276 ─五月、薔薇の木の下で。
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― 医務室 ―
[いつもより上等なスプリング。
静寂に満ちた、けれど誰かを感じる白い部屋。
薔薇の香り。
覚えていない夢を辿って、
床にのびた包帯の先を目で追った]
記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/21(Mon) 22時頃
[包帯を拾い上げる。
適当に腕に巻き付けて、留めるものを探そうと見渡して]
………あ
[さっき感じた誰かの気配。
ベッドに眠るモリスの姿を、見つめた。
熱が出ているのかもしれない。
何故ここにいるのだろう、とか
大丈夫だろうか、とかそういうんじゃなくて、
彼を見て、咄嗟に考えたのは]
先輩は、 何が好きなんだろ……
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[ 香りが届ける音は、何処か慰めのように響いた。 ──君なんだね。やっぱり俺達、どこか似てる。
大切なものが失われたばかりの汚泥が まだ呪われたまま、満たされることを求めて彷徨う。 ]*
(83) 2018/05/21(Mon) 22時頃
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イアンは、囁き、ざわめき、風に乗るそれを確かに聴いていた。
2018/05/21(Mon) 22時頃
[手の力が緩み、包帯がまた床に伸びる。
左手では拾い上げることも上手くいかない。
不器用な指先は、包帯をつかみ損ねる]
あ、 やべ
[左手だから、だけじゃない。
滲む涙を拭って、見られていないか、とモリスの方を見やるけど、
起きる様子がなければ、それは寂しさに変わる]
イアンは、ひたすらに、ひたすらに、歩き続けた
2018/05/21(Mon) 22時半頃
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君まで泣いてるなんて、フェルゼ
[巡り合った姿は常よりも、儚い>>88 相変わらず頬を濡らしながら、目の前に屈んだ。 何があったとは聞かない。 彼にも伝えなかった気持ちを誰かに言うつもりはない きっと目の前の子も、触れられたくない領域がある。
ただ、思ったよりは自分達は近かった そんな気だけはしている。]
(91) 2018/05/21(Mon) 22時半頃
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フェルゼ。 痛いことから逃げちゃ駄目だよ。 ちゃんと刺さってみなきゃ、 それが何なのかなんて分からないんだ。
[的外れなら笑ってくれればいい 自分も、泣きながら笑っていた。
恋なんて許されない穢れは、 悲しみで同調する相手に触れたいと思わせてきたけれど。 ……まだ、それは微かなものだ。]*
(92) 2018/05/21(Mon) 22時半頃
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[小さな呟きをこの耳が捉えられたのなら、どうしただろう。
一度はっとしたような顔になって、少しの間のあとシャツの胸元きゅっと握って、眉を下げた情けない笑顔を俯いて隠して、考えたことなかったなと溜息をつくかもしれない。
それから改めて、好きなものを考えたろう。
考えたことがないのは本当だった。思い浮かぶのは食堂にある珈琲のクッキーだとか、フェルゼと紅茶を飲む時間だとか、即物的なものばかりで苦笑したに違いない。]
[けれど、夢は醒めず。
後輩に寂しさを与えていることも知らずに、夢に囚われたまま。]
― 春の思い出 ―
[そういえば、―――モリスは覚えているだろうか。
あれは、入学式の日だったか。
新生活への高揚感なんて、この学校ではわずかなもの。
ただの、新入生じゃない。
自分以外ではほとんど出来上がってるコミュニティへの参入だ。
明るく振舞うことに疲れて、中庭の隅。
俯きがちに歩いている時、何かを見つけて拾い上げた。
小さな木彫りの意匠。
可愛らしい、と普段思うことのない表現が頭に浮かんだ。
それから誰が拾ったのだろう、と見渡して――]
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[拭われない雫>>97がそこにはあった 向かい合う二人の頬を伝っていく。]
誰も怒りはしないけれど、自分自身が後悔するよ。
[喘ぐ唇が連想すること、まるで溺れる魚みたい。 水の中にいるのなら、君は泳げる筈なのにね。
鏡合わせみたいに笑って、笑って、泣いていた。]
……駄目だよ、俺は汚いんだ。
[問い掛けには、無言で顎を引くだけ。 伸びてきた腕を咎める声。 でも、無理に離そうとはしなかった。今はそれが欲しかった。]
(100) 2018/05/21(Mon) 23時頃
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難しいことを聞くなぁ。
[相手を大いに間違えている。それに、痛い。 でも、弱った子が望むなら。]
自分勝手じゃいけないこと 確かめなきゃいけないこと ……誰かに手を伸ばすこと。 守らないと、大切な人が傷つくよ。 自分がされたら嫌なことは、人にしちゃ駄目だ。
[一言では収まらず、ぽつりぽつりと伝える。 最後の言葉はどこか先生みたいだと自分で思い、 まだ倫理を意識しているのかと、自嘲的に歪む笑み。]*
(101) 2018/05/21(Mon) 23時頃
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[辿る思い出は、薔薇の香りに覆い隠される。
不器用ながら留めた包帯をシーツにもぐりこませた。
静寂に満ちた、けれど誰かを感じる白い部屋。
誰か、が一人なら。
それはただの寂しさであって疎外感ではない。
だから、大丈夫。
喉が渇いていたけれど、抗えない眠気に、夢に落ちていく]
記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/22(Tue) 00時半頃
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── 全てが遠のいた ──
[無言の刃を受けたことは初めてでは無かった。 その度に苦しみを覚え、胸を抑えた。
やめてほしいと、ちゃんと言ってくれと 言えもしないまま耐える間違った選択。 けれど、これ程辛いことはない。 その後の反応も、そう>>126 いっそ激しく罵ってほしかった。
でも、その様子に離れなきゃって思わされたことは 感謝するべきなのかもしれない。]
(145) 2018/05/22(Tue) 04時頃
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っ、 ……!!
