれば。]
天使、ですか。確かに、度々迷惑を掛ける身としては、それでも治療してくれる貴女がたが天使のように思えることもありますが。その分、激務お察しします。
私は鬼か悪魔なら言われた記憶はありますね。
[にこり、笑う笑顔はとても綺麗だろう。]
……。
害になりますよ。
ボクは、戦場以外では――時には戦場でも害になるんです。
でも、それだけじゃない。
ボクは13師団の皆も守れとも頼まれたから。
そちらは師団長で無いほうが守れる。
ボクの能力だと味方が居ると戦えないから一人の方がいい。
……―――。
[サイラス
[二つめは、このノルデンの帝都下の牢獄の扉が開いた、あの日。
チンピラ同士の喧嘩の挙句、相手を殺してしまってから続いた、
冷たくて暗い世界に、明かりが射した日。
この国の為に尽力することが、かつての母国の民の為になる。
恩師に諭され、愚かだった自分を省みて、泣いた。
その後、事情を知った上で皇帝から直接特赦が発令され、
久方ぶりに浴びた日の光のまぶしさは、眸の奥に焼きついたままだ]
前ワット師団長が…………そう、だったんですね。
[エンライが口にするあの人。
彼を師団長にと、推したワット。
望みを叶えたかった、と口にする。
感謝、しているのだろうとはわかる
何か、言いたい感もあるがやはり言葉はうまく扱えず]
[出来ないですけど、と口にする様子
少し、治療はされれど痛む肩をこらえて
撫でる手に力を込めわしゃわしゃとその髪を乱す]
……頭を、撫でる、という行動で、
落ち着くんです。
[嫌ではないと、言われれば、
良かったと目を細めて。
尋ねられた質問、至極真面目に言葉を返した。]
[ガーランド師団長も苦労するな、と何処か女の友情めいたものを心の隅に芽生えさせつつ。お互い頑固だなあ、と思っているうち、皇子が言ってしまった心の声にあーあ、と苦笑した。]
[ツェルベリとエンライの言葉には口を差し挟まず
ただ、ランドルフ皇子の声が聞こえれば
目を瞬かせて。]
寝てる耳にいろんな思惑が飛び込んでくる気がした。
……また『死ぬ気か』と怒るのかな。
一人で戦うと言うと怒られた気がする。
………。
兵器でなくて人で居ろと言う。
敵を害虫呼びして怒る……のはブランフェルシー師団長か。
………迷ったら戦えなくなるのに。
[溜息が零れる。]
― 救護室 ―
―――………………。
………――………っ。
[男の指先がぴくりと動いた。
目を閉じたまま眉を寄せ、苦しげな表情を浮かべる]
[
心得て居ります。
師団長が揃っている場で、私がなんであれ死を容認すれば―――第7の信用にかかわりますしね。
大丈夫です、今は殆ど働いてませんよ。
[鬼か悪魔、という言葉には、思わず笑ってしまう。]
此方こそ、前線救護中に狙撃で護ってくださる第12にはお世話になりっぱなしです。
鬼か、悪魔ですか。ふふ、きっとその笑顔が美しすぎて、魅了してくる悪魔のようだと錯覚する者の言葉でしょう。
[男社会の軍の中、少数派である女性軍人同士の冗談話、気が緩んだのかほっと息をついた]
メモを貼った。
――成る程。
師団長で無い方が守れると、そう判断するならば。
その座を明け渡すも一つの選択か。
[ナユタの言葉
が、暫しの沈黙の後、一寸躊躇い――しかし、僅かに口を開いた。]
…エンライ師団長殿。
此れは俺の持論故、聞き流してくれて構わないが――
…確かに、戦場以外では…聊か『不便』ではあるかもしれない。
が、己を害と言い切るのは、少々違うと思うんだがな。
[それは君を信頼し、心配する者に失礼ではないのか。と。
苦笑交じりに鉄格子向こうへ視線を向ける。]
『一人』で戦うのと、『独り』になろうとするのは、同じようで全く違う。
…前線に立たない師団の者が言うには、説得力が無いかも知れないが。
数少ない、ボクに関わってくれた人ですから。
メル……ガーランド師団長もそうだったんですが……。
ボクはボクなりの基準でしか返せない。
[撫でられたままなので、鉄格子を見上げる事は出来ない。
しかし、基準を曲げる気は無いと言葉に込め。
落ち着く、と言われて漸く得心したように]
羽根を撫でるのと一緒ですね。
[部屋の何処かに居た鷹が呼ばれたと理解して、ぱたぱたと飛んでくる。
外せない手袋の手に止まるその鷹の翼を撫でる。]
