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[ その為ならピアノだってやめよう。
代わりにヴァイオリンを弾くから戻ってきて。
それがだめだったなら次は――……
そうやって諦めて棄てて、自分という存在が
気薄に感じられてでも無かった事にはしたくなかった。
それは音楽を愛していたというよりは、
きっと、音楽を通じて愛していた人達を
失いたくなかった。
そんな子どもの戯言だった。 ]
[ だがそれさえも強欲である事は知っている。
分かりきっているから望む事など許されない。
神の赦しも最早求めず、
己の意志で枷をつけた。
それが正しい答えだと決め込んだ。
だが、誘発される己の望み。
膨れ上がった慾の果て。
自らの深淵に潜む本心。
完全に引き上げられなくて良かったと思う。
狂わずにはいられたから。 ]
[ だが、薔薇の木を中心に囁かれた言葉など
なにひとつ知らぬ身である故に。
今現在どんな事が起きているのかは蚊帳の外。
しかしだからこそ守られた安寧があるのかもしれない。
自覚した想いは言葉になり形になれど
それを何が何でも奪い取りたい慾にはならなかった。
まだ誰かの幸せを願う為に棄てられる。
また、奪って失敗する事はもうない。
だから、良かったと思う。 ]
[ 咲いた花は薔薇ではない。
死人の口をふさぐ梔子。
この想いも全て、秘めてしまおう。 ]*
―夢の世界、医務室―
[ ぱちり、と瞬きをした。
花開くように一瞬の出来事だった。
周囲を見渡せば此処は医務室だろうか。
あの後誰かが運んで来てくれたのかと
考えながら身動ぎすれば軋むベット。 ]
…………ここは。
[ 言葉にしながらもすぐに起き上がる気にぬれず、寝そべる。
なんだか違和感がある気がする。
まだ此処が夢の世界だと分かっていなかった。
そんな悠長さも重苦しくない躰を自覚すれば、
のそりと起き上がって目を丸くするのだが。 ]**
【人】 記者 イアン[なるほど、説得力はある。 (46) 2018/05/23(Wed) 19時頃 |
[戸惑いと面映さで所在なくしていた後ろから、不意に声がした
誰もいなかったはずなのに、と瞬いて振り向けば、そこには同室の。]
……何してるの、こんなとこで。
[おそらくお互いさまな一言を、遠慮なく放り投げた。]
[ その声
ぱちぱちと瞬きの後、視線を向ける。
そこに後輩の姿
首を傾げた事だろう。 ]
何……だろう。
俺は少し体調が悪くて気付いたら此処に。
誰かが連れてきてくれたのかな。
[ 緊張感に欠けたコメントをしながらも、
なんだかほんわかとした空気を感じる。
何かあったのだろうと考えながらも
口を開く。 ]
モリスとヒューが医務室で休んでいたようだから心配してたけど、
元気そうで安心したよ。
[ 見舞いに行った時
慰めるよう撫でた手により、彼の葛藤が
覗き見れた事を知らない男は悠長に。
どこか緊張感のない表情を浮かべていた。 ]
[ その間に向こう≠フ扉の前で
一枚隔てた先に聞こえた声に
無意識に吐き出した息がはくりと、
震えたのは本人も知らぬところ。
それは笑っているようにも、
泣いているようにも
揺れる空気は答えなど与えなかった。 ]*
【人】 記者 イアン (61) 2018/05/23(Wed) 21時半頃 |
うん? 何、お前具合悪いの。
まったくマークといいお前といいどうしてこう連休だってのに……
[
誰かが連れてきてくれた、なんて悠長に言うが、つまりここに来るまでのことを覚えていない――意識がなかったということだ。
熱はないかと柔らかな髪に隠された額に触れようとして、ふと。]
……あれ、そういや俺、なんでここに。
[いるんだっけ。
人に聞く前に自分がここにいる理由が不透明すぎた。
確か図書室のソファで寝ていたはず。
そして今は、窓の外によると昼間に見える。
どれだけ寝ていたのだろうと辿るように、眠るまでのやり取りを思い出せば、耳の先が熱くなる。]
[ ───── "現実"の言葉は、 挙動は、
遠くのなにかにしか、感じることができなくて、
それでも、まだ あかいろの
薔薇の言葉だけは 鮮明に ゆめのなかの己にも
──── 頭のいい後輩の恨みのない言葉が、
どうにも、 心地好かった。
それこそ、一発殴られたっておかしくはない、のに、]
[ 薔薇の蕾を頭上に見上げ、
──── 昼間のように明るい ─────
聞こえない声を、唇を、 追い、
先ずは手を洗うとこからはじめてくれ。
[ "普通"じゃあ、フローラルなお前には近付けない、と
……聞こえていないだろうから、って意地悪く。]
[不意に、呼び声が聞こえた気がした。
は、と瞬くけれど、反対を振り向いてもそこには声の主はおらず。
小さな自己嫌悪に息をつきながら]
……お前、が、連れてきたとかじゃないよな?