[嘘みたいに軽く、告げられて>>128 心臓が握り潰されそうだった。 嘘だとは少しも思わなかった。 俺は、この気持ちをどこか責めるように指摘された時 それに気づいてしまっていた。
ずっと微笑んで、花だけ見ている 俺の思っていた君はそんなこと気にしないから。 ────それに、嘘つきは饒舌なんだ。
思わず立ち止まってしまった足を 必死に必死に、動かして────]*
(146) 2018/05/22(Tue) 04時頃
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── 現在・廊下の角 ──
じゃあ、俺達は似ているんだろうね。
[俺は君の抱えた重みの中身を見てはいないが 鏡合わせに告げられた言葉>>105は届く。 そのままを受け止め、否定しなかった 決定的な違いを分かってはいても。]
(152) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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[自分は誰より近い距離から決定打を刺された。 彼は本当にこちらと一緒?そうなら、酷いことを言っているが。 あの日密やかに惑った手が触れる>>106けれど、今は何も思わない。]
君は自分が欲しいものを、ちゃんと見ているのかな。 顔を合わせて、直接二人で話したのかな。
[笑みの消えた顔で、覗き込む彼を見つめる>>106 問いへの返事はしなかった。 綺麗に整った言葉は、痛みから理解したこと。 笑われてしまったとしても、俺にとっては本当のもの。 不思議な質問をし、この反応 涙の原因の輪郭は浮かび上がったが。 離れるとも、欲しいとも言わない、なんだかぼやけたフェルゼの言葉。 どうも向き合ったにしては疑問が残る。]
(153) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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………… 、
[ああ、でも。 全部全部出過ぎた考えでしかないのかもしれない。 懸命に苦しみを伝える声>>109に目を伏せた。
助けなんて、与える術が無い。 俺だって、あの人だってそれが欲しかった。 ここにあるのは呪いと棘。 それに温もりを欲する寂しさだけ。]
(154) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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俺のほうが言い過ぎたよ、何も知らないのにね。
[ここにいたのは出来ていない本物だった。 離れた彼に>>142謝罪はしても 忘れるよと、いつかみたいに優しく言わない。]
いいや?傷つけた側だね。あと、善意も汚したかな。
[小首を傾げる。それ以上は語る気はないし、 離れようとするなら自然にそうなる。 笑いも泣きもしなくなった顔に、涙の跡 本当は泣く権利は無いけれど 勝手に流れては止められなかった。]
(155) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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[ 離れていく姿を眺めつつ、思う
────ひとりは嫌い、だな。]
(156) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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君も俺を置いていくのかな。
[触れるだけ触れて、同じだと思わせて。 俺に今どんな声が届いているのかも知らずに。
手は彼の服の袖へと伸ばされ けれど途中で落ちてしまった。
抱いているものは 破壊的な衝動ではなく、共感と寂寥感。 想う相手がそれぞれ違って、 深層に手を伸ばしてきた誰かではないから、 離れる者から無理矢理に奪おうとまでは、ならない。]
(157) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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さようなら、フェルゼ。 本当に君の言うとおりなのなら、君がもう何も出来ないのなら。
またおいでよ。 俺は君に恋してないけど、傍にくらいいるよ。 もう知ったようなことも言わないさ。
[来てほしい気もしたし、 自分の思ったとおりであってほしいとも考えた。 彼のいた位置で壁に背を預け、見送る。 薔薇の香りが後ろ姿を追い掛けて。 啜り泣きが響かなくなった廊下に漂い 誰かの居場所を主張する。]*
(158) 2018/05/22(Tue) 04時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2018/05/22(Tue) 04時半頃
イアンは、紙の魚が手の中で泳ぐ**
2018/05/22(Tue) 05時頃