お役に立てているなら、幸いです。
私たちも時により護られてばかりなので、そういった声が聞けるのは嬉しく思いますよ。
魅了されてくれれば、話は早いのですが。
残念ながらそれほど美人ではありませんので、叱咤を飛ばす日々です。
[気の緩んだ笑みの真逆、わざとらしく息をつく。]
[
傷が痛むのだろうかと思い、僅かではあったが己の生命力を流し込み、それを和らげようと。
ちなみに、戦場では充当役の兵を連れており、片方から吸い、片方に流し込むという中継的な能力の使い方もする。これ余談。]
……貴方は。
体現してみせたのだな、彼の望むものを
[ヨーランダから聞いた、ベネットと相対していたというヘクター。
撫でるようにそっと手を置き、零した]
………………
[エンライの
施設で徹底され、施された教育は
強固なもの、なのだろう。
同時に、周囲の人間が、彼に望むこと、も。]
…………ワット前師団長の望みは
今、叶えなければ、いけない、
わけでは、ないと思うのです。
まず、エンライ師団長自身が…
自分で、師団長に向いていない。
そう思う箇所
……一人で戦うのが得意なら
それ以上に、能力以外で複数で戦うのを勉強されればいい。
迷ったら戦えなくなるならば、
怒られることをやめても、迷い消えるまで
念のため救護室で手当てして貰ってくださいね。
禊中の皇子に怪我をさせた事がバレたら、私が反逆罪で死刑になってしまいます。
[
……おっと、元々嫌疑をかけられていたのでした。
少し、おとなしくしていましょうかねえ。
[ちいさく肩を竦めた。]
ワット前師団長が行っていた、農業のように、
種を巻き、ゆっくり時間をかけて……
……そんな、ことはむり、ですかね?
[毀れたため息に、ゆるく首をかしげて。
ところどころ、思考しながら、故、
言葉の紡がれる速度は、ゆっくり、だったが]
現役時代の私、ですか…
そういえば、昔からそんなことをおっしゃっていましたねえ。
[その瞳に幼い彼の面影を見て小さく笑う。]
いいえ、殿下は優しいお方ですよ。
貴方は貴方の大事な物を全部抱えて護ろうとする。それを優しい、と言わずなにを優しいとおっしゃいますか。
けれど、時に私を切り捨てて民の為の決断ができる。そのような方でないと一つの国を背負うのは難しかろう、と思います。
それに……そうですね。私は外交戦争を望みます。表面上血を流さないだけで、厳さは武力戦と変わらず、和平を維持する為に外交戦争は続けねばならないでしょう。
しかし、国を争いから護ることは、必ず民の為、ひいては帝国の為にもなると、私は信じます。
私もまた、この国を愛していますし、帝国全てを諦めたわけではありませんよ。
[そう言って微笑むと。
ヴェスパタインがどうするか、暫く様子を伺ってから、大部屋にあった粗末な椅子に腰掛けた**]
メモを貼った。
[皇子が仲裁?しようとしているのには、見かねて声をかける]
変わる気も、その努力をする気もない者に。
これ以上今言葉を重ねても無駄です。
[見なくてもできない、と繰り返す姿は容易に想像できた]
彼にとって私との縁故の価値などその程度ということです。
失っておしくないのでしょう。
それをどういう言っても仕方のないこと。残念ですが。
[淡々と述べる。]
― 救護室 ―
[ずっと続いていたゲイルとナユタのやり取りは、全てではなくも耳に入れていた。一貫して口を挟もうとはしなかったが、ゲイルが大声で吐いた悪態には、少し驚いたように其方を見ただろう。
やがて、隣の拘束室へとイアンが訪れる。
そして救護室に運ばれた傷だらけのヘクターの姿に]
……グレイヴ師団長。……
[服の端を握りながら見つめる。痛ましい様を、己には心配する事しか出来なかった。ゲイルが力を使用しようとするらしきを見守り]
メモを貼った。
[本当は。
他国への侵略の手となることを望んではいなかった。
けれど、成果を上げて実力を示さなければ出世は出来ず。
国軍は牙無き民のための牙であれ。
軍人としての礎と相反する行為にずっと苛まれていた。
能力の暴走や理性の欠落は、そこにも起因していたのだろう]
――………ぅっ。
[温かい力が流れてくる。
苦しげに顰められた表情が、ゆるゆると解けていく]
……ぅぁっ……?
