17 吸血鬼の城
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――…行ってらっしゃいませ、お兄様。
私は……大丈夫ですから……。 ちゃんと大人しくお兄様のお帰りをお待ちしています。 だから、如何かごゆるりと……
[柔らかな微笑を城主へと向けて静々と頭を下げた]
(240) 2010/06/22(Tue) 16時頃
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[ゆるゆると顔を上げた。 妹の目にさえ今の兄の姿は婀娜なるものを感じさせる。 トクリと跳ねる鼓動。 けれど甘やかすような兄のその調べに満ちるのは安堵]
――…はい、お兄様。
[人ならざる者となり 記憶も失った女には他に身を寄せる場所など無く。 同胞である兄の傍以外に自分の場所は無いのだと思い 彼に対してのみ己が居場所を求める]
(258) 2010/06/22(Tue) 17時頃
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[城主の気配が霧に紛れ遠ざかる。 セシルへと向き直れば城主の命を受け辞すところ。 何の用意なのかと問う事はせず]
――…ええ。 何かあったら貴方を呼ぶわ。
……いってらっしゃい。
[見送る言葉のみを向ける。 執事たる男の姿が見えなくなれば 白く濁る紅茶へと視線を落した]
嗚呼、似合うと言って貰えたのに ありがとうも言えなかったわ。
[仮令お世辞であったとしても 立場からの言葉であったとしても嬉しかったのに。 そっと口に含んだ紅茶は優しく甘く―― 淹れてくれたその人を想わせる**]
(261) 2010/06/22(Tue) 17時頃
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― 広間 ―
[――カタ、と茶器が置かれる。 器の中身は既に飲み干され空となっていた。 影から何かが女に伝わる。 女の表情がふ、と曇った]
――…お兄様が其方にいらっしゃるなら 私が行かずとも問題はないでしょう。
荒事は――…苦手だわ。
[女の呟きに偽りはない。 女の身体能力は客人の女性と殆ど変わらない。 兄にも執事にも大丈夫といってみせたのは けれどそれを補う余りある魔力の存在と 無闇に危険には近付かぬように心掛けていたから]
(330) 2010/06/22(Tue) 22時頃
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[女は静かに立ち上がる。 影に茶器を片付けるよう指示を出し 白いドレスの裾を翻した]
――…私も参りましょう。 お兄様の許へ……。
[その姿はす、と闇に溶けて――。 次の瞬間には城主の居る部屋の窓辺。 兄の傍に控えるように佇む]
(368) 2010/06/22(Tue) 22時半頃
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[この十二年――。 目覚めた頃よりこれまで同胞となった者を女は知らない。
だから、新たな眷属として迎えた者に 多少なりとも興味を覚えていた。
血の濃さは違えど同じ血が流れている。 淡い微笑を浮かべ血を流す眷族を見詰めた]
(371) 2010/06/22(Tue) 22時半頃
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――…お兄様。 そんな貌なさらないで。
[常とは少しばかり違う城主の表情に 女は心配そうな声をあげた。 たおやかな指先が城主の端整な頬を撫でる]
(386) 2010/06/22(Tue) 23時頃
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――…其れは貴方にとって其れは“毒”よ。
[魔性の血を取り込んだ狩人に紡ぐ女の声は哀しげ。 つい先ほどまでは敵視したというのに――]
……………。
[慈悲を、と狩人の男は言う。 女は僅かに柳眉を寄せてその男を見た]
(394) 2010/06/22(Tue) 23時頃
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