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そう。それが君の選択か。
[さてはて。何が切っ掛けになったのやら 幼子じみた否定が返った時>>159予兆はあったのだろう。 俺の本当を笑った口が、紡いだ言葉。>>160 彼自身に向けていると、すぐに察する 蝶は食虫植物から逃れた。なるほど、清く正しい。]
騙す?自分を受け入れるべきなのは、君だと思うよ。
[理解し難い。>>161 俺はちゃんとこの気持ちも、欲望も受け止めている。 彼から見た俺はどんな姿をしているのだろう。 分からないから、自分ではなく彼のことを考えた。]
(168) 2018/05/22(Tue) 08時半頃
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それこそ、知ったような口だ。 何もかも、最初から駄目だった。
[俺が満たされて眠らない理由。 衝動が求めているものは、 決して手が届かないところにあった。 隣にいてくれる子も今は遠いところ。 一時の触れ合いをくれる誰かがいなければ、眠れない
誠実で真っ直ぐな言葉に>>162否定ばかり返す 薔薇の香りの中には彼が知らない色んなものがある。 でも、刺さることもそれなりに言われたから、 立場が入れ替わったように反論したのだろう。]
(169) 2018/05/22(Tue) 08時半頃
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残念だなぁ、本当に残念だよ。 好きなら隣にくらい座ってくれてもいいのに。
[何も犯す気なんてなかったのに。 泣いた後の笑みは>>164正常な人間のもの、
俺は、少なくとも今は聴き続けるのだろう。 呪いのような声を、ひとり。 夜はまだ終わらない。 呪われた者たちが眠らなければ、きっと。]
ちょっと、今の君が怖いな。
[なんでだろうな、全て知られているような錯覚。>>165 ]
(170) 2018/05/22(Tue) 08時半頃
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全て、終わったことだよ。 少なくとも彼のことはね。
[モリスに関しては正しい。 もしかしたら、時間が経って後悔しているかもしれない。 彼にもう一度謝罪する必要も、あるのだろう。 だけど、ヴェルツには“誰か”が水を与える。]
そうかな、 ……自分ではよく分からないな。
[歩き出した背後、香りの共に呟きが落ちる。 最後くらいは素直に受け入れておく。 歩き出す方法は、なんなのだろう。ふと考えてみた。]
(171) 2018/05/22(Tue) 08時半頃
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上手くいくといいね。
[呼び掛けは純粋な気持ち 確かに先輩としてだけの感情だったから。 彼>>166を追い掛けていく香りは無意識のもの。 誘う気持ちなんてありはしない。
ひとりになったその場所で 人にも薔薇にも届かない独り言が落ちた。 ]**
(172) 2018/05/22(Tue) 08時半頃
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――春の日に――
[続く夢は霞んで、とある一日の出来事をぼんやりとリフレインする。
今から辿って一月もしない頃の話だ。
鳥の羽が小さな珠を抱くような細工をひとつ、中庭に落とした。
小さな不運だった。手が滑って、風が吹いて。
いつも通り執着などないはずで、このまま捨て置くことも考えたが、何故だかその日は拾いに行こうと思って、庭で彼に出会った。
あの頃は名前も知らず、どころか顔を合わせるのすら数えるほどでしかなくて、呼びかけることも出来ずに一度、おろ、と戸惑って。]
――欲しいなら、あげるよ。
[そんなふうに、きっと的はずれなことを言ったんだったか*]
[すぐ傍で眠りに落ちた誰かが、その相手と知るすべはない。
ない、けれど、或いは。
夢の中ならば、薔薇がいたずらに邂逅を許すやも、しれず――**]
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[ここには誰も来ない。 俺が歩き出さないのだから、そうなる。
悲しんでいる自分を受け入れるとは、 自分自身の心を騙すとは、 伸ばす腕を諦めないでとは、
ああ、出来が悪いから、今やっと理解する。]
立ち止まっている、なあ。
[過剰な水は器官を詰まらせそうだ。 毒のような響きが聞え続ける。]
(180) 2018/05/22(Tue) 10時半頃
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[酷いことをしたな。 同じ気持ちだと分かって、 彼にだけ歩いて行けとおざなりに背中を押した。
《あの時》から、自分自身は動かないままだというのに。
自分を認めるようなことを、きっと何気なく>>0:288 それでもあの時だ。遠くから見つめて、育んだ植物が 花を付けたと理解したのは。]
(181) 2018/05/22(Tue) 10時半頃
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