[はた、と目を開く。
額に触れる手を視線で追って、ゲイルを見上げた。
眸を数回またたかせ、視界にランドルフを見つけて]
ランドルフ、殿…っ! ぅ、ぐぁ、ぅ…。
[身体を起こそうとして、痛みに呻いた]
みっともないところをお見せして…すみません。
[首だけ起こし、頭を下げた]
[生命力を注ぐガーランド師団長に、安堵混じりの息をつく。
事実あれはこの身に受けたが、結構はっきりと回復するものだった。
それでも痛みに呻くさまは、眉を寄せたが。]
――驚くのも無理は無いですが、無理はせずに。酷い怪我です。
[さらりとなかなか矛盾したことを言うのは、常頃の部下に対する癖。]
………害ですよ。
[サイラスの言葉
意図しなくても。
意図をすればもっと、酷い事になる。
『不便』と言い換えても同じ事です。
通信室にボクを近づけたくは無いでしょう?
[下手に近づいただけでも通信妨害をしかねない。]
軍に拾われてそれを多少なりとも害じゃなく使えるようになった。
だから、ボクは別に生物兵器扱いでも良かったのだけど…――。
[伝わらない、と鉄格子を見上げる。]
跳ね橋を下ろす作業に参加する心算はない。
他の、人、が紡ぐ、言葉、の方が
用いる公式として適しているのは、判りきったこと。
それらを片耳から入れ、またもう片方から出しながら、
一度、ナユタを睨みつけると、
瞼を閉じた。
……そうですね……基準が
簡単に変わるなら基準、足り得ない。
[火傷傷に触れる髪。傷口に触れば痛いが
気にせず己が乱した髪を
梳くように撫でて。
メルル=ガーランド。
他人行儀な呼び方に変える様子は静かに聴いた。]
[羽の言葉に、飛来した鷹を撫でる
エンライを撫でながら
ツェベリが口にしたとし、相応、を考えて。]
被弾の傷が響き、本格的に動かなくなるまで
イアンはエンライの頭を撫で続けて
社会的弱者が多い師団を統べるものとして
意を唱えず頷いた。]
[軽い怪我。
ヨーランダの声に視線を向ける。
そしてもう一度、ゲイルに、それからズリエルに。
何かを言いかけたところで―]
ぅぬぐっ!
[心優しき第一皇子にベッドに押し戻された。
身体を支えようとした腕が変に捻れたけど―…]
無事そうでよかった。
[安堵の息と一緒に、襲撃を受けて運ばれた筈の三人へ]
自分は、襲われたわけでは…。
グレイシア殿と”模擬戦”を。
[ランドルフの問いには、襲撃者と戦った、とは答えなかった]
………――。
[鉄格子を見上げた蒼灰はイアン
ゆっくりと目を閉ざす。]
ボクはすぐ、変わるのを望まれているのだと思うけど。
ゆっくりでもいいなら。
"今"は師団長は辞めた方がいい。
新しく覚えるのには時間掛かるから。
ゆっくり待ってもらうわけにはいかない。
……もう、いいです。
傷に障りますから。
[傷の為が動きが鈍くなる撫でるイアンの手を、止める。]
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