[振り向いた行動を正当化するために、後輩に問いかける。
怪我のあった手で、それが可能とは思い難かったが、苦肉の策だ。]
【人】 記者 イアン
(75) 2018/05/23(Wed) 22時半頃 |
[ ───ノイズ混じりの朱の囁きは、確かに届く。
……残念なことに、この"パン捏ね大臣"は、
"他に"というとモリスの顔しか浮かばない程度には
情報に疎く、─── 今聞いたような有り様だ。
"薔薇の夢に囚われずに"
"安息に眠る理由"
……頭を殴る以外の解決法が欲しいものだった。]
[ 咄嗟に手を掲げられるくらいには、
自由に動くことは出来そう、と 結論付けると
起立を試してみる。
──── 問題はない。
"地に足のつかない"感覚は少々あるが
まあ、 身体は後から
ついてきてもらっても構わないんじゃないか? とか
幽体離脱じみた景色を見下ろした。
そう、 お忘れなく。 パン以外には大雑把だ。
歩いても、 音はしない。
──── 朱の音だけが、 耳に 届く。]
[ 少し砕けた態度
また彼に対しては特筆すべき能力がある者同士、
親近感を抱いていていたから、
お母さんのような小言にも眉を下げて笑ってしまう。
だがそこに想い人の名前があったから ]
マーク、も。
どこか、悪かった……のかな。
[ 尋ねようとして結局独り言じみたつぶやき。
額に伸びる手を拒む事はなく、いつも通り
甘えていた時に、ふと途切れた言葉。
それから熱を持つ赤い耳
不思議そうに首を傾げた。 ]
[ 何故なら水面下のやりとりを知らないのだし。
彼らが告げてくれないやりとりなど、
こちらが気付ける訳がないのだ。
薔薇の精とやらの話
その事情
そしてモリスとイアンの中に起きた事も
何も知らなかった。
だからみんなが眠った′繧ノ待ち受ける事も
何ひとつ知らなければ、
その中で奮闘する者の影の知らず。
またその心情を測ってやる事など出来ない。 ]
[ それでもその薔薇の言葉とやらは
確かに誰かに何かを与えたのかもしれない
真相から遠い位置にいるフェルゼは
後輩に尋ねる姿
拾い集める事は出来なかったが、
ふと、思い出したように口を開いた。 ]
よく分からないけど。
なんだかみんな様子がおかしいよ。
ベネットもオスカーもおかしかった。
でもその中でもイアンせんぱいが
一番いつもと様子が違ったけどね。
傷つけた、善意を汚したとか言ってたし。
[ らしくない事を言っていたなあ、なんて。
思い出せば、ちらりと二人の様子を見て。 ]
なんだか悪い事は早く終わればいいのにね。
[ ぽつりと小さな声が響く。 ]*
[ 明るい中庭は、 確かな"夢"を感じさせる。
未だ、 彼方は夜の筈だ。
寝静まる深夜を向かえ ……軈て朝が来るのだろう。
草を踏んでも音のない世界が、不思議と面白く
中庭を横切るにも足が傷付くこともなく、
──── そうしてたどり着いたなら医務室の窓を
そっと 覗いてみるつもり。*]
メモを貼った。
― 明るい医務室、まだ二人の時 ―
うん、宝物
[これが?って、言った時のその顔は
褒められなれてない子供みたいで、
思いっきり、少しわざとらしいくらいの笑みを向けた。
こんな顔をすればいいのに、って]
あげる、って言ったでしょ
だからこれは俺のものだから
勝手に、大事にする
[よくわからない言い分を、いっそ胸を張るように言い切った]
[それから。
またひとつ気配が増えた。
包帯に触れてくれた、優しい手。
夢に落ちた身では、透明にしか感じ取れなかったそれも、今目にすれば、かつて聞いた音と重なった]
先輩、おはよう ……おやすみ?
[夢だ、って口に出すのもおかしくて、やはり無事な右手を振って挨拶して]
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