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あはは、虚言を、よう言うわ。
[
哀しむどころか愉しんでいるように思える。
ふっと神妙な面持ちになり、]
亀吉、知ってるか?
人間はな、虚言ばかり言うてたら、
死んだ後閻魔さんに舌抜かれるらしいで?
[昔、人から聞いた事のある、そんな迷信を一つ。
己は信じてはいないが、諫言とばかりに言い含め。
煙を肺腑の奥へ吸い込む。]
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――……そんな力なんて無くとも
その妖しさで、充分わかるやろう。
[此方に見せる亀吉の微笑は、
瞼の裏に鮮やかに、焼きついているのと大差ない。
肩を竦める亀吉に肩眉を上げて見せ、]
へえ。
僕はこんなに優しいのに?
[此方をつつく烏の雛に、気を悪くする事もなく
離れていけば、もの寂しそうにそちらを見やり。]
その眸で見透かしてみたら?
せっかく、見えるようになったのやしな。
[首を傾げる亀吉に、ふっと殊勝な笑みを向けた。]
[その雫の根源を、探すかのように空を見上げ
次いで、共に向かうという亀吉へ
ゆるりと視線を巡らせ首を傾ぐ。]
――……別に、ええけど。
僕ご老体やから、ゆっくりな。
[特に拒む理由もない。
されど一つばかり、注文をつけたのは
何となく、少しでも長くこの雨に
触れていたいと思ったからで。**]
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【人】 肥代取り 置壱[ウトの屋敷を辞するとき、門前で足元にまとわりつく火鼠に気付いて、しゃがみこんだ。 (32) 2013/08/16(Fri) 19時頃 |
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【人】 肥代取り 置壱―呉服屋― (33) 2013/08/16(Fri) 19時頃 |
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―下界―
[井戸水を桶に汲み、柄杓をからからと鳴らしながら小道を行く。
村の中に数多ある祠を祀る日々。
一日ですべてはまわれないから、数日に分けて。それを繰り返せば、毎日何かの神と向き合うことにはなるのか。
晴れた空を見上げる。]
――はしけやし、
わぎへのかたよ
くもゐたちくも
[こうして仰ぎみていれば、たまこに、高天原の神たちにいずれ見えることもあるだろうか、と。
戯れに古歌を口ずさむ。]
[道の神の祠には米と小豆を供え、機織りの神の祠には水と花を置く。
花は、いずれこのように、美しい布を織れますように、と里の子供たちが摘んできたものだった。]
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【人】 肥代取り 置壱[背後からの衝撃に思わずびっくり、飛び上がった。 (40) 2013/08/16(Fri) 20時頃 |
――兄妹二人旅、後――
[毎日が驚きの連続であったと思う。
雨に打たれれば寒さに震え、日に差されれば暑さで茹だる。
人の身は不便なことも多かれど、
それもまた新鮮で、興味深く。
――何より兄に、こんな表情があったとは。]
(……ようございました、お兄さま。
お兄さまは、立派に「ひと」と生きられましょう)
[兄の抱き続けた、浮世離れしたような、
妖しい雰囲気が柔らかくなったような気がして。
闇夜に縛り付けていたのは己も同じかと、苦笑したり。
そんな折だったろうか。
これからどうするか、問われたのは。
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何処へ、参りましょうね
……この頃まれびとの訪れがあった、
そんな里の噂を聞きましたけれど
[それが事実であれば、天上での知己に会えるのでは?
言えば、兄はどんな顔をしたろうか。
どのように、答えたろうか。
何にせよ、いつものように微笑んで。
ひどく穏やかに廻る日々を、噛み締めて]
[あてのない旅の途中か、目的ある移動の最中か。
兄は、鳥の雛が巣から落ちているのを見たのだそうで]
……志乃には、見えなかったけれど……
それより、嫌な風の音。一雨来るのではないかしら。
[早く巣に戻してあげるか、助けてあげないと。
そう言って、眩しげに空を見上げ。手分けしようと。
木など上れぬ自分は、雨を凌ぐ道具を取りに、
一旦兄と別れたのだったか]
【人】 肥代取り 置壱[魚の鱗生やした水鳥のねーちゃんは変。 (47) 2013/08/16(Fri) 20時半頃 |
[麓の村まで下りて、傘を手に戻ったのは、
ぽつぽつと雨粒が落ち始めた頃。
懐かしいような、声を聞いた。
(華月さま?)
