207 Werewolves of PIRATE SHIP-2-
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[やや時を置けば、漸く、東の空に月が顔を見せはじめた。
───ああ、今夜も、朱い。
思い出すのは、己の力を知った、あの日のこと。
物心ついた頃には、もう親はいなかった。
とはいっても、人ではなく、獣として。
路地で残飯を漁ったり小動物を食らったりな、どこにでもいる野良犬。
ただその野良は犬ではなく、狼だった。
もっといえば、ヒトオオカミだった。
いつの頃か、ヒトの姿をとれることに気が付けば、路地に干されている服を盗り、周りの人間がするように、着てみたりした。
ただ、まだその頃は、自身の幼い爪が、簡単に人間を引き裂けるほどの力を持つことなど知らなかった。
そして、人間の血が、肉が、残飯や小動物よりずっと美味だということも。
───あの日、路地で襲われるまでは。>>*15
そして、返り討ちとした男達の血肉を齧るまでは。*]
……っ。
[息を飲んで、グレッグは決闘の行く末を見守る。
なにもできない自分の存在が。ひどく忌々しい*]
[生粋の獣は、ずっと、闇の中に生きてきた。
はじめの頃は、人間に見つかり、危うく殺されかけたりもした。
しかしやがて、音なく獲物を狩る術を覚えた。
そして年齢が13を数える頃、路地で、狩ろうとした男に逆に捕まった。
殺されるのかと思ったが、逆に、暗殺の仕事を持ちかけられた。
寝床、食事、身柄の保証。
怪訝に思いながらも頷き、その男のもとに1年ほど身を置いた。
今思えば、あの男もまた人狼だったのだろう。
自分と同じ、生来のものか、後天的なものかは知らないが。
───いつの頃からだろう。
裏社会で『闇猫ヴェラ』などと呼ばれるようになったのは。]
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