62 あの、夏の日
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ま、結婚して仕事辞めるのも1つの選択ではあるけどね。
[その言葉は茶化したような声になるように、努力した。]
[ぱくぱくと唐揚げ――肉を食うメアリーを満足そうに見て。]
ま、良いんじゃねーの?
てか、そういうお前を想像できねーし。
[そう笑いながらも、共犯者は、見事な仕事をしてくれた。]
………………………………………はい???
[急に言われた言葉に、固まった。
どう答えれば良いのか分からず、メアリーに助けを求めるように視線を向け。
直ぐに聞こえた言葉に、ぎくしゃくとそちらを見る。]
あ〜〜〜〜〜。
まぁ、なんつーか。
酒が入っていない時なら、良かったんだけどな。
[ガシガシと頭を掻きながら、傍にあったアイス珈琲を飲み干した。]
……じゃあ、冗談じゃなくて、本気って言ったら?
[もう一度、ヘクターの目を見ながら呟く。]
そう、かぁ……
[ケイトの横顔を見ながら白ワインに口をつける。
一歳年上の先輩は、自分と比べ物にならないほどしっかりしていて、とてもかっこよくて。
1つの選択との声に、なんと言えばいいのか言葉が見つからなかった。
ただ、いつものように。
10年前と変わらずに、今は笑ってほしくて。
助けを求める視線には、不器用にウインクする(たぶん両目を瞑っていただろう)。]
…………。
[済ました顔で、再びきゅうりを口に運ぶ。
ただし、音は立てぬようにそっと噛むことに専念して。]
[そのウインクらしき瞬きに、何が眩しいんだ!と突っ込みを入れそうになったが。]
酔った勢いでそんなこと言っても良いのかよ。
本気にされて、困んのお前だろ。
[ケイトへ、冷静にそう言う。]
……やっぱり変わってないですね、ヘクター先輩。
[ヘクターの言葉に笑みを浮かべ]
髪を染めて、ピアスを開けても、変わってないですよ、先輩は。
メアリーちゃんにはメアリーちゃんの良さがあるから、いいのよ。
あたしみたいに小狡い事覚えなくても。
[ケイトはメアリーの肩を軽くぽん、と叩く。]
そりゃ、俺が10年前から成長してねーってことか?
[何か誤魔化すように、苦笑を向けて。
変わりたかった。変われなかった。変わりたくなかった。
あの頃のまま、居たかった。]
えへへ、ありがとうございます。
でも小狡いなんて、そんなことないです。
[肩を叩かれ、思わず口の中のきゅうりを派手な音を立てて噛んでしまった。それを落ち着いて飲み込み、軽く首を振った。]
ケイト先輩も、とーっても素敵なんですから!
皆さん知ってますよ。
[ね、とヘクターにも微笑みかける。]
はい、生です。
思う存分飲んじゃってください。
[注文した生ビールを彼女に差し出した。]
別に変わらなくても、いいと思いますけど。
[ケイトはそう呟くと店員にスパイシーポテト(ハバネロソース付き)を頼む。]
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