[思わず声を上げ、顔を覗かせそうになるも、
それはできぬと己が両足を戒めて立ち。
心から気遣いの言葉をかける兄を認めれば。
ホッと、胸を撫で下ろすだろうか]
――……ようございました、お兄さま
[吐息だけで囁くと、そっと道の傍に傘を置いて。
自分が来たことも、村へ戻ったろうことも、
おそらくこれで伝わるだろうと、そう思っている]
[
……志乃さんは、一緒やないのか?
[甚六の術に因って、共に堕ちたと触れがでていた筈だ。
古い神だからとて、己の力に縋ろうとする程に、
守りたい、離れ難い相手であったろう。
その姿が見えない事に、首を傾げ。]
その、雛は。
怪我でもしてるんか?
[亀吉の手の中で蠢く、黒い雛に眼をやって。]
【人】 肥代取り 置壱[作ったものにとっちゃ、布は子か、それを封印術に使うなんて言うべきじゃなかったかと苦笑が浮かぶ。] (57) 2013/08/16(Fri) 21時頃 |
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――どこかの村――
[村へ戻れば、先ほど傘を貸してくれた宿へ。
髪についた露を払いながら、書くものを、と女将に請うた]
……お兄さまは……怒るかしら。
もう、いつかのように泣かないとは、思うけれど。
[身体は元気、筆を持つ手も確かだが、
白く滲む視界は最早どうにもならない]
【お兄さま、志乃は嘘を吐きました】
[まずはそんな書き出しで、お別れを]
怪我してへんのやったら、
その辺に捨て置いたらええよ。
烏の雛は、巣立つ前に一度、巣から落ちるものや。
それで翔ぶ練習するのやて。
怪我してるのやったら、差し伸べて、
連れていったらええとは思うけど。
[さて、これは。
一体何処で聞いた智慧だったか。
永く 永く、在り過ぎて最早忘れてしまったけれど。]
――……いつまでも、鶸やと思うてるのは人間だけやな。
[煙を一つ、吐き出して そっとその火を掻き消した。]
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【人】 肥代取り 置壱[『そう思っていましたが』 (72) 2013/08/16(Fri) 21時半頃 |
[気付いたのは何時だったろうか。
もう聴こえないはずの"声"が、未だ、耳に届いていると。
朧に会いに行く、と。>>4:*3
引導を渡すのだ、と。>>4:*2
そう呟く声は、最早あの醜い音に包まれてはいなくて]
……道連れに堕ちたのでしょうか
わたしが、――……祟り神の幾分かを
[実のところは分からない。何がどう天上で変化したのかも。
けれど何にせよ、"声"が聴こえる代わりにか、
瞳は段々ものを映さないようになってきた。
天の神に仇なした、おそらくこれは天罰かと]
後悔などありません。むしろ清々しい程ですわ。
わたしはわたしの思うままに在っただけ。
恨むなら恨めばいい。憎ければ憎めばいい。
その憎しみごと笑い飛ばして、愛しましょう。
[それが最大の反撃だろうと、くすり、笑って]
[何の神を祀っているのか、分からない祠が一つ。
水で清め、灯明を燈す。
里人にも伝えられることの無かった、無名の神の祠。
供え物を置くよりも先に怖れ気もなく、その扉をかちゃりと開ける。
朽ちるかと思った扉は、存外しっかりとしており小さく軋んだだけだった。
小さな木彫りの神像が、真正面でなく横を向いて安置されていた。]
…これが。
[月神が、巻物に書き残した願い。
扉を再び閉ざすと、香を焚き神酒を供える。
『彼の―の、―――神の安寧――願――』
おそらくは人目に触れないよう――里の人間が見ても分からないように、巻物の隅に書きつけられた擦れ文字。]
[急にこんなことを言い出そうと思ったのは、
華月の姿を目にしたからだろうか。
神として祈りを捧げることはできずとも、
少しは安心させられる知らせを、持っていると思う]
……日向ちゃんは、きっとこの先も無事でしょう
縁の切れる音は、もうありませぬ
雷門さま、明さまの時には、間に合わなかったけれど
この頃下界へいらしたでしょう朧さまも
御身は人になれど、障られてはおりますまい
怨嗟の音は、止みました。
……ようございました。ようございました。
[筆を走らせながら、ぽつり、呟き]
……彼の神の安寧を願う、でよろしいのでしょう。先代様。
[真正面には向けられぬ神像。
――名を残すことのなかったこの祠は、
祟り神のためのもの]
【人】 肥代取り 置壱……そりゃまた随分な言葉をもらっちまったな。 (85) 2013/08/16(Fri) 22時半頃 |
[おそらく先の騒動の時に、堕ちた月神がこの地に作ったのだろう。
今となってはその本意も分からないけれど。
祟り神が憎いかと問われたら――明はよく分からない。]
でも、安寧を祈らずにはいられなかったんですね。先代様は。
[祠に静かに満ちていく香気に、目を閉ざす。
先の祟り神のことは知らないが、その神を知る月神が祈りを捧げていたのであれば。
明も、同じようにしても構わないはずだ。
高天原に残された神に早く安らげるよう。
祟り神がこれより先、神に仇なすことなく安らげるよう。
静かに祈った。*]
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― 少し先の未来 ―
[辿り着いた、かつての月詠の村で
稀人が現れたとの噂を聞いた。
その稀人と出会えれば、一つ、お願い事を。]
明、
祠参りが日課って聞いてるけど、
祠をもう一つ、作ってくれへんかな。
――……桃の木を、植えようかなと思って。
[かつて、教えてもらったその方法で
祟り神を鎮める事が、できるのだとか。
そう言えば、既に、その祠が作られている事が知れただろうか。
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そうか。
[
遅れても構わぬ。払いにくるのだぞ。
[だが、付けには利子が付くからな、と穏やかな声で付け加え]
では、またな。置壱。
[酒を酌み交わす事で、言葉少なくとも語ることは終わった。
満足したのではないかと思う。ただ一つ心残りを除いて。
長椅子から立ち上がると、一度置壱を見つめてから
最後にからりと笑って、その場を後にした]
――夜――
[置壱が訪ねてきたのは、夜半を過ぎた頃だった。
珍しく酒を飲まず、縁側に座って月を眺めている所へ。
よく見れば、黒い衣を羽織っており、
ただ見れば、いつもと変わらぬ笑みを浮かべていた。
友の右手には、見たことの無い大きな鋏が握られ
友の左手によって、掴み、引き寄せられるのをただ見ていた]
酒代は、用意できたのであろうな。
[さもそれが今の大事であるかのように。
それだけを言ってしまうと、友の姿から視線を外し
見られていては、さぞやり難かろうと
天を仰ぎ、月を眺めていた。
自らの傍で、じょきりと音が鳴るまで]
この手が汚れているかと問うた時、
確かに志乃は穢れていたのでしょう
独りにするなと言ったのは志乃なのに、
今はここにいることが辛いのです
……北へ、向かおうと思っています
何も見えなくなる前に
――……北の、まつろわぬ民の下へ
[その名を忘れぬと、約束した。
なれど独りで守り続けるのは、あまりにも]
志乃はお兄さまの妹で幸せでした
ご縁があれば、いつかまた……
[あまりにも、いろんなことがあり過ぎたから]
【人】 肥代取り 置壱―小屋― (90) 2013/08/16(Fri) 22時半頃 |
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